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Tag [新作レビュー] 2014.04.29
1106368473.jpg北駒生「あさめしまえ」(1)


ごちそうさまでしt
おいしかったね



■日高元、20代男子。子供のころ食堂「アサメシマエ」に救われ、料理人の道へ。食堂の閉店を知り、「アサメシマエ」の一人娘・早夜子に店の再開を申し入れるも突き放される。悩んだ元はようやく朝ご飯の意味をみつけ……?土鍋ご飯&白身のスープ、肉ジュワーな生姜焼き入りのピタパン、二日酔いに効く中華粥などなど垂涎のメニューはもちろん、心と体を満たす朝ご飯の物語を収録。

 北駒生先生のデビュー単行本になります。「甘々と稲妻」や「いつかティファニーで朝食を」に代表されるよう、ここ最近なんだかご飯マンガや朝ご飯フィーチャーの作品が、なんだか人気。BE・LOVEで料理マンガというとあまり印象がありませんが、果たして本作は定着できるでしょうか。
 
 主人公は20代の料理人・日高元。子供のころに空腹で苦しんでいるところを、食堂「アサメシマエ」を経営する一家に救われ、以来そこの朝ご飯を食べ育ちました。料理人となり数年経った頃、そのアサメシマエの旦那さんが亡くなり、食堂は閉店することに。そこで一悶着ありつつも、アサメシマエを継ぐことになった彼は、朝ご飯を通して様々な人と触れあうことになるのですが…というお話。


あさめしまえ1-1
美味しいものを食べた時の、この表情。あさごはんから、こういう表情をしたいものです。


 非常にオーソドックスなスタイルの料理マンガ。1話完結方式で、そこには悩みを抱えるご近所さんがいて、料理をきっかけにその悩みが解決するというもの。特徴はタイトルにもある通り、料理でも朝ご飯にスポットを当てているという。一応食堂でメニューも固定的ではあるのですが、引き継いで間もないこともあり試行錯誤の段階で、また町の食堂らしく自由度は高めです。登場する料理の方は、場所が場所だけに和食に偏りがちかと思いきや、息子の健康を案ずるお母さん向けにピタパンが登場したりと、意外性もあったりします。
 
 朝ご飯って、学生時代はなかなかそのありがたみがわからなかったりするじゃないですか。高校までは当たり前に出てくるもので、大学で親と離れて暮らしても、別に食べなくても大丈夫じゃん…と。ただ社会人になってみると、痛いほどそのありがたみがわかるという。朝ご飯食べると食べないとじゃ、日中全然違いますし、あとは温かみを感じつつ一日をはじめられる素晴らしさというか。朝ご飯は朝ご飯でも、温かいのが俄然嬉しいのは何故なんでしょうね。そしてこういった料理マンガも、一人暮らしが長引くと余計に心に響くようになるのです…。


あさめしまえ1-2
料理マンガでは定番の土鍋ご飯。表紙で卵かけご飯をピックアップしているように、意外とシンプルな料理も登場してきます。朝なので、そう手間はかけられないということでしょうか。


 主人公の日高元は、女性向け作品としてはどこに訴求してくるのかわからない人物と言いますか、共感性を有無同年代の同性でもなければ、イケメンでもなければ、しっかり者でもないという。むしろ人間的には中途半端な感じで、それが個人的には非常に親しみやすい感じはあります。大きな枠としての物語は、彼の成長と共に、アサメシマエを営んでいた親父さんの娘・早夜子(年上バツイチ子持ち)との関係醸成といったところがありますが、メイン読者はこの早夜子側からの視点で物語を見ているのかも。


【男性へのガイド】
→料理マンガがお好きならば、まず間違いないところです。
【感想まとめ】
→最近料理マンガがやたら沁みてきまして。読むと食欲と元気が湧いてきますね。余計なものを足さず引かずの、安定の朝ご飯マンガでした。


