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Tag [続刊レビュー] 2015.01.30
1106462177.jpg西炯子「姉の結婚」(8)



「あの人と一緒に生きていてよかった」と
お互い思って人生を終えられるような
そんなつながりをつくりあげていくことを
「結婚」というのだと思います




■8巻発売、完結しました。
 離婚が成立した真木誠から、正式に結婚を申し込まれた岩谷ヨリ。だが、離島での開業準備を進める真木に、一度はあきらめたはずのドイツ留学の話が舞い込んでくる。再びのすれ違いと別れを経て、ヨリが最後に選んだものとは…!?大人の純愛ストーリー、感動の完結巻!!

~完結です~
 8巻で完結しました。無事…とはいかず、最後の最後までドラマが待っていましたが、何とか終幕です。正直8巻の展開は全く想像していなかったので、最後まで手に汗握ると言いますか、まんまとしてやられた感がありました。まさかこんなにド直球な物語で来るなんて、思いもしませんもの。


~二人を隔てる最後の壁~
 flowersでの前作「娚の一生」では、最後に大災害が起きることによって二人の間に危機が訪れました。この抵抗不可能な圧倒的な力によって翻弄されるという展開は、個人的に望んでいた形でなかったので、どこか消化不良的にもやもやとしたものがずっと残っていました。そして本作、同じように突拍子もないラストを迎えると思いきや、二人の行く手を阻んだのは、

aneno.jpg
一人の女だったという。


 しかもその手口が実に古典的で、一昔前の韓流ドラマや昼ドラを彷彿とさせるものだったのですから、驚くほかありませんでした。これまで真木の周りにあったしがらみは、この比でなく複雑で規模の大きなものだったのですが、一人の情念によってここまで追い詰められるというのは、ある意味とてもリアルであり、女性の執念の恐ろしさみたいなものを強く感じさせられます。怖い怖い…。かくして物語はクライマックスを迎えるわけですが、これによって、「娚の一生」で抱えていたモヤモヤも合わせて供養されたような感覚があり、個人的には大満足の幕切れでした。


~ラストなんかベタ王道すぎて…!~
 ラストなんかもう、ベタ中のベタ、王道中の王道すぎてよだれ出るほどでした(笑)。たとえば最後の間などは特に素敵で、お見合いに向かう直前での一幕…


姉の結婚8-1
ふと引いた引き出しの中に、指輪の入った袋を見つける


 この何かを暗示するような意味深なコマ割り。セリフで散々真木のことを愛しているってことは語りつくされていたのですが、こうしてビシっと現物を見せられると、より納得感があるといいますか。彼女の心情をよく描いている感があります。

 また最後に助け船を出す天野さん、カッコいいです。正直もう登場しないと思っていて、「人物紹介になんでいるんだろう?」なんて考えていたのですが、ちゃんと意味があったってことですね。すみません、てか天野って名前もこれ見て思い出したってくらいなんですが。

 これで面白いのが、「女性の知り合いは裏切る」ってネタの後に、「男性の知り合いは助ける」ってネタになっているってこと。考えすぎ、単なる偶然なのかもしれませんが、ともあれ捨てる神あれば拾う神あり。本当に仲を深めるには、一緒にラブホテルに泊まるくらいしないといけないのかもしれないですね。(結論)


■関連記事
1巻レビュー→自分が幸せになれないと決め込んでいるあなたへ:西炯子「姉の結婚」1巻
2巻レビュー→“なりたい自分”と“なりたくない自分”:西炯子「姉の結婚」2巻
3巻レビュー→“どうすべきか”と“どうしたいか”:西炯子「姉の結婚」4巻
5巻レビュー→唯一傷つけ合える関係:西炯子「姉の結婚」5巻
作者他作品レビュー→笑いと涙の芸道一直線コメディ!:西炯子「兄さんと僕」
崖っぷち28歳とロリふわ22歳の凸凹婦警コンビが行く!:西炯子「ふわふわポリス」
オトナの情事×コドモの事情:西炯子「恋と軍艦」1巻
「娚の一生」2巻
恥ずかしい青春全開の弓道部ライフ:西炯子「ひらひらひゅ~ん」

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Tag [続刊レビュー] 2014.12.15
1106472587.jpgジョージ朝倉「夫婦サファリ」2)



あああ…ホルモンなの
これがホルモンの力なの…




■2巻発売しています。
「コミュ障だしやり取りとか気が重いし…。仕事、忙しいし…。」
星野すみれ子(35)独身。職業・少女漫画家。同期漫画家・ジョーの再婚に毒を吐き、「結婚できないんじゃなくてしないんでしょ?」みたいなムダなフォローにうんざりし、ひとりランド通いにドハマりしてる。そんなすみれ子が、初婚活パーティーでイケメンの医者(29)からデートに誘われて…。一方、ジョー・日歌夫妻の結婚生活は新たな局面を迎えようとしていた!!


