
きっと君と見る桜は
今年の数百倍きれいに見えるはずだし
■毎週金曜日、大阪初の最終便で一緒になる大久保くんは、大人になってできた友達。新幹線で隣になったその時に、涙目だったことを今でも覚えている。彼は「ゲームのやりすぎで」と答えたけれど、そんなのはウソだとすぐにわかった。それから出張の度に、一緒に新幹線で話したりゲームをしたり…。同級生だという事以外、お互いのことはあまり知らないけれど、楽しい時間を過ごせるのならそれで良い。そんな週一のワクワクがはじまって一月くらい経った頃、道に迷って廃r混んだホテル街で男と一緒の大久保くんを偶然見かけてしまって…
北別府ニカ先生のBL作品でございます。表題作ほか、読切り3話、シリーズ一編を収録。表紙および表題からも伝わるかと思いますが、ちょっと弱い感じの中性的な男の子が多く登場し、そんな男の子の相手を、ごくごく普通な明るめの男子がつとめるというカップリングがメイン。弱々しい男の子とまではいかなくとも、ダウナー系で生命力弱めな感じまではいっており、全体的に「守ってやりたい」感が湧き上がってくる作品たちが収録されています。

無理矢理させられた女装に、泣き顔のコンボ。そりゃあ我慢なりませんわな。
個人的にお勧めしたいのが、表題作ではなく2話セットで1シリーズとなる「2LDK」。幼なじみの男の子が、大学卒業間際の飲み会に参加して以来、部屋から出てこなくなってしまったというはじまり。就職してしばらくの間、部屋から出てこないその幼なじみの事を気にかけていた主人公は、転勤による引越しが良い機会と、離れたくないと慌てる幼なじみを、一緒に連れてきてしまい、同居生活を始めます。しかし相変わらず、部屋からは出てこない幼なじみ。一体彼が何を考えているのか、よくわからないままに日々は過ぎて…。というお話なのですが、その幼なじみの弱々しさが本当にかわいらしいのです。途中差し込まれるの女装シーンから、事あるごとに泣きそうになってしまうその様子まで、すべてがかわいらしい。これは守ってあげたくなりますわな。
BLでは時折女装が登場するのですが、個人的にBLでの女装シーンというのはありがたく、「お、いけるじゃん」という感じから、その勢いで最後までいけてしまうとでも言いましょうか。加えて中性的な男の子の泣き顔というのが、個人的にツボで、この作品はまさに私のツボをつきまくりだったのでございますよ。また「2LDK」に関しては、相手役がひきこもりということで、身体的な接触はおろか、直接的な会話も乏しく、お互いが自問自答しながら物語が進んでいくというスタイルであり、そのアッサリさがまた読みやすさと切なさを加速させます。
エロはそれなりにありますが、レーベルがレーベルだけに、モロで描かれるということはほとんどなし。BL耐性ない人はこれでもキツいのかもしれませんが、ある程度慣れているのであれば、「全然普通」という感じ。この程度であれば、十分許容範囲内であると思います。とにかく泣き顔の男の子が好きという方は、是非とも手に取ってみてください。
【男性へのガイド】
→微笑ましくも、BLっぽさは普通レベルで、耐性がないと読むのはしんどいか。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→ツボつかれまくり。「2LDK」ひとつで、もう十分元は取ったという感覚。その他の作品も、読むに耐えうる安定感のあるクオリティで、マイナスになる部分はさほど見当たらないかと。
作品DATA
■著者:北別府ニカ
■出版社:東京漫画社
■レーベル:マーブルコミックス
■掲載誌:HUG,リーマンカタログ
■全1巻
■価格:619円+税
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