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Tag [新作レビュー] [オススメ] [読み切り/短編] 2012.08.02
1106166236.jpg香魚子「もう卵は殺さない」


もう一回
温めてみるよ



■読切り4編を収録。
 ホワイトデーのちいさな期待と哀しみと…。
 幽霊になった、だいっきらいなあの子は…。
 雪の季節に孤高の天才少年と暮らした3週間…。
 夢を追ってたあの頃の私へ。描かれなかった「主人公」の鎮魂歌。
 物語のワンダーランドへようこそ。香魚子の誘う4ストーリーズ。

 なぜだかコメントなどで本作のレビューのリクエストが多かったので、早めにお届けです(もはや発売日から半年遅れもザラ)。「シトラス」(→レビュー)や「隣の彼方」(→レビュー)などの香魚子先生の読切り集。オリジナル連載が読みたい所なのですが、実績があるのはむしろ読切り。これまでの読切り集も独特の話運びで非常に面白いものとなっていたのですが、本作も非常に面白かったです!
 
 それでは1話ずつ語って行きましょう。ずっと想いを寄せる相手に、さりげなくチョコをあげたバレンタイン。少しの期待をこめてホワイトデーを迎えた女の子の姿を描く「きょうはなんの日」は、4編の中でも最も短い作品。普段は気丈に振る舞っているけれど、いざ恋愛となると強気で行けない女の子の繊細な心情を描き出したシンプルな一作。


もう卵は殺さない1
台詞もあまり多くない。表情と間、情景で物語を作る。


 短い中に、酸いも甘いも落とし込んだキレイな構成には脱帽でございます。誰もが抱えるような想いをベースに仕上げているので、余計な台詞や描写を用いずにも物語が説明できるのでしょうか。青春の甘酸っぱさとほろ苦さを、短い中でしっかりと味わう事ができるお話でした。
 
 2話目「茉莉花にくちなし」は、ヒロインが幽霊というちょっとファンタジックなお話。キレイで人気者だったヒロインの幽霊姿を認識出来るのは、彼女とは正反対の地味な女の子。自分とは正反対の人間の心の内を幽霊になって覗き、物語が転がって行くという、割と定番のお話。オーソドックスで手堅い内容でしっかりと面白いのですが、他の印象度の強さからすると個人的にはちょっと弱めな印象だったかも。死んでいながらも、最も前向きというか、生きる力が強いヒロインの姿は本当にカッコ良かったです。
 
 3話目「亘理くんとふれたなら」は、天才少年とひょんなことから二人暮らしをすることになるというお話。いわゆるひとつ屋根の下の同居ものになるのですが、4編の中ではこちらが一番少女マンガ色の強い作品という印象。気難しい少年相手にだんだんと興味惹かれ、彼の心ない言動に傷つき、またその奥に見える優しさに恋に落ちるという、まさにど定番の展開。終始優しさに包まれた、王道の物語に心が温かくなりました。
 
 そしてお待ちかねの4話は表題にもなっている「もう卵は殺さない」。この物語でいう“卵”は、物語の主人公のこと。


もう卵は殺さない
自分が主人公であると自覚している、メタ的な要素を落とし込んだお話。


 主人公斡旋所にいるのは、まだ生み出されていない物語の主人公達が集う場所。物語のヒロインは、そんな主人公斡旋所に長年居続ける一人の少女。言ってみれば彼女は“売れ残り”なわけですが、そんな彼女にも物語はあり、そしてそれを想ってくれる人もいるという、そんなお話。ある意味漫画家の贖罪的な側面も感じられる作品は、最終的に作者の視点へと移り完結。今まで読んだ事のないような内容のお話だったので、ずっと目を奪われっぱなしでした。最後まで主人公サイドで展開しても面白かったと想うのですが、最後にあの視点にならないと、本当に作者さんが描きたかったものにはならなかったんだろうな、とも思うわけで。


【男性へのガイド】
→香魚子先生の作品は男女どちらも楽しめると思います。本作もまた、色々な方に読んで頂きたい一作です。
【感想まとめ】
→面白かったです。敢えて超絶プッシュするまでもなく、高め安定。もちろんオススメ。



作品DATA
■著者:香魚子
■出版社:集英社
■レーベル:別冊マーガレットコミックス
■掲載誌:別冊マーガレット
■全1巻
■価格:400円+税


■購入する→Amazon

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Tag [新作レビュー] [オススメ] [読み切り/短編] 2012.07.11
1106166232.jpg如月園「BIRTHDAY SONGS」


誕生日は
ハッピーが基本だろ?



