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2011.11.20
作品紹介→藤沢志月「キミのとなりで青春中。」
3巻レビュー→ベツコミを知るならこの作品がうってつけだと思います《続刊レビュー》「キミのとなりで青春中。」3巻
4巻レビュー→スタンダードスタイルゆえの安定感:藤沢志月「キミのとなりで青春中。」4巻
5巻レビュー→生々しいモテ方には思わず納得:藤沢志月「キミのとなりで青春中。」5巻
6巻レビュー→自分の気持ちに素直になるための勇気を…:藤沢志月「君のとなりで青春中。」6巻




1106069925.jpg藤沢志月「キミのとなりで青春中。」(8)


正直になりなさい
正直に



■8巻発売、完結しました。
 GWの旅行先で、慶太と今まで以上にいい雰囲気になれた美羽。そんな時、アメリカ旅行中の慶太の母・加世子が倒れたという知らせが入り、急遽ロスに向かった慶太と美羽。幸い加世子は無事だったけれど、慶太がUCLAに進学を希望していると知った美羽は…!?
 

~完結しました~
 8巻にて完結と相成りました。非常にベツコミらしい作品であると同時に、取り立ててこれといった特長もない作品でもあったという印象の本作が、まさか8巻まで続くとは思ってもみませんでした。とはいえ地味ながら抜群の安定感を誇ったのもまた事実。その結果がこの8巻という巻数。8巻帯には累計100万部の文字。ぱっと聞くと大したことないような感じに映るかもしれませんが、少女漫画で単巻あたり10万部超えていると考えると、やっぱりなかなかすごいんだな、と思わされます。


~前とは違う、二度目の別れ~
 今回ついに完結を迎えたわけですが、その障壁となったのは家族関係やライバルの登場でも何でもなく、自分達それぞれが思い描く未来への想いでした。アメリカへ行ったことで改めて明らかになった、慶太の想い。それは、姿を見たことのない母親と、自分の幼少時代に思い描いた夢への想い。希望進路はUCLA。その夢を優先すれば、美羽とはまたしても長い間離ればなれになってしまいます。ためらわせるのは、美羽の存在。そしてそんな彼の背中を押したのもまた、美羽でした。
 
 
キミのとなりて#12441;青春中8
ずっと目標にしてきたことを諦めないで


 結局彼女の言葉に励まされ、慶太はUCLA行きを決意します。慶太とはこれで2度目の別れ。けれども前の別れとは、全然中身の違う別れでした。それまでの美羽にとって、去る背中というのはとてもとても辛い姿として記憶されていました。突然家を出ていった母親。そして、想いを伝えたままにいなくなった慶太。この二人の記憶があったからです。どちらも心の準備もないままに、突然のお別れ。後悔と疑問が、彼女の心を支配しました。突然の別れは、いわば彼女のトラウマとしてこの物語では終始描かれてきました。
 
 慶太とはその後再会し、恋人にまでなりましたが、それでも、だからこそ別れは辛いし不安。慶太と恋人として築き上げて来た時間は、あくまで隣にいる時だけ。離ればなれの状況は、全くの未知数です。それでもなお慶太の背中を押して遠距離恋愛を覚悟したのは、想いの強さゆえでしょうか。恋人のことを信じて正直に…一見それのみ描かれているシーンのように映るのですが、同時に彼女が過去の傷を乗り越える瞬間でもあったのかな、とちょっと思ったり。
 

~結婚ラストは割と簡単に予想できました(笑)~
 さて、少女漫画ですから当然ハッピーエンドなわけですが、重要なのがラストをどういう落としどころに持って行くのかってところですよ。例えば想いが通じあってキスシーンで終わるとか、本作の場合であれば、卒業式エンドであるとか、ちょっと気どって空港での見送りエンドとかも可能性としてあるはずです。様々なあるとはいえ、大体幾つかの定型的なパターンがあって、その中でもおおまかに「二人の未来はご想像に御任せします」か「二人は結局こうなります!」っていう二パターンに分かれるんですよね。で、後者で多いのが結婚してるっていうもの。最近あんまり見なくなったのですが、割とこのタイプ好きでして。で、本作もそれにあたるのですが、正直そのオチが帯の言葉を見ただけで容易に想像できたという(笑)いや、別に不満とかではないのですが、割とそういうの楽しみにしてる人とかいると思うんですよ。その楽しみを一つ奪われて、嬉しくもちょっとだけガッカリした最後なのでした。


