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Tag [オススメ] [名作ライブラリ] 2011.06.20
07210871.jpg山川あいじ「チョコレート・アンダーグラウンド」


そんなの決まってるだろ
自分が正しいと思うことをするんだ



■チョコレート、その他甘い物は一切食べることを禁止!?選挙にて第一党となった〈健全健康党〉に支配された世界で、発令された〈チョコレート禁止法〉。チョコレートを食べるのはもちろん、保持するのも犯罪扱い。配られるお菓子の代用品は、とても食べれたものじゃない。そんなおかしな法律に挑むことにしたハントリーとスマッジャーは、チョコレートを密造し〈地下チョコバー〉を始めることにした!2人の少年が自由、そしてチョコレートを勝ち取るために、立上がる!

 「やじろべえ」(→レビュー)や「友だちの話」(→レビュー)などを描いていらっしゃる、山川あいじ先生の過去作になります。Amazonでの評価も高く、前々から気になっていたので読んだのですが、良かったのでご紹介したいと思います。元々は、イギリスのドラマおよび小説で、日本に持ち込まれアニメ化・コミカライズが行われたという経緯があります。
 
 物語の舞台は、とある時代のとある国。選挙の結果、第一党となった健全健康党は、国民の健全な健康を第一に保つことを目的に、チョコレートをはじめとした一切の甘い物の所持・摂食を禁止してしまいます。チョコレートを食したもの、若しくは保持したものは、チョコレート警察によって逮捕され、再教育施設へと収監されることに。そんなおかしな法律に、戦いを挑むことにしたのが、この物語の主人公・ハントリーとスマッジャー。チョコレートが大好きな2人は、チョコレートを密造し地下チョコバーを始めることに…!そんな勇敢な2人の行動が、やがて大人を巻き込み世の中を変えていく様子を、軽快に描いていきます。


チョコレートアンダーグラウンド
チョコレートを通して「自由」を勝ち取るために、子供達が立上がる。

 
 もう設定だけでワクワクできますよね、これ。大人が選挙に行くのをサボってしまったために、訪れた世の中は、なんとも生きにくい、楽しみのない世界で、そんな世の中を変えるキッカケを作るのは、勇敢な子供達。紹介で出したチョコバーは、自由とチョコレートを勝ち取るためのきっかけに過ぎません。子供だからこそ、より好き嫌いがハッキリしているし、世の中をよりシンプルな目で見ることができ、そしてシンプルに行動することができます。好きな物は好き、おかしいと思ったらおかしいと声に出し、行動に出る。子供が持つ純粋さを、そのまま力強さへと変換し、物語を動かす言動力とするこの物語の造り、素晴らしいです。こういうストレートな物語、アニメだと結構あるような気もするのですが、少女漫画ではあんまり見なかったような。
 
 原作を読んでいるわけでも、アニメーションを見ているわけでもないので、この作品がそれらと比較してどのような物語構成となっているかを語ることはできないのですが、どうもそれぞれ違ったお話となっているようですね。こちらは1巻完結。大きな動きをひとまとまりにしてため、息つく暇なく物語は流れていくのですが、その疾走感が逆に良し。テンポよく場面が切り替わり、確実に物語が進んでいくことを、読みながら体感できるので、一気に読むのをオススメします。この物語のステキなところは、子供だけじゃなくて、理解ある大人がしっかりと協力してくれるってところでしょうか。脇を固めるバビおばさんもルイーズも、ジョン・ブレイズもみんな良いキャラしています。特にブレイズのカッコ良さは異常。私もこんなお兄さんになりたいものです。


【男性へのガイド】
→もちろん大丈夫。少女漫画誌以外で連載されていたとしても、全く違和感ないと思います。
【感想まとめ】
→山川あいじ先生のお話って、ゆるりと流れる印象があったのですが、こちらは軽快なテンポで駆け抜けて違った印象がありました。また絵柄もマッチしていて、物語に入り込みやすかったです。


作品DATA
■著者:山川あいじ/アレックス・シアラー
■出版社:集英社
■レーベル:別冊マガーレットコミックス
■掲載誌:別冊マーガレット
■全1巻
■価格:457円+税


■購入する→Amazon

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Tag [オススメ] [名作ライブラリ] 2010.08.18
07143920.jpg久米田夏緒「NEWSPARADE」


