このエントリーをはてなブックマークに追加
2015.05.04
71Q5C6C6V4L.jpg宇佐美真紀「夕暮れライト」(2)



好き

なっちゃ
ダメかな
ダメかなぁ……




■2巻発売しています。
 まわりとも少しずつ打ち解けてきたちなみ。そんな中、最初はカンジが悪くて嫌いだった相馬兄弟の弟・雄大と急接近!じつは優しいところを知って、惹かれはじめる。でも、相馬兄弟の兄・奏多が、突然ちなみに……!!2人の男子が波乱を起こす、第2巻!


~ベツコミでは唯一買ってるかも~
 2巻発売しました。最近はflowersを除いた小学館各誌の作品からは少し離れてしまっていて、なかなか手に取る機会も減ってきてしまってます。気が付けばベツコミ系列で買ってるのもこれのみかもしれません。ともあれ相変わらず宇佐美真紀先生らしい作品で、安心です。甘度が高いといいますか、トキメキがありますね。


~急接近の楽しい時期~
 1巻で兄弟の弟・雄大を意識するようになったちなみ。「一緒に帰る」というイベントから、もしかしたら両想いかという期待感を抱きつつだったのですが、それはクラスメイトをアシストするための行動だったと知り、そのショックから雄大に冷たくあたってしまうのでした。普通だったら対して仲良くもなっていない段階でそれをやられたらもう関わらないと思うのですが、この雄大という男、その名前に恥じないぐらいの大きな器の持ち主でして、なんやかんやとちなみを気にかけます。困っている子を見ると、一歩踏み出して声をかけてしまう、そんな優しい心の持ち主であり、少女マンガのヒーロー然とした素敵男子。それもあって、ちなみとも打ち解け彼女の表情も一層豊かに。


 1巻でちなみに抱いた印象は、犬っぽい感じというものなのですが、2巻も感情豊かで見ていて面白いですね。割合で言うと不機嫌の方が多いような気がしますけれども、そんな中にも笑顔や恋する感情も増えてきていて、前作「ココロボタン」の新奈同様に微笑ましいキャラです。アホっぽさは通ずるものがあると思うのですが、こちらの方が俄然気難しいのは、やはり家庭環境の影響なのでしょうか。

 最終的に付き合うのかわかりませんが、付き合う前の急接近の状態に近いものがあり、ひとつ一番楽しい時期。ドキドキも新鮮で、楽しみどころも多いです。2巻にもハイライトは様々ありましたが、個人的には夏フェスが一番よかったですかねー。自分が高校の頃はフェスの数が増えてきた頃で、音楽好きの友達が行っていたりもしていましたが、所詮長野の片田舎に住んでいた音楽もさして聞かない自分にとっては遠い国のイベントという感じで、なかなかなじみがありません。今では立派なデートイベントなんですけれども、こういう思い出はないなぁと少し羨ましくなったり。


夕暮れライト0001
勢いのままに体の接触も増えたりとか。BGMはSHISHAMOの「君と夏フェス」とかがいいですかね。


~後半は一転シリアスに~
 さて、そんな甘々な雰囲気の1巻から一転して、後半はシリアスな空気が強くなります。それは兄の奏多が引きおこす事件に起因するのですが、それは実際に読んで楽しんでもらうとしましょう。それをきっかけとして、またしてもちなみがふさぎ込みがちになってしまうのですが、ここでまた雄大ですよ。


夕暮れライト0002
引きこもるちなみをこの強引さで引きずり出す


 空気読まずに家に突撃してきたり、根気よく家を訪れたり、家からお見舞いの食べ物を持って来たりと、そりゃあちなみが好きになるのも仕方ないですって話です。こんなに面倒見の良い高校生いないですって。この調子だと普通にすぐにくっついてしまいそうな気もするのですが、障壁となるのが兄の存在と、雄大と仲の良い和音の存在、そして当人の気持ちがどうなのかという所でしょうか。時間をかけて一つ一つ片づけていくのでしょうが、まず手を着けるのは奏多ですかねぇ。それにしても和音ちゃんの2巻での空気っぷりがすごいです。3巻ではもう少し話に絡んでくるのでしょうか。


■関連レビュー
悩んで、恋して、君と大人になっていく:宇佐美真紀「夕暮れライト」1巻

スポンサーサイト



カテゴリ「ベツコミ」コメント (1)トラックバック(0)TOP▲
このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [新作レビュー] 2015.04.28
71YXOxK0rXL.jpg水沢めぐみ「日南子さんの理由アリな日々」(1)



すみません わたし
孫 います。




■一ノ木日南子、36歳。ワケあって仕事も恋人もいっきになくしちゃったけど、まだ30代だし(後半だけど)、若いし(気持ちだけでも)、心機一転頑張ります!……って、実はこう見えて、娘も孫もいるおばあちゃんなんです!?こんなのアリ!?日南子さんの理由アリすぎる青春の日々、スタートです!!

