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2015.05.04
71Q5C6C6V4L.jpg宇佐美真紀「夕暮れライト」(2)



好き

なっちゃ
ダメかな
ダメかなぁ……




■2巻発売しています。
 まわりとも少しずつ打ち解けてきたちなみ。そんな中、最初はカンジが悪くて嫌いだった相馬兄弟の弟・雄大と急接近!じつは優しいところを知って、惹かれはじめる。でも、相馬兄弟の兄・奏多が、突然ちなみに……!!2人の男子が波乱を起こす、第2巻!


~ベツコミでは唯一買ってるかも~
 2巻発売しました。最近はflowersを除いた小学館各誌の作品からは少し離れてしまっていて、なかなか手に取る機会も減ってきてしまってます。気が付けばベツコミ系列で買ってるのもこれのみかもしれません。ともあれ相変わらず宇佐美真紀先生らしい作品で、安心です。甘度が高いといいますか、トキメキがありますね。


~急接近の楽しい時期~
 1巻で兄弟の弟・雄大を意識するようになったちなみ。「一緒に帰る」というイベントから、もしかしたら両想いかという期待感を抱きつつだったのですが、それはクラスメイトをアシストするための行動だったと知り、そのショックから雄大に冷たくあたってしまうのでした。普通だったら対して仲良くもなっていない段階でそれをやられたらもう関わらないと思うのですが、この雄大という男、その名前に恥じないぐらいの大きな器の持ち主でして、なんやかんやとちなみを気にかけます。困っている子を見ると、一歩踏み出して声をかけてしまう、そんな優しい心の持ち主であり、少女マンガのヒーロー然とした素敵男子。それもあって、ちなみとも打ち解け彼女の表情も一層豊かに。


 1巻でちなみに抱いた印象は、犬っぽい感じというものなのですが、2巻も感情豊かで見ていて面白いですね。割合で言うと不機嫌の方が多いような気がしますけれども、そんな中にも笑顔や恋する感情も増えてきていて、前作「ココロボタン」の新奈同様に微笑ましいキャラです。アホっぽさは通ずるものがあると思うのですが、こちらの方が俄然気難しいのは、やはり家庭環境の影響なのでしょうか。

 最終的に付き合うのかわかりませんが、付き合う前の急接近の状態に近いものがあり、ひとつ一番楽しい時期。ドキドキも新鮮で、楽しみどころも多いです。2巻にもハイライトは様々ありましたが、個人的には夏フェスが一番よかったですかねー。自分が高校の頃はフェスの数が増えてきた頃で、音楽好きの友達が行っていたりもしていましたが、所詮長野の片田舎に住んでいた音楽もさして聞かない自分にとっては遠い国のイベントという感じで、なかなかなじみがありません。今では立派なデートイベントなんですけれども、こういう思い出はないなぁと少し羨ましくなったり。


夕暮れライト0001
勢いのままに体の接触も増えたりとか。BGMはSHISHAMOの「君と夏フェス」とかがいいですかね。


~後半は一転シリアスに~
 さて、そんな甘々な雰囲気の1巻から一転して、後半はシリアスな空気が強くなります。それは兄の奏多が引きおこす事件に起因するのですが、それは実際に読んで楽しんでもらうとしましょう。それをきっかけとして、またしてもちなみがふさぎ込みがちになってしまうのですが、ここでまた雄大ですよ。


夕暮れライト0002
引きこもるちなみをこの強引さで引きずり出す


 空気読まずに家に突撃してきたり、根気よく家を訪れたり、家からお見舞いの食べ物を持って来たりと、そりゃあちなみが好きになるのも仕方ないですって話です。こんなに面倒見の良い高校生いないですって。この調子だと普通にすぐにくっついてしまいそうな気もするのですが、障壁となるのが兄の存在と、雄大と仲の良い和音の存在、そして当人の気持ちがどうなのかという所でしょうか。時間をかけて一つ一つ片づけていくのでしょうが、まず手を着けるのは奏多ですかねぇ。それにしても和音ちゃんの2巻での空気っぷりがすごいです。3巻ではもう少し話に絡んでくるのでしょうか。


■関連レビュー
悩んで、恋して、君と大人になっていく:宇佐美真紀「夕暮れライト」1巻

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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2015.01.26
1106472465.jpg宇佐美真紀「夕暮れライト」(1)



この距離をどうしたもんかと
迷ってる




■悩んで、恋して、君と大人になっていく
 父親の再婚相手が住むマンションに引っ越してきたちなみ。再婚相手とその娘・和音を見極めようとするけど、和音の幼馴染・奏多&雄大に邪魔されて…!?同じマンションに住むことになった4人の、ココロつながるハッピーストーリー第1巻!

