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Tag [新作レビュー] 2014.02.09
110635940711.jpg氷堂涼二「切っ先3寸」


毎日みんなで
一緒に帰れるぞ!



■女の子の言うこと聞いちゃうドレイ体質だけど、剣道大好きの初心者・ヤサオ。剣道系美少女、鈴音と出会い、地味な同級生・佐々の正体を知った時から本気の「ブカツドウ」が始まった!天才剣士の出現に、たった5人の高校男子剣道部が本気になる夏がくる。ひと夏に懸けた、剣道部ボーイズグラフィティ。

 氷堂涼二先生の別冊花とゆめ連載作になります。氷堂涼二先生というと、新書館(ウイングス)のイメージが強いのですが、白泉社でも描かれております(「はらぺこバンピーノ!」全3巻)。本作は、とある普通の高校の剣道部の奮闘を描いた青春グラフィティでございます。
 
 主人公は女好きで軽いノリのヤサオ。放っておけば女の子と遊ぶ道に進んでしまいそうな彼が、高校では剣の道と出会い、それに夢中に。初心者なので当然ヘタクソ。けれどもへこたれず、日々部活に打ち込んでいました。そんな中出会ったのは、謎の剣道美少女と、そんな彼女が憧れる、元天才剣士のクラスメイト・佐々。剣道からは距離を置きたがっている佐々を、その積極さから半ば強引に剣道部に誘い出し、一緒に剣道をすることに。一人の初心者と、一人の実力者の1年生コンビによって、剣道部に思わぬ変化が…。人数はギリギリ5人、弱小剣道部のアツい夏が始まる…的なお話。


切っ先3寸
孤高の剣士・佐々。とはいえ気難しいというよりは、内気で人との距離の取り方を良くわかっていないというタイプ。ゆえに心に飛び込まれると、こんな反応に。これが魅力でもあるのですが、この赤面シーンだけやたらBL臭いっていう(笑)


 とある事情から剣道から距離を置いた孤独な実力者の心を、何も知らない明るい性格の初心者が掴み、一緒に剣道に打ち込むというストーリー。剣道部という題材もそうですが、男だらけで結構汗臭いストーリーでございます。とはいえキャラクターは割と爽やかだったりひ弱っぽい感じの男の子が多く、無骨な印象の男子はほぼゼロ。その辺でバランスをとっているのかもしれません。またマドンナチックな女の子も登場。しかし彼女は主人公には目もくれず、孤独な実力者・佐々に惚れているという。そのため青春ならではの恋愛の甘酸っぱさはほぼ無し。あ、でも先輩同士の恋愛めいた関係、結構良いです。

 弱小剣道部と言いつつ、5人のうちひとりは最強クラス(佐々)。先輩3人のうち2人もそこそこの実力者ということで、チームとしての力はそこそこあったりします。そのため初心者の主人公が育つ下地もあり、加えて人数も少ないので居心地が良いという。割と憧れる部活風景です。
 

【男性へのガイド】
→BLめいた感じとかは、ちょっと匂いたつかも。ただ基本的に間口は広く、とっつきやすい内容だと思います。あとはキャラ萌えできるか。
【感想まとめ】
→緩くも真剣ないい塩梅の部活もの。そんな力加減の青春モノがお好きな方は、是非どうぞ。


作品DATA
■著者:氷堂涼二
■出版社:白泉社
■レーベル:別冊花とゆめコミックス
■掲載誌:別冊花とゆめ
■全1巻
■価格:429円+税

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Tag [新作レビュー] 2014.01.26
1106359402.jpg西形まい「ダンシグラシ」


ほんの少しだけなら
人の手を借りるのも
悪くない



■マジで!?おまえと?ひとつ屋根の下!!
 高校入学を機に、快適な一人暮らしをはじめる…はずだった俺、堂島良牙。不動産屋のうっかりミスで、同じ部屋を契約していた同級生の谷啓吾と、2週間だけ二人暮らしをするはめに…。料理ができない俺。片付けられないあいつ。まったくソリが合わない俺達は、この暮らしに耐えきれるのか!?男2人、ひとつ屋根の下コメディ!
 
