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Tag [オススメ] 2013.12.05
1106288494.jpg海野つなみ「逃げるは恥だが役に立つ」(1)


誰かと暮らすというのは
面倒でもあり楽しくもあり
そんなことを僕は
もうずっと 忘れていたように思う



■森山みくり(25歳)、彼氏なし。院卒だけど内定ゼロ、派遣社員になるも派遣切り、ただいま求職中。見かねた父親のはからいで、独身の会社員・津崎平匡(36歳)の家事代行として週1で働きはじめる。両者ともに快適な関係を築いたふたりだが、みくりが実家の事情から辞めることに。現状を維持したい彼らが出した結論は、就職としての結婚…契約結婚だった!

 「小煌女」(→レビュー)などを描かれている海野つなみ先生の新連載です。もう2巻まで発売されているのですが、買ったまま積んだ状態になっていたので一気読み。いや、これが面白い。描かれるのは、とある男女の契約結婚。ヒロインは、院卒後派遣切りに遭い求職中の25歳・みくり。まだ若いとはいえ、大卒・院卒2度の新卒カードでの就活に失敗し、さらに派遣になっても切られるという世の中の厳しさを味わい、絶賛将来が不安中な今日この頃。そんな彼女が父親の口利きで紹介されたのが、独身会社員(システムエンジニア)の津崎平匡(36歳)の家事代行。痒い所まで手が届く働きぶりで津崎の信頼を勝ち取り、週1での家事代行を続けている中、ひょんな会話の流れから「就職として結婚するのはどうか」なんて突飛な提案(冗談)を言ってしまいます。普通であれば流れるところ、真面目な津崎さんはアレコレ検討した結果、事実婚での契約結婚を提案。お互いの利害関係が一致し、本当に結婚することになってしまうのですが…というお話。
 
 私も20代も半ばを過ぎて、段々と結婚の文字がリアルに迫ってくる年齢になってきました。相手がいようがいまいが、周囲からどうしても聞こえてくるこの話題に、あれこれと考える機会も多いのではないでしょうか。本作は、そんな「結婚」のあり方・考え方に一石を投じてくれることになるかもしれません。主人公の二人が結婚した理由は、互いが一緒に過ごしていても特にイヤな感じがしなかったこと、結婚を考えるような相手が特にいないこと、そして何より社会的に恩恵に預かることが出来る部分が多くあるというところ。あくまで雇用としての結婚なので、同居という前提はあれど、給与体系や業務内容等事細かに条件が決められ、結婚生活はスタートします。


逃げるは恥だが役に立つ1
結婚といえど雇用主と従業員という関係。みくりは立場が下なので、基本的には何をするにもお伺いを立てる形に。ただこういったやりとりはあれど、生活様式は普通の夫婦なんですよね。


 結婚や同棲を描いた物語では、得てして同居することによるすれ違いやぶつかり合いからのトラブルが描かれることが多いように思えますが、本作はそんなことはなく結婚生活は至って順調に進みます。むしろ順調すぎて怖いくらい。そんな中、波を立てる要素として投入されるのは、一緒に過ごす時間が増えたことにより、相手のことを異性として強く意識するようになってしまうというもの。恋愛感情を介さないが故に成り立っている関係ですから、殊更そういった感情は言い出しにくく、互いに遠慮しがちな歯がゆい関係を築き上げます。特に津崎さんは今まで一度も付き合ったことのない高齢童貞ということもあり、その様子があからさまでかわいい。みくりも思い切って色々ジャブを打ってみたりするのですが、それを津崎さんが受けとめられるわけもなく、男女としての仲はなかなか進展しません。恋愛はしちゃいけない(という前提観念のもと)、同居しててさらに事実婚という秘密を共有し合うというドキドキ感、盛り上がる要素は盛りだくさんなわけですよ。


逃げるは恥だが役に立つ1−2
津崎さんは独身生活が10年以上という筋金入りの独身貴族。そのため誰かと生活するということはおろか、恋愛にも遠ざかりすぎて、こんなことを考えたりするように。無意識に恋愛に奥手です。ザ・草食系という感じ。


 本作の魅力は、契約結婚というテーマを単なる恋愛模様の盛り上げのための演出として使っているのではなく、むしろ真っ当に「契約結婚したらどうなるか」という疑問をシミュレーションしているように映るところ。変に恋愛方面で盛り上げたりせず、順序立てて時に論理的にかつ淡々と物語が進んでいくところが、妙にリアルに感じさせます。このそこはかとないリアル感ゆえに、これを読むと「こういう結婚の在り方もありなんじゃないか」って考えになってくるから怖いです(笑)
 