■一年でいちばん大切な日、そんな日だからあなたとずっと一緒にいたい   
 誕生日はいつも雨…。
 誕生日が4年に1回…。
 誕生日に家出…。
 誕生日に親友の彼氏とデート…。
 誕生日を幸せを祈る、オムニバスストーリー。
 
 如月園先生の2作目の読切り集です。デビュー単行本となった「恋する惑星」(→レビュー)が非常に良かったので、2冊目を心待ちにしていたのですがついに登場しました。2冊目は、誕生日がテーマの読切り集。「恋する惑星」の際も誕生日がテーマの作品がありましたが、今回は全て誕生日にまつわるお話となっています。
 
 それでは少しずつ物語の内容をご紹介しましょう。タイトルも添えてお届けしたいのですが、固定タイトルで「Birthday Songs」となっているので、順番ごとに。まずは親友の彼氏を好きになってしまい、誕生日にワガママを言って彼とデートをさせてもらえることになる1話目。病弱なクラスメイトのに、自分の最期の誕生日を祝ってと告白されることから始まる2話目。3話目は、卒業式と誕生日、留年してしまったがために好きな人を見送ることになる男の子のお話。長い間付き合っているのに、未だ誕生日を教えてくれない彼氏との関係を描いた4話目。特別な日はいつも晴れという晴れ女なヒロインが、誕生日はいつも雨という先生を好きになる5話目。怪我で部活をやめた男の子が、そんな彼に憧れる後輩から告白される6話目。せっかくの誕生日に両親が喧嘩をしてヒロインが家出をする7話目。どれも誕生日のネタを絡めつつ、幸せな誕生日を描き出します。


birthday songs1
誕生日と一口に言っても事情は様々。素直に誕生日を祝えない者もいれば、幸せ一杯に誕生日を迎える者も。共通しているのは、誕生日を祝ってくれる誰かがそこにいるということ。それだけでもう幸せですよね。


 1冊に実に7話が収録されているということで、1話あたりの分量は少なめ。そのためゆっくりと間を取りつつ深みを生み出すような作りのお話はありません。落とし込む要素は絞り込んで1つ2つ、そして主人公ないし相手役の感情も割とシンプル。物語も捻りを利かせたものではなく、せいぜい肝を隠して最後に出すという程度。こうやって書くとなんだか単調・単純で退屈なお話を想起されるかもしれませんが、ファンシーな絵柄で真っ直ぐにシンプルに描かれる幸せなお話は、この上なく心を温めてくれるもので。無駄に凝っていない分、スッと心に沁みるものがあります。ちょっと疲れたときとかに読むと、より良いかもしませんね。
 
 個人的にお気に入りだったのは、彼氏が誕生日を教えてくれない事に憂う4話目。これ少しでも話すと全編ネタバレみたいな感じになりそうなのでなかなか言えないのですが(笑)全体的にふんわり明るめの印象が強いお話が多い中、サクラがモチーフとなり、かつ登場人物の双方がそれなりにドライということで、他とは違った澄んだ印象でとても新鮮でした。誕生日を教えない秘密、なぜか自分はファンタジックな方向で考えていたので、割としっかりとした背景があり、その上で無駄に感動的に仕立てない着地点の地に足に着いている感が素敵でした。
 
 あとは部活ネタを絡めた6話目なんかは、逆に如月園先生の描く女の子ってこんな感じという勝手なイメージをまさに形にしたようなヒロインでこれもまた印象に残りました…


birthday songs2
捻りなんて一切なくド直球に青春と恋愛を描いているのですが、シンプルさがいいんですって。これに限らず女の子がみんな元気で前向き。だからこそ、それぞれの話も明るい方向へと自然と流れて行くのかな、と思いました。
 

 また最後にオマケ的にマンガが収録されているのですが、余りに不意打ちだったのでめちゃくちゃウルっと来てしまいました。これはずるい。こういうの弱いんですって。こちらは買ってからのお楽しみ。って今回のレビュー、ホント何にも内容に具体的に触れてないですね。でも出しすぎちゃうともったいないので、難しい所。何はともあれオススメですので、是非ご賞味あれ。


【男性へのガイド】
→女の子女の子したお話が多いので、男性に勧めるのはなかなか…。
【感想まとめ】
→ちょっとシンプルすぎる印象もありましたが、1話あたりのページ数を考慮すると致し方ないところ。シンプルに、そしてふんわり優しくハッピーに描き出される物語は、読んでいてとっても元気になれます。この歳になると甘さが辛いところですが、まだ美味しいと思える時期に楽しんでおきたいという(笑)