 「サイボーイ」(→レビュー)、「花の騎士」(→レビュー)などを描かれている、西形まい先生の新作。「サイボーイ」以来となる、非ファンタジーのコメディ作品です。「サイボーイ」が大好きだったので、非常に嬉しかったのですが、1話完結(しかも話数足りてない)。やっぱりあまり受けないんでしょうか。
 
 物語は男子二人の同居コメディ。主人公は非常に真面目な潔癖キャラの、堂島くん。ズボラな両親に耐えかねて、一人暮らしを決意したものの、新居に行ってみたらそこには同世代の男の子が既に暮らしていたのでした。どうやら不動産屋の手違いで二重契約となってしまったよう。その男・谷くんとは同じ学校の同い年ということで、新居が見つかるまでの数週間、一緒に暮らすことにするのですが、彼は堂島くんが一番苦手な、ズボラな男子で…というお話。


ダンシグラシ1
あれこれに対して非常にキッチリ決めたいタイプの堂島良牙に対して、面倒くさがりな谷啓吾。この差。


 その内容こそ男子二人のドタバタコメディではあるのですが、そのシチュエーション、キャラ造形、絡みと、そのエッセンスはBLを匂わせます。そもそも表紙からしてBL的な匂いを漂わせているわけですが、そういうエッセンスが苦手な人はやや読み難い所もあるかもしれません。って、そういう人は表紙を見て敬遠するのか。
 
 同居相手の谷啓吾は、体育推薦で入学した体育会系男子。熱血さはなく、どちらかというと淡々とフラットにすごすマイペースなズボラ男(合理的でもあり、場当たり的でもあるような)。それに対して主人公の堂島良牙は作法を重んじる真面目なタイプで、頑固。素直じゃないので、あまり上手く立ち回れません。この二人が組合わさるとどうなるかというと、堂島くんのツンデレ大爆発的な状況に。なんというか、彼が一人で勝手に空まわって場が転がっている感がすごいです。ズボラだズボラだと谷敬語は突っ込まれるのですが、彼のその適当さというか、大らかさがあるからこそ、二人の同居が実現しているのだろうな、と思う面が強いです。潔癖性は、同居に向かない(断言)二人は全く正反対なタイプなので、好みが別れそう。私は俄然谷啓吾が好きですかね。かわいいのは堂島くんですけれども。


ダンシグラシ
こんな面倒くさい堂島良牙が同居を決め込んだのは、谷啓吾が見ために反して料理上手だから。堂島良牙は料理が唯一苦手であり、言わばギブアンドテイクの関係になっているのです。


 表題作のほか、読切りが2編収録されています。どちらも学園恋愛もの。「ゴーインゴーイン★クレイジー」は、ヒロインの食べっぷりに相手役が惚れ込むというお話なのですが、ご飯を美味しそうに、そしてたくさん食べる女の子はやっぱり可愛いですよね。私も付き合うのなら、ご飯を美味しそうに食べる人が良いです(誰も聞いていない)。初めて付き合った子がもの凄い好き嫌いの激しい子で、結構辟易とした思い出があってですね…(以下略)。


【男性へのガイド】
→表紙からもわかるように、こういうエッセンスですから。ただネタ自体はアホな掛け合いなので、受ける印象ほど食べ辛くはないと思いますよ。
【感想まとめ】
→やっぱり西形まい先生のコメディは好きです。変な勢いがあって良いです。


作品DATA
■著者:西形まい
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめコミックス
■掲載誌:花とゆめ
■全1巻
■価格:429円+税


試し読み

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Tag [続刊レビュー] 2014.01.14
作品紹介→10年越しの恋の駆け引き:天乃忍「ラストゲーム」1巻
2巻レビュー→守られてるのに気づかないこのもどかしさ:天乃忍「ラストゲーム」2巻
3巻レビュー→必要性のあることだからなんですよね?:天乃忍「ラストゲーム」3巻
4巻レビュー→本格的にラブってきたら柳はショック死するんじゃ:天乃忍「ラストゲーム」4巻
作者他作品紹介→流れる季節に想い重ねて、切なく眩しい恋をした:天乃忍「夏のかけら」




1106359405.jpg天乃忍「ラストゲーム」(5)


恋ってのは
そーゆーもんだ



■5巻発売しました。
 「怖かったら手を握っていいぞ」…お化け屋敷やジェットコースター、九条との初めての遊園地に期待しまくる柳。だけど百香、相馬、(ついでに先輩)の思惑が絡み、一方、九条は何かと柳を構う桃香に、なぜかもやもや…。そんな九条に相馬は思わず…!?
 