 「姫ちゃんのリボン」などを描かれていた水沢めぐみ先生の「姉系プチコミック」連載作品でございます。水沢めぐみ先生ってりぼん黄金期を支えた漫画家さんの一人っていう印象が強くて、小学館系の、しかもプチコミ系列のレーベルで単行本を出しているというのが、個人的にものすごく違和感があります(笑)ただ表紙を見てもらってもわかる通り、絵柄や色使いはなんとなく当時のりぼんの伊吹みたいなものを感じられるんじゃないでしょうか。

 物語はこのレーベルにしても少し高めの、アラサー(36歳だとアラフォー?)ヒロインです。恋人と別れ、さらには派遣先をクビになり、36歳にして独身彼氏ナシ&仕事ナシという状況に陥ってしまった一ノ木日南子。けれども捨てる神あれば拾う神あり、幼なじみが編集長を務める雑誌編集部でバイトさせてもらうことになったのでした。メンズファッション誌ということで、若くてイケメンなモデル達も出入りする職場で、心機一転頑張る決意をする日南子。そしたらいきなり、売れっ子モデルの陸に告白をされて…。普通だったら喜んでお受けするその告白にたじろぐ日南子。それもそのはず、日南子には、れっきとした娘と孫がいるおばあちゃんなのです!!


日南子さんの理由アリな日々0002
36歳で孫というのは、別にアレコレとややこしい背景があるわけではありません。至極真っ当に代を重ねての孫です。ヒロインは高3の時に妊娠・出産をするも、相手とは結婚せずに母親の助けを借りながらシングルマザーとして過ごします。そして育った娘は、16歳にして結婚相手を見つけて来て、間もなく妊娠・出産。かくしてヒロインは36歳にして祖母となったのでした。


 メンズ雑誌の編集部にコネで運よく採用されて、そこでひょんなことから年下のモデル君に気に入られて告白をされて「こんな私なのにどうしよう!?」と戸惑う。さらには別で知り合った、これまた年下のツンツン男性絵本作家とも急接近して……という、なかなか最近見ないくらいの都合の良いストーリー。「普通な私が、ステージが上の男の子に見初められてさて困った」というのは、ちょっと前の少女マンガでよく見られた展開で、最近では「今日は会社休みます」で、再び熱を帯びてきた429という印象があります。また絵柄は見てもらえればわかる通り、どこまでも水沢めぐみ先生で、黄金期のりぼんを彷彿とさせます。展開・絵柄共に全く刷新されることなく、ある種手垢さえついているような構成なのですが、それらがありつつも単なる“回顧系”の作品としていないのは、「ヒロインが36歳にして孫持ちである」という設定があるからにつきます。この一点だけで全てを支え、突破するというものすごいパワープレイな印象のある非常に潔い作品。で、自分はその設定が気になってまんまと手に取ってしまったので、もう完全に術中にハマっているというワケですね、はい。

 家ではヒロインの母に、娘、孫、そして娘の旦那と一緒に5人で暮らしており、祖母という立場ながらも自身の母も健在ですので、その続柄らしい立ち居振る舞いはあまりありません。むしろ母がいるせいか、36歳という年齢の割に幼く自立しきれていない印象で、見ていて心配になるぐらいにはガードが甘いです。ユルいというか、アホそうというか。孫がいるということでの円熟味というか、苦労みたいなものが表立って出て来ていないのは、それこそ「理由あって」のことなのでしょうか。

 モデルの男の子に言い寄られていますが、もちろんそれは孫がいるなんて知らないから。また年齢もサバ読んでいるという。一方でもう一人の相手役候補はひょんなことから全て知っているという状況で、最初の印象が良くないところなどを見ても、どう考えてもこちらが相手本線だろうという(孫持ちという設定以外は全て少女マンガのお約束を進むのであれば)。正直これ以上語ることがないくらい、孫がいる設定以外の部分では既存ルートの踏襲なので、ある意味それも時にネタ的に、時に懐かしみながら楽しむことができるかと思います。「心がポキッとね」の山口智子さんを見るような気持ちでしょうか……(この例えは正しいのだろうか)。


