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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2013.01.19
1106237566.jpg羽柴麻央「箱庭へブン」(1)


思ってたのと全然違うけど
これはこれで
ステキだよって



■浅利さんのちょっと大きなお屋敷には、色々な事情を抱えた人たちがプラっと集まって、ふわっと暮らしています。そのときのその瞬間、偶然集まった他人同士だけど、おいしいご飯をかこめば、なんだか心もつながっているような・・・。ひとつ屋根の下に集う人々の、家族より家族の物語。

 「宵待ちブルー」(→レビュー)や「私日和」(→レビュー)を描いている、羽柴麻央先生の新作になります。羽柴先生というと集英社のイメージですが、本作は講談社からの発刊となっています。描かれるのは、とある庭のある一軒家に集う人々の日々の生活。住んでいるのは社会人数名に子どもが二人、そこに学生がちょいちょい遊びにくるような、緩い雰囲気の集まり。住人たちはお互いの全てを知った上で暮らしているわけではなく、それぞれに秘密だとか、人には言えないような過去があったり。そんな住人たちのちょっとしたエピソードを、話ごとに視点を変えながら描いて行きます。読切り形式の疑似家族ものという言葉で表せば、収まりがよさそうでしょうか。


箱庭ヘブン2
 住人たちの構成としては、何をやっているのかよくわからない家主の浅利さん、彼の友人でオカマなローズさん、デザイン会社で仕事をしている女性の森憩さん、ワケあってこの家で暮らす兄妹の典ちゃんと万瑠ちゃん、そして犬の丘太郎。またしばしば遊びに来る、近所の高校生・開くん。全員が浅利さんの知り合いということで、下宿的な雰囲気はあまりなし。浅利さんという見知った存在を軸にしているがためか、浅利さんの緩さが皆に伝わっていて、全体的に暖かくゆったりとした雰囲気に。
 
 一応一つの作品ではあるのですが、各話のつながりは薄めで、それぞれ独立した物語という印象が強いです。というのも、浅利家の住人たちとの絡みで物語が進行するのではなく、それぞれのメンバーが外部に持つ人間関係を中心に物語が進行・完結するから。浅利家というのは物語を転がす舞台装置というよりは、各キャラクターが安心して帰って来れる拠り所という印象が強いです。典型的な疑似家族ものというものを想像して読み始めると、少し肩すかしを食らうかもしれません。とはいえまだ1巻ですので、2巻以降他のメンバーにスポットがあてられた時に、また違った形で描かれてくるのかも。

 1巻では4話が収録されていましたが、個人的に一番のお気に入りであったのは、ローズさんに絡んだお話であった2〜3話目。序盤全く知らない人たちが出てきて「え、どういうこと?」なんて思っていたのですが、後半でようやく意図が明らかに。なるほど、こうつながるのか、と。


箱庭ヘブン
 同じ人を好きになった者同士がつながり合うというのは、どこか不健全ではあるものの、それゆえの切なさや寂しさが仄かに落とし込まれていて、またそんな中にも確かに愛はあったのだと分かった時の感動は、なかなかのものでした。苦みも甘みも少しずつ、大人な味わいのする物語でした。


【男性へのガイド】
→羽柴麻央先生の作品は、割と男性も読んでいる印象(私の周りの人だけなのかもしれませんが)。本作もそこまでハードルになるようなものはないかと思います。
【感想まとめ】
→もうちょっと住人間での絡みを見たいものの、こちらは2巻以降でのお楽しみとしましょうか。さすがにどのお話も面白くて、読み終わった後に幸せな気分になれました。オススメです。