 ただ基本的にはコメディタッチ。思いの外デリケートなテーマを、立ち位置としては真面目な所から描き出す形になるので、それを中和する形で…という意味合いがあるのかな、と勝手に想像しています。てか割と色々パロディする先生だったのですね。意外でした。
 
 「契約結婚」の是が非はともかく、結婚についてあれこれ考えるきっかけになったり、違う視点で考えるきっかけになりそうなお話。もちろんエンターテインメントとしても非常に面白く、ぜひともオススメしたい1作です。色々な人に読ませて、感想を聞いてみたいですねー。


【男性へのガイド】
→この発想は面白い。相手役の津崎さんは男性的にも共感出来る部分が多いと思いますし、何より応援してあげたくなるはず。
【感想まとめ】
→これは面白かったです。こんなテイストの作品も描けるというのが意外というかさすがというか。続きが早く読みたいですです。


作品DATA
■著者:海野つなみ
■出版社:講談社
■レーベル:KC KISS
■掲載誌:KISS
■既刊2巻
■価格:429円+税


■試し読み:第1話

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Tag [新作レビュー] 2013.07.31
1106302863.jpg板倉梓「なぎとのどかの萌える不動産」(1)


ほんと
恋人みたいだ



■“家萌え”ってありません?
 バイトしていた会社が倒産し、アパートを追い出されることになったのどかは、偶然出会った幼なじみのなぎに誘われて“萌える不動産”で働くことに…。ワケありクールな女社長・なぎと、おっとり天然な社員・のどかの家と人をつないで始まる人情恋物語!!

 板倉梓先生のKISS連載作でございます。タイトルにもある通り、不動産をテーマにした物語。主人公は、社員登用を目指して働いていたバイト先が潰れ、職にあぶれてしまった女子・のどか。家賃を払うこともままならないまま、偶然再会した幼なじみの“なぎ”に誘われ、彼女の経営する不動産屋“萌える不動産”で働くことに。若くして経営者でありながら、どこかに影を感じさせるなぎの指導のもと、新人社員・のどかは日々奮闘するのですが…というお話。

 読んだ時のファーストインプレッションは「4コマっぽい雰囲気だな」というものでした。キャラの造形と良い、大きな起伏なく日常の微笑ましい一コマが続いて行く所など、まんがタイム系で連載していそうな印象。それはある種当然で、作者の板倉先生はまんがタイムやまんがライフなどで連載経験があるバリバリの4コマ作家さん。4コマの雰囲気をたたえつつ、人と人とのつながりを描き出す温かいお話が続いていきます。ちなみに当たり前ではありますが、“萌える”と言ってもきらら的な萌えはなく、あくまで不動産に萌えるという感覚的なものを表していますので、念のため。


なぎとのどかの萌える不動産
お昼での一幕。講談社なのにマガジンじゃないんだ…っていう、この緩さ。小ネタの緩さもまたこの作品の魅力です。この辺も4コマの…いや、あんまり関係ないのか。


 KISSらしいワンテーマものですが、こと“不動産業”にフォーカスを絞った話というわけでもなく、不動産業を通してつながり広がる、ご近所での人間関係といったものがメインで描かれていきます。一口に不動産業と言っても付き合う相手は様々で、新規のお客さんから、既に住んでいるお客さん、大家さんもそうですし、ご近所さんもその対象。人には様々なドラマがありますが、そのドラマの多くは“家”という舞台で起こります。人と人の出会いと同じように、人と部屋の出会いもまた一期一会。大感動を呼ぶような大きな波乱は起きませんが、それぞれに抱える思い出・悩みといったものを、不動産との出会いによって解決を図っていく様子は、とってもハートフル。

 日常系4コマっぽいので大きな流れはないのですが、それでもパートナーであるなぎに見え隠れする影であるとか、そんな彼女を優しく見守るとある大家さんの存在とか、物語が続くことで明らかになってくるであろう伏線・要素も幾つか登場。1話ごとで楽しめると同時に、続きものとしてもしっかりと物語強化されているので、追って読む楽しみもあると思います。また単なる賃貸物件を紹介するだけでなく、今流行りの少し特殊な形態の賃貸物件も紹介されたりと、不動産情報の豆知識も同時に得られたりするのが、個人的にツボでございました。