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2011.10.31
作品紹介→*新作レビュー*宇佐美真紀「ココロ・ボタン」
2巻レビュー→捨て台詞の「死ね」がこんなにもカワイイものだとは:宇佐美真紀「ココロ・ボタン」2巻
3巻レビュー→違った仕草を見せ始める古閑くんが良い良い:宇佐美真紀「ココロ・ボタン」3巻
4巻レビュー→彼女が掴み合いの喧嘩してるのに笑顔:宇佐美真紀「ココロボタン」4巻
5巻レビュー→あなたはどのヘアスタイルがお好み?:宇佐美真紀「ココロボタン」5巻
関連作品レビュー→宇佐美真紀「春行きバス」宇佐美真紀「恋*音」




1106069696.jpg宇佐美真紀「ココロ・ボタン」(6)


あーもー
なんでこんなに
この人が名前呼ぶだけで
胸ん中いっぱいになるんだろう



■6巻発売です。
 みんなでクリスマスパーティーをした後、古閑くんの家で二人っきりになっちゃって、緊張のあまり心臓が爆発しそうになっちゃった新奈。"イヤなら何もしないよ”って古閑くんは言ってくれたけれど、チューとかギューなら全然大丈夫なのに…?
 

~まさしくベツコミの癒し~
 シリアスな恋愛ものが多いベツコミ作品にあって、これはほのぼのふんわり系の恋模様で、本当に毎回癒されます。疲れているときに読むと、なんだかすごく心が柔らかくなるというか。今回も相変わらずの微笑ましいドタバタが…そんな中、一生懸命に真剣に動き回る新奈が可愛いのなんの。今までも、大したことのない出来事で殴り合いをしたりしましたが、今回も…
 
 

ココロホ#12441;タン6-1
ほこりまみれのほふく前進



 一体どういうことしてればこんなになれるのかって感じなのですが、それだけいつも一生懸命ってこと。男の子二人いて、別の方法もあったのかもしれないのに率先して自分から飛び込んでいくその姿は、頼もしいというか、逆に守ってあげたくなるというか…。どちらにせよこの飾らない前向きさは、確実に人の心を開かせるし、そんなところが古閑くんも好きなんでしょう。
 

~何気に弱る古閑くんもかわいかった~
 相変わらずの新奈もですが、今回は古閑くんが違った形でかわいかったです。いつもは余裕ありげでいたずらな笑顔見せてるその姿が、なんとも素敵なのですが、今回は余裕ではなくちょっと弱ってからの甘えた感じがまたいとをかしでございまして…
 

ココロホ#12441;タン6-2
熱を出して、一度は「帰っていい」と言ってからの「いてよ」


 新奈がふとこぼした「帰りたくなくなっちゃう」の一言に、素直に甘えるこの光景。「もう少しだけ」というちょっとの気遣いの言葉が、冗談じゃなく本気で言っているのだということを、強く感じさせます。普段だったら絶対についてこない言葉だと思うんですよね。熱が出て弱っているからこその、この言葉。もうこの先なかなか見れないかもしれないですよ!こんな風に弱さを見せてくれるから、余計に新奈は古閑くんに夢中になってしまうわけで。
 

~古閑くん隠れマザコン疑惑~
 さて、今回はなんと古閑くんのお母様のご登場ですよ。お金持ちの家で、お母さんは息子を放ったらかしという少女漫画にありがちなパターンかと思いきや、割と親子関係は良好のようで。しかもお母さんめっちゃ元気があって明るい!初めて出会う息子のガールフレンドにもニコニコしながら接してくれるし、勢い余って自分の話をして泣き出しちゃう…あれ、なんかこのキャラどっかで見たなと思ったら、他でもない新奈じゃないですか。容姿がそもそも似ている気がするのですが、そのキャラも。まぁ古閑くんのお母さんは女性社長なんで、普段の姿は似ても似つかないとは思いますが、でもすごく人間っぽいところが似てるなぁって。知らず知らずのうちに、なんとなく母親の姿を新奈の中に見出してる部分が、あるんじゃないのかななんて考えてしまったり。いや、単純に私が甘えてる古閑くんの姿が見たいだけなんですけども(もごもご


