南波あつこ「隣のあたし」(1)
ねぇ京ちゃん
やっぱりあたし
この先も ずっと 長く
隣にいれるって
思っててもいい?■中学3年生の仁菜が好きな人は、マンションのお隣に住む1つ歳上の京介。優しくて面倒見が良い京ちゃんに、仁菜はすっかり夢中。日々妄想で頭を膨らませていた。いつかは本当に京ちゃんと…。そんな淡い想いを抱く仁菜だったが、ある日京ちゃんがキスされている所を目撃してしまい、気持ちが乱れる。それでも諦めきれない仁菜は、京ちゃんに想いを伝えることを決心したが
!?
切ない想いが溢れる青春ラブストーリー。前作「スプラウト」でブレイクし、人気作家の仲間入りを果たした南波あつこ先生の最新作です。ヒロインは中学3年生の仁菜。隣に住むひとつ年上の京ちゃんに想いを寄せている。しかしこの春からは別々の学校、京ちゃんは野球部に入部し、次第にそちらへのウェイトが大きくなっていきます。京ちゃんに関して、自分の知らない部分が多くなってきたことに不安を感じた仁菜は、これまで以上に積極的に京ちゃんに近づくように。そして目撃してしまった、キスシーン。このキスのお相手は、野球部のマネージャー・麻生さん。今の彼氏との関係に悩む麻生さんは、優しく接してきた京についついキスをしてしまいます。今後麻生さんの気持ちがどのように動いていくのかはわかりませんが、京ちゃんが気になっているという状況。それに対し京ちゃんは、“好き”というより、“ほっとけない”という感情で付き合っていきます。

携帯を持っていないので、黒板でやりとり。こういう設定は結構好き。これからも活用していただきたいところ。
相変わらず上手いです。けれど上手いことを前提に、あえて苦言を。前作、前々作の「先輩と彼女」と「スプラウト」はモチーフというか、根底に流れるものが全く同じでした。想いを寄せる相手には好きな人がいて、嫉妬や絶望に苛まれるヒロイン、けれども諦めきれず、気持ちを抑えつつも相手と対峙、結果結ばれてめでたしめでたし、と。この流れがあったので、次は変えてきて欲しいと思ったのですが、結局今回も一緒?一応今までとは違い、簡単な構図ではないのですが、この程度の変化では意味がないような…。
南波あつこファンなら満足なのかもしれないですが、それ以外は果たして納得するだろうか。現状維持が目的なら十分、しかしまだ守りに入るようなポジションではありません。単純に引き出しがないだけかもしれませんが、それでももっと変化は付けられると思います。これじゃあ「オナニー漫画」などと揶揄されても文句は言えないぞ、と。なんだか厳しい言葉ばかりになってしまいましたが、南波先生の作品が好きだからこそ書いているわけであって、決して嫌いだから書いてるわけじゃありません。作品に引き込む力は随一ですし、絵もかわいい。だからこそ、もっと作家としての幅を見てみたいのです。
この作品の出来はとりあえず京ちゃんに懸かっている気が。このまま麻生さんに流れたら、今まで通りなのですが、そうじゃないのなら期待できるんじゃないでしょうか。けど南波先生の売りである(と思ってる)、嫉妬や絶望といった負の感情の描写の上手さは、スプラウトのような瑞々しさがあったからこそ耐えられた気もするので、今回はその点どうだろう。結構重い展開に行く予感。でもヒロイン中学生だし、そこまで重苦しくはならないか…。
【オトコ向け度:☆☆ 】→少女マンガの造りです。ただ読みやすいとは思います。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】→いや、なんだかんだで上手いですし、面白いですよ。オススメです、ハイ。
作品DATA■著者:南波あつこ
■出版社:講談社
■レーベル:KC別フレ
■掲載誌:別冊フレンド(2009年1月号~連載中)
■既刊1巻
■価格:419円+税
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