【男性へのガイド】
→萌えはないけど、ほっこりはある。スタンダードなファミリー4コマの雰囲気漂う、男女共に親しみやすい作品だと思います。
【感想まとめ】
→こういう作品読むと、癒されるしなんだか安心しますよね。これといったインパクトはないですが、テーマとドラマのバランス感も良く、非常に読みやすい作品でした。



作品DATA
■著者:板倉梓
■出版社:講談社
■レーベル:KC KISS
■掲載誌:KISS
■既刊1巻
■価格:600円+税


■購入する→Amazon

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Tag [続刊レビュー] 2013.05.10
作品紹介→ほのかな恋心を纏い織り成す高校青春群像:イシノアヤ「三等星のスピカ」1巻




1106265983.jpgイシノアヤ「三等星のスピカ」(2)


安心しろ
背 向けてて見えねぇから



■2巻発売しました。
 腰越高校野球部は3年生が引退。1年生の拓巳と哲郎は、レギュラー目指してさらに練習に励む。しかし補習の恐怖が…?そして武藤さんを本格的に意識し始めた拓巳、始めての哲郎との文化祭にときめく山根さんの恋の行方は?
 

〜意外とちゃんと野球部してる〜
 2巻発売しております。青春の1ページを切り取ったような短いお話が積み重なる本作、1巻を読んだ時点ではそこまで野球の匂いを感じていなかったのですが、2巻では野球部の匂いがより強くなったような印象がありました。
 
 これまで名前も出てこなかったような野球部のメンバー達のちょっとしたエピソードが語られるようになったのが大きいのでしょうか。やっぱり野球ってチームスポーツなので、構成されるメンバーの顔や中身が分かっていた方が、よりチームとしてイメージしやすいというか。印象としては、「ザワさん」に近いかもしれません。野球というよりは、野球部まわりのちょっとしたお話を描くあたりが印象として近いのかな、と。ただ捕手にコンバートされた竹田先輩のお話は、なんとなく「おおきく振りかぶって」の匂いを感じなくもなく。要するに、しっかりと野球部漫画になっているよ、と。


〜それでも気になっちゃう山根さんの恋心〜
 野球部について冒頭語ることになりましたが、むしろ俄然気になっているのは1巻から引き続き、写真部の山根さんです。親戚(いとこではないらしい)の哲郎に恋をするも、近すぎるがゆえに素直になれず、恋は一向に進展せず。そんなところでやきもきしている彼女の姿が、とにかくかわいいのです。今回もこんなに可愛い姿を見せてくれました…
 
 

三等星のスピカ2−1
敬老の日におばあちゃんの家へ行くのにめちゃくちゃおめかし(哲郎に会えるかもしれないから)




三等星のスピカ2−2
哲郎につけてもらった絆創膏にニヤニヤ




三等星のスピカ2−3
そして何といっても、おんぶですって



 なんていうか、純情すぎて眩しい…!誰にも言えない恋だからこそ、毎日会えるはずの学校でもろくにアプローチできず、会えるともわからない敬老の日にとびっきりのオシャレをして向かっちゃうこの健気さ。つけてもらった絆創膏を大切に取っておいちゃうって、むしろ童貞くさいというか、中学生みたいな純情さです。こんなに純情だからこそ、彼女の浴衣姿を哲郎に見せてあげたかった所なのですが、最後おんぶしてもらえたから良いか。浴衣姿に関して言えば「罪悪感から誘えなかった」なんて宣っていますけれど、山根さんのことだから絶対あの一件がなかったとしても誘えなかったんじゃなかろうか。そして誘ってもいないのに、偶然出会えることを期待しているこの感じ。なんだか懐かしいですね(かつての自分もこんな感じだったような)。
 
 というわけで非常に魅力的だった山根さん、紛うことなきこの作品のヒロインでございますとも。てか何気に表紙でも、帯でも、山根さんフィーチャーなんですよね。帯では彼女の心情を描いたものになっていますし、表紙は8コマ中、実に4コマが山根さんという。青春群像という形態は取っていますが、その中でスピカのようにひと際輝いて見えるのは、やっぱり彼女。彼女の恋が報われて、幸せいっぱい噛み締めながら、それでも素直になれない山根さんの姿が、見たい見たい!


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Tag [新作レビュー] 2012.12.15
1106229183.jpg水谷フーカ「満ちても欠けても」(1)


ところで…
ラジオ好きですか?



