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Tag [続刊レビュー] 2015.04.26
513k58obbYL.jpg餡蜜「カンナとでっち」(2)



オレらは将来
どうなってんだろな




■2巻発売しました。
 カナヅチを愛でる見習い大工・勝仁と同居生活中のカンナ。ある日、ひょんなことから彼に初キスを奪われてしまったカンナは、少しずつ彼のことを意識し始めちゃって……。父と交わした「恋愛禁止」の掟、守れないかも……!!?


~引き続き瑞々しく甘い同居ものです~
 同居ものとして押さえるべきところをこれでもかと辿っていく素敵な作品として1巻をご紹介したのですが、2巻も引き続き「これぞ同居もの」とも言うべきイベントの数々が詰め込まれ、ニヤニヤしっぱなしでした。正式に付き合ったりしているわけでもないので、ライバルだったり避けようのない不幸が起きたりといったこともなく、くっつくことのできないラインでのドキドキのやり取りが終始続くわけで、もうニヤケ死にするんじゃないかってくらい、瑞々しくも甘い内容となっています。ここ最近でも屈指の「楽しく幸せな恋愛もの」なんじゃないかと思っています。


~お留守番からのお風呂とごはん~
 2巻では勝仁が「男前大工グランプリ」に出場したことをきっかけに、一気にイケメンとして女性からの人気を博するようになるのですが、そこは同居人としてのアドバンテージがありますから、これといって二人の関係が悪化したりするようなことはありません。そして騒ぎ立つ周囲を尻目に、家という守られた場所でまたしても「同居ものスタンプラリー」を巡っていきます。極めつけはMission8で、両親が不在となった家に2人きりとなった場面。共同作業をしてからの、お風呂で向こうの裸にドキッとしたり、そこから料理をしてあげて和んだりと、やりたい放題。

カンナとでっち0002
 もちろん「恋愛禁止」という制約を守ろうとしての行動ですから、節度ある触れ合いにはなるんですけれども、だからこそ余計にエロい的な、制約があるがゆえのドキドキ感というものがキッチリと表現されていて、もう読んでいて「ありがとうございます」という言葉しか出てきませんでした。


~かなり恋愛色は強いのですが~
 物語に占める恋愛のウェイトはかなり大きなものとなっているのですが、そこまでロマンティックな苦さや甘さを感じることなく自然に読めるのは、相手役の勝仁が大工仕事に真剣に向き合っている姿が度々描かれるからだと思われます。もちろんヒロインのことは大事に想っているし、少なからず好意は抱いているのですが、仕事の時の切り替えがしっかりしているので、同じ雰囲気がだらだらと続くことがありません。真剣に仕事をしている姿は一つ相手役の魅力を描き出す大きなポイントになりますし、手を動かして具体的な「モノ」が出来上がってくるのも良い所ですよね。たとえば私はシステム開発の仕事をしているのですが、これってなかなかこうはいかないわけですよ。もちろんアプリ開発とか、あるんですけど、汗とか筋肉とかないので、どうしても大工仕事に比べると弱いというか…


カンナとでっち0003
このカンナの削り節をプレゼントするところとか、良いなぁと(笑)


また本作では、ちょっとした小仕事を共同で行うというイベントが度々投入され、2人の距離を縮めます。一緒に作業をするとそれだけで楽しいものですが、加えて最後に何か出来上がるという楽しみもあり、読んでいて実に羨ましかった。看板とか台とかだけではなく、お菓子の家なんてのも出てきたりして、女子のハートもがっちりキャッチ。いやー自分も大工さんになりたいっす(不純)


■関連作品レビュー
イケメン見習い大工とのドキドキ同居生活:餡蜜「カンナとでっち」1巻

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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2015.02.01
1106472285.jpg餡蜜「カンナとでっち」(1)



カンナ
行ってきます




■カンナの家は工務店で、父は町の大工さん。ある日、カンナと同い年の見習い大工・勝仁が、父のもとで大工修業することになって!?知らない男の子といっしょに住むなんて……この先どうしたらいいの!!?イケメン職人男子とのドキドキ同居ラブストーリー、第1巻!