   ええ
好きよ
…大好きよ



■庄司えみ、大学1年生。超絶ビビリ。生まれてこの方、一度も幽霊なんてものはみたことはないが、怖いものは怖い。友達のする怪談、心霊番組、暗闇、何もかもが、自分をおどかし不機嫌にさせる。そんなある日目にした、交通事故のニュース。近所でバスが事故を起こし、乗客一人が死亡、数名が意識不明の重体だという。その翌日、その時に亡くなった女性が、自分の部屋の前の住人だったこと、そしてこのアパートに向かっている途中であったことを、隣人から知らされる。恐怖を感じたえみは、その夜に鳴り響いたチャイムの音に…

 「ボクラノキセキ」(→レビュー)を連載中の久米田夏緒先生の作品。これデビュー単行本なのでしょうか。刊行年は、2005年となっています。物語は、一つの事故のニュースで繋ぐ、ちょっとした出来事たちのお話。3話構成で、一つのシリーズとなっています。物語の発端となるのは、とある大学の近くで起きたバス事故。この事故によって、一人の女性が死亡。その他に、複数人が意識不明という状況になっていました。1話目は、この亡くなった女性が以前住んでいた部屋に入居している、女子大生が主人公。極端にビビリな彼女は、その女性が自分のアパートを目指していたという話を聞いて恐れおののきます。そして、夜中に突然鳴った、玄関チャイムの音に…という、ちょっとホラーチックなお話。続いて2話目は、事故によって幽体離脱状態となった、被害者の高校生二人組のお話。そして3話目は、学校に肝だめしに来た男子大学生が、薄幸の美少女幽霊に遭遇するというお話。ファンタジックな要素を、少女漫画的な日常に落とし込んだ作品となっております。


ニュースパレード
個人的に良かった、「雪街」。「時かけ」などにもあるような、ちょっとSFチックな物語が、大好物なのです。そこにちょっとした青春の心が加われば、もう。


 幽霊が出てきはするのですが、だからといってレーベルにありがちなコメディ方向に走るわけではなく、ごくごく自然な形で物語に入り込んでくるんですよね。それは最初は幽霊だとはわからないようになっているからなのですが、同時にどこかドライな空気感もあり、それがそういった印象を生み出しているようにも思えます。ファンタジックな要素を投入したからといって、何か大きな出来事がおこるわけではなく、日常にちょっとした変化が生まれるという程度。でもそれが結果、センシティブな面をしっかりと描き出すのに一役買っており、これはこれでまた素敵。「時をかける少女」とか、そういう作品がお好きな方は、結構好きなんじゃないかと。
 
 同時収録の読切りですが、一つはSF要素を取り入れた、高校生のお話。そしてもう一つは、現実ベースの中学生の恋愛のお話。どれも高校生・中学生の瑞々しさが感じられる作品です。味気ないといえばそうなのかもしれないのですが、最後に残る希望と、後味の良さが、好きな人には堪らないはず。「ボクラノキセキ」的な大きな話には当然なりませんが、ならないならならないなりの枠で、しっかりとまとめる上手さがあり、満足感は高いものでした。特に、最後のまとめ方が上手い。視点も展開場所もバラバラの各話、謎を残しつつの終了だった1話目を、最後の3話目でしっかりとまとめあげた表題作シリーズ。そして関連性のない読切りの2作品を、ラストのかきおろしで繋げ、単行本としての完成を実現させるという粋な計らい。これは上手いし、面白い。「ボクラノキセキ」の面白さも納得のストーリーでした。


【男性へのガイド】
→好きな人は好きかと。男の子視点の話もあり、読みやすい部分は多いかと思います。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→「ボクラノキセキ」ほどの衝撃はないものの、しっかりと面白いです。満足満足、おすすめです。


作品DATA
■著者:久米田夏緒
■出版社:一迅社
■レーベル:ZERO-SUMコミックス
■掲載誌:WARD
■全1巻
■価格:552円+税


■購入する→Amazonbk1

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Tag [オススメ] [読み切り/短編] [名作ライブラリ] 2010.07.11
07195822.jpg中村明日美子「片恋の日記少女」


見てるだけでは
ものたりないのです
俺は



■読みきり6篇を収録。それでは表題作をご紹介します。
 探しても見つけ難いのに、恋とは突然訪れるものです   
 昨年亡くなった父の部屋で見つけた日記帳に書かれていたのは、あまりにも淡く儚い、一人の少女への想い。電車の中で見かける、勤め先の学校の生徒に、父は恋をしていたのだった。物理の教師で堅物の父からは、想像もできない内容に、その少女に興味を持ったたかしは、ダメ元で日記に書かれていた電車に乗ってみる。みどりの花のピン留めをした、その少女は、偶然にもたかしの目の前に…
 
