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Tag [続刊レビュー] 2010.07.12
作品紹介→*新作レビュー*新條まゆ「ハートのダイヤ」
関連作品レビュー→*新作レビュー* 新條まゆ「あやかし恋絵巻」



1102916038.jpg新條まゆ「ハートのダイヤ」(2)


だったら一生
俺を好きでいろ



■2巻発売です。
 姫乃の心臓に眠る「すべての願いを叶えるダイヤ」。姫乃のダイヤを巡り、迫り来る男たち。そんな姫乃を守るのは、真守と影護、二人の守護神!そして運命に戸惑いながらも、姫乃に芽生える恋心。許されない愛、ゆるぎない使命、揺れる恋心…姫乃が選んだ恋の行方は一体!?いっそう加速する、極限LOVE第2巻!!
 

~違った意味での「面白さ」~
 「面白い作品」と聞いたとき、皆さんはどのようなファクターを想像するでしょうか。例えばストーリーが秀逸であったり、雰囲気が良かったり、キャラが魅力的だったり、またそれらが複合的に絡み合っている場合もあるかと思います。要は何かしら、「すごい!」とか「良い!」と思える部分があるからなのですが、この「ハートのダイヤ」も、そういった意味ではまごうことなき「面白い作品」であると思います。とにかく、今年の新作の中でもインパクトはこれが一番。とにかく色々と衝撃でした。特に守護神の二人が、あまりに輝きすぎているのです。

 
~でっかい夢持つイケメン影護~
 自分を好きだと伝えてきた姫乃に対し、苦しくも「興味がない」と突き放してしまった影護。そして逆に姫乃に突き放されてしまいます。


ハートのダイヤ2-1
 その日は雨。後者裏の軒下で、影護は姫乃を呼び止めることもできずにただ呆然とその後ろ姿を見つめます。空虚を掴むかのようなその手つきが、なんとも物悲しいです。そしてその2ページ後、ヒロインが校舎を走っている間に影護は…


2ページ後…
ハートのダイヤ2-2
唐突にびしょ濡れ


え、何があった?


 雨の当たらない場所にいたはずなのに、なぜかびしょ濡れ。しかも2ページ後に突然という唐突さ。雨も滴る良い男…なんでしょうか。しかも彼、その直後に風邪をひきますどう考えても自業自得だろうが!
 
 そんな不思議ちゃんな影護くんのプロフィールが、柱の部分に書いてありました。
 
生年月日:11月3日(さそり座)
血液型:O型
……
好きな色:黒・シルバー
行ってみたい場所:宇宙
……

 
 行ってみたい場所が「宇宙」。なんてでかい夢を持った男なのでしょう。なかなか居ませんよ、「お前行きたいところとかあるの?」と聞かれて「宇宙」と答える人間なんて。その割に、「将来の夢:特にない」って…そこはでっかく宇宙飛行士とかにしようぜ!
 
 

~冷静さとテクニックを持ち合わせた御曹司・真守~
 そんな影護と双璧を成すライバルが、三ッ葉真守。彼もまた、柱のプロフィール紹介でそのポテンシャルの高さを披露しています。

生年月日:11月3日(さそり座)
血液型:A型
……
好きな食べ物:ケーキ
登記な教科:英語
好きなスポーツ:クリケット
好きな言葉:花鳥風月
……

 
 ク…クリケット…?どうやら最近のお金持ちのおぼっちゃんは、クリケットをたしなむみたいです。そして好きな言葉が「花鳥風月」って、またすごいですね。「お前好きな言葉何?」と聞かれて「花鳥風月」と答える高校生。住む世界が違いすぎる(´・ω・`) そんな真守さん、1巻でも紹介したとおり、すごい必殺技を持っています。それが…
 

