森
森野萌「おはよう、いばら姫」(1)
俺でも
誰かの助けになれるなら
■わたしはもうずっとずっと 答えをわからないでいる―――。
「丘の上のおばけ屋敷」と噂のある空澤家でワケあって家政夫のバイト中の高校生・美郷哲。ある日、本邸の離れで暮らす謎の少女・空澤志津と出会い、どこか寂しげな笑顔に惹かれていく哲だが、再び会った時の彼女は様子が豹変していて……?
森野萌先生のデザート連載作です。2冊目の単行本になるのですが、近所の書店ではかなり平積みされているようでした。裏表紙側の帯面には、人気作家さん達からの推薦コメントがあるなど、かなりプッシュされている模様です。で、実際に読んでみたのですが、これが面白くて。ではでは、内容をご紹介しましょう。
物語の舞台となるのは、丘の上にある広いお屋敷。この家で家政夫としてバイトをしている高校生の哲は、ある日お屋敷の離れに暮らす、空澤家の娘・志津と出会います。噂では「病気で外に出られない」と聞いていたのですが、その様子を見る限りなんだかとても元気そう。実際彼女は「病気ではない」と言い張ります。彼女に頼まれるようにして、その日以降も度々離れで会うようになった哲と志津。哲は無邪気に笑う彼女に次第に惹かれていくことになります。この気持ちは恋に違いないと思い切って告白をしてみた哲でしたが、翌日になって彼女の様子は一変。生気を失ったかのように静かに佇む彼女は昨日とはまるで別人で、哲のことも覚えていないという。失恋に悲しむものの、どうにも彼女のことが気になる哲は、再び志津に会いに行くのですが……というお話。

離れに暮らす志津は、親ともしばらく会っていないという。久しぶりに人と話したのか、哲と話すとなんだかとても嬉しそうにはしゃぐ。そんな彼女を前に、哲は少々戸惑います。
まるで別人のように豹変して、当人は何も覚えていないということから想像できるのは、「多重人格者」でしょう。序盤は二人の出会いと距離を一気に縮める過程があり、中盤からその路線で進んでいくのですが、後半にかけて物語は思わぬ展開に。序盤の甘々な展開から、中盤から後半にかけては甘酸っぱさは残しつつも一転シリアスに。めくるめく展開に普通であれば振り落とされてしまいそうなのですが、そうはならずに普通についていけるし、むしろなんだか心地よい。主人公と、主人公の目を通して描かれるヒロインの心情描写が共に上手いのか、ガッツリと物語に入り込んで楽しむことができました。
序盤、中盤、終盤と真実が明らかになるにつれ物語の様相は大きく変わっていくのですが、根底にあるものは不変で、「彼女を救えるのは、彼女の魅力に気づいてあげられるのは自分しかいない」というヒロイズムをくすぐる関係性。ヒロインの志津も、口数が少なく感情の起伏がほとんど見られないとはいえ、その見た目と相まってやたらと儚げに映って魅力的なんですよ。だからそういう感情が余計に掻き立てられると言いますか。
そういえばこれまでほとんど触れていませんでしたが、主人公の哲もいい人感がにじみ出る犬っぽい男の子で、個人的には非常に好きな子です。イメージ的につながるのは、「星くずドロップ」のしの。家政夫なので、家事は得意というお約束的な設定ですが、一方でサッカー少年という意外な一面も持ち合わせています。詰まる所「いい人」で、だからこそヒロインが放っておけず、気が付けば惹かれていくというのにも納得なのです。

外に連れ出そうとする哲。基本的に無気力で眠い感じが志津にはあります。起きたてだからというわけではなく、本当にいつもこのくらいスローでローテンション。
多重人格的な設定を持ち込んでいる上に、男受けしそうなヒロイン、加えて頼りない男の子が主人公と、これまでのデザート(掲載紙)のイメージからはかけ離れているような内容にびっくり。正直男性向けの雑誌で連載されていたとしても違和感ない内容だと思います。アニメ絵っぽい描画に加え、ちょっとオタクっぽいネタも散りばめつつと、デザート読者層とマッチしているのか謎なのですが、評判はどうなのでしょうね。ともあれ非常に好みの物語で、是非ともオススメしたい作品でございます。
【男性へのガイド】
→先ほども書いたように、男性向けの雑誌で連載されていたとしても違和感ない内容かと思います。この手の物語がお好きな方は、
【感想まとめ】
→面白かったです。かなり自分好みの作品で、これは強くオススメしたいところ。
作品DATA
■著者:森野萌
■出版社:講談社
■レーベル:KC デザート
■掲載誌:デザート
■既刊1巻
■試し読み:第1話