 「ココロボタン」(→レビュー)などを描かれている、宇佐美真紀先生の新連載になります。芦原妃名子先生や小畑友紀先生はベツコミから他誌に活動の場を移していますが、宇佐美先生は引き続きこちらでの連載ということで、嬉しいところですね。今回描かれるのは、両親の再婚をめぐる青春群像的な恋と友情の物語。お話は、父子家庭の親子が新しいマンションに引っ越してくることから始まります。単なる引越しだと思っていたら、どうやらそのマンションには父親の再婚相手がいるようで、お互い子供を含めた交流を図ろうとしているようなのでした。引っ越してしまったものは仕方ないと、相手の親子(娘は同い年)を見極めてやろうとするのですが、向こうの子には幼馴染の男兄弟がおり、逆にこちらが見極められるような状況に。しかもなんだかやたらと突っかかって来る弟の方は、あろうことか同じクラスの隣の席で…というお話。


夕暮れライト1-1-
 登場人物をそれぞれ整理しましょうか。ヒロイン・ちなみは中学三年生の女の子で、両親が離婚して以来父と一緒に暮らしてきました。歯に衣着せぬ物言いをしてしまうため、前の中学では友達関係がこじれてしまった過去を持つ、体はちっちゃいけれど態度はデカいツンツン女子。再婚相手の娘さん・和音はヒロイン・ちなみと同い年で、メガネにおさげの内気な少女。見るからにいい子という感じで、気弱ゆえに学校では色々と損な役回りをさせられています。そんな彼女の幼馴染が、相馬兄弟。兄は高校1年生で物腰柔らかな好青年。ただしちなみとは一定の距離を保ち、笑顔で接しつつもあくまで「観察する」という姿勢を崩しません。弟はちなみ&和音と幼馴染で、兄の奏多とは対照的にかなり敵対心むき出してちなみに接してきます。割とちなみと似た印象で、二人は席が隣ということでしばしばぶつかることになるのですが、お互いの素性を知っていくうちに、だんだんと仲を深めていくのでした。ちなみに少女漫画ではお約束ですが、相馬兄弟はイケメンとして学校でも女子の高い支持を集めています。


 ヒロイン含め、4人ともひとくせふたくせある感じなのですが、基本的に性格の悪い子はおらず、すれ違いつつも良い関係を築いてきます。ベツコミというとどうしても恋愛先行な感があるのですが、本作の場合はまずお互いを知る所からということで、同じクラスの雄大よりもむしろ再婚相手の子供である和音との関係構築に時間を割いていきます。恋愛的な要素も少しずつ見えて来てはいますが、本格的に動き出すのは2巻以降でしょうか。そのためイメージ的にはベツコミの作品というよりも、別冊マーガレットあたりに近い印象があります。

 ヒロインのちなみはなかなか気持ちの良い性格の持ち主で、すごく好きなキャラクターです。後さき考えずに思ったことを素直に口に出すような子で、ぜひ友達になりたいですね。作中では彼女のことを「チワワ」と揶揄しているのですが、確かに見た目と内面から似ているところがあるかもしれません。


夕暮れライト1-2
いわゆるツンデレ的な子で、お礼を言うのもこんな感じ。


 物語は4人交えて恋をしていく形になると思うのですが、ドロドロしないか気になる所です。裏の作品紹介では、「ハッピーストーリー」と謳っているので、そうならざるを得ないと思っているのですが果たして。中学3年という年齢設定から、進路をどうするのかとか、高校に入ってから兄を交えつつの4つどもえなど、これから面白くなりそうな投入要素は盛りだくさんで、楽しみな作品が出てきました。


 
【男性へのガイド】
→「別マ的」言ったのは、その分男性にもとっつきやすくなっていますよとも言い換えることができると思いますので、設定が気になった方は読んでみてはいかがでしょう。
【感想まとめ】
→宇佐美真紀先生の作品はどれも好きです。キャラも、ストーリーも、安心して読んでいられる感じがなんとも。オススメです。



作品DATA
■著者:宇佐美真紀
■出版社:小学館
■レーベル:flowerコミックス
■掲載誌:ベツコミ
■既刊1巻
■価格:429円+税


■試し読み:第1話

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Tag [新作レビュー] 2014.01.16
1106349490.jpg桜小路かのこ「ラストノーツ」(1)


早く帰ろう


■香も、煙も、そして魂も。ひっそりと立ちのぼり、静かに消えてゆく…。“反魂香”……焚くと、その煙の中に会いたい死者が浮かび上がるという不思議な香木を取り扱うお店・仁藤香堂分店。下街の路地裏にひっそり佇むその店は、訪ねる客も、ワケありの人間ばかり…。そんなある日、反魂香の仕入れ相手・五嶋の孫という美少女・えみるがやってきて…!?香りが紡ぎだす極上の恋物語、待望の第1巻!!