作品DATA
■著者:北駒生
■出版社:講談社
■レーベル:KC BE・LOVE
■掲載誌:BE・LOVE
■既刊1巻
■価格:581円+税


■試し読み:第1話

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Tag [続刊レビュー] 2013.12.18
作品紹介はこちら→末次由紀「ちはやふる」
5巻レビュー→《気まぐれ続刊レビュー》末次由紀「ちはやふる」5巻
6巻レビュー→肉まんくんこと西田くんとは何なのか…《続刊レビュー》「ちはやふる」6巻
7巻レビュー→最後の壁は誰になるのか、というお話《続刊レビュー》「ちはやふる」7巻
8巻レビュー→我らが詩暢サマに異変!?:末次由紀「ちはやふる」8巻
9巻レビュー→みんなとするから、かるたは楽しい:末次由紀「ちはやふる」9巻
10巻レビュ-→リベンジのためには、太一の成長は必須だった:末次由紀「ちはやふる」10巻
11巻レビュー→殻を破ってまた頼もしく:末次由紀「ちはやふる」11巻
12巻レビュー→それぞれの想いがぶつかる全国大会:末次由紀「ちはやふる」12巻
13巻レビュー→クイーンへのこだわりと、他人本位:末次由紀「ちはやふる」13巻
14巻レビュー→かるたは音を感じる競技:末次由紀「ちはやふる」14巻
15巻レビュー→良い意味で『スラムダンク』的であったように思う;末次由紀「ちはやふる」15巻
16巻レビュー→終わりと始まりの入り交じる夏:末次由紀「ちはやふる」16巻
17巻レビュー→強くならないと相手の前にも座れない:末次由紀「ちはやふる」17巻
18巻レビュー→なんて泥臭くてロマンのある話:末次由紀「ちはやふる」18巻
19巻レビュー→太一が見出した自分のかるた:末次由紀「ちはやふる」19巻
21巻レビュー→それぞれが成長しみんなで勝つ:末次由紀「ちはやふる」21巻
関連作品レビュー→「ハルコイ」「クーベルチュール」





1106349332.jpg末次由紀「ちはやふる」(23)


好きや


■22巻発売しました。
 名人位・クイーン位挑戦者決定戦最終盤。若き才能・新の完璧な攻守に、だれもが優勢を確信する中、ベテラン・原田は想像しえないような猛攻に打って出る。己のすべてを懸けて挑むその姿に、千早が、太一が、静まり返った会場で、読手が運命の一枚に手を伸ばす…。挑戦者決定のその瞬間、張り詰めた祈りは歓喜と涙に変わる…。
 

〜かるたよりも恋心が加速する冬〜
 太一と詩暢が好きな管理人がお送りしております。
 
 23巻です。22巻から白熱した戦いが続いていましたが、試合も最終盤ということで、ほんとうに冒頭の冒頭で幕切れ。結果は読んでもらうとして、今回取り上げるのは恋のお話。どうしてもかるた優先で恋愛については隅に置かれていた感のある本作ですが、22巻に関して言えば盛りだくさんでしたよ(あくまで本作比ですが)。
 
 まず戦陣を切ったのは、熱い熱い戦いをさっきまで繰り広げていた新。ちはやを目の前にして、かるたの戦いでの高揚も相まったのか…
 

ちはやふる23-1
突然の告白


 これものすごくビックリしました。いや、このかるたをからめつつのあたりとか、唐突すぎる感じとかは新っぽいんですけど、それでもこのタイミングでいきなりぶっ込んでくるとは。こう見えて意外と大胆なんですね。あと新はなんとなく「好き」とか言わないようなイメージがあったので、余りにもストレートな言葉で、あまりにも意外なタイミングで想いを告げてくるあたり、いやさすがだな、と。ズバッと決める感じは、彼のかるたにも通ずるものがあるような気もします。
 
 こういう芸当は、太一にはできません。太一はもう頭に穴が空くくらい考えて考えて、「ここ!」とあらかじめ決めたタイミングで意を決して飛び込んで行く人ですから(全て管理人によるレッテル張りです)。太一と新、二人は本当に正反対だなぁ、と思わされたのがこのシーン。
 

ちはやふる23-2
ちはやに興味を持つ周防名人を牽制する意味合いで、「千早の彼氏だ」とウソをつく


 新が千早に対して真っ正面から「好きだ」と伝えているその少し離れた場所で、この精一杯の勇気。彼女に伝えられないけれど、とりあえずワルそうな虫は祓っておこう的な。これだって彼からしたらものすごく勇気を要った行動だと思うんですよね。でも、新の行動からしたらこの勇気は霞んでしまうというか。そんな所がどうしようもなく愛らしいのですけれど。太一はその性格からして、「大会で千早に勝ってから」とか「新に勝ってから」とか、告白のためのポイント作りをしそうな印象があるのですが、そんなことしてたらあっという間に置いていかれてしまう懸念が…。自分も何かと理由を探しがちな人間なので凄く応援してあげたいのですが、ここでのこの差をどう見るか。なんとか頑張って欲しいものです。

 そうそう、恋愛においてポイントを設けていたのは、むしろこっちでした。はい、机くん…
 
 
ちはやふる23-3
かなちゃんが好き

 
 これまで明確にかなちゃんが好きって意思表示、してましたっけ?あんまり覚えがなくて、ここでハッキリと活字になったので「おおおおお!」ってなったのですけど。良いじゃないですか、クリスマスを前にどいつもこいつも春です。なんか少女マンガみたいじゃないですか…!
 