 父と元・息子、父と娘の友達、姉と偽り男と会う弟…親子兄弟ジェンダーが入り混じった、ヒトとヒトとの多彩な関係性を、おかしくせつなく描いた作品集です。中村明日美子先生といえば、いまや押しも押されぬ人気作家。BL出身で、最近ではエロティクスFやモーニングでも連載をするなど、女性向けだけでなく、男性向け漫画誌にまで進出しておりました。しかし先日、ハードワークが祟ったのか、心身の状態を著しく崩してしまい、しばらくの間活動休止とのこと。復帰が待たれます。この作品は、そんな中村明日美子先生が、白泉社はメロディを中心に描いた物語を中心に収録されたもの。ちょっと変わった組み合わせで送る、なんとも愉快でなんとも切ない物語が展開されていきます。


片恋の日記少女
難しい言葉はあまり使わない。シンプルに、だからこそスッと心に届く。


 ジェンダーが入り交じり、ちょっと変わった組み合わせで物語が展開。表題作は、教員採用試験に落ちた青年と、父親の恋の相手であり教え子である女子高生という組み合わせで送られるお話。その他では、家を出て男から女になった主人公のもとに、ある日父親が訪ねてくるという「父と息子とブリ大根」。彼女にフラれたばかりの男が、大晦日の夜におっちょこちょいで彼氏との待ち合わせに遅れそうな女の子と出会うという「待ち人キタリ」。社会人の主人公が、中学生の娘の同級生で、デートクラブでバイトする少女となぜか夏祭りに行くことになる「娘の年頃の娘」。姉に変装した弟が、出会い系で出会った男とデートをする「とりかへばやで出会いましょう」。保健室のお色気教師と、ガリ勉メガネ男子のちょっとしたかけあいを描いた「原色メガネ男子標本」。
 
 収録作のうち、二つが女装・ないしニューハーフが登場。正統派の男女を描いたのは、「待ち人キタリ」ぐらいでしょうか。けれどもそれが、面白い。「ちょっと変」が、その語りの上手さから、しっかりと現実の中に組み込まれ、中を浮いたような物語になっていない。物語に投入される非現実的要素が、そのまま物語の魅力となって迫ってくるのです。それこそが、中村明日美子先生の真骨頂。そこから描き出す感情は、本当に普遍的で身近で、誰もが持っているようなもの。とりあえず読んでほしいです、はい。
 
 キャラクターがそれぞれ魅力的なのですが、特に男と女という構図で行くとしたら、圧倒的に女性たちが魅力的。物語の視点が、どちらにあるかとか関係なく。みんなどこか傷を心に持っていて、けれどもそれを隠すかのように、つとめて明るく、奔放に振る舞う。そんな彼女たちが、それぞれの作品の魅力を底支えしているように、私には映ります。そしてこの表紙。ええ、きっと色々な想像をしてこの作品を手に取るでしょう。そして読んでわかる、真実。私達もまた、父親やあの青年と同じように、してやられるわけです。そんな遊び心がある表紙も素敵な、「片恋の日記少女」オススメです。 


【男性へのガイド】
→男性視点の物語あり、女性が喜ぶような恋愛一本というわけでもなく、非常によみやすい作品かと。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】
→いつかレビューしなくては、と思っていたのですが、このタイミングでできるとは。全力でオススメでございます。秀逸な読切り集。


■作者他作品レビュー
*新作レビュー* 中村明日美子「曲がり角のボクら」
中村明日美子「ダブルミンツ」

中村明日美子「同級生」


作品DATA
■著者:中村明日美子
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめコミックススペシャル
■掲載誌:メロディ、未発表作品
■全1巻
■価格:619円+税


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Tag [オススメ] [名作ライブラリ] 2010.07.11
07195881.jpg高宮智「フルムーンジョーカー」


だから
伝わってるからわかるじゃなくて
ちゃんと声に出して聞かなきゃ



■雪原睦月は満月学園に通う高校1年生。勉強が苦手で、遅刻の常習犯の睦月が持つのは、「人の心がわかってしまう」という変わった能力。そんな彼女がある日出会ったのは、電車で隣に座った男の子。寝顔のかわいらしさに一目で心奪われた睦月は、その後学校で思わぬ形でその男の子と再会することに。これってもしや運命の出会い…!?いやいや、現実はそう自分に優しく出来ていません。気がつけば、ワケの分からないことに巻き込まれていて…!?