 
ハートのダイヤ2-3
トランプ投げ
 
 少女漫画版マジック快斗ですよ。てかなぜトランプが武器なのか、未だによくわからないんですが。なんかこの立ち絵とか、シュールじゃないですか?指の長さとか手のひらの大きさとかは目を瞑るとしても。なんて話が逸れましたが、実はこのシーン、ヒロインである姫乃を助けにきた場面で、真守はさらに思わぬ特技を披露してくれます。


2コマ後…
ハートのダイヤ2-4
 まず平然と女子更衣室に乗り込むという時点で、すごい。そして冷静すぎる、姫乃の返し。しかしそんな返しも虚しく、平然と「君を守るためだよ…」。真守様じゃなければストーカーで逮捕ですよ。てかこのコマひとつだけでも結構な衝撃がありますね…。とまぁそれは置いておいて、手元のカードにご注目。最初のコマから考えると、今こちら側に向いているのはカードの裏。しかしこちらには、クラブの3が見えています。そう、たった一コマの間に、カードをひっくり返したのです。しかしこんなのは序の口。その後、更なる驚きを見せてくれます
 


次ページ…
ハートのダイヤ2-5
手元からカードが消える


普通に考えれば、投げたという結論に至るわけですが、
その2ページ後…


ハートのダイヤ2-6
突如手元に現れる「クラブの3」


 え、どこから現れた?そう、どう考えても、真守様は手品の名手だという結論に至ります。平然と女子更衣室に乗りこみ、さりげなく目立たない形で、自分のスキルをアピールする。カ…カッコ良すぎる…


 そんなカッコイイ男の子たちが登場する、「ハートのダイヤ」。是非とも誰かと一緒に読んで楽しんでもらえたらと思います。てかなぜ他のレビューサイトが取りあげないのか、不思議なんですけど…。
 
 
 
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Tag [新作レビュー] [読み切り/短編] 2010.05.16
1102904938.jpg牧野あおい「HAL-ハル-」


じゃあ1位だったころのおまえが
今まで何を生み出し
誰に何を与えてきたんだ?



■容姿端麗、成績優秀、運動神経抜群…学校のみんなからはミスと呼ばれ、憧れのマトになっているしずく。そんな完璧な彼女の前に、勉強でも運動でも容姿でもしずくの勝る女の子が、転校生として現れた。今まで周りを見下し生きてきた彼女にとって、初めての経験。苛立ちを募らせていく中、彼女の前にある日突然、死神のハルが現れた。彼から手に入れた禁断の力が、処女の黒い欲望に火をつける…

 牧野あおい先生のデビューコミックスです。表題作をはじめ、読切り4編を収録。それでは少しずつ内容をご紹介致しましょう。表題作は、成績優秀・運動神経抜群・容姿端麗の完璧な少女が、ある日死神に出会い、「望んだ相手を消す権利」を得るという事から始まる物語。学校帰りに裸足で帰宅中、親切に靴を貸してくれる男の子と出会い…という「7年後の虹」。些細なことがきっかけで、スクールカースト最下層に転落したヒロインが、上位層の男の子と仲良くなり…という「サヨナラ天使」。学校に馴染めない少女が、ある日不思議な小学生の男の子に出会い…という「青のツバサ」。どれもスクールカーストやいじめなどをテーマに、少女たちの心情・これからの生き方を描き出すストーリーとなっています。
 

hal.jpg
個人的にお気に入りだったのが、「7年後の虹」。あまり見ない設定・展開で新鮮でした。こういう「自分が言うとか、恥ずかしくて無理だろ…」とかいうようなクサい台詞は頻発。ムズかゆくなります。


 ストーリーは、どれも恋愛色が強くなく、学校での自分のポジションや身の振り方などに集中したものになっています。恋愛メインで描かれているのは、ひとつもないのではないでしょうか。軸ではなく、あくまで付随的なもの。だからこそ、甘くなりすぎず、ほどよい恋愛模様を楽しむことができるようになっています。その代わり、メッセージ性が強め。ラストに物語で描きたかったであろうメッセージというものが提示される展開が多く、ゴール設定からの逆算で描いていったかのような理路整然っぷり。優等生的なメッセージだとしても、新人さんでこれだけのレベルでまとめあげられるってのは結構すごいのではないかと思います。ただここ最近では珍しいぐらいに、クサい展開が多いですけどね。これをどう受け取るかは読んだ人次第。教育的には良さそうなものの、大人になってこういう物語を見せられると、ちょっと恥ずかしくなりすぎるかも。
 
