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「ハルコイ」/
「クーベルチュール」
末次由紀「ちはやふる」(23)
好きや■22巻発売しました。
名人位・クイーン位挑戦者決定戦最終盤。若き才能・新の完璧な攻守に、だれもが優勢を確信する中、ベテラン・原田は想像しえないような猛攻に打って出る。己のすべてを懸けて挑むその姿に、千早が、太一が、静まり返った会場で、読手が運命の一枚に手を伸ばす…。挑戦者決定のその瞬間、張り詰めた祈りは歓喜と涙に変わる…。
〜かるたよりも恋心が加速する冬〜 太一と詩暢が好きな管理人がお送りしております。
23巻です。22巻から白熱した戦いが続いていましたが、試合も最終盤ということで、ほんとうに冒頭の冒頭で幕切れ。結果は読んでもらうとして、今回取り上げるのは恋のお話。どうしてもかるた優先で恋愛については隅に置かれていた感のある本作ですが、22巻に関して言えば盛りだくさんでしたよ(あくまで本作比ですが)。
まず戦陣を切ったのは、熱い熱い戦いをさっきまで繰り広げていた新。ちはやを目の前にして、かるたの戦いでの高揚も相まったのか…
突然の告白 これものすごくビックリしました。いや、このかるたをからめつつのあたりとか、唐突すぎる感じとかは新っぽいんですけど、それでもこのタイミングでいきなりぶっ込んでくるとは。こう見えて意外と大胆なんですね。あと新はなんとなく「好き」とか言わないようなイメージがあったので、余りにもストレートな言葉で、あまりにも意外なタイミングで想いを告げてくるあたり、いやさすがだな、と。ズバッと決める感じは、彼のかるたにも通ずるものがあるような気もします。
こういう芸当は、太一にはできません。太一はもう頭に穴が空くくらい考えて考えて、「ここ!」とあらかじめ決めたタイミングで意を決して飛び込んで行く人ですから(全て管理人によるレッテル張りです)。太一と新、二人は本当に正反対だなぁ、と思わされたのがこのシーン。

ちはやに興味を持つ周防名人を牽制する意味合いで、「千早の彼氏だ」とウソをつく
新が千早に対して真っ正面から「好きだ」と伝えているその少し離れた場所で、この精一杯の勇気。彼女に伝えられないけれど、とりあえずワルそうな虫は祓っておこう的な。これだって彼からしたらものすごく勇気を要った行動だと思うんですよね。でも、新の行動からしたらこの勇気は霞んでしまうというか。そんな所がどうしようもなく愛らしいのですけれど。太一はその性格からして、「大会で千早に勝ってから」とか「新に勝ってから」とか、告白のためのポイント作りをしそうな印象があるのですが、そんなことしてたらあっという間に置いていかれてしまう懸念が…。自分も何かと理由を探しがちな人間なので凄く応援してあげたいのですが、ここでのこの差をどう見るか。なんとか頑張って欲しいものです。
そうそう、恋愛においてポイントを設けていたのは、むしろこっちでした。はい、机くん…
かなちゃんが好き これまで明確にかなちゃんが好きって意思表示、してましたっけ?あんまり覚えがなくて、ここでハッキリと活字になったので「おおおおお!」ってなったのですけど。良いじゃないですか、クリスマスを前にどいつもこいつも春です。なんか少女マンガみたいじゃないですか…!
しかしさすが机くん、置くハードルが高い。成績1位という高さもさることながら、その相手は太一というわけで。恋愛やかるたではヘタレ感満載の太一ですが、学業に関して言えば難攻不落の絶対王者。だからこそ机くんも「しようか」という弱気感。この身のほど弁えている感も、彼の魅力だったりします。そういう中でも、自分のできる精一杯の努力をしてくるのですから、応援してあげたくなります。
〜周防名人の戦いぶり〜 さて、恋愛ばっかりかというとそういうワケではなく、やっぱり軸足はかるたに置かれています。今回は大会こそなかったものの、物語の中ではひとつ意味のあるシーンが出てきました。それが、周防名人の戦い方。
これまで「1字決まりが28あるくらい“聞こえ”が良い」という情報しかなかったわけですが、その戦いぶりというのが実に嫌らしい。聞こえの良さを活かした先取先取の攻撃的な戦法は取らず、相手にフェイクをかけまくりお手つきをさせて優位に立つという戦い方。サッカーで言えばカウンター、卓球で言えばカットマン、野球ならバント戦法…そんなイメージでしょうか。どちらかといえば、守りに特化した戦い方で、相手にしたくないタイプと言いますか。これにより、大抵の相手はペースを乱され自滅。ただでさえ聞こえの良い怪物ですから、手も足も出ません。これにより、時に対戦者はかるたを嫌いになってしまう感覚すら覚えるようですが、この子は違いました…

周防名人の戦い方に感化された
確実性を優先し、守りがるたが向いている彼にとっては、周防名人の戦い方は割と肌に合っているのかもしれません。あと周防名人の考え方か。かるたという競技を、4つの得点方式に区切りカテゴライズし、その上でどれに特化するかを決めるという考え方。周防名人はああ見えても東大生で、秀才の太一とはそういう思考的部分で通ずるものがあるのかもしれません(周防さんは太一のこときらいですが)。これはもしや、太一覚醒のフラグ?今後が楽しみになってきました。
〜おばあちゃん譲りのサウスポー〜 そういえば今回も詩暢様はあんまり絡んでこず。いちおう毎回登場しているのですが、かるたをしていないシーンが多くて、その強さを目の当たりにできないんですよね。なんかあまりにその強さが描かれない上に、不安な描写が多いので、そろそろ負けるんじゃないかと思わせるというか。次のクイーン戦、不安です。
今回の詩暢様絡みで印象的だったのは、彼女のお婆ちゃんの姿でしょうか。詩暢様がかるたをし、クイーンにまで上り詰めたのに、祖母の存在というのは切り離せないものでした。そんな祖母と詩暢のつながりのようなものを感じたのが、このシーン…

マジックで畳に線を
これ、マジックで畳に線を書くという大胆な行動もさることながら、真っ直ぐにズバッと左手で線を書いているところが、詩暢様を想起させるなぁ、と。詩暢様はサウスポーなわけですが、おばあちゃん譲りの左利きなんですね。良い家の育ちだと、得てして右利きに矯正されたりするわけですが、左利きのまま行けたのは、お婆ちゃんの影響もあるのかも(適当)。