 しかしさすが机くん、置くハードルが高い。成績1位という高さもさることながら、その相手は太一というわけで。恋愛やかるたではヘタレ感満載の太一ですが、学業に関して言えば難攻不落の絶対王者。だからこそ机くんも「しようか」という弱気感。この身のほど弁えている感も、彼の魅力だったりします。そういう中でも、自分のできる精一杯の努力をしてくるのですから、応援してあげたくなります。


〜周防名人の戦いぶり〜
 さて、恋愛ばっかりかというとそういうワケではなく、やっぱり軸足はかるたに置かれています。今回は大会こそなかったものの、物語の中ではひとつ意味のあるシーンが出てきました。それが、周防名人の戦い方。
 
 これまで「1字決まりが28あるくらい“聞こえ”が良い」という情報しかなかったわけですが、その戦いぶりというのが実に嫌らしい。聞こえの良さを活かした先取先取の攻撃的な戦法は取らず、相手にフェイクをかけまくりお手つきをさせて優位に立つという戦い方。サッカーで言えばカウンター、卓球で言えばカットマン、野球ならバント戦法…そんなイメージでしょうか。どちらかといえば、守りに特化した戦い方で、相手にしたくないタイプと言いますか。これにより、大抵の相手はペースを乱され自滅。ただでさえ聞こえの良い怪物ですから、手も足も出ません。これにより、時に対戦者はかるたを嫌いになってしまう感覚すら覚えるようですが、この子は違いました…
 

ちはやふる23ー4
周防名人の戦い方に感化された


 確実性を優先し、守りがるたが向いている彼にとっては、周防名人の戦い方は割と肌に合っているのかもしれません。あと周防名人の考え方か。かるたという競技を、4つの得点方式に区切りカテゴライズし、その上でどれに特化するかを決めるという考え方。周防名人はああ見えても東大生で、秀才の太一とはそういう思考的部分で通ずるものがあるのかもしれません(周防さんは太一のこときらいですが)。これはもしや、太一覚醒のフラグ?今後が楽しみになってきました。


〜おばあちゃん譲りのサウスポー〜
 そういえば今回も詩暢様はあんまり絡んでこず。いちおう毎回登場しているのですが、かるたをしていないシーンが多くて、その強さを目の当たりにできないんですよね。なんかあまりにその強さが描かれない上に、不安な描写が多いので、そろそろ負けるんじゃないかと思わせるというか。次のクイーン戦、不安です。
 
 今回の詩暢様絡みで印象的だったのは、彼女のお婆ちゃんの姿でしょうか。詩暢様がかるたをし、クイーンにまで上り詰めたのに、祖母の存在というのは切り離せないものでした。そんな祖母と詩暢のつながりのようなものを感じたのが、このシーン…
 

ちはやふる23-5
マジックで畳に線を


 これ、マジックで畳に線を書くという大胆な行動もさることながら、真っ直ぐにズバッと左手で線を書いているところが、詩暢様を想起させるなぁ、と。詩暢様はサウスポーなわけですが、おばあちゃん譲りの左利きなんですね。良い家の育ちだと、得てして右利きに矯正されたりするわけですが、左利きのまま行けたのは、お婆ちゃんの影響もあるのかも(適当)。

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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2013.08.29
1106265984.jpg鳥飼茜「おんなのいえ」(1)


人がせっかく前向きに生こうとしてんのに
こんなん
ぜんっっぜん ちがう…



■同棲していた恋人に振られた大前有香、29歳。25歳の妹・すみ香と母親の住む地元・大阪に帰省するも、癒されるどころか鞭打たれ、ついには“母親命令”により妹と東京で同居することに。「さらぴんの生活、はじめよーやあ!」姉妹と母親、“おんなだけ”の家族物語、いざ開幕!!