 デビューコミックスですが、すでに方々で話題になっているこちらの作品。できるだけフラットな視点で読み、フラットな視点から感想を書きたかったのですが。どうでしょう。話題になった部分は置いておいて、構成の仕方は上手いなぁと普通に驚きました。だからこそ、こういった形で話題になってしまったのはもったいなかったなぁ、と。あと全然関係ないですが、もう1話収録するなり、かきおろし収録するなりで、ページ数稼いでほしかったですかね。ページ数数えてないのでハッキリとはわからないのですが、なんとなくボリュームに欠けるような気が。

【男性へのガイド】
→クサいのに耐えられるのであれば、それなりに読める内容なのでは。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→こういうクサい展開は個人的に好き。ただときにそれが過剰になるので、恋愛展開で中和してもらえれば。恋愛メインのお話読んでみたいですね。こじんまりしつつも、まとめ方は上手。やっぱりクサいけど。


作品DATA
■著者:牧野あおい
■出版社:集英社
■レーベル:りぼんマスコットコミックス
■掲載誌:りぼん
■全1巻
■価格:400円+税


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Tag [新作レビュー] 2010.03.26
1102888627.jpg雪丸もえ「ひよ恋」(1)


広瀬くんと同じ高さから見える世界は
とてもキレイだった



■ひよりは、とっても人見知りでとっても体の小さい高校1年生。入学式前日に交通事故に遭い入院していたため、みんなより遅れてのスタートとなった高校生活。初めてのクラスである上に、遅れてのスタートということで、不安を感じていたひよりでしたが、隣の席になった広瀬くんの助けもあり、次第にクラスに馴染む事に成功。そして気がつけば、広瀬くんに恋をしていました。いつも周りに人がいて、明るく楽しく、そして背の高い彼は、自分とは何もかもが正反対なのですが…!?

 月末にりぼんコミックスのレビューとか…今月は消化率悪めでお送りします。さて、ということで雪丸もえ先生の巻数つきのコミックスです。表紙からも分かる通り、身長差のある二人のお話。ヒロインは、人一倍人見知りな性格のひより。入学前に事故に遭い入院していたために、周りから遅れての高校新生活。そんな彼女のとなりの席になったのが(状況的には、彼女が隣に来た)、身長190センチの男子・広瀬くん。実に身長差・50センチ。しかし正反対なのは身長だけだはありません。明るく誰にでも親しげに接する彼は、いつもクラスの輪の中心。ひよりも彼によって、クラスに馴染んでいきます。そして気がついた時には、恋…。けれどもただでさえ人付き合いが苦手なひよりが、簡単に近づいていけるわけでもなく…というお話。


ひよ恋
こういう引きの構図が好き。シンプルだけど、それが良い。二人のまっさらでピュアな関係を表しているようで、こういう話にはしっくり来ます。


 物語はとっても基本に忠実。昔ながらのりぼんの恋愛もののエッセンスをしっかりと引き継いだような作品になっています。ゆえにインパクトには欠けるものの、こういうストーリーのほうが、おじさんとしては安心ですよ、うん。特に最近のりぼんは、なんだか変な方向に走りつつあるので、余計に。
 