作品DATA
■著者:如月園
■出版社:集英社
■レーベル:マーガレットコミックス
■掲載誌:マーガレット他
■全1巻
■価格:400円+税


■購入する→Amazon

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Tag [新作レビュー] [読み切り/短編] 2012.06.24
1106142810.jpg有永イネ「さらば、やさしいゆうづる」


ねぇ
今日からいい日になるんだよ



■小川洋子先生が描きおろし原作をつとめる「最果てアーケード」(→レビュー)で話題を集めている有永イネ先生のデビュー短編集となります。こちらはITANでの掲載作品。読切ということで、恒例のあらまし紹介はカットしております。ご了承をば。

 収録されているのは4編。どれも少しファンタジックな要素を落とし込んだお話になっています。それではタイトルと共に、少しずつ内容をご紹介しましょう。まずは「ひとつめは木曜になく」。高校生の男の子二人が描かれるのですが、彼らは木曜日限定で「一つ目」のお化けのようなものが見える体質の持ち主。見ためもグロテスクなそれは、人々のネガティブ(憂鬱)な気持ちに呼応して現れるという性質を持っており、そのことがより彼らを悩ませるのですが…というお話。人々のネガティブな感情が見えてしまい、それに対し自分達がどう対峙していくべきかということを考える内容なのですが、最後のまとめ方が意外&秀逸。雨に例えちゃったりするのは安直すぎる気もしないでもないですが、やや難解というかクセのある内容である分、バランスが取れて思いのほか爽やかな読後感です。

 2話目は表題作である「さらば、やさしいゆうづる」。個人的にはこれが一番のお気に入りでした。祖母に育てられたためかちょっと常識はずれな所があり、それにコンプレックスを抱いている女子大生が、ある日「自分の欲しい物」が出てくるという箱をプレゼントされる話。鬱鬱とした雰囲気で進んでいく物語の背景には当然のことながら重たいお話が隠れているわけで。ヒロイン視点で見ればしっかり、そして感動的に完結するこのお話も、今なお箱から折り鶴が出てくる幼なじみのお兄ちゃん視点で見ると、決して完結しているとは思えず。特に物語のタイトルに「夕鶴」が含まれている所とか、あれこれと考えを巡らさせてくれます。色々な楽しみ方のあるお話でした。


さらばやさしいゆうづる
「さらば、やさしいゆうづる」より。このお話に限らず、台詞なしのコマ多め。“間”をしっかりと取ったり、敢えて台詞なしにすることで、物語にメリハリと味わい深さが。この辺もまた新人っぽくないというかなんというか。


 3話目は「なき顔の君へ」。コンプレックスの塊のような双子の姉が、「弟の顔がなくなってほしい」と七夕にお願いしたところ、本当に弟の顔が見えなくなってしまったというお話。恵まれた隣の人を羨み、差し延べられる優しさに怒りを覚え、“持たない”自分を悲しみ諦める負のスパイラルに陥るヒロイン。そんな彼女が、とあることをきっかけに立ち直る過程(というか瞬間)を描く感動作。これも1話目、2話目と同じく自分のコンプレックスが軸になっていて、それにどう対峙するかという方向のお話かと思います。表現の仕方は違えど、根底は同じメッセージ・テーマという所を、「引き出しが少ない」と捉えるか「多彩」と捉えるかは読み手次第でしょうか。ここはもう完全に好みの問題ですので。

 そして4話目はガラリと雰囲気を変えてコメディベースのお話。若くして事故で亡くなった主人公が、なぜか心霊現象を意図的に起こすという会社に雇われて幽霊として仕事をするというお話。すごいバカなノリで、こんな話も描けるのかと感心でした。もちろん最後は感動もありです。
 
 こういう雰囲気の作品好きな人多いですよね。同じITAN発の新人さんというと田中相先生がいますが、あちらがより透明感があるというか、より淡いカラーでの作品作りという印象なのに対し、こちらは重厚感とか歪さを残しつつの印象が強いです。
 

【男性へのガイド】
→男女関係なくこういうお話好きな人は一定数いるはずでして。
【感想まとめ】
→「最果てアーケード」は原作付き、こちらはオリジナルとはいえ短編集ということで、未だ作者さんの作品を掴み切れていないのですが、とにもかくにも興味を惹かれる先生の一人です。オリジナル長編読んでみたいなぁ。