 小学館漫画賞を受賞したこともある「BLACK BIRD」を描かれていた桜小路かのこ先生の新連載です。物語を彩るのは3人の男女(表紙に描かれている3人です)。両サイドの男子は同い年の兄弟。線香業界第2位の大企業の御曹司なのですが、気楽だからということで、下街の路地裏にある古民家で分店の香堂を営みながら気ままに暮らしているのでした。そんな彼らの前にある日現れたのは、香の仕入れ相手である五嶋の孫という美少女・えみる。五嶋は亡くなり、彼女が代わりに訪れたのだという。表向きには出していないが、この店で取り扱っている香は、“反魂香”という特殊な香。一度焚けば、煙が死者の姿形となって話が出来る。香木を持ち込む五嶋は、言わばこの店の命綱。謎に包まれる“反魂香”の真相を知るため、行き場のないえみるを保護し、一緒に暮らし始めることになるのですが…というお話。

 主人公は一応えみるってことになるんでしょうか。ただ比率的には3人がそれぞれって感じなので、それぞれが感情移入したい相手に入れ込んで物語を見れば良いのではないかと思います。物語は冒頭の説明の通り、死者と会うことができる不思議な香を巡る、男女3人の同居恋物語です。


ラストノーツ1
イケメン設定ですが、似ていない二人。というのも、兄弟ながら同い年で、誕生日は一ヶ月違い。その性格も正反対。しっかり者なのがハル(メガネ)で、おちゃらけた性格なのがアキ(黒髪)。あなたはどっちがお好み?

 
 最近映画になった「ツナグ」に代表されるように、死者と会えるという設定を使った感動物語は多々あります。ただ本作はそういう方向には進まず、謎に包まれている反魂香の秘密を探る方向へとシフトしていきます。その鍵を握っているのが、ヒロインである、えみる。彼女自身は反魂香についての知識は皆無であるものの、彼女の祖父が他ならぬ香木の供給者であり、彼女の暮らしの中に様々なヒントが隠されているようなのです。

 感動を生み出す装置となるファンタジー要素に、同居もの、さらに三角関係と、どこからでもどこへでも転がせるような欲張りな設定。これだけ盛り込むと時に消化しきれなくなってしまうのですが、さすが桜小路かのこ先生と言った所で、無理矢理感もなく綺麗に物語に落し込んでいます。1巻は物語が始まったばかりという感じですが、導入から背景説明、物語転換までが非常にスムーズで、2巻もキッチリ気にさせてくれるという親切設計。恋愛はまだ全く芽吹いていない状況ではありますが、シチュエーションからしてそういう方向に行かないわけもなく、さてこれからどうなることやら…と、こちらも同時に期待感が。


【男性へのガイド】
→シチュエーション、キャラ的にはやはり女性向けの感は強いかと思います。
【感想まとめ】
→これだけ色々な要素を詰め込むと味が濃くなってなかなか消化しきれなかったりするのですが、スッと物語が入ってきて楽しむことができました。未だ全容は見えないですが、先々を楽しみにさせてくれる1巻でした。


作品DATA
■著者:桜小路かのこ
■出版社:小学館
■レーベル:ベツコミフラワーコミックス
■掲載誌:ベツコミ
■既刊1巻
■価格:420円+税

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Tag [新作レビュー] 2013.03.02
1106237862.jpg加賀やっこ「一礼して、キス」(1)


どんなに不純て言われても
あんたにはわかってもらう
これは俺にとって恋なんです



■中学からの6年間、弓道に力を注いできた杏。けれど結果を残せないまま、高校最後の夏の大会が終わってしまう。複雑な想いを抱えながらも引退を決意した杏は、才能に恵まれた後輩・三神曜太に部長を引き継ぐことに。けれど三神は思わせぶりな言葉で杏を振り回して…?