日南子さんの理由アリな日々0001
ほとばしる80~90年代感。


 物語的には、孫がいるのが周知の事実になってからの方がきっと面白いと思いますので、そちらでの広がりを期待したいと思います。


【男性へのガイド】
→ザ・少女マンガという展開に、36歳孫ありヒロインというイロモノなんですが、普通だったら振り落とされそうな予感が。ともあれ水沢めぐみ先生だとか、りぼん黄金期の少女マンガ群を愛している人などは結構楽しめるのでは。
【感想まとめ】
→正直別にめちゃくちゃ面白いとか感動したとかはないのですが、謎の満足感と「負けた」という感覚がすごい。またすごい作品を拾っちゃったなというか。


作品DATA
■著者:水沢めぐみ
■出版社:小学館
■レーベル:フラワーコミックス
■掲載誌:姉プチ
■既刊1巻
■価格:円+税


■試し読み:第1話
カテゴリ「プチコミック」コメント (1)トラックバック(0)TOP▲
このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [新作レビュー] 2015.03.15
jyuuyousannkounintantei.jpg絹田村子「重要参考人探偵」(1)



よし!
重要参考人として身柄を確保!!




■弥木圭は、なぜか死体を見つけてしまう体質の男性モデル。そのせいで、しばしば犯人だと疑われ、殺人事件の重要参考人に!?自らにかけられた容疑を晴らすため、推理オタクの周防斎、ナンパ好きのシモン・藤馬の2人のモデル仲間とともに、圭は今日も難事件に立ち向かう!本格推理コメディ、待望の第1巻!!

 「さんすくみ」(→レビュー)の絹田村子先生の新連載です。今度はなんと、推理モノです。「名探偵コ○ン」が代表格とも言えるでしょうが、推理モノの主人公が出先で異常なほど殺人事件に遭遇するというあの現象、ありますよね。コナンなどは過去にどれくらい死んでいるかという数が集計されていたりと、こいつらが疫病神なんじゃないかっていう風潮すらあります。本作は、そんな推理モノの難点を逆手に取ったとも言うべき設定のキャラが主人公となっています。

 主人公の弥木圭は、探偵……ではなく、モデル。彼は幼いころからある特異体質に悩まされています。それは、行く先々で死体と出会ってしまうというもの。それも必ず第一発見者で、死に方も様々。余りの遭遇率に死体を見ること自体には慣れてしまったものの、困っているのが犯人と間違えられてしまうということ。自らにかけられた容疑を晴らすために、必死になって真犯人探しをするのですが、、、というストーリー。


重要参考人探偵0002
死体との出会いは日常。


 どうしてそういう体質になったのか、どうやらきっかけはあるらしいのですがそれは1巻では明かされず。恐らく先々明らかになってくるのでしょう。当人ですが、この体質は嫌ではあるものの引きこもりになるわけにもいかないので「仕方ない」として片づけて普通にモデル業をこなしています。容姿は優れているものの、頭脳の方は良いのかよくわからず。ただ自分が無実の罪を着せられたらたまったもんじゃないと、火事場の馬鹿力的に集中力を発揮します。

 探偵ではありませんから、当人だけで問題を解決するのは難しいです。そこで手を貸してくれるのが、同じモデルで度々現場に出くわす、推理マニア・周防とナンパ好きのシモン。結果性格バラバラの3人でどこか緩くトラブルを解決するという構図は、「さんすくみ」と同じですね。ただこちらはモデルなので、男としてのランクはグイっと上がっているわけですけれども。周防は推理マニアといえども洞察力はまるでなしで、あまり役に立つ印象はありません。シモンはナチュラルボーン・ナンパ野郎という感じで、そのテクを駆使して女性から様々な情報を引き出す役目を負います。


重要参考人探偵0001
周りの仲間もそれを知っているので、比較的慣れている。周防に関しては、待ってましたと言わんばかりにノリノリ。


 トリックはそんな突拍子もないものはありません。そこはあくまで、素人たちでも解決できるレベルのもの、という位置づけですから。難易度的には、「ぼくらの推理ノート」ぐらいでしょうか(恐らくほとんどの人には伝わらないであろう例え)。そう考えると、ミステリーという枠で捉えるよりかは、男3人のやり取りを楽しむコメディという方が正しいかもしれません。「さんすくみ」が好きだった方は、まず同じテンションで読んでもらって普通にそのまま楽しめるような感じだと思います。



【男性へのガイド】
→男子たちのゆるいやり取りは割ととっつきやすいとは思うのですが、モデルになったぶん「さんすくみ」よりかはハードル上がった感もあります。
【感想まとめ】
→表紙とタイトル見たときはものすごい方向転換だなと思っていたのですが、中身を読んで安心、これは「さんすくみ」の流れをくむ安心の絹田村子作品です。