作品DATA
■著者:有永イネ
■出版社:講談社
■レーベル:ITAN
■掲載誌:ITAN
■全1巻
■価格:590円+税


■購入する→Amazon

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Tag [新作レビュー] [オススメ] [読み切り/短編] 2012.06.17
1106155281.jpgねむようこ「午前3時の不協和音」


そんな明日は
ちょっといいよね



■人気シリーズのスピンオフ作品集が大登場!
 鬼営業の輪島に訪れた恋の予感…。
 堂本と真野の別れ話の顛末…。
 宮下に未だ未練残るアキホ…。
 結婚について考えさせられる瀧…。
 ももことたまこ、ふたりの“今”…。
 みんなは知らない、それぞれの日常がここに!
 
 「午前3時の危険地帯」(→レビュー)、「午前3時の無法地帯」(→レビュー)のスピンオフ作品がこの度発売されました。シリーズ通算8冊目ですか、ついこの間鮮烈デビューしたばかりという印象だったのですが、今やすっかり実績のある看板漫画家さんですね。スピンオフのタイトルは「不協和音」。デザイン事務所の面々にスポットを当て、1話読切りで進んでいく様子は、それぞれの個性と噛み合なさとも相まって「不協和音」という言葉が実に相応しい内容となっています。スポットが当てられるのは、冒頭にも登場した脇役の面々。時系列は、全てがシリーズ完結後というわけではなく、シリーズ中のものもあったり。
 
 シリーズ完結後のスピンオフとかその後を描いた物語って、あまり買うことないのですが、本作はなんとなく手に取ってみた結果、買って大正解でした。すごく面白かったです。たまこがヒロインの「危険地帯」がややスロースタートで煮え切らないことが多く、若干不満というか、不完全燃焼感を抱えていた所に、1話完結でその度にスパっと答えめいたものを導いてくれるこの気持ち良さたるや。ねむようこ先生、連載ももちろん面白いのですが、なんせ読切りが素晴らしいのですよ。


午前3時の不協和音
ももことたまこのその後のお話は幸せそのもの。もちろん悩みがないわけではないですが、基本幸せモードで、にやにやしてきます。


 どのお話も違ったテイストでそれぞれ面白かったのですが、特にお気に入りだったのは、宮下の元カノのアキホのその後を描いた「empty heart」、そして瀧が結婚について考えさせられる「ウェディングマーチ」でしょうか。
 
 「empty heart」は、宮下に振られて以降、自分自身を見つめ「見ためだけよくて空っぽ」というコンプレックスをより強めた所アキホがいる所がスタート。「かわいいね」と寄ってきては「かわいいだけだね」と離れて行く。そんな彼女に一筋の希望を与えるのが、デザイン事務所の田辺くんのちょっとしたマイブーム。


午前3時の不協和音2
田辺くんとアキホ、見ためは全く正反対。けれども柔和なイメージの田辺くんの空気は、ややきつめのアキホとはバランスが取れていて、ある意味好印象ですらあります。

 
 このお話、“空っぽな私”というものを否定しないで、むしろ受け入れるという形を取っているのですが、それがものすごく新鮮で、同時に切なくて。受け入れることはできても、手放しでそれができるかというとそうではないはずで、きっとそこには少しの諦めと悲しみが隠されているはず。希望に溢れる終わりに見せて、その実ちょっと苦みを含んだその着地。苦みが含まれているからこそ、あそこまでファンシーなモチーフを持ってきたんだろうな、と。ってネタバレをするまいとだいぶ抽象的な表現になってしまいましたが、とにかくこれがすごく良かった。希望と絶望を少しずつ味わうことの出来る、なんとも味わい深いお話となっていました。

 「ウェディングマーチ」もちょっと苦みを含んだオトナなお話。こちらはちょっとSFというか、ファンタジックな要素を取り入れた物語になっています。唯一そういった要素を落とし込んでいる分、特に目立つというのもあるのですが、シリアスパートとコミカルパートの出し入れが絶妙で、なんか最後めっちゃ良い話に思えてしまうのがくやしいというか(笑)
 
 本編を読んでいる方で、かつ現在進行形で恋愛をしている方はむしろ、真野ちゃんと堂本の「大人の事情」や「きのうと今日とそれから」の方が好きかもしれません。登場するフレーズ一つ一つが、どれも温度が通っているというか、実際の恋愛でも思えることだったりするので。え、輪島さんの話題が出てない?いいよ、あの人は放っといた方がきっと輝くんだから。てかちょっと幸せそうな感じになりそうで羨ましかったです、はい。


