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Tag [続刊レビュー] 2013.05.30
関連作品紹介→*新作レビュー* トジツキハジメ「俺と彼女と先生の話」
シリーズ第二弾!人ならぬ者の世界への入り口へ…:トジツキハジメ「僕と彼女と先輩の話」



1106259553.jpgトジツキハジメ「俺と彼等と彼女の話」


クレイジーだわ


■シリーズ完結です。
 いまどきの平凡なフリーター・高橋、見えざるものが見える女子高生の小町、怪異の知識に長けた兄のニールと霊感体質の妹・イライザ。四人に降りかかる、この世に残されたねじれた想いが引き起す怪事件…。そして起こるはずのない奇妙な出来事に興味を持つことは、終わらない運命の始まりだった……。


〜シリーズ完結です〜
 シリーズ3作目にして、完結致しました。続きがある的なことは書かれていたのですが、本当にこうして描かれて、そして完結を迎えるとは。1作目は先生と小町と高橋の3人を中心にした、現代のお話。2作目は先生の学生時代を描いたお話。そして今回は、再び現代に戻ってのお話となりました。3作目を始めるにあたり、新キャラが投入されます。それが、ブロンド髪のイギリス人兄妹・ニールとイライザ。
 

僕と彼等と彼女の話
兄は知識豊富な秋葉系。妹は奔放な女子高生で、小町の数少ないお友達。


 和風ホラーにブロンド外国人ってのは、いかにもミスマッチではありますが、どこか仄暗い雰囲気漂う本作において、良いアクセントになっておりました。あとイライザ、小町と見ためで良い対比になっていて、結構良かったです。性格はちょっと似てるけど。



〜意外と怖い〜
 クライマックスということで、これまでの2作を総括するような、大きな流れのある内容になっているのかと思いきや、各話それぞれが独立していて、大きな物語ははっきりとは見えてきませんでした。とはいえ相変わらず、怖いというか、不気味です。個人的にイヤだったのは2話ですかね。山奥の廃村に引き込まれて、抜け出せなくなり殺されそうになるっていうエピソード。
 
 
僕と彼等と彼女の話2
別に驚かせよう的な仕掛けはないのですが、ぬらりと背後に忍びよっているような感じが、苦手。
 

 てか面白いのは、みんなお化けに慣れているようで、やっぱり全然慣れていないし、怖いと思っていること。高橋筆頭にみんな叫びまくり。小町も叫ぶし焦るし、イライザもやっぱり怖がる。この辺が、「まだみんなこっちサイドにいるんだ」という安心感を引き起すと言いますか。小町が妖怪退治するときも、異能を持つヒーローというよりは、勇敢な少女というラインにいる感じで、親しみやすさがありました。


〜小林冥沙の件を回収する〜
 さて、これまでの流れから、ということであれば、一つの伏線が今回しっかりと回収されました。2作目、「僕と彼女と先輩の話」で行方不明となった先輩・中村が、帰ってくるまで待つと宣言した、小林冥沙。2巻の描きおろしでは、先生の家を訪ねて来る小林さんの姿が描かれておりました。その時は先生が先生が不在でそのまま引き返してしまうのですが、お盆の百奇譚にて再登場。そしてそこに、行方をくらましていた中村も姿を現します。小林さんも先生も、年月相応に歳をとった容姿をしていますが、中村だけはあの頃から変わっていません。そして、最後の話をし終わり、中村は小林さんに問いかけます。一緒に来るか、と。そして小林さんは…
 

俺と彼等と彼女の話3
ついて行く


 正直小林さんの中村に対する想いがそこまで強いとは思っていませんでした。もちろんそれは、2作目本編での印象。その後、再び先生の家を訪れた時点で、この結果は見えていましたが、ものすごく強い愛情でなければこの選択はできないでしょう。だって話の中で、中村は自らが死んでいることを明らかにしていて、ついて行って辿り着く先は容易に想像できるのですから。ある種の心中とでもいいますか、もちろん生前の中村に、そんな意思があったのかはわかりませんけれども。
  
 1作目で死者をこの世につなぎ止めようとしていた先生が、こうして今回は迷っていた死者を送り出したというのは、このシリーズの中でも大きな意味を持っていたのではないかと感じたのでした。その後、なんとなく時間は流れ、最終話に。ぶっちゃけ1話目で終わっても、別に納得いった感はありました(笑)


〜物語の終わりは意外と静かに〜
 何か大きな謎や力によって、さらに物語は深みに…なんて結末になるかと思っていたのですが、終わりは意外と静かなものでした。シリーズとしては完結しましたが、これからもあの家は引き継がれ続け、物語は続いて行くのでしょう。最後、金髪の二人での締めくくりってのが、なんともシュールでミスマッチ感に溢れていたのですが、ああいったキャラが締めくくるからこそ、後腐れなく終わることができるんでしょう。これといった伏線も張ることなく、落ち着く所に落ち着きました。1冊目から何年経ったかわかりませんが、最後まで楽しく読むことができました!