作品DATA
■著者:羽柴麻央
■出版社:講談社
■レーベル:KC BE・LOVE
■掲載誌:BE・LOVE
■既刊1巻
■価格:429円+税


■購入する→Amazon

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Tag [続刊レビュー] 2012.12.13
作品紹介はこちら→末次由紀「ちはやふる」
5巻レビュー→《気まぐれ続刊レビュー》末次由紀「ちはやふる」5巻
6巻レビュー→肉まんくんこと西田くんとは何なのか…《続刊レビュー》「ちはやふる」6巻
7巻レビュー→最後の壁は誰になるのか、というお話《続刊レビュー》「ちはやふる」7巻
8巻レビュー→我らが詩暢サマに異変!?:末次由紀「ちはやふる」8巻
9巻レビュー→みんなとするから、かるたは楽しい:末次由紀「ちはやふる」9巻
10巻レビュ-→リベンジのためには、太一の成長は必須だった:末次由紀「ちはやふる」10巻
11巻レビュー→殻を破ってまた頼もしく:末次由紀「ちはやふる」11巻
12巻レビュー→それぞれの想いがぶつかる全国大会:末次由紀「ちはやふる」12巻
13巻レビュー→クイーンへのこだわりと、他人本位:末次由紀「ちはやふる」13巻
14巻レビュー→かるたは音を感じる競技:末次由紀「ちはやふる」14巻
15巻レビュー→良い意味で『スラムダンク』的であったように思う;末次由紀「ちはやふる」15巻
16巻レビュー→終わりと始まりの入り交じる夏:末次由紀「ちはやふる」16巻
17巻レビュー→強くならないと相手の前にも座れない:末次由紀「ちはやふる」17巻
18巻レビュー→なんて泥臭くてロマンのある話:末次由紀「ちはやふる」18巻
関連作品レビュー→「ハルコイ」「クーベルチュール」



1106229243.jpg末次由紀「ちはやふる」(19)


ここには
かるたを好きな人しかいない



■19巻発売しました。
 秋。名人・クイーン戦予選をまえにしたこの季節。吉野会大会はついに準々決勝を迎え、千早、太一を含め白波会からは4人が残った。迎え撃つは、福井から参戦の新や北央・須藤ら4人。耳がよく、独特な配置で戦う元クイーン・猪熊と当たった千早は、固い相手の自刃に攻め込むことができるのか?より高みを目指す選手たちの意地が、意外な展開を生む。勝者は一人。かつてない局面での対戦に二人は!?
 

〜白熱する吉野大会〜
 19巻発売です。気がつけば20巻も目の前ですが、未だに「このマンガがすごい!」にもランクインを続けていますし、勢いは一向に衰えません。すごい作品です。
 
 さて、本編では吉野会大会の真っ最中。太一と千早だけでなく、新まで参戦してと、なかなか豪華な顔ぶれです。皆しっかりと勝ち上がり、いよいよ主要キャラ同士での戦いが始まろうとしているのですが、その前に千早は今大会初登場の新キャラさんと対戦です。そう、前回ご紹介した元クイーン。
 
 
〜特徴のある元クイーン〜
 高いセンスで相手を撃破してきた元クイーン・猪熊さんは、その高い“感じ”の能力だけでなく、戦い方も独特のようです。普通は取った札があれば、それを外に寄せて隙間をなくして行くのですが、彼女は最初に配置した定位置を崩さずに戦うタイプ。非常に戦いにくい手法のようです。また彼女はもう一つ特徴が。それが、
 

ちはやふる19ー1
西の読み手に強い


 なんとなくあるのかな、とは思っていたものの、こうもはっきり書かれる程に差が出るものなのか。野球で言うと、左ピッチャーと右ピッチャーみたいなもんですかね。どこまでも奥が深い競技かるたの世界。まだまだ知らない勝負要素がたくさん出てくるのでしょう。
 
 この猪熊さん、今回はブランク明けかつメガネということもあり、元クイーンとしての意地は見せたものの僅差で千早に敗戦。恐らく今後のクイーン戦予選で完全復活し、にぎわせてくれることでしょう。


〜ついに開眼〜
 さて、ここの所負けなしで来ていた太一ですが、今回もその勢いはそのまま。北央の須藤すらも撃破し、次なる対戦相手は新を破った村尾さん。そしてここでも、当たり前のように互角以上の戦いを見せます。いつも通り、冷静に考えて考えて考えて、そして時に思い切って攻め込むかるた。そしてその戦いの中で、目指すべき一つ彼のかるたの「型」が見えてきます。それが、
 


ちはやふる19−2
守りがるた


 いままで白波会でも、とにかく攻めて攻めて攻めて…という典型的な攻めのかるたを教えられてきた彼ですが、彼が本来伸びる道は、守りがるただったのかもしれない、ということでした。これは太一自身が考えて試してきたスタイル。このスタイルの特徴にいち早く気づいたのは、他でもない彼に一目置いている富士崎高校の巨乳顧問・桜沢先生でした。
 
 

ちはやふる19−3
あれは…江室くんの特徴!?