 ベツコミの新作をご紹介するのはだいぶ久しぶりな気がします。というわけで、加賀やっこ先生の「一礼して、キス」のご紹介です。単行本2冊目で巻数付きと、ベツコミでは結構早い出世のような…。
 
 ストーリーは、弓道部を舞台にした先輩後輩の恋愛模様。ヒロインは、3年生の弓道部部長・杏。真面目な性格から、他の部員が受験対策で引退した中、一人残り部を牽引してきた彼女ですが、極度のスランプと受験への備えの必要から、志し半ばで部を引退します。そんな彼女の後を引き継いだのが、全国2位の腕前を持っている2年の男子・三神。この三神が喰えない奴で、引退した杏を何かと弓道部に巻き込み、つながりを持とうとします。彼の振り回しに辟易した杏でしたが、彼の気持ちを知ることで…というお話。


一礼して、キス
相手役の三神。典型的な黒髪ドS系男子。多少の俺様要素もございます。後輩でありながら、この態度って所がポイント高め。


 裏表紙の紹介文に「俺は先輩のこと見てましたよ この人 エロいなーって…」なんて台詞の抜粋があったり、エロティックな要素がちょいと前に出されています。煽り方的にはCheese!なんですけれども、あそこまで露骨にやったやらないって内容になっているわけではなく、エロを匂わせるような言葉選びだとかアクションを見せたりという所に留まっています。ベツコミで言うと桜小路かのこ先生のような路線になるでしょうか。エロいことしてないんだけど、エロく見せる、エロ要素の増幅が上手というような。
 
 この作品で良いな、と思ったのは、弓道の描写が結構本格的であるということ。スポーツものが絶滅危惧の状態にある少女マンガの中で、これだけしっかり弓道の情報を落とし込んで来るってのは、なかなかすごいと思うのです。またなんの脈絡もなく落とし込んでくるのではなく、例えば「エロい背中を間近で眺めたいから、自分が中で先輩が大前」なんて、上手いことストーリーに絡めて来るから、すんなり受け入れられますし。こういう使い方を出来るのは、やっぱり経験者だからなのかな、と勝手に想像したりしました(先生が経験者かは知らないですが)。実際に経験して、その中で想像してないと描けなさそうというか。


一礼して、キス1
恋愛模様だけでなく、弓道シーンも大きな見所の一つ。主人公の魅力を描くのに弓道の描写が使われるわけですが、例えば1巻一番の見せ場では、矢を射るモーションだけで丸々3ページ使うなど、力の入れ方がすごいです。


 恋愛模様という部分については、黒髪オレ様系キャラが出て来る作品の王道展開ではあるのですが、ベツコミらしく心情の進展はゆっくり目。物語については好みが別れそうですが、絵柄も安定してこの系統のお話にしては比較的読みやすい内容かと思います。絵柄と言えば、同時収録の読切りの相手役と、本作の相手役が見ため全く同じに見えたのですが、あんまり描き分けできないタイプ…?しかしながら本編ではライバルと描き分け出来てたので、特に支障はないです、はい。弓道部分に着目して…というのは推すポイントとしては邪道なのかもしれませんが、没個性的な少女漫画群にあって、これは一つ大きな特長だと思いますので、これからも注目していきたい所です。


【男性へのガイド】
→小学館のティーン向け恋愛作品は結構男性にはハードル高いかと思います。
【感想まとめ】
→黒髪オレ様系の相手役って全般的に苦手なのですが、その他の要素でカバーしてもらって、私でも普通に読めてしまった感が。割と期待しちゃってます。続刊楽しみです。


作品DATA
■著者:加賀やっこ
■出版社:小学館
■レーベル:ベツコミフラワーコミックス
■掲載誌:ベツコミ
■既刊1巻
■価格:400円+税


■購入する→Amazon

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Tag [続刊レビュー] 2013.01.12
作品紹介→芦原妃名子「Piece」
3巻レビュー→「砂時計」との違いを生む相手役の性質 《続刊レビュー》「Piece」3巻
4巻レビュー→物語を構成する、異なる性質を持った“Piece”:芦原妃名子「Piece」4巻
5巻レビュー→謎が謎を呼ぶ展開に、目が離せない:芦原妃名子「Piece」5巻
6巻レビュー→脇役なんていない、全てが答えを導く欠片となる:芦原妃名子「Piece」6巻
7巻レビュー→“卵”が表す共通点は?:芦原妃名子「Piece」7巻
関連作品紹介→「ユビキリ」「蝶々雲」「月と湖」




1106228862.jpg芦原妃名子「Piece」(9)


あなたのことが好きだった


■9巻発売しました。
 礼美がコウジの子供を妊娠、堕胎していたことを聞き、彼女のSOSに気づけなかった自分を悔やむ水帆。成海からコウジの住所を聞き出し、礼美を連れて名古屋へと向かう。数年ぶりにコウジと再会した礼美は、傷つくことを覚悟し、コウジに質問を投げかけるが…?
 
