
立ったかね?
■甘酸っぱい、ちょっとHなマンガあります!
オトナのフェティシズムを堪能できるなんとも淫微で爽やかな「墨の香り」。山奥にある大学の男子学生達の哀愁漂う毎日を描いた「学生の生涯」。別冊ヤングサンデー掲載の幻の二次性徴コミック「ちるちる!」。日々の生活の中に潜む笑いを描いた、抱腹絶倒の「ひとりで生きるモン!」その他、名手・西炯子の数々の短編を収録したこんな単行本出ましたけど、見る?
「娚の一生」(→レビュー)などで有名な西炯子先生の作品集。小学館の各紙で発表した作品を、一つにまとめたごった煮作品集となっています。その内容は、flowersをメインにした読切りや4コマをはじめ、ヤングサンデーに掲載されていた4コマシリーズまで、様々。どっしりとした主軸がないからこそ、逆にガラパゴスで面白く、タイトルがこんな感じになってしまったのも納得というところです。それでは、自分が気に入った作品を少しづつご紹介していきましょう。
まずは山奥にある大学、その名も山奥大学(そのまんま)の学生達の生活を描いた4コマ「学生の生涯」。凛花に連載されていたようで、結構最近の作品かと思われます。テンションは低めで、日常ベースのシュール作品。ちょくちょく間を用いたギャグというか、ネタを作中に仕込むのが上手いな、なんて思っていたのですが、笑いをメインにしても俄然面白いというから侮れません。ブラックも含みつつ、淡々と日常と非日常を行き交う、ネタの連続が面白いです。個人的には、応援部が学生服を着ているのを見て、「女子がセーラー服着る部とかあったらいいのにな」と呟くネタ。いや、わかる、わかりますよ、それ、と(笑)
4コマということでは、ヤングサンデーで連載されていた変わり種も。小学校高学年の男女が繰り広げる、ちょっとエロい第二次性徴コミックです。博識が高じて、性知識も豊富になったけれど、いかんせん小学生の男子というあきみくんと、そんなの飛び越えてえげつない下ネタを繰り出すあゆみさんのかけ合いが、節操なくて素敵。終始あゆみさんが主導権を握り、小学生でこれかよ…というようなネタを繰り広げるのですが、その中にふと腑に落ち心に沁みる小学生の悟りや性徴成長が感じられる瞬間があって、「これは意外と深いぞ…」と感じられるというか。

これが噂のあゆみさん。その一本筋の目が、全てを見通しているというか、悟っているというか。
4コマ以外では、「墨の香り」が印象深かったです。書道教室で目撃したとある出来事をきっかけに、墨の匂いが苦手になってしまった青年と、その当事者の一人でもあった女性のお話。かなり淫微なお話なのですが、この女性の強かさが素敵で素敵で。そして結局いつまでも、過去の出来事に囚われ、逃げることのできない男の哀れさが、どうしようもなく美しく悲しい。そしてそれより何より、フェティシズムを刺激する、執拗なまでの脚描写がですね…

脚であり靴が、あの時からの時の流れを表すのですが、いちいち意味深に、そしてちょっとエロく描くところがあざといというか何というか。ちなみに表紙を取ると、そこにはヒロインのかおりさんのパンツが描かれているわけですが、それが先の「ちるちる!」のあゆみさんと同じ古き良き子供パンツというね。これわざとなのか、このレパートリーしかないのかわからないのですが、なんだかすごく滑稽で笑ってしまったという。多分わざとなんだと思うんですけど、その意図は汲みきれず。悔しいところです。
というわけで、ごった煮な本作。どれも粒ぞろいで、西炯子先生好きであれば絶対に買いだと思います。そうじゃなくても楽しめると思いますが、統一感のなさにどれだけ対応できるか。個人的にはすごく楽しめた一作でした。特に4コマが新鮮で。。。そうそう、表紙の裏(文字通りの場所。表紙を取ったら…じゃないですよ?)や、果ては帯の裏にまでマンガが描いてあったりと、結構遊び心満載で面白いんです。手に取った際は、その辺も注目してみてください。
【男性へのガイド】
→西炯子好きならば…。って西炯子先生好きの男性ってどれくらいいるのか。
【感想まとめ】
→タイトルだけ見た時はなんだこれって感じでしたが、いやはや面白かったです。見てよかった(タイトルへのアンサー)
■作者他作品レビュー
西炯子「ひらひらひゅ~ん」
西炯子「ふわふわポリス」
西炯子「うすあじ」
作品DATA
■著者:西炯子
■出版社:新書館
■レーベル:ウィングスコミックス
■掲載誌:Wings(連載中)
■全1巻
■価格:762円+税
■購入する→Amazon
スポンサーサイト