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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2013.05.28
1106280601.jpgみもり「お陽様の下のルナ」


陽向と一緒なら
私は輝き続けるから



■生まれつき強大な魔力を持つ「魔法使い」と、半獣で魔法使いを正しい道へ導く「ガイド」、その中でただひとり魔力を持たない女の子・ルナは幼なじみの魔法使い・陽向のガイドになりたくて魔法学園に入学したけれど…!?ファンタジックでキュートなみもりワールドをご堪能あれ!!

 みもり先生が描く、マジカルトラブル青春ファンタジーです。描かれるのは、魔法使いがいる世界。花森町は、生まれながらにして強大な魔力を持つ「魔法使い」そして半獣で魔法使いのサポートをする「ガイド」が住んでいます。ヒロインのルナは、ガイドの子どもに生まれながら、魔力を持たないただの人間。それでも幼なじみの魔法使いである陽向のガイドになることを夢見て、魔法学校に通っているのでした。ここ最近の一番の話題は、ほうきに乗ってレースをする青空レース。ルナは、陽向を誘ってレースに出ようとするのですが、当の陽向はそれを頑なに拒否して…というお話。
 
 
お陽様の下のルナ
 魔法使いが住む世界の、魔法学校に通う普通の女の子のお話。実にファンタジックで可愛らしい内容になっています。イメージ的にはハリー・ポッターとか、低年齢向けのファンタジー作品が近いかもしれません。ほうきレースもあったような…ってそれはクィディッチか。


 ほうきレースのルールは、魔法使いとガイドが二人一組で参加すること。優勝すると一目置かれるだけでなく、「レースで優勝すると生涯良きパートナーであり続ける」なんて伝説があるものだから、普段人間だとバカにされていて、また陽向のガイドになりたいルナとしては、何としても出場して優勝したいレースなのです。陽向が気の弱い幼なじみだということで、強気にエントリーを迫るルナですが、陽向はそれを頑なに拒否。そんな所に、ルナを誘いに、闇属性で前回優勝者のロンが現れるのですが、ルナはもちろん拒否。ロンとルナ、二人のあの手この手の誘いの手が、思わぬトラブルを呼び込んでいき、物語は転がっていきます。
 
 基本的には可愛いトラブル、そして爽やかな解決法、微笑ましい一件落着と、全編に渡って健全で、かつかわいくてかわいくて。悪そうに見える闇属性の二人も、実は誤解を受けやすいだけの良い子達で、登場人物には基本的に悪者はいません。そういう意味でも、精神衛生に良く、読み終った後とっても幸せで清々しい気持ちになりました。ウイングスは時折こういう低年齢も行けるような作品が掲載されるのですが、良いですね。本作も普通に子どもに読ませてあげたい(子どもいないけど)。


お陽様の下のルナ1−2
 全4話収録されているうち、2話がルナと陽向のお話。そして残り2話では、序盤悪者っぽく描かれた闇属性の二人のお話が描かれます。特にロンのお話は微笑ましくて良かったです。おじさんのロックもそうですが、ロンの一族は基本的に寂しがりやなんですかね。心ではとても友達、仲間が欲しいと思っていても、先入観と不器用さからなかなか上手くいきません。とっても笑えるのですが、少しの切なさもあって、ついついロンびいきになってしまいました。あと猫がかわいかったです。


【男性へのガイド】
→男女というか、年齢でしょうか。かわいらしいお話がお好きであれば、問題なくいけると思います。
【感想まとめ】
→小さな子ども達がメインのお話で、とっても可愛らしくて微笑ましかった。こういうお話をたまに読むと、こう良い感じで癒されます。おすすめで。


作品DATA
■著者:みもり
■出版社:新書館
■レーベル:ウイングスコミックス
■掲載誌:ウイングス
■全1巻
■価格:590円+税


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Tag [新作レビュー] [読み切り/短編] 2013.02.27
1106250094.jpgささだあすか「ささだあすか短篇集 きらきらのなつ」


私も大好き!