 いやいや、それ見て江室くんってわかりますけど、その絵出されちゃうと「江室くんの特徴=おっぱい星人」って所しか思い出せないですから。てか桜沢先生の江室くんイメージってやっぱりこれなんですか。エロムこと江室くん、可哀想すぎる。
 
 さて江室くんのかるたスタイルとはどんなものだったでしょうか。おっぱい揉ませてもらえると妄想する姿しか浮かばない人がいるかと思いますが、彼こそが典型的な守りかるたを貫いている人物でした。かるたの全国大会に、富士崎と当たった際、太一が彼と対戦しています。
 


ちはやふる19−4
「体を真ん中まで出して、そこから判断して出している」これが太一が彼と当たった時のイメージ。これを練習し試した今では「身体全体で踏み込んで、腕だけ急反転する戻り手」と表現しており、実際に自分の中で消化できるような言葉へと変わっています。前回対戦した際は、運命戦までもつれこんだ末に勝利していますが、勝った相手のスタイルを踏襲するような形で来るとは予想もしていませんでした。これによって自分の色を出すことに成功した太一。これでやっと、新や千早と肩を並べることができたような印象です。うん、いい流れ。


〜千早との対戦〜
 そして迎えるは決勝。そう、千早との対戦です。普段の練習だけであれば、千早の方に分があるようですが、千早のケガ明け以降は太一が千早に差し迫る勢い。そしてなんと言っても、太一は全国大会でも合宿でも、そしてこの大会でも一度たりとも負けていないのです。勢いは俄然太一にあり。そして太一の「公式戦でお前に勝つ」という宣言。札の配置は、千早のことだけを考えて組まれたもの。全力で勝ちに来ています。
 
 さぁ、舞台は整いました。公式戦での対戦は、これが初めて。太一にはぜひ千早に土をつけてもらいたい所。対戦の結果は如何に。太一ファンとしては必見の20巻、来年の3月に発売だそうです。ああ、待ち遠しい!!


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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2012.11.27
1106217793.jpg有永イネ「かみのすまうところ。」(1)


この日
僕たちの長くて短い200年が始まった



■恋愛も就職もダメで地元に戻った、24歳男子の上乃みつき。宮大工の棟梁の孫に生まれながら、過去に木から落ちたことがトラウマとなり、高所恐怖症!弟の宮大工・光重朗に疎まれつつも、日々奮闘中!そんな時に現れた木の神・ニキに一目惚れをしてしまい…!?葛藤溢れる宮大工の世界へようこそ。ちょっと不思議な青春ストーリー、待望の第1巻登場です!

 「さらば、やさしいゆうづる」(→レビュー)や「最果てアーケード」(→レビュー)など、最近講談社でプッシュされている有永イネ先生の新作でございます。原作付きでの連載はあれど、オリジナルでの連載作の単行本化は本作が初めてでしょうか。
 
 描かれるのは、宮大工見習いの青年と、木の神の少女の物語。主人公の上乃みつきは、東京の大学に進学するも恋愛も就職もダメで地元に戻ってきた24歳の青年。宮大工の家系に生まれながら、幼い頃のトラウマで未だ高所恐怖症を引きずっており、後を継ぐのにためらいを持ったまま、日々何もせずダラダラと過ごしていました。そんなある日、大工の現場で出会った美少女に一目惚れ。少し古めかしい言葉遣いをしているが、そんなことはお構いなし。今の自分にとっては女神様…と思っていたら、本当に彼女は神様でした。木の神・ニキに「わたしを使って素晴らしい寺社を建てろ」と言われたみつきは、その日から宮大工になるための修行を始めるのですが…というお話。


かみのすまうところ
こちら左が木の神様・ニキさん。みつきが宮大工でないことも知らず、「自分を使って寺社を建てろ」と言ってしまったことから、物語は動き出す。


 神様が木から…しかも美少女…というとなんとなく「かんなぎ」を想起させました。とはいえ物語の内容自体は全く異なります。なんとなく、読んでいる時のイメージが被ったというだけで。
 
