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Tag [オススメ] [読み切り/短編] [名作ライブラリ] 2010.06.10
07198635.jpg芦原妃名子コレクション「ユビキリ」(1) 新装版


なんで
こんなにすんなり入ってくるんだろう
コイツ



■読切り3編を収録。とりあえず表題作をご紹介。
 おせっかいでうざそうなヤツなのに、なんでこんなに気になるんだろう…。父は仕事、母は遊び歩いて、家に帰ってもいつも一人の麻子。心の中にひっそりと、しかし確実に横たわる寂寞と虚脱感に、どうにかなってしまいそうな彼女の心を、本郷は一筋の光をもたらした。彼と会うたびに生きる喜びを感じていたある日、麻子は彼の隠された過去を知ってしまい…!?
 
 「砂時計」の芦原妃名子先生の読切り作品集です。初版が2002年ですから、もう8年も前の作品になるんですね。当然のことながら、「砂時計」「Piece」(→レビュー)以前の作品となります。確か数年前に、新装版が出たんでしたっけ?それでは少しずつ、内容をご紹介します。表題作は、心に寂寞感・虚脱感を抱えているヒロインが、おせっかいな男の子に出会うことから希望を見出していくというストーリー。2話目「カッコウの娘」は、美人でありながら歯に衣着せぬ物言いで何かと損をしがちな女子高生が、ある日レンタルビデオ店で出会った既婚の男性に恋をしてしまうというお話。そして3話目「60days」は、友達付き合いを避けてきた女の子が、転校を目前にひょんなことから体育祭の実行委員になって…というストーリー。どれも女子高生がお話の中心と、ベツコミらしいラインナップとなっています。


芦原妃名子「ユビキリ」
おせっかいを魅力に変える。こんなことさらっと言ってみたいです。


 「ユビキリ」は、恋愛ものと見せかけて、プラスαでもうひとつ大きなテーマを混ぜ込んできています。年齢の割にちょいと重すぎる気もしますが、こういう過去はベツコミでなくとも、少女漫画ではよくある不幸。それをいかに無駄遣いせずに燃料とするかなのですが、さすがその辺は上手いです。ちなみにこの物語中、故人の部屋に入り目的のものを探索し、その人の明かされていなかった想いを明らかにしていくというくだりがあるのですが、シチュエーション的に「Piece」によく似ています。今日この後にレビューする予定の「蝶々雲」は、「砂時計」の元となった作品なのですが、こちらもまた「Piece」の原型となった作品と言えるかもしれません。さすがに生き死になんて青臭いテーマにはなりませんが、存在理由・生き方というテーマに置き換え可能。「Piece」既読の方であれば、また違った味わいがあるかもしれません。
 
 2話目「カッコウの娘」は、社会人と高校生の恋という禁断のテーマ。年の差恋愛ものはそこまで得意でないので、恋愛方面ではあまり気持ちが動かなかったのですが、これもまた最後にひと捻り入れてあり、ちょっと変わった後味を残して物語を終えます。物語として、第三者の存在意義が明確でないまま進んでいくのですが、最後に意味が明かされるというね。単なる噛ませ犬にしないあたりが素晴らしい。
 
 個人的に一番好きなのは、3話目の「60days」。読書と勉強が好きで、人付き合いなんてしたくない。そんなヒロインが、転校を目の前に体育祭の実行委員会になってしまうというお話。いざ関わってみると、意外と楽しい。そして芽生える恋心。しかしタイムリミットは刻一刻と…という、ある意味王道の学園恋愛もの。重厚なストーリーや捻りのある構成だけでなく、こうした真っ直ぐな青春モノも芦原先生は描けるのですよ。素直に楽しめる良作です。


【男性へのガイド】
→1話目はちょいとイタイ、2話目は恋愛に隔たりすぎてる、3話目は少女漫画すぎる…とどれも少しずつズレている気がするのですが、作品自体の出来の良さでカバー。少女漫画アレルギーがないのであれば、一読をオススメします。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→どれも高水準の読切りたち。しかも同じような話でなく、しっかりと色の違いを見せてくるという。読切り集としてのコストパフォーマンスは高いです。