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Tag [続刊レビュー] 2011.08.30
作品紹介→モデルの裸、全て見せます:しばの結花/田中渉「ランウェイの恋人」1巻




1106057286.jpgしばの結花「ランウェイの恋人」(2)


それでも私には
モデルしかない



■2巻発売です。
 カリスマモデルとして、ますます人気を高めていく唯。だけど、本当になりたいのは“ショーモデル”。現実と夢の狭間でもがく唯の前で、親友であり無名の新人モデル・亜希がその才能を開花させていく。元カレの心、母の期待、業界の注目…すべてを無邪気に奪っていく亜希に、嫉妬や焦りを隠せない唯。そんな中、ファッション界最大のイベント“東コレ”のオーディションが始まって…!?
 

~めちゃめちゃ面白いです~
 1巻から面白い予感はしていたのですが、いかんせん2話のみの収録と、まだまだ全容がハッキリとしない印象がありオススメせずにいた本作。2巻はガッツリ全編表題作となっており、しかもそれがめちゃめちゃ面白いのですよ!
 
 2巻ではいよいよド素人・亜希の才能が本格的に開花しはじめます。その持ちたる素質は、唯なんて軽く越えてしまうもの。元来ショーモデルとしての資質には恵まれていなかった唯は、その舞台を最も強く願っていながらも、なかなかその機会に恵まれずにいました。そんな彼女の前に突如現れた、亜希。一緒に暮らすことでその人の良さを知るも、同時にモデルとしての可能性も突きつけられ、募るのは焦りや嫉妬ばかり。邪魔なものは全てを投げ打って、懸けられるもの全てを懸けて、それでやっとここまできたその場所を、スキップするように登ってきてしまうような圧倒的な才能。


ランウェイの恋人2-3
努力と執念でのし上がって来たトップが、有り余る才能を持つ後発の若手に抜かれる時のその時の心情が、メチャクチャ熱く、そして切ないのです。この表情が、カッコ良過ぎる。



~全てを懸けて掴んできたものを、瞬く間に~
 元々向いていないと自覚はしていたけれど、それでも抜かれてしまう。そこまでは彼女自身も覚悟はしていたかもしれませんが、亜希の成功は思わぬ形で他のものも奪っていくことになりました。
 
 まずは、元カレであるかつきの存在。今は付き合ってはいないものの、嫌いというわけではなく、仕事を優先させるために付き合ってはいないというもの。別に付き合ってはいないのだから、多くを求めることはしませんが、数少ない自分の理解者として彼を信頼していました。そんな彼が、亜希に優しくしモデルとしても成功できると話す姿を目撃。また二人で食事に行ったりと、親密さを窺わせる話も聞きます。仕事のためにと諦めた存在を、亜希が仕事でも成功しながら攫っていくような感覚に、唯は陥ったはずです。
 
 
 またもう一つ大きいのが、唯がモデルを志すキッカケとなった、元カリスマモデルの母。亜希の才能を早々に見抜いた彼女は、唯を現在の事務所に残したまま、亜希を引き抜いて新たな事務所を設立しようとします。唯にとってモデルの仕事とは、母の果たせなかった夢を果たすためにはじめたもの。向いていないとわかっているショーモデルを志し、アイドルモデルとしては不動の地位を築いている現在でも全く満足することなくいるわけで。母親の夢を邪魔してしまったという強い後ろめたさがあるからこそ、ここまで頑張るのでしょう。夢は母親のためでもあり、同時に自分のためでもあり。夢を果たすということは、イコールで彼女がこの世に生まれ落ちたことを正当化させることになるのです。