 高所恐怖症が原因で宮大工の道を半ば諦めていたニートな若者が、木の神様に一目惚れして家系である宮大工の道へ…はい、想像以上に惚れっぽくてダメな主人公でございます。主人公が男子というだけでなく、この惚れっぽさがいかにも男性向けマンガのキャラクターという感じがして、そこはかとなく男性向け作品の匂いが。また現場は基本的にお爺さんや男の若者だけなのですが、寺社建築に使われる材木にそれぞれ木の神様が宿っており、それらの姿が動物だったり美少女だったりと、これもまたあざといのですよ。ヒロインになるニキだけでなく、長野のケヤキ(600歳)がセーラー服美少女とかもうね、ごちそうさまでした。
 
 宮大工という題材ながら、キャッチーな美少女キャラに、真面目なのか不真面目なのかわからない主人公と、纏っている雰囲気は完全にコメディー。宮大工ならではの荘厳さなどは感じられず、基本的にほのぼのしています。ただシリアスなシーンとの切り替えはしっかりできており、感動フェーズはしっかりと確保。メリハリが効いています。物語の完結を迎えるのは、おそらく主人公が一人前になって、ニキの木を使って寺社を建てることなのですが、修業期間を考えると非常に長くなりそう。


かみのすまうところ1−2
見習いはじめとはいえ主人公はさすが代々宮大工という血筋であるので、材木を見抜く力などは備えており、その資質は高そう。なんとなくの感覚で良い木を見出します。このコマのセーラー服の少女は先程話に出てきた長野のケヤキ(600歳)。


一方すでに宮大工の道を歩んでいる弟は、実は血のつながらない家族であり、その関係は単純ではありません。主人公自身の成長と、家族関係、そして宮大工の世界を知ること…それぞれが巻を重ねるごとに変化・成熟し、物語はより味のあるものへと変わって行くのでしょう。現時点ではコメディ多めですが、やがて感動的な物語へと変貌して行く姿は想像に難くありません。現時点でも読みやすく面白いですが、今後増々面白くなりそうな一作。男女関係なく、おすすめしてみたいお話でした。


【男性へのガイド】
→男性もとりこめるようなキャッチーさが随所に。何よりヒロインの存在が大きいか。
【感想まとめ】
→こんな明るいお話も描けるのかとびっくり。過去作で感じていた難解さや独特の雰囲気は、これから連載が進むにつれて徐々に出てきて、物語の厚みを増してくれそうですね。楽しみな新作が登場しました。おすすめです。


作品DATA
■著者:有永イネ
■出版社:講談社
■レーベル:KC BE・LOVE
■掲載誌:BE・LOVE
■既刊1巻
■価格:562円+税


■購入する→Amazon

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Tag [続刊レビュー] 2012.09.25
作品紹介はこちら→末次由紀「ちはやふる」
5巻レビュー→《気まぐれ続刊レビュー》末次由紀「ちはやふる」5巻
6巻レビュー→肉まんくんこと西田くんとは何なのか…《続刊レビュー》「ちはやふる」6巻
7巻レビュー→最後の壁は誰になるのか、というお話《続刊レビュー》「ちはやふる」7巻
8巻レビュー→我らが詩暢サマに異変!?:末次由紀「ちはやふる」8巻
9巻レビュー→みんなとするから、かるたは楽しい:末次由紀「ちはやふる」9巻
10巻レビュ-→リベンジのためには、太一の成長は必須だった:末次由紀「ちはやふる」10巻
11巻レビュー→殻を破ってまた頼もしく:末次由紀「ちはやふる」11巻
12巻レビュー→それぞれの想いがぶつかる全国大会:末次由紀「ちはやふる」12巻
13巻レビュー→クイーンへのこだわりと、他人本位:末次由紀「ちはやふる」13巻
14巻レビュー→かるたは音を感じる競技:末次由紀「ちはやふる」14巻
15巻レビュー→良い意味で『スラムダンク』的であったように思う;末次由紀「ちはやふる」15巻
16巻レビュー→終わりと始まりの入り交じる夏:末次由紀「ちはやふる」16巻
17巻レビュー→強くならないと相手の前にも座れない:末次由紀「ちはやふる」17巻
関連作品レビュー→「ハルコイ」「クーベルチュール」



1106195602.jpg末次由紀「ちはやふる」(18)


綾瀬さんにしか
つけられない
自信があるわ



■18巻発売です。
 全国高校かるた選手権も終わり、学校に戻った千早たちはそれぞれの戦果を得て一歩前進する。千早も詩暢と戦うため、クイーン戦予選へ向けて練習に励むが、予選の日は修学旅行と重なっていてショックを受ける。そんな中、ケガをしていた右手もようやく完治。満を持して臨む吉野会大会には、A級として初参加の太一、福井から新、そしてライバルたちも参戦し大波乱の予感!
 