作品DATA
■著者:芦原妃名子
■出版社:小学館
■レーベル:ベツコミフラワーコミックス
■掲載誌:ベツコミ
■全1巻
■価格:390円+税


■購入する→Amazon bk1

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Tag [名作ライブラリ] 2010.03.10
32119910.jpg雨隠ギド「ファンタズム」


大事なものを一つ選んだんだ
それについてくる幸せも不幸せも
受けとめる覚悟があったから……



■人の“悪意”が、化け物のように映る目を持つ、ちょっと難しい女の子・あかり。誰にも自分のことなんて分からない。そうやって気持ちに壁を作っていたけれど、育ての祖父が亡くなり、兄と暮らすことになって、少しずつ変化が訪れた。超天然の兄の優しさ、新しい友達たちとの出会い、そして悪意を食べる化け物・からすとの遭遇…あかりの目には、今まで映ることのなかった新たな色に包まれて…!?

 「まぼろしにふれてよ」(→レビュー)の雨隠ギド先生の初連載作品でございます。こちらもファンタジー作品。ヒロインは、人の“悪意”が化け物の姿に見えてしまう眼の持つ女の子、あかり。そのため人の多い場所にいるのが苦手な彼女は、親元を離れ人の少ない田舎で、祖父と一緒に暮らしていました。しかしその祖父が他界。比較的都会に暮らす兄の元に引き取られることになります。新しい暮らしに不安を覚えるあかりでしたが、超天然であかりを溺愛する兄をはじめ、クラスメイトも積極的に仲良くしてきてくれたため、その不安もいつしか小さくなっていきます。そんな中あかりは街で、とんでもない「悪意の固まり」のような存在に出会います。それが、黒服を纏った“からす”という青年。人間のような姿をしているものの、その存在感は人間とは程遠く、曰く「悪意を食べて生きている」らしい。悪意を食べられた人間は、悪意の度合いによっては意識を失い、果ては死に絶えます。そのことを知ったあかりは、悪意と向き合う同じ存在として、からすに対し、そして自分の能力と、自分の中に眠る悪意に対し、恐怖と不安を覚えるようになっていきます。


ファンタズム1
悪意の見え方は「ホムンクルス」っぽいイメージ。これはどちらかというとライトな方。

 
 記事タイトルが男性を煽るようなものになってるんですが、なんとなく女性客の方が多いと思われるウチでこんなタイトルにする意味ってあるのかなっていう。けどこの作品の魅力を考えた時に、やっぱりあかりしかないわけですよ。そしてその長い黒髪が素敵なんです。私は別に黒髪ロングとか基本どうでもいい人なんですが(水星さんに怒られそう…)、あかりは別。彼女のこの長い髪には、意味があるのです。
 あかりには人の悪意が見える、しかも化け物のような形で映るのですが、その対象は他人だけでなく、自分も含まれます。頑に悪意を見ることを拒んできたあかりにとって、自分の悪意が見えるなんてのは、それこそ他人の悪意を見る以上に恐ろしいことなわけですよ。結果、少しでも自分の姿を見たくない=鏡を見ないという行動を取るようになります。洗顔や身だしなみを整える時などは鏡を見ますが、短時間でも非常に大きなストレスがかかっている状態。したがって、長時間鏡の前にいなくてはならない美容院などは、到底通うなどできないのでした。そのために、なるべく切らない方向=黒髪のロングという結果に。あかりのその髪は、言ってみれば彼女の不安や恐怖の象徴とも言えるんですよね。そして同時に、悪意に必死に抗う姿の象徴でもあるわけで、なんとも美しく映るのですよ。

 ちなみに彼女、「けいおん!」の平沢唯と同じく、黒ストッキングを履いているのですが、とにかく黒で固めるその気質が好き。名前の「あかり」とは正反対の方向に進んでいます。表紙をはじめ、意識的に黒多くなるようにしてますよね。“からす”も真っ黒だし。二人が進んだ行く末の違いは、すでに名前に表れていたのかも。