 
〜ドラマ化されました〜
 深夜帯でドラマ化されましたが、つい先日最終回を迎えました。この枠、ジャニーズ枠ってこともあって「スプラウト」とか殆ど見たことなかったのですが、何気に「Piece」だけは最初から最後まで見ちゃいましたよ。なんたって、水帆役の本田翼ちゃんが可愛い。芸能界には疎いのでこれまで全く知らなかったのですが、一目で夢中でした、はい。ちょっと水帆のイメージからすると可愛すぎるとも思うのですが、絵的に映えればOKなのかな、と。成海訳の中山くんも、役のイメージとはちょっと違う感じでしたからね。あ、そうそうミスキャストっぽい所と言えば、坂田コウジがスラッとした好青年のイケメンになっててびっくりでした(笑)このミスキャストはなかなか素敵。ストーリー自体は序盤が原作に忠実で、後半だいぶ端折ったかな、という印象ではありましたが、最後まで何気に見続けちゃったということで、やっぱり面白かったんだと思います。
 
 
〜妊娠していたのは礼美〜
 さて、コミックスの方ですが、おおよそ登場人物は出揃い、ピースも次々とはまってきています。前作レビューできていなかったのですが、一番の出来事は、「妊娠していたのは折口さんではなく、礼美さんだった」ということでした。コメントでもこの展開予想を頂いていたのですが、大正解でした。これで、彼女が雨でずぶぬれになりながらも坂田コウジの行方を追っていたのも納得が行きます。
 
 また坂田コウジは根っからの悪人というわけではありませんでした。いや、そんなのは表紙に描かれている部分からも分かるわけですが、どうしても坂田コウジというキャラを嫌いになれなかったので、こうして結果がわかって心底安心したというか。願わくば、もう少し幸せな方向に転がって欲しかったですけれど。10巻で挽回とかあったりするんですかね?結構良いカップルだと思うんですよ、礼美とコウジ。

 さて、森田と長門の再登場も含め、これでおおよそ全てのキャラが揃い、そしてそのつながりというものが明らかになりました。これまでの物語では、ピースを集めつなぐ部分がメインになっていましたが、おおよそピースが揃い、見えてくるのは1枚の絵。そこに描かれている絵は、一体どのようなものなのか。それが真に見えているのは、水帆だけ。そしてそれを受けて、彼女自身どのように行動するのでしょうか。


〜大好きだと伝えること〜
 元々本作について芦原先生は「全力で恋愛漫画」なんて事を言っていました。どこまでも恋愛ものであるとするならば、最後は成海と水帆の関係という所に帰結してくるはずです。出発点は折口はるかの死ではありましたが、彼女のマインドにあったのは「人を好きになるって何?」なんてこと。やはり物語の結末として腑に落ちるのは、彼女が本当に人を好きになれることなのですが、そしてその想いの発露としてどのような行動を取るべきなのかが、ここ2巻で他の登場人物達によって提示されていました。
 

Piece9-1.jpg
折口はるかがどうしても伝えたかった言葉



piece9-2.jpg
礼美の、コウジへ伝えたかった言葉



 その結果はそれぞれ異なるものではありますが、そのどちらも、どうしても伝えなくちゃならなかった言葉として描かれているのが非常に印象的です。そう、水帆が最終巻で取るべき行動はこれ。シンプルに、成海に「大好きだ」と伝えること。そしてその前段として…
 
 
piece9-3.jpg
成海が選んだどんな未来も 支持する


 こんなことを言ったんだと思います。ざっくり言ってしまえば、受け入れるということになるのでしょうか。当初、彼女自身が抱いていた「人を好きになるって何?」という疑問に対しての、一つの答えになってくるのではないでしょうか。そう、だからあとは伝えるだけ。伝えるだけなんですって。
 
 9巻のフリースペースのコメントにも書かれていましたが、本作は次巻10巻が最終巻とのこと。砂時計もそうでしたが、全10巻の作品の名作感って言ったら…!果たして水帆がどのようにしてこの言葉を成海に伝えるのか、物語に身を任せて、楽しみたいと思います。


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かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。