作品DATA
■著者:絹田村子
■出版社:小学館
■レーベル:flowerコミックス
■掲載誌:flowers
■既刊1巻
■価格:429円+税


■試し読み:第1話

カテゴリ「flowers」コメント (0)トラックバック(0)TOP▲
このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [続刊レビュー] 2015.01.30
1106462177.jpg西炯子「姉の結婚」(8)



「あの人と一緒に生きていてよかった」と
お互い思って人生を終えられるような
そんなつながりをつくりあげていくことを
「結婚」というのだと思います




■8巻発売、完結しました。
 離婚が成立した真木誠から、正式に結婚を申し込まれた岩谷ヨリ。だが、離島での開業準備を進める真木に、一度はあきらめたはずのドイツ留学の話が舞い込んでくる。再びのすれ違いと別れを経て、ヨリが最後に選んだものとは…!?大人の純愛ストーリー、感動の完結巻!!

~完結です~
 8巻で完結しました。無事…とはいかず、最後の最後までドラマが待っていましたが、何とか終幕です。正直8巻の展開は全く想像していなかったので、最後まで手に汗握ると言いますか、まんまとしてやられた感がありました。まさかこんなにド直球な物語で来るなんて、思いもしませんもの。


~二人を隔てる最後の壁~
 flowersでの前作「娚の一生」では、最後に大災害が起きることによって二人の間に危機が訪れました。この抵抗不可能な圧倒的な力によって翻弄されるという展開は、個人的に望んでいた形でなかったので、どこか消化不良的にもやもやとしたものがずっと残っていました。そして本作、同じように突拍子もないラストを迎えると思いきや、二人の行く手を阻んだのは、

aneno.jpg
一人の女だったという。


 しかもその手口が実に古典的で、一昔前の韓流ドラマや昼ドラを彷彿とさせるものだったのですから、驚くほかありませんでした。これまで真木の周りにあったしがらみは、この比でなく複雑で規模の大きなものだったのですが、一人の情念によってここまで追い詰められるというのは、ある意味とてもリアルであり、女性の執念の恐ろしさみたいなものを強く感じさせられます。怖い怖い…。かくして物語はクライマックスを迎えるわけですが、これによって、「娚の一生」で抱えていたモヤモヤも合わせて供養されたような感覚があり、個人的には大満足の幕切れでした。


~ラストなんかベタ王道すぎて…!~
 ラストなんかもう、ベタ中のベタ、王道中の王道すぎてよだれ出るほどでした(笑)。たとえば最後の間などは特に素敵で、お見合いに向かう直前での一幕…


姉の結婚8-1
ふと引いた引き出しの中に、指輪の入った袋を見つける


 この何かを暗示するような意味深なコマ割り。セリフで散々真木のことを愛しているってことは語りつくされていたのですが、こうしてビシっと現物を見せられると、より納得感があるといいますか。彼女の心情をよく描いている感があります。

 また最後に助け船を出す天野さん、カッコいいです。正直もう登場しないと思っていて、「人物紹介になんでいるんだろう?」なんて考えていたのですが、ちゃんと意味があったってことですね。すみません、てか天野って名前もこれ見て思い出したってくらいなんですが。

 これで面白いのが、「女性の知り合いは裏切る」ってネタの後に、「男性の知り合いは助ける」ってネタになっているってこと。考えすぎ、単なる偶然なのかもしれませんが、ともあれ捨てる神あれば拾う神あり。本当に仲を深めるには、一緒にラブホテルに泊まるくらいしないといけないのかもしれないですね。(結論)


■関連記事
1巻レビュー→自分が幸せになれないと決め込んでいるあなたへ:西炯子「姉の結婚」1巻
2巻レビュー→“なりたい自分”と“なりたくない自分”:西炯子「姉の結婚」2巻
3巻レビュー→“どうすべきか”と“どうしたいか”:西炯子「姉の結婚」4巻
5巻レビュー→唯一傷つけ合える関係:西炯子「姉の結婚」5巻
作者他作品レビュー→笑いと涙の芸道一直線コメディ!:西炯子「兄さんと僕」
崖っぷち28歳とロリふわ22歳の凸凹婦警コンビが行く!:西炯子「ふわふわポリス」
オトナの情事×コドモの事情:西炯子「恋と軍艦」1巻
「娚の一生」2巻
恥ずかしい青春全開の弓道部ライフ:西炯子「ひらひらひゅ~ん」

カテゴリ「flowers」コメント (0)トラックバック(0)TOP▲
このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [新作レビュー] [オススメ] 2015.01.26
1106472465.jpg宇佐美真紀「夕暮れライト」(1)



この距離をどうしたもんかと
迷ってる




■悩んで、恋して、君と大人になっていく
 父親の再婚相手が住むマンションに引っ越してきたちなみ。再婚相手とその娘・和音を見極めようとするけど、和音の幼馴染・奏多&雄大に邪魔されて…!?同じマンションに住むことになった4人の、ココロつながるハッピーストーリー第1巻!