ファンタズム3
「まぼろしにふれてよ」に通じる優しさや絆みたいなものは、この作品からも強く感じられます。このお兄ちゃんがいたからこそ、あかりは前を向こうとしていけたわけで、ほんとお兄ちゃん様々でございます。


  ストーリーは、彼女の悪意に対する向き合い方の変化を描こうとするもの。今まで正面から向き合わず逃げてばかりいたあかりは、同じ能力の持ち主である“からす”との出会いによって、己の力と悪意としっかり向き合って行こうとします。周囲の人間との関係と、自分の悪意への恐怖から生み出されるのその変化は、とにかく純粋で必死で、中学生という年齢設定がびしっとハマります。小さな容量のなかで必死に考え解決しようとし、ときにキャパオーバーして泣き出してしまうその様子もまたかわいらしい。普段はとっても無邪気ですし、特別な力は持っていながらも、やっぱり中学生なんですよね。
 また単純な正義感や倫理観よりも、己の悪意への恐怖という感情が、結果として向き合う方向へ持っていかせているのも、個人的には好きですね。押し付けがましくないといか、あくまで小さな世界で回そうという姿勢が、世界観を壊すことなく物語を成立させています。

 「まぼろしにふれてよ」が非常に分かりやすい、明快なファンタジーになっているのに対し、こちらはレーベルのデビュー作にありがちな、ややわかりにくいファンタジー作品となっています。説明不足というかやや自己完結の匂いが強い、そういう作品、結構ありません?説明を省くと、それだけ己の表現したいことを描きやすくなるのですが、同時に入り口は狭くなってしまいます。「ファンタズム」から「まぼろしにふれてよ」でここまでシフトチェンジできるってのは、なかなかすごいことのようにも思えるのですが。無論わかりにくいってだけで、この作品が面白くないってわけではないです。好きな人は好きでしょうし、なによりあかりが可愛いので、わからなくともすべてチャラになる勢い。ただちょっとお薦めしにくいってだけで。
 

【男性へのガイド】
→女性向けレーベルですが、男女関係なく読みやすいと思いますよ。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→あかりかわいいよあかり。オススメはちょっとしにくいかも。説明があまりされないのでわかりにくいんですよね。ともあれ表紙にピンと来たなら、買って損はなしだと思います。


作品DATA
■著者:雨隠ギド
■出版社:新書館
■レーベル:ウィングスコミックス
■掲載誌:Wings('07年8月号~'08年7月号)
■全1巻
■価格:530円+税

■購入する→Amazonbk1

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Tag [オススメ] [名作ライブラリ] 2010.02.17
07186335.jpg津田雅美「eensy-weensyモンスター」(1)


温厚なのがとりえだと思っていたのに
自分の中にこんな毒々モンスターがいたなんて
がっかり



■成績・容姿ともに平凡だけど、温厚なのが取り柄の五月七花。超秀才・超美人の友達二人に囲まれ守られるように、平穏な高校生活を過ごしている。そしてこれから先も、こんな毎日が続いていく…はずだったのに!同じクラスの王子こと、常磐葉月の言動を見ていると、悪意の塊のような感情が、毒虫のように噴出!最初は我慢していたものの、ある時ついに葉月に悪態をついてしまい…。最悪の出会いを果たした二人の行く末はいかに!?

 津田雅美先生の人気作「彼氏彼女の事情」に続く連載作となったこちら。長編となった「カレカノ」とは違い、こちらは全2巻と比較的短めにまとまった作品となっております。ヒロインは、成績も容姿もごくごく平凡な高校生・五月七花。これといった特徴はないけれど、温厚なのが取り柄。小さい体も相まって、個性派超人が揃う友達たちから可愛がられながら、平穏な毎日を送っていました。しかしある日そんな毎日に激震が。同じクラスの「王子」こと、常磐葉月の言動がどうにも気に食わないのです。イケメン,成績優秀,運動神経抜群…それだけだったら別にいい、けれどそのナルシストっぷりがどうにもイヤ!彼と対面しようものなら、心の奥底から悪意の塊のような毒虫が飛び出してきて、とんでもない悪態をついてしまうのでした。温厚なのが取り柄のはずだったのに…自分の中に眠る、思わぬ存在に悩む七花と、初めて言われた暴言に自分を見つめ直す葉月。出会いは最悪だった二人。けれどお互いにまだ歩み寄る余地はありそうですが…


eensey-weenseyモンスター
歩み寄るも、もともとすれ違いがちなお互いの想い。いや、気がつかないだけで、私たちも案外こういった状況を抱えているのかもしれない。