ランウェイの恋人2-1
 例え亜希が成功したとしても、それで叶えられるのは母親の夢のみであり、唯が感じる後ろめたさはいつまでも解消されることはありません。だからこそ、亜希の邪魔をしても意味はないわけで。もちろん焦りや嫉妬という心情は先行しますが、彼女が解消すべきものはもっと根深いもの。物語の執着点として、単にライバルとのせめぎ合いのみでなく、負けたけど夢を叶えたとか共存といった可能性を感じさせてくれる面はありますが、ただ今はあまりにも絶望が深過ぎて切ない。全てを懸けてきたからこそ、そこを絶たれるとどうしようもなくなるわけで。それでも彼女はモデル以外の道は知らず、打ち拉がれ立つ力がなくなるまで、何度も何度も立上がって同じ道を歩むのですよ。才能だったら諦めがつくんです。でも人生を懸けていたら、簡単には諦められないんですよ。その狭間で苦しむ、その辛さがひしひしと伝わってきて辛いです(でもそれがいい)


~ここまでカッコイイヒロインがいただろうか~
 努力型のモデルというと、これまた私のお気に入りのキャラである、「好きっていいなよ」(→レビュー)のめぐみがいます。彼女もまた、ライバルの登場をきっかけに心を弱らせたのですが、その時相対したのはわかりやすい「悪意」。結果的にめぐみはそんなもの力強く撥ね除け復活を果たしました。努力型は、悪意に強いです。けれども唯の場合、相対するのは圧倒的な才能。しかもその持ち主は、自分のことを心から尊敬し慕っていると来たもんだ。こりゃあどうすることもできないですよね。勝とうったって、知っているのは努力のみ。そして相手と向き合う度に湧き上がるのは、努力の邪魔をするような感情ばかり。ここから唯がどのような変化をして、相手に、そして自分に向き合っていくのか、楽しみです。
 
 しかしモデルものって個人的にあたりが多い気がします。仕事ものとして、女性の様々な心情がガッツリ出るからでしょうか。そして何より、努力で自分の地位を勝ち取ってきた女性キャラが好きです。一本芯の通った逞しさに、思わず惹かれてしまいます。そしてそれを恋愛に素直に生かすことのできない、不器用さもまた魅力的なんですよね。


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Tag [続刊レビュー] 2011.08.22
作品紹介→芦原妃名子「Piece」
3巻レビュー→「砂時計」との違いを生む相手役の性質 《続刊レビュー》「Piece」3巻
4巻レビュー→物語を構成する、異なる性質を持った“Piece”:芦原妃名子「Piece」4巻
5巻レビュー→謎が謎を呼ぶ展開に、目が離せない:芦原妃名子「Piece」5巻
関連作品紹介→「ユビキリ」「蝶々雲」「月と湖」



1106047141.jpg芦原妃名子「Piece」(6)


この感情の行きつく先を
必ず
自分で看取るから



■6巻発売です。
 「成海は人を殺しかけてる」   矢内から、成海と坂田コウジの関係、そしてかつて二人が引き起した衝撃の事件について知らされた水帆。それでも成海のことを嫌いにはなれず、自分の想いを最後まで見届けようと決心する。東京に戻った水帆は、気まずくなっていた礼美と冷静に話をするため、彼女の大学を訪ねるが…!?
 

~お待たせしました…~
 先月6巻発売されていました。ということで、「Piece」のレビューです。最初に言うと、
 
 「Piece」の感想いつも難産すぎるよー!!!!
 