■それは小学6年生の夏休み…。
 ある事情で田舎の祖母の家に越してきた、口下手で引っ込み思案な女の子・すず。一人留守番をする古めかしい家は何かがいるようで居辛くて、外に飛び出し出会ったのは、同じ学年のひなた。ひなたと友達になり、やがて新しい場所での学校生活がはじまる…。少女達の成長をやさしく描いた表題作のほか、新旧掲載作や描き下しまで収録。ファン待望の、ほっこり短編集…
 
 ささだあすか先生の短編集でございます。レーベルがWingsコミックスになっているので今回レビューするのですが、実は収録されている作品はWings掲載作は一つもなしだったりします。4タイトルが収録されているうち2タイトルはピュア百合アンソロジーの「ひらり、」に掲載。また残りの2タイトルはLaLaDXに2006年に掲載されたものになります。元々白泉社で活動されていた(今もしてる?)先生なので、LaLaDXの作品が収録されているみたいですね。また「ひらり、」に掲載されていた2タイトルについては、今回の単行本でそれぞれ1話ずつ描きおろしが収録されています。
 
 それでは収録作品を少しずつご紹介しましょう。まずは表題作にもなっている「きらきらのなつ」と、その続編の「ぽかぽかのふゆ」。あらすじは冒頭にご紹介したとおりですが、引っ込み思案な女の子が、田舎に越してきて友達と友情を育んでいくというお話。人付き合いが苦手な内気な女の子が、自分とは正反対の性格の持ち主である女の子と出会い、徐々に自分の世界を拡げていきます。まぁとにかく悪い人が出てこない爽やかで温かいお話で、低年齢向けの媒体に載っていても違和感のないような内容です。


きらきらのなつ1
ひらり、連載ということもあって、百合的なアレンジはあるものの、基本的には友情物語でございます。
 

 続いてもひらり、連載の「しのびのいろは」。こちらは平々凡々な女子高生に、なぜか同い年の忍がつくというショートコメディ。それ以上でもそれ以下でもないのでこれ以上説明しづらいのですが、こちらも毒のないコメディで、例えば「りぼん」だとか「マーガレット」なんかのコメディ・ギャグ枠で連載されていても違和感なさそうな作品です。絵柄もどちらかというと集英社の香りが…
 
 ラスト2作「自転車ブルー!!」と「星空☆ファクトリー」は共にLaLaDXに掲載されていた作品。掲載時期が2006年ということもあり、先の2作とは絵柄がちょっと異なっています。言うなればシャープな線形と言いますか。「自転車ブルー!!」は、“出来る女子”が唯一できない自転車を後輩の男子に教えてもらうというもの。物語の導入は恋愛ではあるのですが、恋愛における駆け引き的なものはなく、気持ちの整理という部分に重きが置かれたこれまた爽やかな作品。また「星空☆ファクトリー」も恋愛を軸に進められるものの、着地点は疑似家族的な温かな所で、こちらも恋愛物語として一口には括れないようなお話でした。


きらきらのなつ
ちょっと変わる絵柄。個人的には「自転車ブルー!!」が好みでした。青春ならではの爽やかさに溢れていて、読み心地が良かったです。

 
 振り返ってみると、どの物語も恋愛色が薄い上に、悪意を持った人物が登場しない優しい物語ばかり。テーマも友情、成長、家族愛…みたいなものが多く、小さいお子さんにも読ませても大丈夫そうな、安心感のある作品になっております。


【男性へのガイド】
→低年齢向け少女漫画的なお話。女子同士の友情ということでムズ痒い部分もあるかもしれませんが、拒絶反応示すような要素はなく、普通に読めるんじゃないかと思いますー。
【感想まとめ】
→どこか懐かしさを感じるような作品でした。短編集ということでまとまりはないですが、どれも共通して温かさや爽やかさがある内容で、読んでいて良い気持ちになれました。


作品DATA
■著者:ささだあすか
■出版社:新書館
■レーベル:ウィングスコミックス
■掲載誌:ひらり、LaLaDX
■全1巻
■価格:800円+税


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Tag [続刊レビュー] 2012.12.22
作品紹介→*新作レビュー*雨隠ギド「まぼろしにふれてよ」
2巻レビュー→転校生がツンツンかわいい:雨隠ギド「まぼろしにふれてよ」2巻



1106223914.jpg雨隠ギド「まぼろしにふれてよ」(3)


ふれられるのを待ってる


■3巻発売、完結しました。
 狸筆の正体は、幼いひとこをかばってくれた狸だった。どうしてモノってこんなにけなげなんだろうね…。初めて過去と向き合ったひとこは、からかさ様に託された傘に名前を付け、心のままに愛してみようと決める。ところがその直後くろが消え、真加村も姿を消してしまう。ひとりになったひとこの前に現れた、テンコウセイの驚きの正体とは…!?