 全2巻12話収録のこのお話は、二人の出会いからはじまり、ぐるっと1年間回った所でお終い。雑誌の月号に合わせて展開されるので、その歩みは常に一定で、かつまとまりもよく読みやすくなっています。最初はお互いに、自分のなかのダメな部分を発見し、見つめ悩んでいくことがメインで描かれ、2巻以降はお互いに歩み寄って、他人との関わりあいの中でいかに自分というものを形成していくかがメインとなっていきます。当然恋愛展開もありますが、それだけが見所というわけではありません。これは津田雅美作品に共通して言えることですが、どのキャラもラブストーリーはあったとしても決して恋愛本位になることはなく、それを変化材料として自分を見つめ、新たに自分というものを形成していく、いい意味での自分本位さみたいなものがあるように思います。その試行錯誤の様子が、どちらも不器用なキャラということもあり、滑稽でかわいらしく、そしてどうしても同調してしまいます。
 
 タイトルにもなっているように、この作品の真の主人公は、七花の心の中に潜む毒虫・モンスターだったりします。これは他人に対して抱く、抑えようのない嫌な気持ちを表現したものであると思うのですが、この表現は上手いなぁ、と。本当はこういった感情って、もっとおどろおどろしいものだと思うのですが、それらをかわいらしくデフォルメすることによって、自己満足の退屈なものから、読み応えのある物語へと昇華させているように思います。前作の「カレカノ」で回収しきれなかったように映る、「ブラック有馬」との対峙の仕方を、この作品にてしっかり描き上げることができているのではないでしょうか。根本は全然違うものだとは思いますが、その置かれている状況はなんとなく被って見えるのです。
 
 この作品の好きな所は、何といっても「王子」の葉月くん。物語当初はナルシスト全開でイタイ…そしてそれに気づき改心してからの、不器用すぎるあがきもイタイ…そしてそして七花を意識するようになってからの空回り感もイタイ…とにかく痛いんですよ!この子!最初は到底感情移入できないような勘違いラインでのイタさを発揮し、物語が進むに連れて、恋に悩み自分のダメさに苦しむ、感情移入せざるを得ないようなラインでのイタさを発揮するというお得感。スペックの高さに勘違いし、その後自分の経験のなさに絶望するその様が、どうしようもなく好きだったりします。そういえばそんな彼の状態を「男度」というもので作中では表していますが、これ結構現実でも意識してたりします。しかしなぜ「男度」を上げる方法だけ書いてないんだ!津田先生!


【男性へのガイド】
→「カレカノ」と同程度には読みやすいと思います。有馬くんよりも、葉月のほうがイタい分個人的には好きなんですが。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→1年ひと回りでしっかりまとまっております。話は大きく広がりませんが、小さいなりの良さをしっかりと発揮しており、ポテンシャルは十二分に引き出しているな、という印象。


■作者他作品レビュー
*新作レビュー*津田雅美「ちょっと江戸まで」
「変わらない」ことの良さ 《続刊レビュー》津田雅美「ちょっと江戸まで」2巻


作品DATA
■著者:津田雅美
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:LaLa(平成18年12月号~平成19年11月号)
■全2巻
■価格:各390円+税

■購入する→Amazonbk1

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Tag [名作ライブラリ] 2010.02.17
07179095.jpg渡辺あゆ「キミがスキ」(1)


大丈夫
いつか ふりかえっても
痛くない 想い出に変わる
忘れられる



■中3の受験生・亜希は、同じバスケ部仲間の間瀬をずっと想っている。好きで好きで、ずっと隣にいた3年間。これから先も、ずっと間瀬と一緒にいたい。いつか伝えたい、けれど伝える勇気がない…。そんなタイミングを逸したまま迎えた、最後の冬、亜希は違う中学の男子・光一から告白される。勇気を出して好きだと伝えてもらったことが嬉しくて、一度だけ彼とデートをすることになったのだけど…!?