 餡蜜先生の別冊フレンド連載作になります。工務店の娘であるカンナの家に、ある日見習い大工がやってくることから物語は始まります。その見習いはカンナと同い年で、同じ学校の定時制に通う男の子・勝仁。金髪にピアスというちゃらい風貌もさることながら、同い年の男の子と同居生活なんて……と戸惑うカンナでしたが、彼の大工仕事に懸ける熱い想いに触れ、だんだんと彼の魅力に惹かれるようになっていき…というお話。


カンナとでっち
勝仁の大工仕事への思い入れはかなりのもので、道具を愛でる気持ちもこんな感じでやや気持ち悪いぐらい。カンナの父に憧れを抱いており、この家へと修行に来たのでした。性格は明るく、非常に人懐っこいところがあります。ノリよくいたずらなところがあり、それがカンナとの距離をうまく縮めるきっかけに。


 年頃の男女が一つ屋根の下で暮らすことになるということで、王道同居ものです。さすがに二人きりというわけにはいきませんが、一緒に生活している以上関わる機会は多いわけで、そしてありえないくらい美味しいハプニングが起きます。看病での密着とか、寝入っちゃって寄りかかるとか、もつれて倒れこんで大胆な体勢とか、長らく生きてきて私自身は一度も経験したことのないような羨ましいアレコレが、1か月ぐらいの短期間で立て続けに起きております。これをありえないなんて言っちゃだめ。お約束なんだから、むしろありがたく頂かないと。こういうところからもわかるとおり、「同居ものとはこうやって攻めるんだぞ」という事がギュッと凝縮されたような作品で、同居もの好きにとってはまず間違いない内容かと思います。


カンナとでっち0003
1話に1~2回くらいはこういうドキッとハプニングが起こります。ありがてえありがてえ。2巻ではお風呂で遭遇とか着替え中の部屋に入っちゃうとか、「お約束」をフルコンプしてほしいところです。


 一方同居ものというと、一緒に暮らしていて何かトラブルなどが起きた時に意外と優しかったとか、そういうエピソードでヒロインからの好感度を上げていくパターンが多いのですが、本作の場合は大工仕事に打ち込む姿を見て胸キュンしちゃったりと、間接的な攻撃もちょこちょこと放り込まれてきます。なので直接攻撃のみの単調さはなく、適度にメリハリはついているのかな、と思います。


 講談社のワンテーマものというと、そのお仕事に関する知識解説などがあるのですが、明示的に説明することはなく、流れの中でこんなものだと軽く触れられる程度です。なのでお仕事ものの側面を期待して読まれると、少し肩透かしをくらうかもしれません。そこはあくまで、そういう職業の人が相手役になった恋愛ものとして読んでいただければよいかと思います。

 
【男性へのガイド】
→ザ・少女漫画という内容ですので、そういうのを求めている方こそが読むべき作品かと思います。相手キャラはいわゆるオラオラ系とは異なり、ノリの良い兄ちゃんという感じなので、そこは障壁にはあまりならないのかな、とも思います。
【感想まとめ】
→ひねりなくど真ん中直球勝負の同居ものということで、読んでいてとても気持ちがよかったです。別冊フレンドらしい、恋愛マンガでした。


作品DATA
■著者:餡蜜
■出版社:講談社
■レーベル:KC別フレ
■掲載誌:別冊フレンド
■既刊1巻
■価格:463円


■試し読み:第1話

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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2014.04.28
1106389908.jpgリカチ「氷の女王」(1)


自分じゃない
違う自分になりたい



■シャイで何もとりえがない主人公・ニカはある日、同じクラスの地味メン・七緒がフィギュアスケートの練習をしているかっこいい姿を目撃する。自分も真似して滑ってみると、楽しくてなんだか自分が自分じゃないみたい!それを偶然彼に見られ、「センスがあるね」とほめられて…!?

 「明治緋色奇譚」(→レビュー)のリカチ先生のベツフレ連載作になります。タイトルは「氷の女王」ということで、お分かりかと思いますが、フィギュアスケートのお話。ここ最近非常に競技人気が高まっているスポーツとはいえ、こと十代向けの少女漫画ではスポ魂ものはなかなか根付かないので、是非とも応援したいところです。
 
 主人公は、非常に内向的な性格の持ち主である中学生・ニカ。とある事情でクラスメイトの地味男子・七緒に話しかけようとするも、なかなか話しかけられずに、半ば尾行状態に。そして辿り着いたのが、スケートリンク。地味メンの七緒は、実は将来を嘱望される才能溢れるフィギュアスケーターだったのです。その姿を見てフィギュアに興味を持ったニカ。見よう見まねで滑ってみると、何やらセンスがあるようで…本格的にスケートをはじめることになるのですが…というお話。当然のようにニカは七緒に恋するわけで、もちろんその辺も十代向けにしっかり押さえております。