■ビールを空けるプシーって音。ジューってお肉が焼ける音。ただ見るよりも。聞いている人の中で膨らんでいく「音の世界」。午後11時、AM1431、ラジオ雛菊「ミッドナイトムーン(MNM)」。ここには音だけのメディア、ラジオを愛する人たちがいる。満月の夜も、あなたに届けたいメッセージ。想いを込めて、ささやきます。

 「GAME OVER」(→レビュー)や「14歳の恋」などを描いている水谷フーカ先生の、KISSでの連載作になります。ここ最近のKISSは他誌で活躍されている旬な作家さんを続々と起用するイメージがあるのですが、ついに水谷フーカ先生まで…!本作で描かれるのは、都内にある大きくもなく小さくもないとあるラジオ局を舞台にしたお話。アナウンサーとして入社して6年目の天羽日向がMCを務めているのが、午後11時から放送されている「ミッドナイトムーン」という番組。彼女の他、ディレクター、放送作家、AD、ミキサーの5人で番組を作っています。それぞれがそれぞれに、ラジオに対する熱い想いを持っていて、信念を持って仕事に打ち込んでいる。ひとりひとりの“あなた”とつながるラジオの世界を、少しだけ覗いてみませんか…?


満ちても欠けても1−1
 KISSの作品らしく、ワンテーマ据えて展開する作品。FM局ではなくてAM局をチョイスするというところに、ラジオ愛とストイックさのようなものを感じます。物語は、ラジオ局に務める人物に1話ずつスポットを当てていって展開する形式。「ミッドナイトムーン」のMCを皮切りに、ミキサー、局のカフェの店員(隠れハガキ職人)、放送作家、見習いアナウンサー、ディレクターと、様々な職種・立場の視点から、ラジオという存在が描かれていきます。とにもかくにも共通しているのは、有り余るラジオ愛。水谷フーカ先生というと、どうしたって恋愛方面での物語展開を期待してしまうところですが、ラジオ愛が前面に出過ぎているがために、そういった要素は他作品に比べると若干弱めになっています。
 
 それでも時折放り込まれる恋愛描写はなかなかの破壊力で、赤面ポイントはしっかりと確保されています。視点の切り替えによって、どうしても個々人の心情描写を深くすることができないのですが、巻を重ねた2巻や、キャラ視点切り替えの2周目なんてことがあったら、一気にそっち方面での面白さも増すはず。メインMCのヒロイン・天羽さんと、気難しいディレクター・伊庭さんの恋模様が主軸となっているのですが、天羽さんの鈍感っぷりと伊庭さんの不器用さがなんともいい味出しており、これからの展開が非常に楽しみです。



満ちても欠けても1-2
 1巻での個人的なお気に入りは、局内カフェ店員の古屋さんのお話でしょうか。外向けには気丈でクールなお姉さんキャラを出していながら、ハガキ職人として活動していて、採用されればテンションアップというかわいらしさを持っています。可愛らしくしたい、甘えたいという願望を内に秘めつつも、なかなかそれを外に出すことができずやきもきするというキャラ像は、これまでの水谷フーカ作品のキャラに通ずるものもあり、ニヤニヤ楽しむことができました。あとAM局の番組で恋愛の話を投稿するって辺も、ちょっと面白かったなぁと。
 
 仕事を初めてからはめっきりラジオを聴かなくなってしまいましたが、学生時代は結構聞いていました。久々に「ハガキ職人」という言葉を目にして、なんだか懐かしさを感じてしまいました。ラジオに一番ハマっていたのは、大学受験期から大学入学頃でしょうか。「あ、安部礼司〜BEYOND THE AVERAGE」とか、ハマりすぎて録音していた覚えが(笑)ブログ更新のお供に、久々にラジオを聴いてみるのも悪くないかな、なんて気持ちにさせてくれる作品でした。 

 そうそう、それとこれ、装丁が凝っているというか、表紙のどこにもバーコードがないんです。シュリンクが予めされていて、そこに記載さてているんですよね。表紙の質感も良い感じ。これからこういうの増えてくるんでしょうか。


【男性へのガイド】
→水谷フーカ先生の作品がお好きな男性って結構いると思っているんですが、どうなんでしょう。テーマはとっつきやすいですが、トゲのないお仕事ものとして、若干もの足りなく感じる方もおられるかもしれません。
【感想まとめ】
→恋愛ものかと思ったら、しっかりお仕事ものとして描いてきました。1巻はお仕事色強めで、ラジオ好きには嬉しい内容。2巻以降キャラ描写がより深いものになって、双方のバランスが取れたらなお面白くなりそうです。


