
でも
しょうがない
あの「ラッキー」はでかすぎた
■4巻発売、完結しました。
厚志とマサの前に再び現れる、牛島の陰。「牛島に写真を撮られたかもしれない、気になる」というニーナの訴えに、厚志は重い腰を上げる。そして乗り込む、牛島邸。結果イッタようなアブナイ目をした牛島に追い返されるが、何故か大人しそうな弟くんが登場、厚志に相談をしてくる。「兄は本当は悪い人じゃないんです…!」そう語る彼の言葉に、ニーナは思わず…。多感な高校生の日常をリアルに描く、グローイングアップラブストーリー、完結!!
~完結です~
終わってしまいました。大好きな連載作を読み終えると、大きな感動と共に、虚脱感に襲われたりするのですが、この作品もまた。ラストと良い、リアルにキラキラしている感じが、自分自身の青春時代と比較してあまりに輝きすぎているために、落ち込んでしまったり。とにもかくにも、そうやって気持ちを動かされるというのは、良いものです。それだけの影響を、この作品から受けたということなのですから。というわけで、完結しました、「いとしのニーナ」4巻のレビューになります。
~二度目の「ありがとう」と、ニーナにとっての終わり~
これまでの物語の流れから、なんとなく「日常」が続いて、ひとまず一つの決着をつけて、それからもなおニーナと厚志の日常は続いて行くのかな、なんて勝手に思っていたのですが、待ち受けていたのは、「別れ」でした。その要因は多々あれど、ニーナの言葉を信じるのであれば、「厚志といる以上、牛島のこともずっと思い出してしまう」ということ。要するに、あの事件のことが、ニーナの中ではまだ決着がついておらず、そこをクリアしない限り、厚志と再び付き合うことはない、ということでした。しかしニーナは、最初そのことを厚志に伝えず、メールでただ「好きな人ができた」とだけ送り、フェードアウトしようとします。その時のメールの文面が、切ないんですよね

「好きな人ができました」なんてのは、当然のことながら嘘だってわかるんですが、もっと切ないのはその次の行、「ありがとう」。ニーナは基本身勝手で、特に厚志ともなると、感謝の言葉なんて全く発さないわけですよ。そんな彼女が、「ありがとう」。一行目の「好きな人ができました」という言葉の嘘っぽさを、より引き立てる一文となっていました。初めて伝えた「ありがとう」は、それ自身が目的でない、嘘のメールを彩るだけの、哀しい言葉。
そんな彼女が、二度目の「ありがとう」を、それも直接言葉で伝えたのは、4巻も終わりに差し掛かった頃。トラウマと化していた牛島の一件を、彼の差し金で再現。厚志に助けられるのではなく、自分の力でそのシチュエーションから抜け出すという、つまり彼女の中で、牛島の一件による呪縛から解き放たれたその直後というタイミングで…

…ありがと
これは、本当の「ありがとう」でしょう。2度目のありがとうも、結局別れを告げる言葉。しかしメールのときとは違い、これそのものが「感謝の想いを伝える言葉」であると同時に「別れの言葉」として機能しており、彼女の本心が伝わってくる、切なくもどこか晴れ晴れとした言葉に感じました。この言葉を発した時点で、彼女の中で一つのピリオドが打たれたことは明白。これまでずっと引っぱられ続けたあの出来事と、ようやく決別することができたのです。
~ラッキーから奇跡へ~
そんな、トラウマからの解放という意味では、自分の気持ちに区切りを付けることができたニーナでしたが、一方の厚志はというと…まぁ全然気持ちが切り替わっていないわけですよ。男というのはひきずるものなのですが、その想いを端的に表してくれた言葉が…
でも
しょうがない
あの「ラッキー」はでかすぎた
しょうがない
あの「ラッキー」はでかすぎた
もうね、しょうがないんです。誰しもが経験したことがあるであろう、「あの出会い」は、「あのラッキー」は、デカすぎるんです。不満があるんじゃない、ただ大きすぎただけなんです。自分も過去に抱いたことのある、あの気持ちの正体が、なんとなくわかった気がして、ちょっと救われた気分になったのでした。
さて、そんな彼ですが「ラッキー」は信じる割に、直前では「奇跡なんてものはこの世にはないのだ」と宣っていて、「奇跡」と「ラッキー」の違いってなんなんだろうとか思ったのですが…うん、要するに、最後みたいな出来事が「奇跡」ってことなんでしょう。ああ、本当に素敵な奇跡を、ありがとう。決してこれが、後々振り返った時に「ラッキー」に格下げになっていないように、二人がいつまでも幸せにいられることを、願っています。
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