 渡辺あゆ先生が別冊フレンドで連載していた作品で、先生にとっては初の複数巻となったタイトル。渡辺先生を一気にレギュラー定着させた作品と言えるかもしれません。内容は、バスケ部を舞台に、二人の男の子の間で揺れる女の子の気持ちを描いた恋物語。中学の時からずっと、同じ部活の間瀬に想いを寄せるヒロインの亜希は、想いを伝えることができないまま悩んでいたある日、違う中学のバスケ部でエースの光一から告白をされます。勇気を持って素直に思いを伝えてくれたことが嬉しかった彼女は、彼の頼み通り1度だけ会うことを了承。休日にデートに出かけます。最初はお互い緊張していたものの、それなりに会話もでき、気がつけばお別れの時間…というところで、亜希は大切にしている髪ゴム(間瀬からのプレゼント)がないことに気がつきます。そんな彼女の様子を見て、懸命に髪ゴムを探す光一でしたが、見つけたところにトラックの積荷が落ちてきて下敷きに。入院を余儀なくされてしまいます。後日、そのケガの影響でスポーツ推薦の話がつぶれてしまったことを聞いた亜希は、罪悪感で一杯に。その間に間瀬から告白を受けるも、後ろめたい気持ちがある彼女は、その告白を断ってしまいます。そして迎えた高校の入学式、そこには亜希と間瀬、そして光一の姿があり…という流れ。


キミがスキ
稀代のいいヤツ・光一くん。いや、もっと色々怒ってもいいと思うのよ?ヒロインよりもよっぽどしんどい目にあってるんですから。


 罪悪感から、ずっと想ってきた相手ではなく、告白された相手の気持ちを優先して行動。しかしそう簡単に思いを断ち切れるわけもなく…というストーリーなのですが、こうして自分の気持ちを騙しつつ、状況判断により頭で考えたこと優先で行動するというのは、結構ありがち。こと人間関係においては、やけに責任を負いたがる時期じゃないですか、この頃って。ましてやケガさせて進路を断ってしまっていますからね、なかなかヘビーな重りでございます。なんとなくこれだけ見ると、ドロドロしたような暗いお話なのかな、と思われるかもしれませんが、そこまで重苦しい雰囲気はありません。はじまりはこんなですが、基本的に登場人物たちはみな全力でもがき、青春汁を振り絞りまくっているので、見ためは思いのほか爽やか。バスケ部という運動部要素も、その重苦しさ解消に一役買っているのかもしれません。
 
 最初の枷は重いものの、展開されるストーリーは「10代の恋の物語」という説明文が示す通り、大げさな方向には進んで行きません。描かれることも、ヒロインが自分の気持ちに正直になれるのか、という1点のみですので、コンパクトにまとまって読みやすくなっています。読み手によっては、ちょっとまとまりすぎじゃない?と思う方もいるかもしれませんが、そうなった所以は光一が真面目すぎたからかなぁ、と。もっと歪んだ性格だったらもうひと盛り上がりしたかもしれません。ただそれだと爽やかでないので、これでいいんじゃないでしょうか。スタンダードに切なく純粋な心を描き出した、青春恋愛ものの良作だと思います。


【男性へのガイド】
→女性向けではありますが、男二人の気持ちは結構理解できる部分があるかも。スタンダードな恋愛ものを読みたいという方は。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→コンパクトにまとまった読みやすい作品。絵柄はちょいと安定しませんが、それもまたご愛嬌。


