南波あつこ「スプラウト」(1)
来週からお世話んなります■仲良しの女友達がいて…年上の彼氏がいて…青春順風満帆の高校1年生・実紅。しかしそんな毎日に、ある日突然激震が訪れる。「父さんな、会社辞めることにしたから」なんと父が会社を早期退職し、広い家を利用して下宿を始めると言い出したのだ。しかも入居者はすでに決まっているらしい。同じ高校の男子・楢橋草平,明るいオタク兄さん・滝川直治,強気お嬢様の大学生・谷山清佳…次々と現れる下宿人に、ペースを乱されっぱなしの実紅は…!?
現在「隣のあたし」(→
レビュー)を連載中の南波あつこ先生を、一躍人気作家に仲間入りさせたのがこちらの作品。仲の良い友達がいて、年上の彼氏もいて、青春順風満帆なヒロイン・実紅。あたしの青春、順調なんだろうな…これといった実感もないままに今の状況を顧みる彼女でしたが、両親が下宿をはじめると言い出したことでその平穏は崩れ去ることになります。次々に現れる個性的な下宿人。中でも彼女がもっとも問題だと思ったのが、同じ学校に通う男子の楢橋草平。同じ学校の男子と同居ってだけでも問題アリなのに、草平には女子に嫌われている天然美少女の彼女がいて、何故だかイライラさせられる…。その感情の源泉がどこにあるのかもわからずに、彼女は同居人たちとの生活をスタートさせていきます。

家での身の振り方と、学校での身の振り方がある。
要はその同居人の男子のことが好きになってしまうという、同居もののお話。ただし自分には年上の彼氏がいて、彼にもかわいい彼女がいて…という障害が用意されており、その上で話が展開されていきます。これといってドラスティックな設定は用意されていないものの、絵柄の可愛らしさと等身大の心情表現がこの作品の魅力を形成。メインとなる2人以外の登場人物もしっかりとキャラ形成されており、比較的賑やかに話が展開されるところも、個人的にはプラス。というのも、南波先生の作品はヒロインの嫉妬出発でネガティブな感情が強く描かれることがしばしばあるのですが、そういった脇役がフォロワーになることで、重くなりがちな雰囲気をバランスよく中和してくれるという。青春は沢爽やかでなくちゃね。この作品はその辺の対処が上手だと思うのです。
ラストはおあつらえ向きな展開に思えるものの、少女漫画だということを考えると致し方ないのかもしれません。個人的にはそこだけが残念なのですが、それではメイン読者層は納得してくれないのでしょう。あとどうでもいいけど実紅がカワイイです。嫉妬に震えるその姿すらも、なんだか素敵。「先輩と彼女」りかとかだと微妙だったんだけども、どうしてなんでしょうかね。
【男性へのガイド】→これはどうなんでしょうね。展開的には女子に美味しい作品なのですが、甘ったるさはほとんどないので、甘さが苦手という方には良いかも。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】→悪者を作らない物語が、個人的に大好きなのです。しいていえばヒロインが一番悪者に近いポジションなのかもしれないですが、カワイイから全然いいのですよ、はい。
作品DATA■著者:南波あつこ
■出版社:講談社
■レーベル:KC別フレ
■掲載誌:別冊フレンド
■全7巻
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