
興味はあるだろう?
呪術に
■その血筋に生まれた女性は、早世する変わりに家を繁栄させるという。そんな家系に生まれた鈴木一乙は、現在大学在学中。彼の専らの興味は、最近結婚した最愛の姉を生きながらえさせる方法を探し出すこと。そんな時、大学の構内で出会ったのは、オカルト研究部に所属する怪しげな男・村上寛とその彼女・小林冥沙。二人はそれぞれ特異な能力を持っており、一乙は次第に人ならぬ者の世界へと導かれていく…。これは「俺と彼女と先生の話」へと繋がる、はじまりの物語…
待ちに待った、待望の新刊!!以前ご紹介しました、「俺と彼女と先生の話」(→レビュー)の続編となる作品。タイトルは「僕と彼女と先輩の話」…ってすごくややこしい(笑)しかもなんか表紙を見ると、あれ、小町嬢がいない…!というのもそのはず。「続編」と銘打っておりますが、物語はむしろ前作よりもだいぶ前。物語のはじまりのはじまりを描いたお話になります。主人公は、女性が早世するかわりに家が繁栄するという家系に生まれた鈴木一乙。大学に通いながら、最愛の姉を生き長らえさせる方法を探っていた彼は、ある日大学構内で怪しげな先輩・村上と出会います。村上に連れて行かれた先は、オカルト研究部。そこに所属する彼と、その彼女・小林冥沙の二人は、それぞれに異能を操ることができるのでした。村上に「姉を助けられるかもしれない」と言われた鈴木は、彼に導かれるように、怪しげな世界へと足を踏み入れていくことになるのですが…

主人公・鈴木が、村上のとある興味に巻き込まれる形で物語は進展。完全なる当事者でないからこそ、一歩引いたところから除いた薄気味悪さを味わうことができる。
何やら大きな力を手に入れようとしているオカルト好き・村上と、そんな彼に想いを寄せる霊感の強い彼女・冥沙、そして姉を救いたい一心で村上と行動を共にするようになった鈴木。そんな三人の繰り広げる、ちょっと気味の悪い、はじまりのお話。ここで登場する鈴木は、前作で先生にあたる人物。彼がどうしてあのような生活を送ることになったのか。そして俺と小町が関わった、あの家の正体が、明らかになります。結構謎が多かった部分のある「俺と~」ですが、それぞれの出自が少しずつ明らかになることで、読み返してまたちょっと違った味わいに。小町の出生についても描かれているのですが、幼い小町は無垢でまた可愛いですね。しかしながら、これで全てが明らかになるというわけではなく、さらに続編へと物語は受け継がれていきます。今回は厄災のはじまりのはじまりが描かれるので、物語としても結構後味悪いというか、少なくともスッキリはしません。
雰囲気としては、前作に増してホラーの様相が強くなった感じ。前作は小町の存在が、どこかキャッチーであったために、親しみやすい雰囲気があったのですが、今回はより殺伐として、陰気。というのもヒロインである冥沙はほぼ物語の中心に絡んでこず、怪しげで掴みどころのない村上と暗い性格の鈴木が、曰く付きの場所を巡るというメインストーリーであるため。例えば前作と本作で実写映画化をしたとしたら、絶対にジャンル違って語られるよなぁ、という。これはガチでホラーですもん。それも、派手じゃない、地味にくるやつ。個人的にはどちらも好みなので、満足でした。敢えて軍配をあげるとしたら、小町がいる分前作でしょうか。この作品単体でオススメできるかというと、ちょっとわからないですが、前作をご存知の方は是非とも。次のシリーズが出るのはいつなのでしょうかねぇ。。。気長に待ってみたいと思います。
【男性へのガイド】
→男二人で行動というところに、ちょっとしたBL臭さを感じる人はいるかもしれんですが、基本的には気にならないかと。読みやすさは保証です。
【感想まとめ】
→盛り上がりはないです。だからこそ、鬱々と淡々と進行してちょっとした薄気味悪さや陰気さを演出し、この物語の独特の雰囲気形成に寄与しているのかも。前作読者は必読。そうでないなら、とりあえずは前作をどうぞ。
作品DATA
■著者:トジツキハジメ
■出版社:新書館
■レーベル:ウィングスコミックス
■掲載誌:Wings(連載中)
■全1巻
■価格:590円+税
■購入する→Amazon