〜覚醒する太一〜
 18巻発売です。もう20巻もすぐそこですね。普通は巻を重ねると熱量が落ちがち(特に少女漫画では)なのですが、未だ衰えることのない熱量に驚くばかりです。全国大会が終わり一段落するかと思いきや、かるたは続く。今度はそれぞれ新たな目標を立て、前へ前へと進んでいきます。
 
 さて、そんな中ひと際成長を見せているのが、報われないイケメン・太一。全国大会で一度も負けることなく見事A級へとのぼり詰めた彼ですが、その勢いは今なお継続中。なんと合宿での対戦でも、彼は一度も負けることがありませんでした。(ついでの続きの吉野会大会でもまだ負けてないですよ!)。そんな太一はどうやら、富士崎高校の巨乳顧問・桜沢先生に目をかけられているようです…
 
 
ちうはやふる18−1
自信をつければ化けそう


 一目置かれている、とでも言うのでしょうか。これまでの太一は高い実力はありながらも、どこか突き抜けきれない残念さがあり、顧問から目をかけられるということがあまりなかったイメージ。そんな彼を、桜沢先生は気に留め、その可能性を見出した。単純に指導者としての振る舞いをしただけかもしれませんが、後半登場した桜沢先生の回想では、なんとなく二人に被るイメージがあることに気がつきました。
 

ちはやふる18−2
“天才”のクイーンにどうしたって勝てない桜沢先生


 変態的なセンスを持つ周防名人に詩暢、そして今回登場した元クイーンと、トップに立つ者はまずズバ抜けたセンスを持っているイメージがあります。そしてどこか変わっている。主人公の千早も抜群の“聞こえ”を持っており、どちらかというと天才寄りの人間。新も地味ですが、家系はかるたのサラブレッドです。そんな中、なんのバックボーンもなく、特徴的な才能を描かれることもなく、ただただ努力と戦略、そして気力でのし上がってきたのが太一です。圧倒的な才能に立ち向かう凡才とでもいいましょうか。だからこそ私は、太一の事が大好きで、どうしても肩入れして応援したくなってしまう。桜沢先生もなんとなくそんなことを感じて太一に目をかけたのだとしたら、なんと泥臭くてロマンのある話なんだ、と。4人のうちの、誰か一人でも打ち破ってくれたら、もう飛び回って喜びますとも、私が。


〜今回クイーン戦に出るのか〜
 さて、本編は吉野会大会の真っ最中ですが、なんだかオールスターで天下一武道会みたいになってますね。そしてひと際輝く、準名人の武村六段のかませ犬っぷり。準名人って当たり前ですがNo.2までのぼり詰めた人ですからね。それがブランクが合ったとはいえ簡単に捻られる…。なんて切ない。しかし彼を撃破できたことで、クイーン戦出場の道はより明確に見えてきたようにも思えます。続いて対戦する元クイーンとの結果如何だとは思いますが。
 
 そういえば未来を描いた描写が1巻冒頭にあって、そこで対戦しているのが左利き=恐らく詩暢様である…なんて話はしたわけですが、千早が着ている服から予想出来たりとかしないですかね。今回出場している際に着ているものと、1巻で描かれているものは違うので、少なくとも今年ではないのかな、なんて仮説を立てられたりするのですが、大会直前に新調なんてこともままありそうで、結局結論は出ずです。
 
 あと何より1巻冒頭の描写で気になるのは、

 
ちはやふる18−3
 読手さんが既に登場していたりするんじゃないか、とか。クイーン戦の読手ですから、きっとすごい人なんだと思いますよ。どこかで登場してこないか、これまた注目して物語を追いたいと思います。


