1巻レビュー→天然女子高生×極貧獣医学生×子猫3匹の同居生活:斉藤倫「僕の部屋へおいでよ」1巻
その他関連作品レビュー→*新作レビュー*斉藤倫「誓いの言葉」/*新作レビュー*斉藤倫「宙返りヘヴン」/恋に芸術に悩む美大生:斉藤倫「Juicy」
斉藤倫「僕の部屋へおいでよ」(2)
あたしは
必要とされるあたしに
なりたいです
■2巻発売、完結しました。
京は、鳴沢と綺更のキスシーンを見て動揺し、熱に浮かされたまま鳴沢に告白してしまう。でも、京を背負って帰った鳴沢の答えは、「君とを勘違いしている」と、取りつくしまのないものだった。「どうしよう」。微妙な距離感を保ったままに、3匹の仔猫たちを囲む、2人の同居生活の行方は…?
~完結しました~
2巻にて完結致しました。思っていたよりも早めの完結で、この作品を気に入っていた者としては、もうちょっと長く楽しみたかった想いもあるのですが、非常に気持ちの良い終わり方をしていて、スゴく良かったです。大きな物語があるわけではありませんでしたが、中心となる二人が、それぞれに自分なりの答えを出し歩き出すその姿には、非常に勇気づけられるものがありました。
~お互いに乗り越えた、心を縛るもの~
ラストを迎えるにあたって描かれたのは、二人を縛りつける過去の出来事。二人一緒になるには、お互いにもう一歩ずつ近づく“もう一押し”が必要であったわけですが、しっかりとその過程を経てから、最後を迎えることができました。それぞれを縛るものですが、鳴沢については、獣医師の卵でありながら血を見ると卒倒してしまうということ、そして京を縛る物は…

おばあちゃんの前以外では
泣かないって思ってたのに
お母さんをはじめとして、自分のまわりからいつも人が去っていくように感じていた彼女は、「笑っていれば大丈夫」と心に言い聞かせ、今の今まで生きてきました。唯一心を許し涙することができたのは、今は亡きおばあちゃんの前でだけ。そしてそんな決めごとの裏では、もちろん「必要とされない自分」というものが強く意識され、彼女の自己評価の低さへつ繋がっていきました。それは1巻でもしばしば描かれていて、こんな台詞でストレートに表れています。

あたしなんて何もできなくて
馬鹿で取り柄もなくて
誰にも必要じゃなくって……
「誰にも必要とされない自分へのコンプレックスが」と「自分の周りから誰かが去っていくという恐怖」があるからこそ、彼女は自分がいないとダメな存在として、三匹の仔猫と、そして鳴沢さんを見つけ拾ってきたわけで、それが現在の彼女の精神的な命綱のようになっていました。それに加えて、鳴沢はことあるごとに彼女に伝えるんですよね、お前は誰にも必要とされないことなんてない、と。一度目は出会って間もなくの頃、彼はその後特に何か伝えるわけでもなく、ただ頭をぽんぽんとしてくれました。これもなかなか威力のあるものではありますが、本当に効いたのは2度目、今回改めて彼女がそのことを話した時でした。

あんたのそーゆー所に
驚かされて救われてた
フツーにそのままでいいよ
この時の京の表情を見てもわかる通り、これで改めてガッツリです、もう。鳴沢が初めてぐらいの勢いで見せた、京への優しい言葉。普段そういうことを言わない人が、突然こういう事を言うと、その破壊力は何倍もあるように感じられますよね。自分の彼へ向かう気持ちの強さを改めて実感した彼女の心は、もう離れません。そして最後、去り際の一言で改めて。今度は「俺が保証する」とまで言いましたから、鳴沢もまた彼女へ伝える言葉をよりハッキリと、意思の強いものへと変えていきました。これもまた彼の中での変化を如実に表していて、すごく良かったなぁ、と。また京も、この言葉に依存し安心しきるのではなく、本当に必要とされる存在となるため、自らの道を歩み始めます。このわかりやすい行動と、他人に依存しきらない歩み出しが、爽やかで素敵だなぁ、と。
さて、そんな形で京のトラウマ的な強迫観念を取り去ってくれた鳴沢ですが、彼のトラウマについても、京が言葉で救ってくれていたりします。彼がトラウマとなる一件のことを話したのは2巻に入ってからで、しかもその時には特に何も言う事がなかった京ですが、そのことに対する京の答えは、1巻の時点で既に出ていたのでした。
「不毛だとおもわねー?
追っても叶わないかもしれない
助けたい気持ちは
そしたら後悔しないか?」
という鳴沢の問いかけに対し、京は…

「あたしはきっと
追わなかった事を後悔します」
この言葉を聞いた鳴沢は、救われたような表情を見せるわけですが、ここに繋がっていたのですねー。あまり伏線というか、複雑に練っているような作品だとは思っていなかったのですが、一貫したテーマが物語の底にあり、読み返すと新たな発見があり、すごく面白かったです。
完結して、改めてこの作品をオススメしたいです。ちょっと不思議ちゃんテイストの、だけど心に傷を抱えたロリ属性の京の可愛らしさ。素直になれない性格と、自分の弱さを人一倍強く自覚し落ちてしまう鳴沢の不器用さ。空気を読まずに好き勝手する仔猫達。性格悪げな一匹狼に見せて、その実人一倍寂しがりやな先輩。どの登場人物達も素敵。少しでも気になった所があったのであれば、是非とも手に取ってみてください。
■購入する→Amazon
その他関連作品レビュー→*新作レビュー*斉藤倫「誓いの言葉」/*新作レビュー*斉藤倫「宙返りヘヴン」/恋に芸術に悩む美大生:斉藤倫「Juicy」