 先日2巻が発売されました。私は2巻が出たタイミングでようやっと読んだのですが、非常に面白かったので、今さらながらご紹介です。物語は、ヒロインである大前有香が同棲している恋人に振られる所から始まります。29歳、結婚し共に歩んでいくことを疑いもせず、自分の夢は諦めて、恋人の夢に懸けた。そんなさなかの、まさかの破局でした。どん底の状態で大阪の実家に戻りますが、母親は慰めるどころかむしろ檄を飛ばしてくる始末。「アンタはちゃんと東京で仕事せなアカン」…母親命令で、なぜか妹を連れる形で東京に戻された有香は、妹と同居して新生活をはじめるのですが…というお話。


おんなのいえ
30目前。恋人を失った時、自分自身の軸になるものが何もないことに気づかされる。襲いかかるのは、寂しさと不安感、そして焦燥感。


 私の嗜好の問題なのかもしれないのですが、さいきんアラサー女子が恋人にフラれるなどして、辛い中再起をかけるみたいなお話が多いような気がしています。そんな主人公達に年齢が近づいていてきたからか、そのテのお話がやたら染みるようになってきまして。本作もそんなお話のひとつ。ヒロインは新生活をはじめるわけですが、目の前に恋人候補がいるわけでもなく、恋も仕事も引く手数多というわけでもなく、また簡単に再び夢を追いかけ始めるような年齢でもなく…と、すぐに何か新しいものに向かって動けるような状態ではありません。けれども「これじゃアカン」という焦りがあるから、しんどいながらもあれこれ取っ掛かりを探すわけで。この過程が不格好で、痛い。
 
 ただそんな痛みの中で、ヒロインがひとりもがくばかりではありません。スパイスとなるのは、同居している妹の存在。25歳という若さに加え、あまり物怖じせずに飛び込んでいける心の強さを持っているので、割と自分の想い通りに事が運ぶタイプ。正反対の姉は、そんな彼女にときに苛ついたりもするわけですが、根底ではお互いを想い合っており、温かにつながります。常に仲良しでベッタベタというわけではなく、時にぶつかり合いながら、それなりの距離を保つ。このリアルさというか、関係性が良いのです。
 
 てかねぇ、妹のすみ香が良い妹なんですよ。自由に振る舞っているようで、結構物わかりがよくて、引く時にしっかり引けるし、自分が守るべきものというものがちゃんとわかっている。どういう関係であっても、こういう子が近くにいてくれたらきっと色々助けられるんだろうなぁと思うのですよ。感情移入しがちなのは、どちらかというとヒロインの有香なんですが、どの子が好きかで言ったらやっぱりすみ香ですかねぇ。
 

おんなのいえ2
 物語の中心はもちろんヒロインなのですが、大阪に一人で住む母親にも、同居している妹にもそれぞれストーリーはあります。それぞれが物語を持っている中、おがたいに干渉し合いながら、それぞれの物語を進める。ストーリーがヒロインよがりになっていないから、物語に広がりもできて、よりリアルに映ります。あと大阪人なので、大阪弁なんですよね、当たり前ですが。この大阪弁というのが何やら親近感が湧くというか、心情が吐露されている感が伝わってきて、個人的にプラスポイントでした。


 別に明るい話題のある話でも、大事件のある話でもないのですが、キャラ達の一挙手一投足がみなみなリアルで、終始目が離せませんでした。1巻を読んだ時点では、「ん、もしかしたらこれ面白いかも…」ぐらいの感触だったのですが、2巻読み終わった頃には「面白い!」となったので、是非2巻一気読みをオススメします。恋愛もちょいと複雑に動いてくるんじゃないかという予感もあり、3巻が今から楽しみですね。


【男性へのガイド】
→文字通り女性メインの物語なのですが、個人的にはストライク。無駄話の管理人の人も面白いって言っていたのですが、正直二人が良いからって男性皆々良いかと言われると正直わからんです。
【感想まとめ】
→面白かったです。個人的に、今年結構上位かもしれません。派手さもなく、埋もれてしまいがちな印象のある作品ですが、是非ともサルベージしたいところです。オススメ。


作品DATA
■著者:鳥飼茜
■出版社:講談社
■レーベル:BE LOVEコミックス
■掲載誌:BE LOVE
■既刊2巻
■価格:581円+税


■購入する→Amazon

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Tag [続刊レビュー] 2013.07.20
1106288532.jpg末次由紀「ちはやふる」(21)