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Tag [新作レビュー] 2012.07.08
1106133400.jpg畠中恵/宇野ジニア「アイスクリン強し」



時は待ってくれない
のんびりしていたら
溶けて掴めなくなってしまうよ



■築地の居留地で、孤児として育った皆川真次郎は、夢だった西洋菓子屋「風琴屋」をひらいた!チヨコレイト、アイスクリン、ゼリケーキ…夢のお菓子を次々と作り出す日々の中、元幕臣の愉快な仲間たち「若様組」や、みんなのマドンナである小泉商会のご令嬢・小泉沙羅が、毎回大騒動を運んできて…!?明治スイーツ文明開化、マンガで華やかに幕開け!!

 畠中恵先生の原作小説を、BLなどで活躍されている宇野ジニア先生がコミカライズでございます。原作付きのマンガは割とスルーしがちなんですが、宇野ジニア先生の一般向け作品ということで、どんな内容になっているのか気になって手に取ったという経緯があります。読んだ感想としては、「あ、こんな普通の作品も描けるのか(感動)」。いやですね、宇野ジニア先生の作品って「暴れん坊専務」ぐらいしか読んだ事ないのですが、それがものすごくおバカでぶっ飛んでいたので、普通の作風ですごく感動できるという(笑)あれ、なんか「アイスクリン強し」じゃなくて、「暴れん坊専務」を薦めてるみたいな物言いに…。
 
 さて、本編のご紹介です。物語の時代は明治。江戸時代が終わりを迎え、段々と西洋の文化が入ってきている頃です。主人公の皆川真次郎は、築地の居留地に孤児として育った過去があり、そこで培った西洋料理の腕を生かして西洋菓子屋を営んでいます。そんな彼といつもつるんでいるのが、成金の小泉商会のご令嬢・小泉沙羅と、かつての幕臣で今は巡査をしている、長瀬を筆頭とした若者たち。そんな彼らが織り成す、明治時代のドタバタ劇を、甘い甘いお菓子と共にお送りします。


アイスクリン強し
誰しも生き辛さは感じているものの、その中で精一杯楽しく生きている。若者達のエネルギーみたいなものを感じる事ができます。


 主人公の皆川真次郎(通称ミナ)は穏やかな性格で、トラブルや騒動とは無縁の存在。しかしこの時代には物珍しい西洋菓子屋という職業と、つるんでいる仲間達がトラブルを呼び込む体質ということもあり、いつも彼の周囲は賑やかです。所謂巻き込まれ系のドタバタホームコメディになるかと思うのですが、そのどたばたの内容はいかにもその時代ならではという時代感溢れる内容。例えば紅一点の小泉沙羅のお披露目会での一幕であったり、新聞社への殴り込みであったり。
 
 どのキャラクターもそれぞれ個性溢れていて魅力的なのですが、個人的には成金なご令嬢の小泉沙羅がお気に入りでした。気が強い女性で、密かにミナに想いを寄せているという。気丈に見せて、実は気弱な面もある彼女の心情の描き方が、他の登場人物に比べてより豊かで印象的でした。男達だけでわいわいやっていてもいいのですが、その時代の女性ならではの悩みや辛さといったスパイスが加わることで、物語に深みがプラスされる感じがですね…。


アイスクリン強し1−2
この芯の通った感じがなんとも素敵
 
 コマ割りはシンプルで、台詞もそれなりに多め、淡々と物語は進んで行きます。そのため物語の緩急や、余韻を楽しみにする人はちょっともの足りなく感じるかもしれません。ただ、それが読みやすさであるとか、この時代を生きる若者達の歩むスピードに感じられたりとかして、個人的には好印象でした。


【男性へのガイド】
→洋菓子だしBL作家さんだしと、敬遠したい要素は多いかもですが、このアッサリさは読む際にプラスに働くはずですです。
【感想まとめ】
→面白かったです。小気味よく進む物語は、読んでいて楽ですし、なにより楽しいですね。アッサリをプラスと受け取るか、マイナスを受け取るかはその人の好み次第でしょうか。


作品DATA
■著者:畠中恵/宇野ジニア
■出版社:講談社
■レーベル:KC BE・LOVE
■掲載誌:BE・LOVE
■全1巻
■価格:590円+税


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