 高宮先生の9冊目の作品。今はなき「ちゅちゅ」での連載作でございます。ヒロインは、ちょっとバカで勉強ができない、残念な女子高生の雪原睦月。先生から怒られてばかりの彼女ですが、ちょっと他の人には無い能力が。それが、「人の心がわかってしまう」というもの。その能力を、彼女は決して好意的に捉えてはいませんでしたが、その能力を持つが故に、とある出来事に巻き込まれることになります。電車で一度隣になり、以来気になっていた生徒会長・望月栄と放課後の校舎内で偶然再会、その時に彼女のその能力が必要になったのです。生徒会長を筆頭に生徒会をあげて取り組んでいたのは、「カード」の回収。心の弱っている者につくというその「カード」は、見かけはただのトランプのジョーカーだけれど、持ち主の精神を崩壊し乗っ取ってしまうという恐ろしいもの。そのカードの持ち主と、カードの在り処を突き止めるのに、睦月のその能力は役に立つのです。


高宮智「フルムーンジョーカー」
猫耳が生えた状況で、「自動コスプレ装置?」という発想。基本的におバカで、緊張感がない。


 表紙にてメインの二人が動物耳(猫耳に見えますが、狼の耳)になっているのは、カードの回収において、特に重要となる者に与えられる道具の副作用みたいなもの。生徒会長の栄は、カードを持ち主から離れさせる「狼の爪」を、睦月には、カードの在り処を突き止める「狼の耳」をそれぞれ持ちます。そんな設定を軸に、傍若無人で素直じゃない会長と、アホで要領の悪い睦月がの凸凹コンビが、学園をところ狭しと駆け回ります。
 
 カードの正体は何なのかなどは一切語られないなど、設定の甘さはご愛嬌。他の作品もそうですが、高宮作品の魅力は、そのキャラクターたちにあります。今回のヒロインは、高宮作品のヒロインの中でも鉄板な、アホ子。ただし気の強さや行動力の高さはそれほどなく、どちらかというと抜けた感じの性格。ゆえに癒し効果はは抜群で、核は同じであるもまた他の作品のヒロインとは違った魅力を見せてくれています。高宮作品のアホ子は、基本的にアホな部分がブラスに働いているから良いですよね。思わぬハプニングを持ち込み、どん底にまで落ち込むレベルにまで思い悩む思考回路を持っていないという。また相手役もまた、鉄板である俺様タイプ。つまり鉄板同士の組み合わせなわけで、どう考えても崩れるなんてありえないってことですよ。
 
 設定は甘めも、ストーリー自体はなかなか。破綻の方向に向かうことはなく、ヒロインの能力を出発点に、まとめもそこに絡めて、ヒロイン自身の成長を描くという、1巻完結のものとしては実にキレイなまとめ方。恋愛は低年齢向けのちゅちゅということで、微笑ましくどちらかというとライトなかけ合いが多め。移籍先でもぜひこのような作風の作品を生み出し続けてほしいものです。
 

【男性へのガイド】
→キャラの可愛さは折り紙付き。ちょっとアホな子がスキな方は、ぜひぜひ。物語の設定は甘めなので、その辺は覚悟の上でお願いします。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→鉄板の組み合わせ。かわいらしさに加え、ストーリー的にもキレイにまとめてあって、読みやすいです。設定が設定だけに、ちょっと物語としては薄めですが、そもそもそこを期待したらいかんわけで。


■作者他作品レビュー
ちゅちゅでの最後の作品を収録した、高宮智ファンには堪らない一冊:高宮智「S×M」
高宮智「ソラオト」
高宮智「わたしのおくすり」
高宮智「今宵音降る空の下」
高宮智「HEAVEN’SWILL」

作品DATA
■著者:高宮智
■出版社:小学館
■レーベル:ちゅちゅコミックス
■掲載誌:ChuChui(年月号~)
■全1巻
■価格:390円+税


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Tag [オススメ] [読み切り/短編] [名作ライブラリ] 2010.06.10
07174370.jpg芦原妃名子「蝶々雲」


あたし達は それぞれが
ずるくて
卑怯で
優しくて
幼かった



■読切り4編を収録。それでは表題作をご紹介。
 瀬戸内に浮かぶ過疎の進んだ小さな島。そこで暮らす、清、完太、ゴマは、同い年の仲良し3人組。そんなある日、東京から転校生がやってくる。色白でかわいらしい女の子・六花。引っ込み思案で、最初はなかなか馴染まなかったものの、いつしか4人は一緒に行動するように。そして絡まる、それぞれの想い。そんな中、六花と完太の想いを目の当たりにした清は…。芦原妃名子のセンシティブワールドが単行本化!!
 