 この作品で特筆したいのが、相手役の広瀬くんでしょうか。とにかくプレイボーイの匂いがプンプンします。それも努力で身につけたようなものでなく、ナチュラルボーンな感じですよ。例を挙げるならば、「あずきちゃん」の勇之助くんのような。風早くんに代表されるような、いわゆる爽やかさとは違うフォロー、サポートの上手さが、ムカつくほどにしっくりくるというか。本当に自然に振る舞っているだけなので、結果的な「気遣い」も、本人的には「気遣い」でないという感じがビンビン伝わってくるんですよね。それが同じ男から見ると悔しい(笑)努力型のプレイボーイ(Ex.「花より男子」の西門)は好きなのですが、天才型のプレイボーイは応援できない、男の悲しい性ってヤツですよ。うわーん。
 
 二人だけの関係を追っていっても良いのですが、それだけだとさすがに退屈…ということで、広瀬くんの近くにとっても魅力的な女の子を配置。ヒロインの心情及び物語の状況を引っ掻き回します。物語の盛り上がりは、彼女にかかっているような気がします。大人しすぎると退屈な恋物語になってしまうし、逆に動きすぎると物語が壊れてしまう。序盤のキーとなるべき冨永さんに注目です。


【男性へのガイド】
→オーソドックスな初恋物語がお好きな方は。低年齢向けとして、基本中の基本を抑えたような、安心の出来です。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→出来はいいと思いますが、そのぶんワンパンチ足りない印象。こういう作品があるっている安心感はものすごいですが、それと作品の評価はまた別な気もするわけで。


作品DATA
■著者:雪丸もえ
■出版社:集英社
■レーベル:りぼんますこっとコミックス
■掲載誌:りぼん(平成21年12月号~)
■既刊1巻
■価格:400円+税


■購入する→Amaozn

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Tag [オススメ] [新作レビュー] 2010.03.09
おもいで金平糖1持田あき「おもいで金平糖」


あまなつ屋の金平糖
夕焼け色の金平糖
ひとつぶ口にふくめば
昔の夢を見せてくれる   



■おもいで金平糖は創業120年を誇る飴屋「あまなつ屋」の看板商品。どこかでは「魔法の金平糖」なんて呼ばれていて、食べると不思議なことが起こるという言い伝えがある。口にふくめば昔の夢を見せてくれる、近い過去、遠い過去…。時空にたたずむ誰かの想いに呼ばれ、時を飛び越えた少女たちは、そこで何を見て、何を思い出し、何を感じたのだろうか。あなたの心のまん中を揺さぶる、4つの味を召し上がれ。

 持田あき先生の新作。食べると不思議なことが起こると言われている、「おもいで金平糖」が見せる、4人の少女の物語が描かれます。おもいで金平糖を食べると起こる不思議なこととは、タイムスリップ。その人にとって大切なときであったり、その人の大切な存在の意志が働いたりで、辿り着く先はバラバラ。別れを告げられた彼氏とつき合う前の自分に出会ったり、自分の生まれる前の時代に夢を追う恩師に出会ったり、今は会えない人に会ったり。相手にとって、そして自分にとっての人生のターニングポイントを、おもいで金平糖によってすり合わせるというイメージ。どれも懐かしさと温かさを感じる、ストレートな表現の感動ストーリーになっています。


おもいで金平糖
歳の離れた学校の先生との話。少女視点ではあるが、ふたりの物語でもある。


 この作品、実は先月発売の作品だったんですよね。持田あき先生は、「愛してるぜベイベ」などで有名な槙ようこ先生の実妹なんですが、姉妹ということで、どうしても比べてしまって…そうするとやっぱり分が悪いというか。それと持田先生ってものすごく表紙が素敵な先生なんですよ、ほんと業界随一なんじゃないかっていうくらい。それで購入した「キミは坂道の途中で」(→レビュー)の内容が、個人的に今ひとつで(表紙からの期待感とのギャップもあったと思う)、もう次買うのは巻数表示が付いてからで良いやと、この作品もスルーしていたのです。けれどどうにも周囲での評判が良いんですよね。Twitterでオススメされ、メールでもオススメされたということで、これはやらなあかんと思って読んだら、確かにいいお話でした。相変わらずやけに大仰というか、懐かしくも恥ずかしい、クサいやりとりをド直球に描くスタイルなのですが、それがビシっと決まった感じ。こういった雰囲気を恋愛でやられるとむずかゆくてたまらないのですが、恋愛以外の愛情にそれを乗せるのならば、案外すんなりと受け入れられたりするもの。いやでもやっぱりクサいし、どこか垢抜けないという。
 