氷の女王1-1
七緒は基本もの静か。スケート愛に溢れておりますが、それが変な発言につながったりすることも。彼にその素質を見出され、ニカはスケートの道を歩み始めます。


 さて、物語はここから一気に2年飛びます。さらに視点もニカからチェンジ。ここで登場するのが、絶対女王・貴和子。絶対女王と言いつつも、年齢はニカと同じで、高校生ながら既に世界で活躍しているという輝かしい存在です。立ち位置的には「ちはやふる」でいう詩暢でしょうか。しかしこの貴和子がいい味出しているんだ。
 
 見ためはいかにも悪役で、さらにはビッグマウスを連発、そして連戦連勝。これだけ取れば完全に小憎らしいライバルでありラスボスなのですが、自分自身が悪役顔であることは自覚しており、ビッグマウスも自分の想いとは裏腹に、周囲の期待に応える形で出してしまっているという。さらに中身は恋する普通の十代。ニカと同じく七緒に想いを寄せており、なかなか想いを伝えられずにいるのです。つまり、競技でも恋でもニカのライバルという。


氷の女王1-2
 もうね、この貴和子がちょいとメタ感あるところも含め、めちゃくちゃ応援してあげたくなる子なんです。前半がニカ、後半は完全に貴和子のフェーズになっていて、実質ダブルヒロインという状態。普通のスポ魂ものであれば、憎らしいほどに強い相手に打ち勝って…という流れになるのですが、本作はそういう一視点からのシンプルな物語に落し込むような作りになっておらず、これからどういう展開を見せるのか非常に気になるところです。


 恋愛とスケートの2軸ですが、ニカと貴和子はどちらも正反対のタイプ。ニカのスケートは表現力に長けたタイプであり、また見ため可愛いふんわり系女子。一方の貴和子は、気丈に振る舞うハキハキとしたタイプの子で、競技も表現力よりは技術で勝負するタイプ。男にモテるのはニカでしょうが、同性からモテるのは貴和子ですかねー。私も現実にいたらニカにやられそうですが(テレビ見て「この子可愛いから、この子応援するわ」とか言いそう)、物語を読んでいるとどうしても貴和子に肩入れしたくなります。
 
 二人はまだ邂逅した段階で、本格的に相見えるのは2巻以降。現時点ではキャラの魅力と物語のさわりだけで持っていっている状況なのですが、それでも引き込まれちゃってます、はい。いや、そもそも実際のフィギュアも本人の物語が見えた方が感動的ですし、そういう意味ではある意味セオリー通りの描き方なのかも。そしてそういった物語の下支えがあるから、フィギュア漫画は良作揃いなのかもしれませんね。2巻、今から楽しみです。


【男性へのガイド】
→低年齢向けの少女漫画っぽいテンションなので、それが一つ目のハードルでしょうか。恋に傾倒しがちですが、キャラクター自体は非常に魅力的で、ぜひそこに着目いただきたい。
【感想まとめ】
→オーソドックスなスポ魂かとおもいきや、ダブルヒロインでむしろ後発のライバルに夢中になるとは…。完全にやられました。面白いです。


作品DATA
■著者:リカチ
■出版社:講談社
■レーベル:KCベツフレ
■掲載誌:ベツフレ
■既刊1巻
■価格:429円+税


■試し読み;第1話

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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2013.12.19
1106349294.jpg「青Ao-Natsu夏」(1)


あたし
ここでの40日飽きない気がしてきた…



■東京で合コン祭りのはずが、夏休みをお婆ちゃんの家で過ごすことになった理緒。電車に乗って数時間、お婆ちゃんの家があるのは、山と川と畑に囲まれた田舎。夏休み中ずっとという長さに不安を覚えていた中、そこで理緒が出会っのは、硬派だけど少し意地悪な男子で…!?蟬の声と川のせせらぎの中、青春よりもっと青くて熱い、夏空みたいな恋、はじまる…!!