〜完結です〜
 3巻で完結しました。コツコツと巻数を重ねて、ようやく完結した感覚なのですが、まだたった3巻なんですよね。ウイングスコミックスってどうしても刊行ペースが遅くて歯がゆいイメージがあるのですが、この作品も例に漏れずでございました…。好きなんですが、さすがにこれだけ間が空くと、内容を忘れていたりするんですよね。なお2巻で覚えていたことは、タヌキのお嬢さんがツンツンかわいかったってことぐらいです(ひどい)。あ、あと「テンコウセイに気をつけて」ですね!


〜テンコウセイの正体〜
 そのテンコウセイですが、「転校生」ではなく「天狐星」ということでした。そして3巻、早々にその「天狐星」の正体が明らかになりました。天狐星であったのは…
 
 
まぼろしにふれてよ3−1
先生


 …誰?いや、すみません。割とガチで忘れていたので1巻から読み直してみたら、いやいや随所で驚くほど怪しげに描かれているではないですか。ポジションは顧問の先生というものでありながら、クロの親戚と紹介していたり、野原で寝屋としているような感じもあり…。全くの無警戒だったことが恥ずかしい。しかもテンコウセイというワードは、1巻の第2話で既に登場しており、この物語が最初からこの結末を狙って描かれていたものだと、容易に想像が付きます。こうして時間をかけつつも、あるべき所に落ちた物語をこうして読むことができるというのは、やっぱり幸せなことですよね。3巻まとめて読んでみたら、きっとまた違った発見とかがありそうで、今度の年末時間のある時に、是非ともじっくり読み返して見たいと思いました。
 
 
〜モノは使ってこそ〜
 さて、そんな計画的というか、割と一貫して描かれた物語であった本作ですが、そのメッセージは至ってシンプルなものでした。まず象徴的に描かれるのは、人間が使っている「モノ」と人間の関係性なわけですが、それについては明確に作者さん自身の考え方のようなものが描かれていました
 
 
まぼろしにふれてよ3−2
モノは使い込んで、壊すまで使い切る


 モノにとっては、使われることこそが、人間と関係する唯一の手段なのです。だから人間は、遠慮して使わずにおくのではなく、使って使って壊れるまで使ってあげるのが良い、と。
 
 ただ本作で描きたかったのは、「モノをちゃんと使いましょう」なんて教科書的なマナーメッセージではなくて、もっと人間の感情的な部分に迫るもののような気がします。モノと人間の関係で浮き彫りになるのは、「モノは使うべき」というところよりもむしろ、「使われないモノは孤独で寂しい」という部分ではないでしょうか。つまるところ、関係を持たなくちゃ意味がないし、寂しいし、悲しいし、切ない…というような。その結果生まれた孤独の象徴というのが、他でもない「天狐星」だったんじゃなかろうか、と。孤独を抱えたテンコウセイは、その孤独さをこじらせて、結果的に「世界をいじくる」という形でこの世の中と関わりを持とうとしたのでした。ただ最終的に、テンコウセイは孤独ではありませんでした。小手先の関係性ではなく、根源的に何かとつながるという意味では、彼にかけられた呪いそのものが、まさに母である狐との関係性そのものなのです。真加村との一連のエピドードもそうですよね。この「モノと人間」というわかりやすい関係から領域を拡げ、だんだんと関係性というものが輪郭をなくし概念的になっていくという拡げ方が、とにかく上手い。シンプルで、だけど心の奥深い所に触れてくるような、そんな感覚。関係を持つことを本作では「ふれる」という言葉で表しています。ちょうど作品タイトルに帰結するんですよね。完結したこのタイミングで改めて、「まぼろしにふれてよ」オススメします。


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Tag [続刊レビュー] 2012.09.17
作品紹介→かわい千草「101人目のアリス」
4巻レビュー→クレアの魅力がついに大爆発:かわい千草「101人目のアリス」4巻
5巻レビュー→クレアさんさすがです:かわい千草「101人目のアリス」5巻




1106158370.jpgかわい千草「101人目のアリス」(6)


ありがと
オレの才能信じてくれて



■6巻発売しました。
 「君はヴァイオリンで一番になれる」ヴィックが異母兄弟・マックスを任すために自分を利用したと思い込み、傷ついたアリス。しかし混乱した彼を目覚めさせたのは、ライバル・マックスの言葉だった。「君は、本物だ」…仲間に励まされ、自分を見つめるアリスは、もう一度ヴィックと向き合うことを決意する…。
 