あたしは
必要とされるあたしに
なりたいです
■2巻発売、完結しました。
京は、鳴沢と綺更のキスシーンを見て動揺し、熱に浮かされたまま鳴沢に告白してしまう。でも、京を背負って帰った鳴沢の答えは、「君とを勘違いしている」と、取りつくしまのないものだった。「どうしよう」。微妙な距離感を保ったままに、3匹の仔猫たちを囲む、2人の同居生活の行方は…?
~完結しました~
2巻にて完結致しました。思っていたよりも早めの完結で、この作品を気に入っていた者としては、もうちょっと長く楽しみたかった想いもあるのですが、非常に気持ちの良い終わり方をしていて、スゴく良かったです。大きな物語があるわけではありませんでしたが、中心となる二人が、それぞれに自分なりの答えを出し歩き出すその姿には、非常に勇気づけられるものがありました。
~お互いに乗り越えた、心を縛るもの~
ラストを迎えるにあたって描かれたのは、二人を縛りつける過去の出来事。二人一緒になるには、お互いにもう一歩ずつ近づく“もう一押し”が必要であったわけですが、しっかりとその過程を経てから、最後を迎えることができました。それぞれを縛るものですが、鳴沢については、獣医師の卵でありながら血を見ると卒倒してしまうということ、そして京を縛る物は…

おばあちゃんの前以外では
泣かないって思ってたのに
お母さんをはじめとして、自分のまわりからいつも人が去っていくように感じていた彼女は、「笑っていれば大丈夫」と心に言い聞かせ、今の今まで生きてきました。唯一心を許し涙することができたのは、今は亡きおばあちゃんの前でだけ。そしてそんな決めごとの裏では、もちろん「必要とされない自分」というものが強く意識され、彼女の自己評価の低さへつ繋がっていきました。それは1巻でもしばしば描かれていて、こんな台詞でストレートに表れています。

あたしなんて何もできなくて
馬鹿で取り柄もなくて
誰にも必要じゃなくって……
「誰にも必要とされない自分へのコンプレックスが」と「自分の周りから誰かが去っていくという恐怖」があるからこそ、彼女は自分がいないとダメな存在として、三匹の仔猫と、そして鳴沢さんを見つけ拾ってきたわけで、それが現在の彼女の精神的な命綱のようになっていました。それに加えて、鳴沢はことあるごとに彼女に伝えるんですよね、お前は誰にも必要とされないことなんてない、と。一度目は出会って間もなくの頃、彼はその後特に何か伝えるわけでもなく、ただ頭をぽんぽんとしてくれました。これもなかなか威力のあるものではありますが、本当に効いたのは2度目、今回改めて彼女がそのことを話した時でした。

あんたのそーゆー所に
驚かされて救われてた
フツーにそのままでいいよ
この時の京の表情を見てもわかる通り、これで改めてガッツリです、もう。鳴沢が初めてぐらいの勢いで見せた、京への優しい言葉。普段そういうことを言わない人が、突然こういう事を言うと、その破壊力は何倍もあるように感じられますよね。自分の彼へ向かう気持ちの強さを改めて実感した彼女の心は、もう離れません。そして最後、去り際の一言で改めて。今度は「俺が保証する」とまで言いましたから、鳴沢もまた彼女へ伝える言葉をよりハッキリと、意思の強いものへと変えていきました。これもまた彼の中での変化を如実に表していて、すごく良かったなぁ、と。また京も、この言葉に依存し安心しきるのではなく、本当に必要とされる存在となるため、自らの道を歩み始めます。このわかりやすい行動と、他人に依存しきらない歩み出しが、爽やかで素敵だなぁ、と。
さて、そんな形で京のトラウマ的な強迫観念を取り去ってくれた鳴沢ですが、彼のトラウマについても、京が言葉で救ってくれていたりします。彼がトラウマとなる一件のことを話したのは2巻に入ってからで、しかもその時には特に何も言う事がなかった京ですが、そのことに対する京の答えは、1巻の時点で既に出ていたのでした。
「不毛だとおもわねー?
追っても叶わないかもしれない
助けたい気持ちは
そしたら後悔しないか?」
という鳴沢の問いかけに対し、京は…

「あたしはきっと
追わなかった事を後悔します」
この言葉を聞いた鳴沢は、救われたような表情を見せるわけですが、ここに繋がっていたのですねー。あまり伏線というか、複雑に練っているような作品だとは思っていなかったのですが、一貫したテーマが物語の底にあり、読み返すと新たな発見があり、すごく面白かったです。
完結して、改めてこの作品をオススメしたいです。ちょっと不思議ちゃんテイストの、だけど心に傷を抱えたロリ属性の京の可愛らしさ。素直になれない性格と、自分の弱さを人一倍強く自覚し落ちてしまう鳴沢の不器用さ。空気を読まずに好き勝手する仔猫達。性格悪げな一匹狼に見せて、その実人一倍寂しがりやな先輩。どの登場人物達も素敵。少しでも気になった所があったのであれば、是非とも手に取ってみてください。
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