
まだ全然足らないよ
まだ生きてんじゃん
殺して!
■16巻発売しています。
その胸のうちを知るために、コウを捜しに東京から戻った夏芽を迎えたのは、コウの部屋にいるはずのカナだった。余裕の笑みに、動揺を隠すことができない夏芽。そのころ、コウは…。
〜一気に読みました〜
16巻が発売されています。12巻を読んでから、何故か続きを読まずにここまで来てしまったのですが、時間があったので一気に読みました。こういうパワーのある作品って、読むのにすごく体力使うんですよね。案の定、ものすごいことになってました。なのでエントリータイトルは16巻ってなっていますが、本エントリは13〜16巻をまとめての感想ですので、悪しからず。
〜大友が完全にフェードアウト〜
まずびっくりだったのが、大友が結構頑張って食い下がっていたものの、最終的に打ち捨てられて以降完全にフェードアウトしているというところでしょうか(酷い言いっぷり)。彼もコウや桜司、夏芽なんかと比肩できるキャラだと思っていたのですが、そこまで尖っていなかったし、選ばれた存在でもなかったということなのでしょう。様々な人物がこの物語を彩ってきましたが、どんどんと振り落とされて、最終的に残るのは、上か下かの2極。コウや夏芽のようにどこまでも輝ける信仰対象には成り得なかったし、一方で神を壊さんとする強姦魔や、桜司や、カナのような行動もできなかった。それこそが魅力であったのかもしれませんが、これだけ尖った物語の中、中庸すぎるのが仇となったのか。キン肉マンで言う、ジェロニモですかね。いや、憧れてそれでも成れないというのは、むしろ桜司こそがそれなのかもしれませんけれど。

あの一件以来再登場はなく、割と酷い別れ方をしたままフェードアウト。この投げられっぷりは、「モテキ」本編の中柴いつかちゃんを想起させます。最終回も出てこないかなぁ…。個人的には一番好きなキャラクターであったので、少し寂しいところではあります。
〜カナちゃんが相変わらず怖い〜
後半になるに従って、どんどんとその登場回数が増えていったのが、カナちゃんでした。もうね、率直に怖いこの子(笑)信仰心がこじれて変な方向に走り出しているのが、アブナイ信者っぽくて、素晴らしい。信仰ってのは対象を神格化して決して触れないようにする印象があるのですが、そんな中、コウからの働きかけだとは言え、一度抱かれようとしたのが生々しくて「おおう…」と。その真意がわからないってのが一番気味悪く感じさせる要因であるのですが、そんな中で唯一清々しかったのが、

大嫌いじゃ
この子の特徴って、信仰としてコウちゃんを上に見るからか、会話の端々に彼女が抱いている上下関係が垣間見えるのがイヤなんですよね。コウちゃんに対してはあくまで下から。で、夏芽に対しては上から。他の人にもそうだと思うのですが、ことコウちゃんの話になると、その見下げる角度はより大きなものになる印象がありました。それがこのシーンだけは、対等な視点で、本心を吐露していて、「あ、やっと作ってない言葉が聞けたな」と。かといって好きなキャラになるかというと、そうではないんですけれども。
〜選ばれた二人が乗り越えなければいけないこと〜
物語がどのような結末を見せるかが、個人的な注目材料だったのですが、そういう形で来ますか。過去のトラウマからの抜け出し(納得させ飲み込む方向)ではなくて、真っ向からぶつかって乗り越えるというもの。当人達にとっては最も酷な道であると同時に、最も綺麗に「本来の自分」を取り戻すことができる道でもあります。いつまでたってもついてくるであろう陰ならば、真っ正面から潰しに行って消し去るという。物語的にはこれしかありえなかったのでしょう。16巻最終話のタイトルは「夏、…邂逅」とありますが、偶然を意味する邂逅ではあるものの、この遭遇はある種必然とも言えます。ただそれに際しても、この進路の中で様々な選択肢は出てくるわけで。巻末のあの切り方は、様々な道を残しつつの幕切れで、続きがどうしたって気になる終わり方。17巻が最終巻ということで、心して待ちたいと思います。