 「ココロボタン」(→レビュー)などを描かれている、宇佐美真紀先生の新連載になります。芦原妃名子先生や小畑友紀先生はベツコミから他誌に活動の場を移していますが、宇佐美先生は引き続きこちらでの連載ということで、嬉しいところですね。今回描かれるのは、両親の再婚をめぐる青春群像的な恋と友情の物語。お話は、父子家庭の親子が新しいマンションに引っ越してくることから始まります。単なる引越しだと思っていたら、どうやらそのマンションには父親の再婚相手がいるようで、お互い子供を含めた交流を図ろうとしているようなのでした。引っ越してしまったものは仕方ないと、相手の親子(娘は同い年)を見極めてやろうとするのですが、向こうの子には幼馴染の男兄弟がおり、逆にこちらが見極められるような状況に。しかもなんだかやたらと突っかかって来る弟の方は、あろうことか同じクラスの隣の席で…というお話。


夕暮れライト1-1-
 登場人物をそれぞれ整理しましょうか。ヒロイン・ちなみは中学三年生の女の子で、両親が離婚して以来父と一緒に暮らしてきました。歯に衣着せぬ物言いをしてしまうため、前の中学では友達関係がこじれてしまった過去を持つ、体はちっちゃいけれど態度はデカいツンツン女子。再婚相手の娘さん・和音はヒロイン・ちなみと同い年で、メガネにおさげの内気な少女。見るからにいい子という感じで、気弱ゆえに学校では色々と損な役回りをさせられています。そんな彼女の幼馴染が、相馬兄弟。兄は高校1年生で物腰柔らかな好青年。ただしちなみとは一定の距離を保ち、笑顔で接しつつもあくまで「観察する」という姿勢を崩しません。弟はちなみ&和音と幼馴染で、兄の奏多とは対照的にかなり敵対心むき出してちなみに接してきます。割とちなみと似た印象で、二人は席が隣ということでしばしばぶつかることになるのですが、お互いの素性を知っていくうちに、だんだんと仲を深めていくのでした。ちなみに少女漫画ではお約束ですが、相馬兄弟はイケメンとして学校でも女子の高い支持を集めています。


 ヒロイン含め、4人ともひとくせふたくせある感じなのですが、基本的に性格の悪い子はおらず、すれ違いつつも良い関係を築いてきます。ベツコミというとどうしても恋愛先行な感があるのですが、本作の場合はまずお互いを知る所からということで、同じクラスの雄大よりもむしろ再婚相手の子供である和音との関係構築に時間を割いていきます。恋愛的な要素も少しずつ見えて来てはいますが、本格的に動き出すのは2巻以降でしょうか。そのためイメージ的にはベツコミの作品というよりも、別冊マーガレットあたりに近い印象があります。

 ヒロインのちなみはなかなか気持ちの良い性格の持ち主で、すごく好きなキャラクターです。後さき考えずに思ったことを素直に口に出すような子で、ぜひ友達になりたいですね。作中では彼女のことを「チワワ」と揶揄しているのですが、確かに見た目と内面から似ているところがあるかもしれません。


夕暮れライト1-2
いわゆるツンデレ的な子で、お礼を言うのもこんな感じ。


 物語は4人交えて恋をしていく形になると思うのですが、ドロドロしないか気になる所です。裏の作品紹介では、「ハッピーストーリー」と謳っているので、そうならざるを得ないと思っているのですが果たして。中学3年という年齢設定から、進路をどうするのかとか、高校に入ってから兄を交えつつの4つどもえなど、これから面白くなりそうな投入要素は盛りだくさんで、楽しみな作品が出てきました。


 
【男性へのガイド】
→「別マ的」言ったのは、その分男性にもとっつきやすくなっていますよとも言い換えることができると思いますので、設定が気になった方は読んでみてはいかがでしょう。
【感想まとめ】
→宇佐美真紀先生の作品はどれも好きです。キャラも、ストーリーも、安心して読んでいられる感じがなんとも。オススメです。



作品DATA
■著者:宇佐美真紀
■出版社:小学館
■レーベル:flowerコミックス
■掲載誌:ベツコミ
■既刊1巻
■価格:429円+税


■試し読み:第1話

カテゴリ「ベツコミ」コメント (0)トラックバック(0)TOP▲
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。