 なら書かなきゃいいじゃんという話なのですが、書かないと読んでいる時の自分の考えを整理できず、また一度書かないとこれから先もずっと書かないはずなので、やっぱり書いておいた方が良いかな、と。あとメールやコメントにて頂くレビューのリクエストで、一番多いのがこの作品なのですよ。特定の作品のレビューを楽しみにして頂けているというのは、非常にありがたいことですので、やっぱり書きたいのです。ちょっとプレッシャーではありますけどね(笑)というわけで、リクエストくださったみなさん、ありがとうござました。ご期待に沿えるかはわかりませんが、どうぞ。。。


~礼美回~
 前回思わぬ形で物語に食い込んできた礼美でしたが、6巻はまさに礼美回。その表紙のみならず、本編でも最も掘り下げて描かれました。正直お調子者のちょい役だと思っていたので、ここまで描かれたのはかなり意外。すみませんでした、礼美さん。誰一人として、余る者などいない、全てが物語を形成するピースというわけなのですね。改めて物語の後ろに渦巻くものの深さに、ワクワクと怖さが浮かんできます。


~こんな形でつながるのね~
 礼美といえば、前回登場時に回想として流れたあのシーン。回想に登場している人物、そして4巻巻末での坂田コウジの発言から、なんとなく「成海が礼美を紹介し、行きずりで…」という流れを想像、しかしながらあのお弁当は…?という想像で落ち着いていたのですが、その考えはのっけから崩れることになります。出会いは成海を介してではなく、偶然に。
 
 
piece6-1.jpg
お酒を飲んでしまい、気持ち悪くなったところを介抱されて…


 あれ、坂田コウジのイメージが、想像していた人物像と全く違う…。話を追えば追うほどに、積み重なるイメージは「面倒見の良いお兄さん」という感じで、当初想像していた、凶悪ジャイアンとはかなり異なるものでした。礼美の回想だからそうさせている…なんてことはなさそうで、少なくとも実際に、彼女の前ではそういった態度を取っていたようです。前回レビュー時に気になっていたお弁当の件も…


piece6-2.jpg
礼美がコウジに作って渡していた


 そして直後にホテルへ。前向きに考えるのであれば、ここをキッカケに男女の恋愛関係が築かれて行くような気がするのですが、礼美の回想から窺えるのは、どうにもそれが思い出したくない過去というか、決して明るい思い出には映っていないということ。それをきっかけに、むしろ彼と疎遠になってしまったような感すらあります。そして辿り着く、折口はるかとの関係。
 
 折口さんとの関係については、ここでつながるか…という感じで、全く予想だにしていない展開でした。というのも彼女は、折口はるかの葬儀の時に、「特に思い出もない」と、ほぼほぼ無関係であったかのような語り口で、その関係を話していたので。これが彼女の本心であったのか、はたまた演技でそうしていたのか、その真実はやがて明らかになるのでしょうが、また一つ気になることが増えました。


~礼美の自己評価~
 物語の本筋に絡んでくる部分での意外性と同じく、礼美自身の恋愛感覚というか、自己の捉え方もまた少しイメージと違っていて、なんだか非常に新鮮でした。彼女の自己評価は、高くないにせよ、低いってことはないだろうと、勝手に思っていたのですが、実際には…
 

piece6-3.jpg
人間だとすら捉えていない、非常に低いものでした


 水帆の序盤の回想で、礼美のことはムードメーカーとして位置づけられ紹介されていたのですが、そういえばお調子者やムードメーカーって、人一倍周りの空気に敏感なタイプが多い気がします。無神経に明るくしているのではなく、しっかりと空気を読んで、自分の立ち位置を理解して、その上で最善の行動をするという。彼女があれだけ合コンに前向きであったのも、数打ちゃ当たるという実に理にかなったというか、恋人を見つけるためには最善の策であったわけで、こう思い返すと彼女の行動ってのは、決して感情優先ではなく、それなりに考えた上での行動だったのだな、と思えてきます。「幸せになりたい症候群」と、芦原先生によって解説されていますが、なかなか幸せになれないのは、自分の姿をあまりによく見つめ決めつけすぎてしまったがために、身動きが取れなくなっているからかもしれません。決めつけた型が、もしどうあがいても幸せになれないものだとしたら、それはもうどうしようもないよね、と。
 

~まだまだ気になることがたくさん~
 もうね、ホント色々気になることが多いのですが、読み返しても全く糸口が見つからないです!(笑)ということで、これから7巻以降を読んでいくにあたって、最低限気にしておきたいことを書いておこうかな、と。多分7巻発売の時には何を気にしていたとか忘れているので、きっと。というわけで、箇条書きっぽく気になることをだらだらと…