~新キャラのご登場~
 2巻の発売です。今年発売された新作の中でも特にお気に入りで面白いと思っているのですが、例のムック本ではかすりともせずで、ちょっと寂しかった覚えがあります。自分の感覚がずれてきているのでしょうか。。。こんなにジョージ朝倉らしさを感じられる作品もないと思うんですけどねぇ。と、ぼやきはこのくらいにして2巻の感想に移りましょう。

 今回は表紙に描かれている方が新キャラとして登場します。星野すみれ子という、35才独身(しかも処女)の売れっ子漫画家さん。結婚もせず(できず?)、これまで孤独に戦ってきました。そんな彼女がハマっているのが、某夢の国。金にものを言わせて、VIPに通い詰めております。本編ではそんな彼女がする恋について描かれるのですが、その過程で同期であるジョーに再会し、色々心に波風を立てるという。この二人、単に同期というわけではなく、過去にこんな出来事が…


夫婦サファリ2-1
酔ってチューされる


 彼女にとっては数少ない男性とのふれあいであり、さらにこの後結構しょっぱい展開になるという苦い経験の源なわけですよ。上書き保存できるエピソードもなく、彼女の心の中にはこれがヘンにこびりついて残るわけですね。で、そんな彼はモデルと結婚して、さらにそのあと年下の編集さん(巨乳)と結婚していて、心をくささないわけがない。夢の国で再会しようもんなら、もう地獄なわけですよ。そんな辛いシチュエーションを目いっぱい楽しむことができる序盤となってございます。

 すみれ子さんは典型的な貧乳キャラなのですが、ジョージ朝倉作品の過去作品を振り返ると、割と貧乳キャラがメインでして、それに付随するエピソードもちらほら。そんでもって、ライバルじゃないですけど、対比的に巨乳キャラが描かれることが度々ありました。なんていうか、ジョージ朝倉作品のヒロインは貧乳力に長けていて、そういう意味では日歌ちゃんよりもすみれ子さんの方が、ヒロイン的なメンタリティに溢れているんじゃないかとふと思ったりしたのでした。さてこれから、どう絡んでくるのか、注目です。



~ジョーはダメな男だと段々と……~
 さて、先ほどジョーが酔ってすみれ子さんにキスしたシーンが描かれていたわけですが、今回は日歌ちゃんとジョーの過去の絡みも描かれます。いや、なんか色々と深い過去があるんですね。話が進むごとに、徐々に真相が掘り下げられてくるのですが、パクられて脅されて…ってところに至るには、色々な事情があったのだと。で、日歌ちゃんにジョーと添い遂げることを決意させた決定打となったのが、このエピソード…


夫婦サファリ2-2
酔って本音ポロリ(次の日覚えてないパターン)


 あっ…こいつダメな男だ。お酒の力を借りて本音を言って、その気にさせて次の日本人は全く覚えていないっていうアレ。いやー、私も大人になって、お酒の力を借りざるを得ない気持ちは非常にわかるんですが、この常套手段になってる感じがなんとも身につまされると言いますか、救いようがないと言いますか。罪な男ですよ、この人は。振り回され系のお話かと思っていたのですが、ああこの人は巻き込まれるべくして振り回されているのだなと、非常に腑に落ちた一節でした。


~日歌ちゃんが天使じゃなくなってきたんですが…~
 さて、1巻では圧倒的天使だった日歌ちゃんですが、妻になり、さらには母になろうとしていくにつれて、天使感が一気に薄れていくという現象が。2巻では終始不機嫌で、ジョーは責められっぱなしでございます。私も結婚したらこの落差を味わうことになるのだろうか。女性は変わらずにはいられず、一方男性は変わることもなく、その姿がイライラになってくという。


夫婦サファリ2-3
こういう瞬間が…


 ある意味リアルな結婚模様なのかもしれませんが、私はまだ結婚していないので、その答え合わせはまだまだ先。ふと未来に、この日歌ちゃんの姿を相手に重ねる日が来るのでしょうか。3巻の発売が楽しみです。


■関連記事
ワケあり男女の暴走めおと道!:ジョージ朝倉「夫婦サファリ」1巻

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Tag [続刊レビュー] 2014.11.12
1106451769.jpgやまもり三香「ひるなかの流星」(11)



なんでこんなに
胸がざわざわするんだろ




■11巻発売しました。
 獅子尾からの突然の告白に戸惑うすずめは、その言葉を信じず、馬村との距離を縮めようとします。運動会になり、リレーで直接対決をすることになった獅子尾と馬村。すずめが応援するのはどっち!?