〜空回りの攻防戦〜
 お久しぶりのレビューです。ちょっと連休使って旅行に行ってまして…。ちょうどこちらの物語でも、天文サークルのみんなで遊園地に行っていました。いいですね、男女混合での旅行。何か起きなければおかしい。ましてやアトラクション多数の遊園地は、待ち時間すらもお楽しみ。いやー大学時代こういうイベント皆無だったんで、羨ましい限りです。
 
 遊園地で誰よりも気合いが入っていたのは、新キャラの橘桃香ちゃん。隙あらば柳の隣にいき、ポイントを稼ごうと必死です。こうやって頑張る子、嫌いじゃありません。あとちょっと小賢しいあざとさをもっている女の子が、思い描いた通りに事が運ばず、わたわたする様子ってのが好きでして。今回の橘さんはまさにコレでした。九条さんを仮想敵として臨むわけですが、それは相手がその気だからこそ成立するわけで、その気のない九条さんの前に空回りしまくりでした。
 

ラストゲーム5−1
結局九条さんには一切敵わず、柳からは釘をさされるというか、予防線を張られてしまいます。



さらに彼女にとって不幸な出来事が発生し、意外な過去が明らかになります…


ラストゲーム5−2
 はい、私の大好物「努力して生まれ変わった可愛い子」。努力したという自負があるからこそ溢れる自信と美しさというものがあると思っていて、それを最大限利用して目的を達成することの何が悪いと言うのでしょう。なかなかヒロインポジションになれないこの手のキャラですが、「挫折後に努力して頑張る」というシンプルな生き方を体現しているので、とても魅力的に映ります。あとあんまり語られていないですが、普通に優秀な大学に通っておられますからね。美しさを磨くと同時に、学力面でも努力しているっていう。

 戦いぶりからすると到底ライバルにもなれそうにないですが、こういう設定が出てくるという所で、レギュラー化は確定的。この後どういうポジションに落ち着くのでしょうか。最有力は、相馬のお相手って所でしょうか(流れ的にも)。努力してデビューっていう辺、似ているところもありますし、この後お互いフラれるであろう(ひどい)辺も、とっても似ている。柳と九条は全くもって正反対の性格で、その噛み合なさが素敵なカップルですが、お互いのことが分かり合える資質の似たカップルってのもまた素敵。似た者同士と真逆同士、どっちも楽しめるお得な物語です、はい。


〜九条さんに見て取れる変化〜
 今回九条さんは嫉妬という感情を覚えたわけですが、恋愛的な感情に自覚的になるのには、まだまだ時間がかかりそうな感じがあります。こりゃあ長期戦ですね(既に長期戦ですが…)。とはいえしっかりと彼女の中での変化は見てとれるので、飽きるどころか楽しみは募るばかり。今回もちょいちょい柳に嬉しい出来事があったりして、そのたびに彼のリアクションを見るのが楽しいです。さて6巻ではどうなることやら。順番的には、相馬の気持ちが募ってちょっとした一悶着があったりなかったりするのでしょうか。九条さんよりは俄然焦ったりジェラったりしそうな柳ということで、さてどんな表情を見せることやら…。

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Tag [続刊レビュー] 2013.12.29
作品紹介→よしながふみ「大奥」
6巻レビュー→これ以上ない愛の形に思わず涙:よしながふみ「大奥」6巻
7巻レビュー→よしながふみが彩る“江島生島事件”:よしながふみ「大奥」7巻
9巻レビュー→物語の大きな転換点となるか:よしながふみ「大奥」9巻




1106329484.jpgよしながふみ「大奥」(10)


あまりに理不尽ではないか!!