作品DATA
■著者:水谷フーカ
■出版社:講談社
■レーベル:KC KISS
■掲載誌:KISS
■既刊1巻
■価格:638円+税


■購入する→Amazon

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Tag [続刊レビュー] 2012.11.02
作品紹介→こんな私が幸せを願ってはいけませんか?:天堂きりん「きみが心に棲みついた」1巻
作者他作品紹介→雨の日も晴れの日も私達は歩き続ける:天堂きりん「そして、晴れになる」1巻
家族の危うさ、難しさ、素晴らしさ:天堂きりん「手のひらサイズ」



1106205914.jpg天堂きりん「きみが心に棲みついた」(2)


きっと答え
みつけます



■2巻発売しました。
 小川今日子、通称「キョドコ」。好きな人ができました。厳しくて誠実な人でした。だから、過去の呪縛は断ち切ろう、頑張ろうって決めたんです…けれど……。こんな私が愛を知りたいって、思ってはいけませんか……
 

〜2巻発売しております〜
 2巻発売です。先日レビューした「そして、晴れになる」と、もう1冊「キミに恋シナイ」と同時発売ということで、天堂きりん先生の新作ラッシュ。どの作品も楽しみでしたが、個人的に特に楽しみにしていたのが本作です。以前ananに少しコメントを書かせて頂いた際も本作をプッシュしたのですが、とにかく痛々しいヒロインからどうしたって目が離せないんです。今回もなんていうか、とにかく危なっかしいんですよ、キョドコが。すごくイライラするんですけど、でも「全然意味がわからない」って所からくるイライラじゃなくて、「なんとなくわかってしまう」からこそ余計に見るのが辛い…みたいな所があります。


〜前向きからのズドンがすごい〜
 前回はトラウマとなった要因と、今なお立ち直れない痛々しい様子が描かれ、同時にほんの少しの改善の兆しと、それが捻れてストーカーチックな行動へと発展していく事態に相成りました。そこまででの予感としては、紆余曲折ありながらも、巻を重ねるごとに良い方向へと進んで行くのではないかなぁなんて思っていたら、甘い、甘いですとも。
 
 今回も吉崎さんとの恋に前向きになり、仕事でもへこたれずに頑張っていくキョドコ。過去の自分との決別という大きな目標の中、恋は別として、少なくとも仕事は順調に回り始めていました。手応えを感じるキョドコ。これを続けていれば、少しでも自信がつけられたはずなのですが、そんなのは星名の一言によって簡単に覆されてしまうわけで…。仕事でつけた自信は…
 
 
キミが心に棲みついた2−1
代わりの人間なんて
腐るほどいるからなぁ



でポッキリ。さらに追い打ちをかけるように、


きみが心に棲みついた2−2
これ見よがしに飯田さんといい感じに…


 別に手法としては安いやり方だと思うんですよ。けれどもキョドコはそれにホイホイ引っ掛かってしまうし、星名もそれをわかってて仕掛ける。悪い意味でぴったりの関係なんですよね。キョドコは明らかにコントロールされることを願っているし、星名は星名でキョドコというコントロールできる存在を求めている。端的に言ってしまえば「共依存」なのですが、これが余りに不健全だからタチが悪い。


〜痛いなら、受け入れてくれる所で痛い方が良い〜
 不健全だと自分でも自覚していて、けれども抜け出せないというこの感情はわからないでもないんですよね。成功体験がない彼女にとっては、人間関係でも仕事でも、新しい挑戦は常に痛みを伴うものと言えるかもしれません。新しい挑戦のその先に何か良いものが待っている予感はしても、失敗なしに進むことはできないしとっても勇気の要ることです。それに当たり前ですが、失敗すれば痛みは伴う。ただただ痛いのであれば、せめて自分を必要としてくれている人の元で痛くありたいってことなんじゃなかろうか。ましてや歪んだ形であれ、一度は自分を受け入れてくれた(=ささやかな成功体験)人ですから、そこからの脱却は簡単なものではありません。
 
 こうして振り返ってみると、描かれている背景は本当にシンプルなものなんですよね。ただ彼女の人格を形成しているものが余りにタチが悪く、そしてそこから抜け出す過程が、あまりにも痛みを伴い過ぎているという。作者さんの巻末コメントを見ると、やはりこの過程は必須であったようで。なかなか痛みのある展開ではありますが、この作品にはやっぱりそういうものを求めていますし、辛いけれど必要なんだと思います。さて、3巻はもう少し先に希望の持てる形に展開していくことを期待したいところですが、果たして…。


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かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
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王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
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トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
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BEARBEAR
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レビュー
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かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
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