・何のために成海は名古屋で坂田コウジを?
 木戸くんが渡した坂田コウジの住所情報は、成海が名古屋に乗り込んで捜し出したものであったそうで、どうやら成海は、名古屋にて何かを企んでいるようです。しかしなんのために?彼はどちらかというと目的とか全くなしに生きているような感じがしていたので、こういう動きは不気味すぎて怖いです。どちらにせよ、一つの決戦の地は名古屋になりそうで、ドキドキですね。


・便利屋は誰?
 6巻読み終えた時点で皆さんが一番気になってるのは多分これだと思うんですが、正直「誰だよ、またヒゲかよ」と。金髪系という所ぐらいしかヒントにならなそうなのですが、全く新しい登場人物じゃなく、一度でも作中に名前なりが出てきてる人の方が確率高いんじゃないかなって気もします。自分の中での候補は二人で、一人は茨城時代の悪ガキの一人(集合写真でいう右上の子)か、坂田コウジの会社の先輩かな、と。正直どっちも確率低そうだなぁ。。。


・卵を食べれなくなったきっかけ
piece6-4.jpg
 お手伝いさんのお話によると、成海(弟)が卵を食べられなくなったのは、弟と出会いしばらく経ってから。そして彼女曰く「今はもう食べられるはずです」と言っているところから、明確な原因がそこにはあり、そして現在はもうその原因となったものはなくなっているはず。先般話題になった、「オムライスを食べれない女子云々」なんかを思い出して、シリアスになりきれなかったのですが、正直自分の中ではここが一番気になっているところです。


・折口はるかと兄の出会いのきっかけは?
 折口はるかの相手は、絵の具の匂い云々という所から考えても、成海兄でほぼ確定だと思われます。その中で、どうやって彼と出会ったのか、そこまでまだ描かれていないんですよね。礼美が坂田コウジに出会ったのと、彼女がバイトをしている時期が被っているので、その時はもうコウジと成海の関係は疎遠になっていた可能性が高いです。その中で、成海は兄と繋がっていたのか、とか。礼美と出会っても、なお成海兄への道筋は途切れたままで、未だ釈然としない所が多くあります。
 
 
 とりあえず言えるのは、芦原先生の掌の上で踊らされまくっているということだけ。礼美の回想で、成海に言われたちょいデブのくだりも、なんと第一話にて登場しているエピソードだったりします。それに矢内先輩の発言によって明らかにされた、1巻登場時の店員さんの再登場とか、どれだけ計画立てた上で物語描いてるんだっていう。そういったところだけでも、楽しみが募る本作。7巻も今から楽しみで仕方ありません。


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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2011.07.22
1106035900.jpg八寿子「失恋のススメ」


今に見てろよー!


■生まれて17年、ずっとモテない日々を送ってきた留衣に、やっとできた初カレ。男子と話すのなんて、業務会話くらい。一度掴んだら、二度と離して鳴るものか!なのにあっという間にフラれそうになってしまい、重ーい女になりそうだった留衣だけど、モテの天井人・悟くんにアドバイスをもらえることに。悟くんの容赦ない言葉に、戸惑う留いだけど…!?恋に悩むすべての非モテ女子に捧ぐ、渾身のラブストーリー

 八寿子先生の新作でございます。表題作シリーズ「失恋のススメ」他、もう1シリーズが収録されています。帯には「非モテ女子に捧げる」という文字が。その通り、表題作の主人公は、絵に描いたような非モテ女子・留衣。趣味は同人を描くことで、もちろん漫研所属の彼女、男子と話す機会なんて、業務会話のみ年一ペース。少し優しい言葉をかけられれば、簡単に好きになっちゃいます。そんな彼女に、ついに念願かなって彼氏が…!と思ったら、刹那の如く雲行きは怪しく。。。こんなチャンス、二度と来るまい、離してたまるかと息巻く彼女の前に現れたのは、漫研所属希望のモテの天井人・悟くん。部活の先輩後輩同士ということで、カレにアドバイスを求める留衣でしたが、その恋の行方は…!?というお話。