■10巻発売しました。
 悲恋の舞台であった男女逆転大奥。その大奥が、逆転世界の根源である赤面疱瘡を解明する研究所となる…。よしながふみのSF大河ロマン、待望の第十巻。
 

〜抜群に面白い10巻〜
 区切りの10巻、発売しています。「このマンガがすごい!2014」こそTOP20から久々に漏れてしまいましたが、この10巻が抜群に面白かった。こう来るか、と。史実をベースに作ってはいるものの、基本的には創作歴史。史実と創作、そのバランス感が非常に重要になるのですが、本作はそこが絶妙すぎる。先のランキングでは同じく歴史創作ものである某作品が1位になりましたが、その手腕はこちらの方が何枚も上手であると、最新巻を読んで改めて実感させられました。メディアミックスも一通り落ち着き、また巻数も重ねて来たとあってなかなか話題になることはありませんが、相変わらず面白いですので、引き続き注目を…。


〜表紙から明るい先を期待したのですが〜
 さて、10巻は表紙がこれまでと趣が異なり、登場人物たちが勢揃いで一様に笑顔。また帯には「人は、病に、勝てる。」の文字。9巻で赤面疱瘡を治す兆しが生まれたとあって、これは一気に赤面疱瘡を克服して、新たな歴史を作って行くのかと思わせるものがありました。実際に大奥では田沼意次と青沼の先導のもと、平賀源内の注力もあり、弱毒の患者を発見し人痘接種に成功。大奥勤めの若者たちは、次々と赤面疱瘡を克服することになるのでした。


大奥10
やがてその噂を聞きつけ、大名家の子息にも人痘接種をするように。


 あまりに順調すぎる道筋、将来は明るく思えましたが、同時に不気味さも漂わせていました。それは、どうしても存在する副作用での死亡者が、誰も出ていないこと。言わばロシアンルーレット的なそれが、何処で出るのか。出ないわけがない、そう思っていたところで、よしながふみ先生はそれを松平定信の甥にぶつけてきました。ここで出しますか。これにより一気に形成は逆転。この一件が直接の原因ではないものの、田沼意次は十代将軍・家治の死をきっかけに失脚。これにより人痘接種の種も途切れ、この試みは歴史から消え去ることになってしまいます。平賀源内の頑張りも、青沼の頑張りも全て流され消えてしまう、このあまりにも容赦のない仕打ちに呆然。ただ、時に歴史では残酷すぎる仕打ちが記録されていたりするものですが、これもそんな中の一つのようで、リアル感が溢れていたというか。また青沼という史実に存在しない人物に、そこまで大活躍はさせないぞ、とバランスを取った部分もあるのかもしれません。


〜それでも間接的に希望はつないだ〜
 ただ、完全にその存在は消されたものの、一つの確かな足跡…いや、爪痕のようなものを、青沼は残しました。全て解決はさせないけれど、これだけ描いた以上、ゼロにするのもおかしな話なわけで。最後の最後、こうつなげるのか、と。ある程度予見できた展開なのかもしれませんが、直前で呆然としていただけに、この展開には身震いでした。大きな流れの転換点に差し掛かったと言える10巻ラスト。11巻ではどのような物語が展開されるのか。そして赤面疱瘡も種が途絶えたと言えど、その方法論は死んでおらず、どこかでまた巻き返しがあるんじゃないかと密かに期待しております。人間ドラマというよりは、制度面からあれこれ面白い物語が描かれそうな11巻、よしながふみ先生がどう読者を納得させて、さらに感動・興奮させてくるのか、非常に楽しみです。

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Tag [続刊レビュー] 2013.12.28
作品紹介→大好きな彼の、うその彼女になってしまいました。:林みかせ「うそカノ」1巻



1106349656.jpg林みかせ「うそカノ」(2)


たまに疲れはするけど
嫌いじゃないよ



■2巻発売しました。
 入谷くんの「ほんとの彼女」になれた…!!舞い上がるすばる。…だけど、うそとほんとって、どう違うの??体育祭、海水浴、調理実習におうちデート…初めてばかりの2人には、ドキドキ事件が連発!!さらに、和久井が入谷を挑発&ライバル宣言!?
 