俺でも
誰かの助けになれるなら
■わたしはもうずっとずっと 答えをわからないでいる―――。
「丘の上のおばけ屋敷」と噂のある空澤家でワケあって家政夫のバイト中の高校生・美郷哲。ある日、本邸の離れで暮らす謎の少女・空澤志津と出会い、どこか寂しげな笑顔に惹かれていく哲だが、再び会った時の彼女は様子が豹変していて……?
森野萌先生のデザート連載作です。2冊目の単行本になるのですが、近所の書店ではかなり平積みされているようでした。裏表紙側の帯面には、人気作家さん達からの推薦コメントがあるなど、かなりプッシュされている模様です。で、実際に読んでみたのですが、これが面白くて。ではでは、内容をご紹介しましょう。
物語の舞台となるのは、丘の上にある広いお屋敷。この家で家政夫としてバイトをしている高校生の哲は、ある日お屋敷の離れに暮らす、空澤家の娘・志津と出会います。噂では「病気で外に出られない」と聞いていたのですが、その様子を見る限りなんだかとても元気そう。実際彼女は「病気ではない」と言い張ります。彼女に頼まれるようにして、その日以降も度々離れで会うようになった哲と志津。哲は無邪気に笑う彼女に次第に惹かれていくことになります。この気持ちは恋に違いないと思い切って告白をしてみた哲でしたが、翌日になって彼女の様子は一変。生気を失ったかのように静かに佇む彼女は昨日とはまるで別人で、哲のことも覚えていないという。失恋に悲しむものの、どうにも彼女のことが気になる哲は、再び志津に会いに行くのですが……というお話。

離れに暮らす志津は、親ともしばらく会っていないという。久しぶりに人と話したのか、哲と話すとなんだかとても嬉しそうにはしゃぐ。そんな彼女を前に、哲は少々戸惑います。
まるで別人のように豹変して、当人は何も覚えていないということから想像できるのは、「多重人格者」でしょう。序盤は二人の出会いと距離を一気に縮める過程があり、中盤からその路線で進んでいくのですが、後半にかけて物語は思わぬ展開に。序盤の甘々な展開から、中盤から後半にかけては甘酸っぱさは残しつつも一転シリアスに。めくるめく展開に普通であれば振り落とされてしまいそうなのですが、そうはならずに普通についていけるし、むしろなんだか心地よい。主人公と、主人公の目を通して描かれるヒロインの心情描写が共に上手いのか、ガッツリと物語に入り込んで楽しむことができました。
序盤、中盤、終盤と真実が明らかになるにつれ物語の様相は大きく変わっていくのですが、根底にあるものは不変で、「彼女を救えるのは、彼女の魅力に気づいてあげられるのは自分しかいない」というヒロイズムをくすぐる関係性。ヒロインの志津も、口数が少なく感情の起伏がほとんど見られないとはいえ、その見た目と相まってやたらと儚げに映って魅力的なんですよ。だからそういう感情が余計に掻き立てられると言いますか。
そういえばこれまでほとんど触れていませんでしたが、主人公の哲もいい人感がにじみ出る犬っぽい男の子で、個人的には非常に好きな子です。イメージ的につながるのは、「星くずドロップ」のしの。家政夫なので、家事は得意というお約束的な設定ですが、一方でサッカー少年という意外な一面も持ち合わせています。詰まる所「いい人」で、だからこそヒロインが放っておけず、気が付けば惹かれていくというのにも納得なのです。

外に連れ出そうとする哲。基本的に無気力で眠い感じが志津にはあります。起きたてだからというわけではなく、本当にいつもこのくらいスローでローテンション。
多重人格的な設定を持ち込んでいる上に、男受けしそうなヒロイン、加えて頼りない男の子が主人公と、これまでのデザート(掲載紙)のイメージからはかけ離れているような内容にびっくり。正直男性向けの雑誌で連載されていたとしても違和感ない内容だと思います。アニメ絵っぽい描画に加え、ちょっとオタクっぽいネタも散りばめつつと、デザート読者層とマッチしているのか謎なのですが、評判はどうなのでしょうね。ともあれ非常に好みの物語で、是非ともオススメしたい作品でございます。
【男性へのガイド】
→先ほども書いたように、男性向けの雑誌で連載されていたとしても違和感ない内容かと思います。この手の物語がお好きな方は、
【感想まとめ】
→面白かったです。かなり自分好みの作品で、これは強くオススメしたいところ。
作品DATA
■著者:森野萌
■出版社:講談社
■レーベル:KC デザート
■掲載誌:デザート
■既刊1巻
■試し読み:第1話
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