 「隣のあたし」(→レビュー)や「スプラウト」などを描かれている南波あつこ先生の新作です。タイトルがなんか凄いことになってますね。今回描かれるのは、田舎での夏休みに生まれた恋物語。主人公は、高校生となった今でも“運命の出会い”を夢見ている女子・理緒。合コンに連れられても、イマイチピンと来ない。運命の出会いもないままに迎えた夏休み、両親からの要請で、夏休み中ずっと田舎のお婆ちゃんの家で過ごすことに。東京での夏休みはきっと楽しかったはず、40日も友達に会えないなんて…落ち込みながらスタートした夏休みは、一人の男の子との出会いによってキラキラと輝くものへと変貌を遂げます。その村の酒屋の倅という彼・吟蔵くんは、理緒に田舎ならではの魅力を教えてくれます。しかしあることをきっかけに、彼は何やら冷たい態度を取り…というお話。


青夏1−1
山と川に囲まれた田舎の夏は、遊び場がたくさん。山には草花が咲き誇り、川で泳ぎ、夜になれば満天の星空。一人で見ても良いですが、気になる人と一緒だったら、さらに違った魅力が…。


 南波あつこ先生の作品って、こう好きになるきっかけであるとか、好きになっていく過程がありありと伝わってきて、すごく良い気分になるんですよね。本作も爽やかな青春の匂いを一杯に感じることのできる作品になっております。今となってはもう戻ってこない、大事な時間・青春の輝きがそこにはありました。1話目読んだ時点で「今回もさすがです」と。これまでの作品が好きならば、まず間違いありませんので、はい。
 
 あらまし紹介で、吟蔵が突如理緒に冷たくなると書きましたが、それは誤解によるもの。吟蔵は理緒のおばあちゃんと仲が良く、なかなか田舎にやってこない理緒のことを「あんな優しい婆ちゃんを放っておいている悪い奴」と思っていたという。東京住まいの理緒がなかなか東京にやってこれないのは事実ではありますが、二人の関係は良好。一時ギスギスした関係になりますが、すぐに打ち解けます。あとは田舎での生活で、吟蔵の友人たちとも触れ合いつつ、日々を過ごして行くという流れ。至極真っ当なイベントたちと、ちょっとした事件が起きつつ、その中で相手への想いを強めていくという、ストレートな青春恋愛ものの様相を呈します。
 
 南波あつこ先生の作品というと、相手に彼女や彼女っぽい存在がいて、ギスギスとしたライバル関係になりながら、最後はこっちを振り向いてくれるというパターンが定番(個人的に「南波節」と呼んでいます)。今回も、そういうポジションに置かれている子が一人。吟蔵の家の近くで同じ商店をやっている家の娘で、両親は二人をくっつけようとしているという。ただ彼女の場合、恋愛関係にあるわけではなく、今までのライバルのようにギクシャクとした関係に拍車がかかりそうな性格の持ち主でもなさそうです。というのも現時点でものすごくサッパリとした性格で、あんまり恋愛に固執しなそう。そして何より巨乳(関係のない話題)。


青夏1−2
この子絶対良い子だもの、既に惹かれております、はい。
 

 本作のポイントは、40日間というタイムリミットが明確に切られていること。最初こそ1日1日が普通に流れて行きますが、この土地、ここで暮らす人たちとの関係が強まっていくごとに、1日1日がもったいなく感じてくるはず。恋愛で言えば答えをしっかりと出さないと行けないわけで、焦りを感じつつの恋愛模様になるやもしれません。40日間という期限設定は、夏休みで1日中使えるということを差し引いても、恋愛を成就させるにはやや短めかも。そのため変に深みにはまるようなドロドロとした雰囲気にもならず、物語が展開してくれるのではないかなぁと期待しています。
 
 物語の舞台は架空の土地ですが、イナゴを食べる描写があることから、長野がモデルになっているんじゃないかと思います。私も故郷は長野なのですが、イナゴは食べましたよ。佃煮なので、味は甘いだけですし、意外と美味しいのです。故郷愛もちょいとくすぐられる本作、安定の出来で、今回ももちろんオススメです。


【男性へのガイド】
→少女マンガがお好きな方にはうってつけ。
【感想まとめ】
→青春期のキラキラした恋愛模様、爽やかの一言に尽きます。物語を楽しむと共に、戻ってこない日々を懐かしんで、少しセンチメンタルな気分になりました。


作品DATA
■著者:南波あつこ
■出版社:講談社
■レーベル:KC ベツフレ
■掲載誌:別冊フレンド
■既刊1巻
■価格:429円+税


■試し読み:第一話

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Tag [続刊レビュー] 2013.12.09
1106339748.jpgジョージ朝倉「溺れるナイフ」(16)


まだ全然足らないよ
まだ生きてんじゃん
殺して!



