
あまなつ屋の金平糖
夕焼け色の金平糖
ひとつぶ口にふくめば
昔の夢を見せてくれる
■おもいで金平糖は創業120年を誇る飴屋「あまなつ屋」の看板商品。どこかでは「魔法の金平糖」なんて呼ばれていて、食べると不思議なことが起こるという言い伝えがある。口にふくめば昔の夢を見せてくれる、近い過去、遠い過去…。時空にたたずむ誰かの想いに呼ばれ、時を飛び越えた少女たちは、そこで何を見て、何を思い出し、何を感じたのだろうか。あなたの心のまん中を揺さぶる、4つの味を召し上がれ。
持田あき先生の新作。食べると不思議なことが起こると言われている、「おもいで金平糖」が見せる、4人の少女の物語が描かれます。おもいで金平糖を食べると起こる不思議なこととは、タイムスリップ。その人にとって大切なときであったり、その人の大切な存在の意志が働いたりで、辿り着く先はバラバラ。別れを告げられた彼氏とつき合う前の自分に出会ったり、自分の生まれる前の時代に夢を追う恩師に出会ったり、今は会えない人に会ったり。相手にとって、そして自分にとっての人生のターニングポイントを、おもいで金平糖によってすり合わせるというイメージ。どれも懐かしさと温かさを感じる、ストレートな表現の感動ストーリーになっています。

歳の離れた学校の先生との話。少女視点ではあるが、ふたりの物語でもある。
この作品、実は先月発売の作品だったんですよね。持田あき先生は、「愛してるぜベイベ」などで有名な槙ようこ先生の実妹なんですが、姉妹ということで、どうしても比べてしまって…そうするとやっぱり分が悪いというか。それと持田先生ってものすごく表紙が素敵な先生なんですよ、ほんと業界随一なんじゃないかっていうくらい。それで購入した「キミは坂道の途中で」(→レビュー)の内容が、個人的に今ひとつで(表紙からの期待感とのギャップもあったと思う)、もう次買うのは巻数表示が付いてからで良いやと、この作品もスルーしていたのです。けれどどうにも周囲での評判が良いんですよね。Twitterでオススメされ、メールでもオススメされたということで、これはやらなあかんと思って読んだら、確かにいいお話でした。相変わらずやけに大仰というか、懐かしくも恥ずかしい、クサいやりとりをド直球に描くスタイルなのですが、それがビシっと決まった感じ。こういった雰囲気を恋愛でやられるとむずかゆくてたまらないのですが、恋愛以外の愛情にそれを乗せるのならば、案外すんなりと受け入れられたりするもの。いやでもやっぱりクサいし、どこか垢抜けないという。
ストーリーは、過去に行くというだけで、その他にこれといった捻りはなし。SF的に、過去に影響を与えてしまったら未来が…なんてことは起こりません。起こるのは、心の変化のみ。そこに絞るからこそ、深い心の触れ合いを描くことが出来ます。もう少し捻りを加えた方が、大人も楽しめるのになぁなんて思ったのですが、そもそもこの話はりぼん掲載で、その中で恋愛なしのストーリーを組み立てるとしたら、こういうパターンしかないのかもしれませんね。このくらいストレートな方が、低年齢層の読者には伝わりやすい。恐らくこれを読んだ大人は、「心のまん中にズドンと来た!」となるか、「わざとらしすぎて、クサすぎて耐えられん!」となるかどっちかじゃないかと思います。もうひと捻りあったらお互い歩み寄れたような気もするのですが、そうすると爆破力は落ちてしまうかもしれないわけで、難しいところですね。とりあえず、なんだか変な方向に向かいつつあるりぼんで、今なおこういった作品が読めるというのは貴重。これからもこのスタイルを貫いて、恋愛だけにとらわれない愛情・絆を描いていってもらいたいですね。
【男性へのガイド】
→恋愛に特化していないため、読みやすさはあると思います。あとはこのクサさに耐えられるか。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→捻りはないし、上手くもない。諸刃の剣。けれど今の少女誌(というかりぼん)で、流れに逆行するような作品を描き、しっかりと作品として仕上げたあたり、応援したいですね。
作品DATA
■著者:持田あき
■出版社:集英社
■レーベル:りぼんますこっとコミックス
■掲載誌:りぼんスペシャル
■全1巻
■価格:457円+税
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