 ストーリーは、過去に行くというだけで、その他にこれといった捻りはなし。SF的に、過去に影響を与えてしまったら未来が…なんてことは起こりません。起こるのは、心の変化のみ。そこに絞るからこそ、深い心の触れ合いを描くことが出来ます。もう少し捻りを加えた方が、大人も楽しめるのになぁなんて思ったのですが、そもそもこの話はりぼん掲載で、その中で恋愛なしのストーリーを組み立てるとしたら、こういうパターンしかないのかもしれませんね。このくらいストレートな方が、低年齢層の読者には伝わりやすい。恐らくこれを読んだ大人は、「心のまん中にズドンと来た!」となるか、「わざとらしすぎて、クサすぎて耐えられん!」となるかどっちかじゃないかと思います。もうひと捻りあったらお互い歩み寄れたような気もするのですが、そうすると爆破力は落ちてしまうかもしれないわけで、難しいところですね。とりあえず、なんだか変な方向に向かいつつあるりぼんで、今なおこういった作品が読めるというのは貴重。これからもこのスタイルを貫いて、恋愛だけにとらわれない愛情・絆を描いていってもらいたいですね。


【男性へのガイド】
→恋愛に特化していないため、読みやすさはあると思います。あとはこのクサさに耐えられるか。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→捻りはないし、上手くもない。諸刃の剣。けれど今の少女誌(というかりぼん)で、流れに逆行するような作品を描き、しっかりと作品として仕上げたあたり、応援したいですね。

作品DATA
■著者:持田あき
■出版社:集英社
■レーベル:りぼんますこっとコミックス
■掲載誌:りぼんスペシャル
■全1巻
■価格:457円+税

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Tag [新作レビュー] 2010.01.16
1102831092.jpg新條まゆ「ハートのダイヤ」(1)


お前は世界中の男から心と体を狙われる…
そして…
俺はお前を守るナイトだ…



■お嬢様・おぼっちゃまが多く集まる聖クィーン学院の中等部に入学した、姫乃。普通の家に育った彼女が、この学校に来たのには、とある理由が…。それは小2の夏に出会った初恋の男の子と再会するため。その時に一緒に過ごした、三ッ葉家の御曹司・真守と、その使用人の息子・影護のことが忘れられなかったのだ。期待に胸を膨らませての入学だったが、そこで影護と再会。しかし何やら彼の様子がおかしい。再会するなり、「お前を守る」とか言い出すのだ。さらには真守も留学先から帰国し、影護と同じようなことを言い出す。それには、姫乃の身にとある重大な秘密が隠されているからで…!?

 何かと話題の「まゆたん」こと新條まゆ先生のりぼんでの新作でございます。お話は、その身に秘密を持つヒロインが、世界中の男から心と体を狙われ、それを初恋の男の子が守るという、ラブロマンス。姫乃が持つ秘密とは、どんな願いもたった一つだけ叶えてくれると言うダイヤを持っているというもの。そのダイヤとは、彼女のハートで、彼女の心と体を手に入れた者は、どんな願いでもひとつだけ叶うというのです。そんなダイヤを守るために生まれたのが、小2の時に仲良くなった二人の男の子、真守と影護。それぞれに野望を抱えた世界中の有力者たちが、こぞって姫乃を狙ってくるところを、この二人が身を呈して守ります。物語の行方としては、ナイトに守られたお姫さまが、最終的に誰を選ぶのか、というところ。設定はそれなりですが、構図としては単純明快。エロゲとかにありそうなシチュエーションを反転させた感じでしょうか。