失恋のススメ1
男の子に話しかけられただけでトキめく。だって業務会話でしか話すことないんですもの。


 ちょっと恋愛力の低いヒロインが、恋を眼前にして全力ハイテンションで空回り…という安定の八寿子先生節です。ここ最近の読みきりやシリーズものがすごく面白くて、今回も楽しみだったのですが、自分にとってはこの作品が今までで一番面白かったように思えました。というのも、表題作「失恋のススメ」が本当に今までにないくらい勢いと力強さがあって、ヒロインが本当に痛いくらいにイキイキとしていたので。トキメキと切なさを第一に持ってくるのが定石であるベツコミにおいて、今回第一に据えてきたのは、痛みと笑い。切なさとトキメキは二の次でした。非モテでそもそも男子と関わることの少ないヒロインが、何度も何度も勘違いし痛い目を見る、そんな姿に笑い、そして勇気付けられる、感動のコメディとなっています。イケメンくんももちろん登場するのですが、彼は相手役というところにはいかず、あくまで指南役であり守ってあげるという立ち位置を崩すことはありません。

 八寿子先生は以前あとがきで、確か彼氏が一度も出来たことないと書かれていたような気がするのですが、たぶんこの表題作は、そういう意味でも並々ならぬ思い入れがあったんじゃないかなぁ、と勝手に。ヒロインに、作者さん自身の重いが人一倍投影されているような。ハイテンションで傷ついている自分のことを、面白おかしくネタにして笑い飛ばすその姿とか、あとがきのときの八寿子先生そっくりのような気がしなくもありません。今までもこういう系統で笑いを飛ばす作風だったのですが、今回はいつにも増して開き直っていたというか、ネタに切れがあったというか。


失恋のすすめ
自己評価も結構低いです。基本ハイテンションなんで、痛さを全面で感じさせず、しっかりと笑いに昇華しています。


 あとがきにて語られていましたが、この表題作は事前の関係者の評判とは裏腹に、アンケートでは最低と言っていいほどに人気がなかったそうです(こういうことを毎度ぶっちゃけるのは賛否両論あると思いますが、個人的には大好き)。どうもヒロインが不憫すぎるという意見が大半であったようなのですが、その結果には非常に驚きました。これ、非モテを自覚している人であったら、ものすごく楽しめるし、プラスして前向きな気持ちになれると思うんだけどなぁ。自分もどちらかというと非モテを自覚している人間なので、この作品は節々に共感できるところがあって、めちゃめちゃ笑いました。掲載誌の性格上、そういうのが好まれないのか。このまま埋もれさせておくのは、少々もったいない気がするので、当ブログではプッシュしていきますよー

 ちなみに同時収録のシリーズ「ご一緒に♡も温めますか?」も、コンビニの食べ物をめぐる軽妙なラブコメディとなっていて、面白かったです。教育熱心な母親に育てられたため、オーガニックや自然食品しか口にすることができずにいた結果、反動でジャンクフードへの欲求が異様に高まってしまったヒロインが、コンビニの店長に出会うというお話。こちらも恋愛欲よりもまず食欲が勝ってしまう、色気のないお話ではあるのですが、コンビニとはいえ食べ物にまつわるお話なので、ちょっとした温かさを感じさせる親しみやすい物語となっておりました。

【男性へのガイド】
→非モテは男女関係なく、思考回路というか「感じ」の部分は似てるんじゃないかなぁ、と思ったり。楽しめると思いますよ。
【感想まとめ】
→これを推さずして何を推すというのか。少しでも非モテと自覚しているなら、是非とも読んでみてください。きっと笑顔で前向きな気持ちになれるはず。


■作者他作品レビュー
溢れる初々しさ…なんつーウブ甘っ!:八寿子「椿ちゃんの悩みごと」
*新作レビュー* 八寿子「チェリーなぼくら」


作品DATA
■著者:八寿子
■出版社:小学館
■レーベル:Betsucomiフラワーコミックス
■掲載誌:ベツコミ
■全1巻
■価格:400円+税


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かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
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トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
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BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。