■作者他作品レビュー
*新作レビュー*渡辺あゆ「L♥DK」


作品DATA
■著者:渡辺あゆ
■出版社:講談社
■レーベル:KC別フレ
■掲載誌:別冊フレンド
■全3巻
■価格:400円+税

■購入する→Amazonbk1

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Tag [オススメ] [読み切り/短編] [名作ライブラリ] 2010.02.16
07189917.jpgアルコ「Loveletter from…」


告ってフラレて話せなくなるなら
告白なんかしないよ
友達のままでいいよ



■読切り3編を収録。それでは表題作をご紹介しましょう。
 大学に入り、憧れの一人暮らしを始めた江梨子。しかしその部屋・その生活は、理想のオシャレな毎日とは程遠い、しょっぱいものだった。早く引っ越そう!なんて思っていたある日、前の住人宛と思しき手紙が、郵便受けに入っているのを発見する。どうやらそれは、前の住人・永瀬将彦の遠恋していた恋人からのものらしい。そして部屋では、同じ差出人からの、彼宛の手紙を大量に発見。その手紙の数々を読んでいるうちに、江梨子はだんだんと「永瀬」の事が気になりだして…!?
 
 アルコ先生の短編集だぞー!ということで、こちらは2007年の作品になります。「好き」という気持ちをギュッと詰め込んだ作品が、3編収録されています。まずは先に紹介をした表題作の「Loveletter from」。ある日突然幼なじみの事を好きだと自覚してしまう女の子を描いた「ジオラマ」。そして、それぞれ異なった恋愛状況にいる3人の主人公たちが、クリスマスの夜にちょっとした“前進”を見せる「月は夢を見るか」。どれも恋愛をテーマとした作品で、決して甘々ではないものの、乙女たちの純だけど決して簡単じゃない心を、時に幻想的に、時にかわいらしく描き出していきます。どれもガチンコ勝負のストーリーで、ネタ的な要素は少なめとなっています。まぁなんとなく表紙見ればそういった感じは伝わると思いますが。


lovelettter from
特にお気に入りだったのは、2話目。恋心に気づき、慌てふためくヒロインの様子がとてもかわいらしかったです。


 3話目は3人の思いと情景が交錯するような、少々変わった作りの作品となっています。こういう描き方もできるのかと驚いたのですが、そのぶんモノローグは少なめだったような。前回「終電車」のレビューの時に書いたかと思うのですが、アルコ先生の作品の魅力の一つが、そのモノローグの使い方。長ったらしく詩的なモノローグでないのに、妙に心に残るんですよね。わかりやすい言葉たちが、細切れにされて各所に配置されているのですが、難しい形容の仕方をしないからこそそれが逆にリアルさを出しているようにも見えますし、その配置の仕方が、同時に浮き立った少女達の心理状態を表しているように見せているのかな、と。実際恋に揺れる心なんて、そんなに整然としているものではないと思うんですよね。
 
 1話目はなんともシネマチックなお話で、そういえば岩井俊二の「ラブレター」とかもこんな感じだったっけな、なんて思い出しつつ物語を楽しむことができました…。それに対し2話目は身近なラインを攻めたもので、非常にウブでかわいらしく、同時に甘い物語に。また3話目は、3人のヒロインをクロスさせるという特殊な構成と、どれも先生の持ち味を発揮しつつも、それぞれ違った形にしてきており、終始新鮮な気持ちで楽しむことができます。話の長さもそれなりに確保されているので、物語にしっかり波も作られてますし、正直これをお薦めしない要素が見つからない。これはお買い得だと思います。


【男性へのガイド】
→恋愛一辺倒なので、そういうのに興味がない人はダメかもしれませんが、登場する男の子は結構隙のあるタイプが多いので、男性にも親しみやすくあるかもしれません。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→面白かったです。アルコ先生の短編はスゴいと改めて認識。いや、長編も面白いのだけど、そのギャップがまた素敵です。


■作者他作品レビュー
アルコ「超立!!桃の木高校」


作品DATA
■著者:アルコ
■出版社:集英社
■レーベル:マーガレットコミックス
■掲載誌:別冊マーガレット
■全1巻
■価格:390円+税

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小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
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いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
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レビュー
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