~獅子尾の悪あがき~
 11巻です。どうも次が最終巻になるみたいなのですが、最後の追い込み的に状況が慌ただしく動いています。ようやっと付き合って、これから少しずつ愛を育んでいこうとしているすずめと馬村ですが、付き合いたてのドキドキ感はさほど感じられず、むしろ不穏な動きを見せる獅子尾に気を揉むという可哀想な状況です。運動会(高校だと体育祭とか言いませんでしたっけ)も神の見えざる手が機能しまくりでして、おあつらえ向きにリレーで馬村と獅子尾がぶつかるという。

 ここはなんとか馬村が勝ちをおさめるのですが、その後すずめが怪我をして保健室で二人きりというまたまたおあつらえ向きなシチュエーション。獅子尾はここぞとばかりに、自分の想いを伝えようとします。が…


ひるなか11-2
すずめの抵抗


 ナイスセーブ!すずめさん、言わせないという素晴らしい守備を見せました。二人で必死に守ります。二度に渡って頑張った二人ですが、それでも拭いきれない不安感。なんというか、これらが取りようによってはフラグに見えて仕方がないんですよね。本当に安定していれば意にも介さないわけですが、そうじゃない様子がありありと見て取れるわけで、もうひと押しぐらいされたら崩れそうっていう。



~12巻はどんな着地を見せるんでしょう~
 さて、12巻はどういうルートを経て着地するのでしょうか。少なくとも確定であろうイベントは、獅子尾はどんな形であれ自分の想いを伝えるであろうということ。というか、これが一番の山場になるんだと思うのですが、一度想いを伝えることを阻んでいるという過程を考えると、嫌な予感は募るという(笑)

 ここで再度跳ね返せれば馬村と幸せに。ここで揺らいだりすると、大人な馬村(というかすずめのこと最優先の馬村)は、自ら身を引いちゃうんじゃないかなぁ、とも。これまでの姿を見ていると、獅子尾よりも俄然馬村の方が大人というか、分を弁えている感じがあるんですよね。その分勝負弱い感が、、、ってここまでの文章振り返って、スポーツの話でもしているのかっていう。いやでもそのくらい、手に汗握る展開だという。

 馬村エンドというルートを考えると、「獅子尾への想い(思い出的なものも含め)を断ち切れるか」と「真に馬村のことを好きになるか」が条件になると思うのですが、これをクリアするイベントってどんなのがあるのでしょうか。馬村との関係は時間をかければかけるほど強固なものになっていくとは思うのですが、すぐにバシっと想いが強くなるものかと言われるとよくわからないですし。獅子尾との気持ちを断ち切ろうにも、これだけ周りでうろちょろされたらなかなか傷は癒えないですから、これまたどうなんでしょうという。かと言って獅子尾ってのもなぁ、、、という。

 なんだか不安だらけのカップルですが、このシーンにすべてを懸けたいところです。


ひるなか11-1
私をはなさないでね


 このまますずめを離すことなく、幸せな結末と相成ることを願っています。決戦の地は沖縄、12巻は春の手前の2月末に発売予定です。 



【関連記事】
作品紹介→みんな自分だけの流れ星を探してる。:やまもり三香「ひるなかの流星」1巻
2巻レビュー→片想いが重なる高一の夏:やまもり三香「ひるなかの流星」2巻
3巻レビュー→馬村くんが不憫すぎる件:やまもり三香「ひるなかの流星」3巻
4巻レビュー→元カノのフォローパスが決勝点に?:やまもり三香「ひるなかの流星」4巻
5巻レビュー→ひとつの恋の成就とひとつの恋の終わり:やまもり三香「ひるなかの流星」5巻
6巻レビュー→馬村の成長記ではないのですが…:やまもり三香「ひるなかの流星」6巻
7巻レビュー→苦い思い出の“お泊まり”:やまもり三香「ひるなかの流星」7巻
8巻レビュー→大チャンスをモノに出来るか。:やまもり三香「ひるなかの流星」8巻
9巻レビュー→好きだからだろ!:やまもり三香「ひるなかの流星」9巻
関連作品紹介→「シュガーズ」
10巻レビュー→僕は君のもの:やまもり三香「ひるなかの流星」10巻


