新條まゆ「ハートのダイヤ」(1)
お前は世界中の男から心と体を狙われる…
そして…
俺はお前を守るナイトだ…■お嬢様・おぼっちゃまが多く集まる聖クィーン学院の中等部に入学した、姫乃。普通の家に育った彼女が、この学校に来たのには、とある理由が…。それは小2の夏に出会った初恋の男の子と再会するため。その時に一緒に過ごした、三ッ葉家の御曹司・真守と、その使用人の息子・影護のことが忘れられなかったのだ。期待に胸を膨らませての入学だったが、そこで影護と再会。しかし何やら彼の様子がおかしい。再会するなり、「お前を守る」とか言い出すのだ。さらには真守も留学先から帰国し、影護と同じようなことを言い出す。それには、姫乃の身にとある重大な秘密が隠されているからで…!?
何かと話題の「まゆたん」こと新條まゆ先生のりぼんでの新作でございます。お話は、その身に秘密を持つヒロインが、世界中の男から心と体を狙われ、それを初恋の男の子が守るという、ラブロマンス。姫乃が持つ秘密とは、どんな願いもたった一つだけ叶えてくれると言うダイヤを持っているというもの。そのダイヤとは、彼女のハートで、彼女の心と体を手に入れた者は、どんな願いでもひとつだけ叶うというのです。そんなダイヤを守るために生まれたのが、小2の時に仲良くなった二人の男の子、真守と影護。それぞれに野望を抱えた世界中の有力者たちが、こぞって姫乃を狙ってくるところを、この二人が身を呈して守ります。物語の行方としては、ナイトに守られたお姫さまが、最終的に誰を選ぶのか、というところ。設定はそれなりですが、構図としては単純明快。エロゲとかにありそうなシチュエーションを反転させた感じでしょうか。

ナイトというのはただ守るだけではなく、限られた血筋の者しかなれない。この二人がそれで、真守はナイトとして姫乃を守り、影護は正式なナイトにはならず、自分のやり方で姫乃を守る。ナイトになると姫乃と結ばれることは許されないばかりか、即ちそれは死を意味する。そういった縛りがはいった方が、こういう作品は盛り上がる。
ヒロインの姫乃は、三ッ葉家の御曹司でナイト(「守護神」と書いてナイトって読むんだけど、これってどうなんだろう)の真守が初恋の相手。しかしナイトは彼女と結ばれることが目的ではなく、あくまで彼女を守ることが使命。そのため近くにはいるものの、想いは届いてくれません。もう1人のナイト・影護は姫乃への想いを抱えているため、正式なナイト(儀式が必要)にはならず、自分なりのやり方で彼女を守ろうとしますが、やはりなかなか自分の方へは向いてくれないという状況。加えてこの二人がイケメンの人気者ということから、周囲の女子からも敵対され、周りは敵ばかりに。それでもなお守ってくれるナイトに、彼女のことを狙いつつも、素敵にアプローチしてくる魅力的な男の子たちに囲まれ、さぁどうする!?という、ある意味愛され冥利に尽きる作品と言えるかもしれません。
ナイトの存在意義や、ヒロインを狙う一人がなぜナイトの書(ダイヤの秘密)を世界中にばらまいたのかなど、腑に落ちない点は多数あるのですが、これから明らかになっていくのでしょうか。とはいえそれ以外にもツッコミどころは多数あり、物語としてはガタガタという印象が否めないです。とはいえそれでこそ新條まゆ作品なのでしょうし、メインである恋愛に関してはしっかりと体勢が整っているので、それをどうこう言うのはナンセンスなのかもしれません。本当にどうでもいいような、毒にも薬にもならないような作品も多々ある中、どんな形であれしっかりと面白いネタを提供してくれる新條作品ってのは、やっぱり話題になって然るべきなのだと思います。メイン読者は狙い通りに楽しみ、それ以外の層は突っ込みながら楽しめる。貶めてるわけではなく、これは賞賛。ネタになった時点で勝ちなのです。

ナイトになるとカードの能力が与えられる。回想シーンでさらっと描かれた、カード投げですが、正直かなりシュール。なんていうか一コマの破壊力が半端ないです。
一応エロを売りにしていた作家さんが、エロは極力少なくしたいりぼんで描くということで、どんな変わり身を見せるのか注目していたのですが、目に見えるエロはやっぱり抑えてきましたね。とはいえ全体的にどこかエロティックな雰囲気は残されており、りぼんスタンダードからはやはり一線を画すような印象を受けます。とはいえ最近は「kiss meホスト組」(→
レビュー)みたいな作品も出てきており、りぼんの新たな流れはしっかりと汲んでいるのかもしれません。またヒロインは初潮を迎えることで、男性を選ぶことが出来るようになるという設定があるのですが、これがどうにも「繁殖期を迎えた一個体のメスを、多数のオスが競争して奪い合う」という厳しい繁殖競争を想起させ、ある意味もの凄くエロく思えます。見えるエロから見えないエロへのシフト…!?いや、さすがにそれはないか…。
【男性へのガイド】→単純に考えればかなり厳しいものの、ネタ的に捉えればこれほどおいしい存在もあるまい。
【私的お薦め度:☆☆ 】→この物語ではオススメするのは難しいです。ある意味もの凄い衝撃だったんですけど。いや、買ってみる価値は十分あるかもしれませんよ?
■作者他作品レビュー
*新作レビュー*新條まゆ「あやかし恋絵巻」作品DATA■著者:新條まゆ
■出版社:集英社
■レーベル:りぼんマスコットコミックス
■掲載誌:りぼん(平成21年9月号~連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税
■購入する→
Amaozon
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