【男性へのガイド】
→男性メインの物語もあり、割と男女どちらも楽しめるないようになっているんじゃないかと思います。なんてそもそもシリーズ既読の人じゃないと買わないでしょうし、その辺を考慮する必要はないのか。
【感想まとめ】
→基本的にはシリーズ既読者向け。多分みんな満足しているんじゃなかろうか。色々な感情を楽しむことの出来る素敵な作品でした。


■作者他作品レビュー
「パンドラ」
「ペンとチョコレート」
「東京無印女子物語」
「少年少女」
「とりあえず地球が滅びる前に」


作品DATA
■著者:ねむようこ
■出版社:祥伝社
■レーベル:フィールコミックス
■掲載誌:フィールヤング
■全1巻
■価格:933円+税


■購入する→Amazon


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Tag [新作レビュー] [オススメ] [読み切り/短編] 2012.04.05
1106132932.jpgあきづき空太「ヴァーリアの花婿」


想いが日々伝わるように
幸せを2人築いていく



■読切り4編を収録。それでは表題作をご紹介です。
 許嫁だったジルが行方知らずになり、その弟・ルセルの許嫁になったヴァーリア。納得がいかないヴァーリアは、ルセルと共にジルを捜すため旅に出る…!いつも冷静で感情を表に出さないルセルと、ルセルに対してなかなか素直になれないヴァーリアの二人を待っていたのは…!?
 
 「赤髪の白雪姫」(→レビュー)のあきづき空太先生の読切り集でございます。「赤髪の白雪姫」の7巻も同時発売で、あきづき先生ファンにとってはたまらない月となったのではないでしょうか。収録されている読切りは全部で4編、全て異世界を舞台にファンタジー要素を落とし込んだお話が展開されています。それでは先にご紹介した表題作以外の作品を少しずつかいつまんでご紹介しましょう。
 
 やがて龍となり空へと還っていくとされる龍の子・キトと、そんな彼に寄り添い育ってきた巫女のシュエンが迎えた“運命の日”を描いた「龍の守唄」。人里離れた雪深い土地に暮らすアルザがある日拾ったのは、見覚えのない一人の少女で…という「銀世界の証明」。村を支える神木を守る少年が、ある日ご神木から現れた神様と触れあうようになり…という「おとぎばなしの筆」。


ヴァーリアの花婿
「銀世界の証明」より。不器用な男と、一本筋の通った意思のあるヒロイン。このお話に限らず、多くのお話にこれが当てはまる気が。だから二人だけでも充分面白いという。


 あきづき先生の作品は、異世界ベースの「赤髪の白雪姫」に、現実ベースの「青春攻略本」(→レビュー)と2作品を知っている程度なのですが、本作に収録されている作品については全て「赤髪〜」寄りの作品という印象です。ファンタジックな要素に加えてRPGの世界を彷彿とさせる世界観ということもあるのですが、何より特別な立場にいる男女にスコープを当ててほぼその二人だけで物語を展開、そして完結させるあたりなど、受ける印象が似ているな、と。あとヒロインが聡明そうであるところなども白雪っぽいというか、そもそもあきづき先生の描く女性は押し並べて魅力的。
 
 台詞なし顔アップの一コマだけでページとして充分映えるってのはなかなかに凄いことだと思います。別に描きこんでいるわけでもないのに、伝わるこの魅力。いやーツボですわ。個人的に一番お気に入りの話は、「銀世界の証明」。明るく前向きなヒロインに、ぶっきらぼうだけどその実ヒロインのことをすごく気にしている相手役の組み合わせがとにかくニヤニヤしまくりで。ベタと言えばベタなラストなのですが、こういうキャラクターだからこそベタが効くというか。また恋愛以外の要素が落とし込まれている作品が多い中、恋愛一本で清々しく描き切った「ヴァーリアの花嫁」も素敵でした。


【男性へのガイド】
→あきづき作品は男性もお好きな方それなりにいるかと。腐っぽさもあまりないですし、これは良い少女漫画。
【感想まとめ】
→あきづき先生の作品やっぱり好きです。あきづき先生らしさを感じつつ、新鮮さももちろんあり、ファンとしてとても満足度の高い読切り集となっていました。オススメです。



作品DATA
■著者:あきづき空太
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:LaLa
■全1巻
■価格:400円+税


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レビュー
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トーチソング・エコロジー
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BEARBEAR
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レビュー
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