全部巻き込んで
前へ



■21巻発売しました。
 畳の上の挑戦者たちが夢を追う、名人戦・クイーン戦予選。誰しもが特別な想いで臨んだこの日、千早は修学旅行先の京都にいた。大切な友人と恩師がくれた、もう一つの夢を叶えるために…。一方、体調不良を理由に姿を見せずにいた太一、そして新は、東西の予選会場へ。努力、希望、信念。それぞれが描く未来への道とは…。
 

〜太一の自分探しの旅〜
 「千早に勝つ」という宣言をしたものの、結局千早に敗れてしまった太一。ここで勢いも途絶えるかと思いきや、むしろそれを経て、太一の「勝利」「強さ」への想いは一層強くなったように感じられました。修学旅行を蹴っての、意地の東日本予選への出場。初めて見せた自分勝手な行動は、彼の執念が前面に押し出ているようで、非常に好感が持てました。そして勝ち進む太一。この中で太一が想っていたのは


ちはやふる21−1
自分じゃなくなりたい
でも 自分になりたい



 果てしない、自分探しの旅です。まさか太一が、かるたを通して自分の姿というものを模索するようになるとは。そしてかるたで自分の姿を描くためには、かるたの型がなければなりません。そして太一のスタイルと言えば…


ちはやふる21−2
守りがるた


 守りがるたが段々と型にはまってきた太一。準決勝、苦境に立たされながらも、守りがるたで徐々に挽回していきます。かつての太一にはなかったような粘り強さ。このまま勝つかと思わせておいて、最後は“ちはや”に泣きました。またしても立ちはだかった、“ちはや”。ちはやに泣き、あと一枚届かなかった、この土壇場でのついていない感じがいかにも太一らしい。しかし運命戦の“ちはや”を逃したこの状況、直後の「運命戦は運命戦じゃない」という先生の言葉(運命の札は自ら引き寄せるものという意?)も相まって、「太一これ、ちはや逃すんじゃねえか」感が…(笑)一方新は2枚差で西日本大会優勝。ただちはやの札は逃しているんですよね。まだ、まだ首の皮一枚つながってますよ太一さん!しっかり並々ならぬ気迫で臨んで、2回連続で予選でやられたら結構精神的にくるものがありますよね。

 そうそう、今回新が太一を強く意識していたんですよね。20巻の時点で「なんで俺がそこにいないんだ」なんて思っていたりしたのですが、21巻では…


ちはやふる21−3
ここまで言うか


 ついに出た「邪魔」という言葉。そこからの自虐がまた、真面目な彼らしいところ。お互いに意識し出したところで、直接対決というのを見てみたかったところですが、それはまだお預け。太一としては、新か千早に勝てないと、物語的に成就できない感があるので、頑張って欲しいですね。新が相手だとなかなか勝ち目はないのかもしれませんが、今回の先生のお願いによる、仮想・新の試みは、彼にちょっとの攻略のヒントを与えてくれるかもしれません。


〜先生の考えは千早にも染みついているのでしょう〜
 東日本予選を勝ち抜いたのは、原田先生でした。これまでどれだけ強いのか、あまり真剣に描かれる事のなかった先生ですが、ここに来て本気を。そして新との対戦で、より鮮明にその強さというものが描かれるのではないでしょうか。原田先生といえば攻めがるた信条という印象ですが、もう一つ、みんなで勝ち抜きたいという強い想いを持っているようでした。


ちはやふる21−4
私は
白波会のみんなに助けられて戦いたいんだ
助けられたほうが強くなれるんだ!!



 この考え方は、ちはやにもしっかりと受け継がれているようで。だからこそ、彼女は時に個人戦を犠牲にしてまでも、団体戦に懸けていたのでしょう。そして、幾度となく仲間に助けられた彼女は、今こうしてここまで強くなってきました。今度は、ちはやが助ける番。皆の期待と助けを背負って、原田先生は挑戦者決定戦に臨みます。女子も、男子も、どちらの戦いも熱くならないわけがない、22巻が楽しみです。


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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2013.05.10
1106266033.jpgアサダニッキ「ナビガトリア」(1)


あるから
いたいの



■突然クビを宣告されてしまった東京在住のこより……。頼れるのは一度行った島根県の野々村家だけ。到着するなり、長男・昭との色恋が騒がれ、結婚祝いの品が続々到着……!?はじめは温かく迎えてくれた島根の人々にも、それぞれ事情があるようで……!?幸せの指針・北極星を探す旅。縁結びの神様のいる島根県を舞台に、地方ドラマスタートです!!