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Tag [続刊レビュー] 2014.09.11
1106422127.jpg祀木円「トウキョウ・D」(2)<完> (KCx(ITAN))



探しものの中に詰まっているのは
悲しみではないかもしれないな




■2巻発売、完結しました。
 都内に潜伏する戦闘用兵器ロボット“ドール“を回収する任務に就いた、警視庁“D班"所属の篠。最初に造られた特別なドール・アゲハと思いがけなく出会った彼は、ドールと人間のお互いが納得できる道を模索し始めるのだが!?シマ模様がプリティーな警備用ロボットSHIMAと、人間型ロボット・クロハに守られながら、厳しいD班で職務遂行!!


~完結しました~
 予告通り、2巻で完結しましたよ。1巻終わりの時点でさほど物語に進捗がなかったので、本当に2巻で終われるのかと疑問に思っていたのですが、意外にも読み終わっての感想は、腑に落ちるものでした。詰め込むこともなく、また投げっぱなしにすることもなく、誰もが幸せになる100点の結末ではなかったかもしれませんが、少しの苦みを残しつつも納得できるラストで、良かったと思います。もともと物語の器がかなり大きく見えていたのですが、フィールドは東京都内に限られていたし、政治的な部分での大いなる意思は不変で、詰まる所当事者たちの納得感さえ担保できれば普通に物語は終わりを迎えられる状況であった、ということなのでしょう。

 なんて、フォーカスはアゲハと篠に当たっていたので、少しは気にかけられつつも、たとえばクロハの自意識や、結木の過去との折り合いについてはやや投げられた感もあるのですが。

 しかし最後まで緩かったですねー。それが良いところ。緊迫のラストシーンでは、一刻一秒を争う中、老人の昔語りが始まってしまったり、そんなの知らんとばかりに庭でくつろぐシマがいたり。。。


~とにかくシマが可愛いのです~
 さてさて、2巻も相変わらずシマが可愛かったです。もう欲しい。シマが欲しい。本当にロボットかと思うぐらい感情豊かで、自分の欲望に素直なんですよね。


トウキョウD2-11
BB弾に夢中なシマさん



トウキョウD2-2
イルミネーションを見たがるシマさん



トウキョウD2-3
勝手にお菓子を買うシマさん



トウキョウD2-4
新幹線に興奮するシマさん



 いやー、かわいいなぁ。でもよくよく見るとこれ、子供と基本一緒っていう。シマは無理だけど、子供ならなんとかなるでしょうか。。。がんばれ、自分。

 そういえば「しゅんにゃん」ではここまで感情豊かなロボットたちは登場しなかったのですよね。コンセプトというかベースは似つつも、作品の表情は全く別物で、こういうロボットたちもまた可愛らしいですね。疲れた時にふと読み返したい、癒し系な作品でございました。


【関連エントリ】
ロボット達がカワイイゆるシリアスな近未来SF:祀木円「トウキョウ・D」1巻

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Tag [続刊レビュー] 2014.09.08
1106429394.jpg咲坂伊緒「アオハライド 」(11)



でも
俺が見つけた




■11巻発売しました。
 中学時代のつらい記憶を、みんなと塗り替えることのできた洸。洸の気持ちは次の段階へ―――。双葉は冬馬との関係を作っていこうと努力するが、洸とある行動に出てしまう。波乱広がる修学旅行―――。


~メディアミックスが止まらないよ~
 10巻のレビュー出来ていなかったのでしばらく間が空いてしまったのですが、メディアミックスが続々。アニメ化は以前から予告されていましたが、絶賛放送中。更には実写映画化も決定ですよ。ヒロインは本田翼さんで、洸はあの東出昌大さんがやるということで、キャスティングからも気合が伺えます。本田翼ちゃん好きなので嬉しいのですが、ドラマや映画でヒット作に恵まれていない感もあるのがどうか。
 全然関係ないですが、竹野内豊さん主演の映画「ニシノユキヒコの恋と冒険」で本田翼ちゃんが演じた面倒くさい年下の女の子はかなり良かったです。