■16巻発売しています。
 その胸のうちを知るために、コウを捜しに東京から戻った夏芽を迎えたのは、コウの部屋にいるはずのカナだった。余裕の笑みに、動揺を隠すことができない夏芽。そのころ、コウは…。
 
 
〜一気に読みました〜
 16巻が発売されています。12巻を読んでから、何故か続きを読まずにここまで来てしまったのですが、時間があったので一気に読みました。こういうパワーのある作品って、読むのにすごく体力使うんですよね。案の定、ものすごいことになってました。なのでエントリータイトルは16巻ってなっていますが、本エントリは13〜16巻をまとめての感想ですので、悪しからず。


〜大友が完全にフェードアウト〜
 まずびっくりだったのが、大友が結構頑張って食い下がっていたものの、最終的に打ち捨てられて以降完全にフェードアウトしているというところでしょうか(酷い言いっぷり)。彼もコウや桜司、夏芽なんかと比肩できるキャラだと思っていたのですが、そこまで尖っていなかったし、選ばれた存在でもなかったということなのでしょう。様々な人物がこの物語を彩ってきましたが、どんどんと振り落とされて、最終的に残るのは、上か下かの2極。コウや夏芽のようにどこまでも輝ける信仰対象には成り得なかったし、一方で神を壊さんとする強姦魔や、桜司や、カナのような行動もできなかった。それこそが魅力であったのかもしれませんが、これだけ尖った物語の中、中庸すぎるのが仇となったのか。キン肉マンで言う、ジェロニモですかね。いや、憧れてそれでも成れないというのは、むしろ桜司こそがそれなのかもしれませんけれど。
 
 
溺れるナイフ16-1
あの一件以来再登場はなく、割と酷い別れ方をしたままフェードアウト。この投げられっぷりは、「モテキ」本編の中柴いつかちゃんを想起させます。最終回も出てこないかなぁ…。個人的には一番好きなキャラクターであったので、少し寂しいところではあります。


〜カナちゃんが相変わらず怖い〜
 後半になるに従って、どんどんとその登場回数が増えていったのが、カナちゃんでした。もうね、率直に怖いこの子(笑)信仰心がこじれて変な方向に走り出しているのが、アブナイ信者っぽくて、素晴らしい。信仰ってのは対象を神格化して決して触れないようにする印象があるのですが、そんな中、コウからの働きかけだとは言え、一度抱かれようとしたのが生々しくて「おおう…」と。その真意がわからないってのが一番気味悪く感じさせる要因であるのですが、そんな中で唯一清々しかったのが、
 

溺れるナイフ16-2
大嫌いじゃ


 この子の特徴って、信仰としてコウちゃんを上に見るからか、会話の端々に彼女が抱いている上下関係が垣間見えるのがイヤなんですよね。コウちゃんに対してはあくまで下から。で、夏芽に対しては上から。他の人にもそうだと思うのですが、ことコウちゃんの話になると、その見下げる角度はより大きなものになる印象がありました。それがこのシーンだけは、対等な視点で、本心を吐露していて、「あ、やっと作ってない言葉が聞けたな」と。かといって好きなキャラになるかというと、そうではないんですけれども。


〜選ばれた二人が乗り越えなければいけないこと〜
 物語がどのような結末を見せるかが、個人的な注目材料だったのですが、そういう形で来ますか。過去のトラウマからの抜け出し(納得させ飲み込む方向)ではなくて、真っ向からぶつかって乗り越えるというもの。当人達にとっては最も酷な道であると同時に、最も綺麗に「本来の自分」を取り戻すことができる道でもあります。いつまでたってもついてくるであろう陰ならば、真っ正面から潰しに行って消し去るという。物語的にはこれしかありえなかったのでしょう。16巻最終話のタイトルは「夏、…邂逅」とありますが、偶然を意味する邂逅ではあるものの、この遭遇はある種必然とも言えます。ただそれに際しても、この進路の中で様々な選択肢は出てくるわけで。巻末のあの切り方は、様々な道を残しつつの幕切れで、続きがどうしたって気になる終わり方。17巻が最終巻ということで、心して待ちたいと思います。

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