 「青春しょんぼりクラブ」(→レビュー)を描かれているアサダニッキ先生のBE・LOVE連作でございます。何やら角川書店でも新刊が出るらしく、合同フェアが催されています。いつの間にやらこんなに連載持ってたのですか、すごい!
 
 というわけで、「ナビガトリア」のご紹介です。物語のヒロインは、東京で働くOLのこより。仕事に追われる毎日の中、ネットで知り合った島根在住の女性を訪ねて行くと、そこに待っていたのは中学生の男の子と、その兄と姉。同世代の女性だと思っていたら、実は騙されていたのでした。出会い目的の男を騙して遊んでいたらしいのですが、さすがに今回は申し訳ないと、彼らの家に泊めてもらい、楽しい一夜を過ごしたのでした。それから数ヶ月…こよりに突きつけられたのは、まさかのクビ宣告。頼る相手もおらず、前に訪れた島根の野々村家にリフレッシュを兼ねてお世話になりに行ったのですが、なぜか長男・昭の結婚相手と認識され、事態は思わぬ方向に…!?というお話。


ナビガトリア1
ナビガトリアとは、北極星のこと。一家を支える昭が、自分のことをそう例える。


 都会の生活に疲れた女性が、田舎の温かい家族に触れて自分の居場所を見出していくという、ゆったりスローライフなホームドラマ。ネットのプロフィールを鵜呑みにして会いに行ったり、一度お世話になっただけなのに転がり込んでしまったりと、なかなか素直でかつ甘える相手がいないヒロインと、ついつい人を招いてしまう懐の大きさとちょっとした寂しさを抱える家族との思惑が一致したことで実現したシチュエーション。つながりとして大丈夫なのかという感はあるものの、良い感じでタイミングがあう相手ってのはいるわけで、ヒロインは迎えられるべくして迎えられたんじゃないかな、と勝手に思っています。
 
 物語のメインになるのは、こよりと、野々村家の長男である昭との恋愛模様。両親は既に他界しており、親代わりとなって弟と妹を育てている昭は、面倒見がよく、この歳で既に自分の未来よりも妹たちの未来を優先しているような人。非常に良い青年なのですが、田舎ですから出会いもなく、そこに現れたこよりはまさに相手にうってつけ。彼自身は「東京出身の相手でここに留まるはずもない」と思ってはいるものの、周囲は既に後押しモードで、こよりも段々とこの土地に居場所を見出すようになっていきます。お互いに好意は見え隠れするものの、「東京の人を引き止めては悪い」と遠慮する昭に、部外者として引け目を感じるこよりは、互いに牽制しあいその関係は遅々として進展しません。田舎ならではのゆったりとした時間の中で、ゆっくりと育まれる二人の関係は、なかなか微笑ましいものがあります。


ナビガトリア
お互いに好意は持っているけれど、いざ決心するにはまだ微妙な距離。駆け引きというほどアグレッシブでもないけれど、そんな二人のゆらゆらとした関係が、なんだか心地良い。


 また、物語は田舎ならではのご近所付き合いやご近所さんの抱える問題に巻き込まれる、なんてお話もたびたび投入されてきます。田舎だからこそ、それぞれに鬱屈した想いみたいなものを抱えていて、物語全体に流れる雰囲気は決して優しいものだけではありません。田舎の社会で生きる上の、酸いも甘いも受けとめて、だんだんとこの土地に馴染んでいく、その過程が面白い。自ら選び取って地方暮らしを選択している感が、よりヒロインを応援したくさせるというか。物語の終着点はもう見えているので、あとはそれをどう彩るのか。一筋縄ではいかなそうな環境で、ヒロインがどのように自分の居場所を獲得していくのか、注目です。


【男性へのガイド】
→ホームドラマ的な温かさのある作品。4コマのまんがタイムとか、そういう系統がお好きな方は良いのではないでしょうか。
【感想まとめ】
→こぢんまりとした中で紡がれる、人と人のつながりを描いた物語。やや地味な感はありますが、結構好きです、こういうの。2巻が楽しみですねー。



作品DATA
■著者:アサダニッキ
■出版社:講談社
■レーベル:KC BE・LOVE
■掲載誌:BE・LOVE
■既刊1巻
■価格:429円+税


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東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
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小森羊仔「シリウスと繭」(1)
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2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




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