ハートのダイヤ
ナイトというのはただ守るだけではなく、限られた血筋の者しかなれない。この二人がそれで、真守はナイトとして姫乃を守り、影護は正式なナイトにはならず、自分のやり方で姫乃を守る。ナイトになると姫乃と結ばれることは許されないばかりか、即ちそれは死を意味する。そういった縛りがはいった方が、こういう作品は盛り上がる。


 ヒロインの姫乃は、三ッ葉家の御曹司でナイト(「守護神」と書いてナイトって読むんだけど、これってどうなんだろう)の真守が初恋の相手。しかしナイトは彼女と結ばれることが目的ではなく、あくまで彼女を守ることが使命。そのため近くにはいるものの、想いは届いてくれません。もう1人のナイト・影護は姫乃への想いを抱えているため、正式なナイト(儀式が必要)にはならず、自分なりのやり方で彼女を守ろうとしますが、やはりなかなか自分の方へは向いてくれないという状況。加えてこの二人がイケメンの人気者ということから、周囲の女子からも敵対され、周りは敵ばかりに。それでもなお守ってくれるナイトに、彼女のことを狙いつつも、素敵にアプローチしてくる魅力的な男の子たちに囲まれ、さぁどうする!?という、ある意味愛され冥利に尽きる作品と言えるかもしれません。
 
 ナイトの存在意義や、ヒロインを狙う一人がなぜナイトの書(ダイヤの秘密)を世界中にばらまいたのかなど、腑に落ちない点は多数あるのですが、これから明らかになっていくのでしょうか。とはいえそれ以外にもツッコミどころは多数あり、物語としてはガタガタという印象が否めないです。とはいえそれでこそ新條まゆ作品なのでしょうし、メインである恋愛に関してはしっかりと体勢が整っているので、それをどうこう言うのはナンセンスなのかもしれません。本当にどうでもいいような、毒にも薬にもならないような作品も多々ある中、どんな形であれしっかりと面白いネタを提供してくれる新條作品ってのは、やっぱり話題になって然るべきなのだと思います。メイン読者は狙い通りに楽しみ、それ以外の層は突っ込みながら楽しめる。貶めてるわけではなく、これは賞賛。ネタになった時点で勝ちなのです。
 

ハートのダイヤ2
ナイトになるとカードの能力が与えられる。回想シーンでさらっと描かれた、カード投げですが、正直かなりシュール。なんていうか一コマの破壊力が半端ないです。


 一応エロを売りにしていた作家さんが、エロは極力少なくしたいりぼんで描くということで、どんな変わり身を見せるのか注目していたのですが、目に見えるエロはやっぱり抑えてきましたね。とはいえ全体的にどこかエロティックな雰囲気は残されており、りぼんスタンダードからはやはり一線を画すような印象を受けます。とはいえ最近は「kiss meホスト組」(→レビュー)みたいな作品も出てきており、りぼんの新たな流れはしっかりと汲んでいるのかもしれません。またヒロインは初潮を迎えることで、男性を選ぶことが出来るようになるという設定があるのですが、これがどうにも「繁殖期を迎えた一個体のメスを、多数のオスが競争して奪い合う」という厳しい繁殖競争を想起させ、ある意味もの凄くエロく思えます。見えるエロから見えないエロへのシフト…!?いや、さすがにそれはないか…。


【男性へのガイド】
→単純に考えればかなり厳しいものの、ネタ的に捉えればこれほどおいしい存在もあるまい。
【私的お薦め度:☆☆   】
→この物語ではオススメするのは難しいです。ある意味もの凄い衝撃だったんですけど。いや、買ってみる価値は十分あるかもしれませんよ?


■作者他作品レビュー
*新作レビュー*新條まゆ「あやかし恋絵巻」


作品DATA
■著者:新條まゆ
■出版社:集英社
■レーベル:りぼんマスコットコミックス
■掲載誌:りぼん(平成21年9月号~連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税

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