~今回はちょいと双葉にイライラ~
 さて、それでは本編の話をしましょう。10巻に引き続いて、舞台は修学旅行です。洸が自分の気持ちに素直になり猛チャージをかけてくるわけですが、のっけから二人抜け出し洸が育った町へ行くという出来事が。誘う洸も洸ですが、ついていく双葉も双葉でして、これまで散々洸にダメ出ししてきたのですが、ここはさすがに双葉が悪いかなぁ、と。ヒロイン目線で見ると別に弁解すればよさそうな程度の出来事ではあるのですが、冬馬側からしたらこれたまったもんじゃないですよね。ただでさえ意識しているライバルに修学旅行という特別なイベントで連れ出されるって、自分がやられたとしたらもう不信感と嫉妬に狂いそうになると思います(笑)


アオハライド11-3
そんな中で、内心穏やかじゃないでしょうが、一見落ち着いて見せている冬馬くんはなかなかの度量の持ち主だぞ、と改めて思うわけですよ。

 双葉は本心と良識と、本当に五分五分の所で揺れています。ただ頭で正しい行動がわかっていつつも、気持ちに逆らえないって、もう半ば答えが出ているようなものだと思うんですけどね。そしてふと冷静になって、


アオハライド11-2
自分はクズだ


 なんて落ち込むという。ただ個人的には、こうして自省しても次の行動につながらないと意味がないと思うのです。こうして「自分はダメだ。自分はダメだ。」と言いつつそこからの脱却を図らない人間が、現実の世界には何と多いことか。だから双葉には、対話の場を持って謝るだけではなくて、何かその次の行動を起こしてほしいところです。そしてその行動は、早ければ早いほうが良い。11巻では結局そこまで行かずに終わってしまいましたが、12巻、何かしらのアプローチをしてくれることを期待しています。


~流れは完全に洸の方ですけどね~
 なんて、11巻の流れを見ていると完全に洸に分があるような感じですよね。まず無意識でのじゃれ合いとか。バスのこれ、とかもう。。。


アオハライド11-1
あざとすぎる


 咲坂伊緒先生が描くヒロインは総じてあざといのですが、これもまたあざとい。こんなん高校生がやられたら下半身が穏やかじゃないですよ、もう。女性って結構好きだった相手を匂いで記憶している人が多い印象で、元カレがつけていた香水の香りがしてドキッとしたなんて話をたまに聞いたりします。別に香水じゃなくともいいのですが、とにかく無意識に匂い嗅いで笑顔になってるとか、半ば「好き」って言っちゃってるようなもんじゃないですか、と。あと髪を食べるという無防備さね。警戒していませんよっていう最大限のアピールです。あー、やられたい(願望)

 あと決定的だったのは、行方がわからなくなっている双葉を、冬馬ではなく洸が見つけるところ。ついつい所在がわからなくなりがちな少女マンガのヒロインを見つけるのは、昔からヒーローだって相場が決まってるわけですよ。この時に洸が言い放った「でも 俺が見つけた」は、ヒロインの進む先を決定づけるこの上ないセリフであったように思えます。立場的には平行線ですが、状況的にはだいぶ洸に傾きつつあるような現状。冬馬が何巻もかけて必死に築き上げてきた高さに、ヒーローはちょいと1巻くらい本気を出したら到達できちゃっていて、少女マンガという世界の厳しさを改めて思い知らされたのでした。


【関連エントリ】
作品紹介→君にまた会えたこの奇跡を、新たな軌跡に変えて:咲坂伊緒「アオハライド」1巻
2巻レビュー→変わった君にドキッとした:咲坂伊緒「アオハライド」2巻
3巻レビュー→こんなの絶対好きになる:咲坂伊緒「アオハライド」3巻
4巻レビュー→過去も含めて今の君:咲坂伊緒「アオハライド」4巻
5巻レビュー→付き合うまであと1ミリのドキドキ感:咲坂伊緒「アオハライド」5巻
6巻レビュー→一番の盛り上がりと一番のモヤモヤ:咲坂伊緒「アオハライド」6巻
7巻レビュー→恋することはいつも難しい:咲坂伊緒「アオハライド」7巻
8巻レビュー→「好き」と言える勇気があるから前に進める:咲坂伊緒「アオハライド」8巻
9巻レビュー→冬だってのに春めく心:咲坂伊緒「アオハライド」9巻
作者他作品紹介→今 伝えたい この想い:咲坂伊緒「ストロボ・エッジ」10巻

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