 2連続で芦原先生の読切りをご紹介です。こちら「蝶々雲」は、2006年の12月に初版発行。この時すでに「砂時計」は連載を終えていましたが、作品発表は2002年と、こちらの方が先でした。すでに知っている方もいるかもしれませんが、名作「砂時計」の原型をなったのが、こちらのお話。瀬戸内の小島が舞台の、仲良し4人組の姿を描いたストーリーです。ヒロインは、この島で生まれ育った女の子・清。同じくこの島で生まれ育った男の子・完太とゴマと、3人仲良く過ごしていたところに、ある日東京から女の子がやってきます。色白でかわいらしい、引っ込み思案の女の子・六花。いつしか一緒に過ごすようになった4人でしたが、清には一つ心配が。それが、好きな相手・完太と、六花の関係。時を重ねるごとに、だんだんと距離が近くなっていく二人を見て、清は苛立ちを焦りを感じるようになっていくのでした。


芦原妃名子「蝶々雲」
行き交う、それぞれの想い。誰もが想い通りに生きてはいない。その中で苦しみつつ、自分の行動を考える。


 「砂時計」の原型とはいえ、似ているのは序盤のシチュエーションぐらい。ムラ社会が色濃く残る田舎に、駆け落ち後出戻りの母が、子供を連れて帰郷するという始まり。そんなところに放り込まれる、東京生まれの女の子。地元の仲良し3人組の中にまざり、いつしかそこには恋心が…。「砂時計」は放り込まれる側の杏がヒロインでしたが、こちらは逆にムラ側の人間の視点。ポジションだけ見れば、ヒロインの清は椎香にあたりますが、むしろ似ているのは楢崎歩になります。そこここに、「砂時計」に繋がるエッセンスを見つけることができますが、ストーリーとしてはやっぱり別物になります。そもそも8巻かけてやっと終わった話が、1巻の半分にも満たないページの中に収めることなど到底できるわけがないわけで。時間が一気に飛ぶというところは似ているものの、こちらの方がよりおとぎ話的。ページの制約のせいか、後半は多少の力技はあるものの、ヒロインの心情はリアルなラインをしっかりキープし、物語としてもしっかりと形を保ったまま完結に向かいます。この辺の魅せ方の上手さはやっぱり唸ってしまいます。砂時計のような大叙事詩を期待するのは酷ですが、そうでないのであれば、「砂時計」既読の方でも十分に楽しめる内容になっていると思います。
 
 残りは中学生がヒロインのラブストーリーを3本。中学生ということで、ちょいと幼いかと思いきや、全然普通の恋物語を展開。恋に恋する中学1年生のヒロインが、憧れの男子と付き合ってみてびっくり、想い描いてた姿とのギャップに苦しむという「中学1ねんせい」。発育の良い体のため、小さい頃から痴漢に苦しんできたヒロインが、とあることがきっかけでクラスの男子と痴漢退治に乗り出す「ちゅうがく2年生」。中学に赴任してきた新任教師が、受け持ったクラスのとある女子生徒にやたら邪見にされ…という「ちゅうがく3年生」。どれも学校を舞台にした、恋愛青春ストーリー。中学生ということで、妙に捻った話はなく、どれも素直に楽しむことができる物語となっています。芦原先生の作品に共通して言えることなのですが、どれも相手役の男の子がどこにでもいそうな普通の男子なんですよね。見ためやステータスで魅力を付与しない以上、内面の魅力を限られたページ数の中で描かなくてはいけないのですが、芦原先生は見事にそれをやってのけます。どこにでもいそうな男の子が、かっこいい。そんなところも見所な「蝶々雲」。おすすめです。


【男性へのガイド】
→いやー、恋愛テーマですけど、全部良いんじゃないかなぁ。男の子の視点というのも少なからずありますし、読みやすい部類に入ると思います。恋愛どうでもいいとかいうなら別ですが。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→面白いです。表題作もさることながら、読切りも良いんだよなぁ。こういう好クオリティの作品をコンスタントに生み出せる芦原先生はホントすごいです。


■作者他作品レビュー
芦原妃名子「Piece」
芦原妃名子「ユビキリ」


作品DATA
■著者:芦原妃名子
■出版社:小学館
■レーベル:ベツコミフラワーコミックス
■掲載誌:ベツコミ
■全1巻
■価格:390円+税


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かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。
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