
佐条が一番
いつも
ずっと
何度だって言える
■合唱祭前の音楽の授業中、同級生でメガネの優等生・佐条利人が歌っていないことに、草壁光は気づく。名前さえ書けば受かるような高校で、ひと際優秀な成績をおさめ浮いている存在の佐条だけに、光は「歌なんてくだらないと思っているのかな」などと想いをめぐらした。しかしある日の放課後、誰もいない教室にあったのは、ひたむきに歌の練習をする佐条の姿だった。その様子を見て、光は思わず佐条に声をかけるが…
つい先日、続編である「卒業生」が発売されました。別に狙ってたわけじゃないんですが、このタイミングでレビューです。2008年発売の本作は、「このマンガがすごい!2009」オンナ編でもランキングに食い込むなど、非常に高い評価を受けており、ウチにもおすすめの声が幾つかよせられておりました(ありがとうございます)。そんな有名BL作品のテーマは「まじめに、ゆっくり、恋をしよう。」。とある男子高校の同級生二人の、初々しい初恋を描いた内容となっています。
主人公は、バンド活動に熱中する少年・草壁光。合唱祭に向けての練習をしている最中に光は、同じクラスの優等生・佐条利人が歌を唄っていないことに気がつきます。そのときは、歌なんてくだらないと思っているのだろうと思うのですが、後日教室でひたむきに歌の練習をする佐条の姿を目撃、思わず声をかけます。彼曰く、メガネの度が合っていないので黒板の楽譜が見えず歌えなかったとのこと。そんな彼に対し、光は「これから合唱祭まで歌を見てやろうか」と勢いで提案。以降放課後は一緒に歌の練習をすることになります。

結構コミカルな部分もある。そこがまた主人公のキャラをよく引き立たせるというか。
「恋をゆっくり」というので、つき合うまでの過程をゆっくり丁寧に描き出していくのかと思いきや、1話目であっさりくっつきます。そこで一旦拍子抜けしたのですが、なるほど、その後は確かに評判通り正統派という感じの物語展開が。くっついたとはいえ、簡単に気持ちが通じるかと言えばそうではないわけで、男同士の恋、ましてや二人はイケてる組とマジメ君で基本的には別の人種、しがらみとなるものはたくさんあります。素直に想いを伝えたくても、簡単にそうはなれない不器用さがあり、さらに想いを募らせて、溜め込んだ気持ちが溢れだす。十代男子特有のセンチメンタルさとパワフルさが、繊細でありながら時に思わぬ動きを見せる中村先生の作風にガッツリとマッチ。雰囲気だけで流さない、不思議な味わいのある作品となっています。
ピュアではありますが、キスは頻発。これは少女漫画にも言えることなのですが、それ以上にピュア=プラトニックという図式は成り立ちません。いやでもこれ、BL基準でいったら結構プラトニックなのか?正統派といっても、BL土俵での正統派ですから、読み慣れていない人はちょっと躓いてしまうかも。当たり前ですが、「普通に男の子を好きになる」という感覚が共有されていることが大前提ですので、そこんとこよろしく。レビューでは、「BLの入り口として」という声も多く見られましたが、それ以上にBL慣れしている人が原点回帰する意味で読んだ方が、より感動は大きくなるのではないかななんて思ったりも。今回読んだ時点では、「うん、いいよね」というぐらいだったのですが、また改めて読んだら、違った感想を持てそうな気がします。そういえば続編の「卒業生」品薄なんですかね?朝書店で確認して、帰りに買っていこうと思って寄ったら、もうなかったという。
【男性へのガイド】
→正統派BLですよ、とだけ。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→普通に良かったです。本分では書けませんでしたが、先生がいい味出してて素敵。ただ巷の評価ほどまでには感動できなかったのは、私のBL消費数のせいか。
■作者他作品レビュー
*新作レビュー* 中村明日美子「曲がり角のボクら」
中村明日美子「ダブルミンツ」
作品DATA
■著者:中村明日美子
■出版社:茜新社
■レーベル:EDGE COMICS
■掲載誌:OPERA(2006年vol.3~vol7)
■全1巻
■価格:619円+税
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