〜実に1年以上ぶりの新刊です!〜
 久々の新刊ですよ。なんと1年1ヶ月ぶり。毎度のことながら内容を覚えておらず、都度都度読み返すという(笑)5巻では、アリスが頑張る原動力となっていた幻のバイオリン“Margo”が見つかり、さらにヴィックがマックスの異母兄弟であることが判明と、非常に大きな動きのあった回でした。6巻ではどれほど大きく動いてくるのか…と思いきや、アリスを取り巻く物語は思いの外すんなりと良い方向へと動いて行きます。


〜イイ子すぎるアリスだが、そんな上手くいくはずないだろうに〜
 ヴィックが真実を隠していたことに対してアリスは激昂。しかし彼が自分の才能を評価していたことは嘘ではないと分かると、アリスはその怒りをやる気へと変換。ヴィックとの蟠りはなくし、本格的にレッスンに取り組むようになります。同時にジルコフ教授の特訓や、将来有望な生徒が出るというヴェルダ音楽祭への参加と、一気に追い風が吹いてきます。6巻開始時の不穏な空気はどこへやら。雰囲気的にはあと1〜2巻尾を引いてもおかしくないくらいだったのですが、どうしてこうなったのでしょう。その原動力となったのは、他でもないアリスのその行動そのものにあります。
 
 ヴィックの家族関係については「興味がない」で通し、騙していたことそのものについては、「自分の才能を評価してくれていたから」と消化。先生に対してもやる気をしっかりとアピールするし、マックスとヴィックとの兄弟関係にも首を突っ込み仲直りに執心し。一言で言うなら、物わかりの良い教科書的な「イイ子」なんです。けれども感じるのは、「よかったよかった」という感覚ではなく、明らかに違和感なんですよ。なんていうか、もっとアリスはわがままで、自分のことばかり考えていて欲しいというか。良い意味でも悪い意味でも「子供」あ印象なんですよね。この、一旦場を収めるために、で無理矢理押さえ込まれた感が、読んでいてすごかった。正直、「こんな上手く事が運んでいいのだろうか(いや、ない)」的に思っていたのですが、あとがきにて…


101人目のアリス6−1
※バレーボール=アリス



 ああ、やっぱり…。どうやら今は順調さの絶頂のようです。これが一気に落ちるってんですから、いやぁ7巻恐ろしい。読んでみたいような、読んでみたくないような…。今から読むの怖いってなかなかですよ(笑)アリスが無事であることを祈ります。



〜クレアが友達思いのステキな紅一点に〜
 さて、7巻で一気に落ちるであろうアリス。実は彼以外にも、脇役達がそれぞれに不満や不安要素を抱えています。それぞれが悪い状態にいると、復活の機会がなかなかなくなってしまうのですが、そこは紅一点のクレアに期待したいところです。今までも要所要所で良い働きをしてきた彼女。今現在の不安要素もこれと言ってなく、非常に頼もしい存在なのですが、ここにきて更に、非常に友達想いの一面を見せるようになってきました。

 今回ヴィックに騙されていたことに落ち込んでいるアリスを見るや、その悩みをごくごく自然に聞き出して…
 

101人目のアリス6−2
ヴィックに電話してこれ


 今までのアリスだったら、このへんはスルーして当然ってくらいのイメージです。それが今や自ら首を突っ込み、友達を想ってあげるという。これ、アリスが自然に話したって感じなのですが、クレアって自らそういう雰囲気出していて、引き出したと言っても同然。こういう雰囲気の人っているんですよね。なんでも話せちゃう、みたいな。しかも無闇にそのことは他人に話さない、気遣いも出来たりするものだから、もう素敵。また彼女、一緒につるむメンバーだけでなく…


101人目のアリス6−3
マックスにも


 クレアの真意は正直様々ありそうで、現時点でコレとは言えないのですが、単純にマックスに興味があるのか。マックスに話しかけるには、それ相応の音楽の実力がないと話しかけにくいものなのですが、クレアはその辺もしっかりクリア。基本空気読めるのですが、時に敢えて空気を読まない時があったりと、本当に動ける人です。テオ、ヴィック、アリス、そしてマックスと、主要な生徒達相手に自由に動くことができる彼女が、不穏な空気漂う7巻で躍動してくれるのではないかと、期待が膨らみます。てか何より彼女が好きなので、活躍してくれたらそれだけで嬉しいっていう、一ファンとしての期待感でしかないのですが(笑)


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かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
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王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。