〜間違いなく今年最高のニヤニヤマンガ〜
 2巻発売しています。2巻、すごいです。何がって、そのニヤニヤ発生力ですよ。今年も数多のニヤニヤ漫画が登場しましたが、これはかなり上位。ヘタしたら最高位のレベルかもしれません。
 
 晴れて正式に付き合うことになった2人。当然のことながら恋人として、初々しい歩み出しをはじめるわけですが、その過程が「おいおいやりすぎだろう」と突っ込まざるを得ないほどにラヴラヴでして。なんなすばるが無邪気に好き好きオーラ出すから、それに飲み込まれている感がすごくてですね。凄すぎて、時にニヤニヤを突き抜けて無表情になりそうにすら。その最たるシーンは、この辺でしょうか…
 

うそカノ2−1
皆が見ている前でイチャつく


 なんなんだこの2人は!!しかも直前のすばるの「入谷くんと同じクラスごっこ」って台詞。もうその発言からしてバカップルのそれ!特進クラスで見せつけてイチャつくという、なかなかにレベルの高い絡みを見せてくれました。しかもこんなこと当たり前のようにしているのに、キスには躊躇いがあり、未遂という。この心と行動のアンマッチ感が、余計にニヤニヤっぷりを加速させております。


〜入谷くんの恋愛力の低さ〜
 ニヤニヤの源泉はなんといっても入谷くん。クールでドSな、例えるなら「ココロボタン」(→レビュー)の古閑くんみたいなキャラになるのかと思ったら、案外甘々。ツンデレキャラにしても、デレのシーンが多すぎる。借り物競走でのシーンも…
 

うそカノ2−2
困り顔で俯きがちに恥ずかしいことを


 ちなみにこれも、みんなの前です。このシーン、本当に美味しいのは次のページで、「違うの?」って不安げに聞く入谷くんの顔がかわいすぎてご飯3杯はいける。この作品は、すばるのかわいさではなく、入谷くんのかわいさを楽しむ類いのお話だと、この時点で確信するのでした。

 その初登場時のキャラクターから、勝手に「クールでスマートなイケメン」というイメージでいたのですが、実際はそうじゃないんだろうな、と2巻を読むことで思い直すという。まず際立って恋愛力が低い。すばるの妹や和久井の安い嘘や挑発に、これでもかと引っ掛かってしまうあたり、ヤキモチの源となる、「負けず嫌い」かつ「独占欲が強い」ってのが根底にありそうな気がしますが、その姿が余裕がなくてカッコ悪いんだ(そしてかわいい)。究極は、「恋愛心理学」なんていう本を買ってしまうところ。姿こそイケメンですが、中身はモテない男のそれですよ。あと潔癖で時間にキッチリしてて、そして他人に厳しい所とかも、現実では割とモテない(というか結婚できない)人の特徴として語られることが多いような。現時点で恋愛力の低い入谷くんが、すばるちゃんという何でも受け入れて許してくれる女神の前で徐々に彼氏としての力をつけていく成長譚…ラブラブっぷりだけでなく、そんな楽しみ方も一つできる作品なのかもしれません。


〜かませ犬としては弱いかな〜
 さて、大体ちゃんと付き合うとライバルが登場するものですが、本作では和久井くんがそのお役目を担うことになりました。今のところ、「すばるを昔から知ってる」「女心がわかってる」「ノリが良い」というあたりで入谷くんよりも優位ではありますが、いかんせんその器用さ故か、ド正面から突っ込めず、周囲からちょっかいをかける程度に留まっているため、かませ犬としてはやや弱い印象。そうしている間にもどんどんと2人は仲を深めているわけで、一気にギアを入れ替えないと、かませ犬にすらなれませんよっと。なんて、2巻ラストでは「おっ」と思わせるアプローチを。和久井くんにとっては試金石の3巻、これにより入谷くんのヤキモチも加速しそうで、さてさて楽しみになってきましたよ。

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かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
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2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。