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Tag [続刊レビュー] 2014.09.08
1106429394.jpg咲坂伊緒「アオハライド 」(11)



でも
俺が見つけた




■11巻発売しました。
 中学時代のつらい記憶を、みんなと塗り替えることのできた洸。洸の気持ちは次の段階へ―――。双葉は冬馬との関係を作っていこうと努力するが、洸とある行動に出てしまう。波乱広がる修学旅行―――。


~メディアミックスが止まらないよ~
 10巻のレビュー出来ていなかったのでしばらく間が空いてしまったのですが、メディアミックスが続々。アニメ化は以前から予告されていましたが、絶賛放送中。更には実写映画化も決定ですよ。ヒロインは本田翼さんで、洸はあの東出昌大さんがやるということで、キャスティングからも気合が伺えます。本田翼ちゃん好きなので嬉しいのですが、ドラマや映画でヒット作に恵まれていない感もあるのがどうか。
 全然関係ないですが、竹野内豊さん主演の映画「ニシノユキヒコの恋と冒険」で本田翼ちゃんが演じた面倒くさい年下の女の子はかなり良かったです。


~今回はちょいと双葉にイライラ~
 さて、それでは本編の話をしましょう。10巻に引き続いて、舞台は修学旅行です。洸が自分の気持ちに素直になり猛チャージをかけてくるわけですが、のっけから二人抜け出し洸が育った町へ行くという出来事が。誘う洸も洸ですが、ついていく双葉も双葉でして、これまで散々洸にダメ出ししてきたのですが、ここはさすがに双葉が悪いかなぁ、と。ヒロイン目線で見ると別に弁解すればよさそうな程度の出来事ではあるのですが、冬馬側からしたらこれたまったもんじゃないですよね。ただでさえ意識しているライバルに修学旅行という特別なイベントで連れ出されるって、自分がやられたとしたらもう不信感と嫉妬に狂いそうになると思います(笑)


アオハライド11-3
そんな中で、内心穏やかじゃないでしょうが、一見落ち着いて見せている冬馬くんはなかなかの度量の持ち主だぞ、と改めて思うわけですよ。

 双葉は本心と良識と、本当に五分五分の所で揺れています。ただ頭で正しい行動がわかっていつつも、気持ちに逆らえないって、もう半ば答えが出ているようなものだと思うんですけどね。そしてふと冷静になって、


アオハライド11-2
自分はクズだ


 なんて落ち込むという。ただ個人的には、こうして自省しても次の行動につながらないと意味がないと思うのです。こうして「自分はダメだ。自分はダメだ。」と言いつつそこからの脱却を図らない人間が、現実の世界には何と多いことか。だから双葉には、対話の場を持って謝るだけではなくて、何かその次の行動を起こしてほしいところです。そしてその行動は、早ければ早いほうが良い。11巻では結局そこまで行かずに終わってしまいましたが、12巻、何かしらのアプローチをしてくれることを期待しています。


~流れは完全に洸の方ですけどね~
 なんて、11巻の流れを見ていると完全に洸に分があるような感じですよね。まず無意識でのじゃれ合いとか。バスのこれ、とかもう。。。


アオハライド11-1
あざとすぎる


 咲坂伊緒先生が描くヒロインは総じてあざといのですが、これもまたあざとい。こんなん高校生がやられたら下半身が穏やかじゃないですよ、もう。女性って結構好きだった相手を匂いで記憶している人が多い印象で、元カレがつけていた香水の香りがしてドキッとしたなんて話をたまに聞いたりします。別に香水じゃなくともいいのですが、とにかく無意識に匂い嗅いで笑顔になってるとか、半ば「好き」って言っちゃってるようなもんじゃないですか、と。あと髪を食べるという無防備さね。警戒していませんよっていう最大限のアピールです。あー、やられたい(願望)

 あと決定的だったのは、行方がわからなくなっている双葉を、冬馬ではなく洸が見つけるところ。ついつい所在がわからなくなりがちな少女マンガのヒロインを見つけるのは、昔からヒーローだって相場が決まってるわけですよ。この時に洸が言い放った「でも 俺が見つけた」は、ヒロインの進む先を決定づけるこの上ないセリフであったように思えます。立場的には平行線ですが、状況的にはだいぶ洸に傾きつつあるような現状。冬馬が何巻もかけて必死に築き上げてきた高さに、ヒーローはちょいと1巻くらい本気を出したら到達できちゃっていて、少女マンガという世界の厳しさを改めて思い知らされたのでした。


【関連エントリ】
作品紹介→君にまた会えたこの奇跡を、新たな軌跡に変えて:咲坂伊緒「アオハライド」1巻
2巻レビュー→変わった君にドキッとした:咲坂伊緒「アオハライド」2巻
3巻レビュー→こんなの絶対好きになる:咲坂伊緒「アオハライド」3巻
4巻レビュー→過去も含めて今の君:咲坂伊緒「アオハライド」4巻
5巻レビュー→付き合うまであと1ミリのドキドキ感:咲坂伊緒「アオハライド」5巻
6巻レビュー→一番の盛り上がりと一番のモヤモヤ:咲坂伊緒「アオハライド」6巻
7巻レビュー→恋することはいつも難しい:咲坂伊緒「アオハライド」7巻
8巻レビュー→「好き」と言える勇気があるから前に進める:咲坂伊緒「アオハライド」8巻
9巻レビュー→冬だってのに春めく心:咲坂伊緒「アオハライド」9巻
作者他作品紹介→今 伝えたい この想い:咲坂伊緒「ストロボ・エッジ」10巻

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Tag [続刊レビュー] 2014.07.28
1106412700.jpgやまもり三香「ひるなかの流星」(10)


馬村はやっぱり
せっけんの匂いがした



■10巻発売しました。
 馬村からの突然の告白に、すずめが悩んで悩んで出した答えは……“大切に思ってくれる人を、幸せにしてあげたい”。そう進んで行こうと思った矢先に獅子尾と再会して…?

 
〜ついにキター!!!〜
 10巻発売しております。9巻ラスト、リーチかかった形での幕切れでしたが、期待通り早々に“アガリ”となりました!すずめが自分の今持っている想いを馬村に伝え、馬村は…
 

ひるなかの流星10−1
今まで以上に大切にする
よろしくお願いします



 いやー、おめでとう!本当におめでとう!!これまで腐ることなくひたむきに、自分なりのやり方ですずめを想ってきた馬村が、こうして幸せになってくれて、本当に嬉しいです。しかしこの馬村の言葉。これまで以上に大切にされたら、どうなっちゃうんだろうって感じですよね。これまでもとにかくすずめ第一主義的というか、大切に大切にしてきた感が強いので、いざ“彼氏”という枠に収まったとき、どんな優しさを見せてくれるのか。。。なんという期待感と安心感。こういう言葉をかけてあげられる(表向きだけでなく、内面も伴った形で)男になりたいものです。


〜僕は君のもの〜
 さて、斯くして「すずめの彼氏」となった馬村。ふわふわした気分で学校に向かいます。高揚感に包まれているであろう中、すずめに貰ったヘッドフォンで聴いていたのは、Jason Mrazの「I'm Yours」でした。洋楽とか聴くんですね、馬村は。この曲、Billboard 100への連続チャートインの最長記録を持っていたりするので、割と知っている方も多いかと思います。タイトルを直訳するならば、「僕は君のもの」。馬村の心情を表しているのでしょうか。歌詞を見ると相手への想いを綴ったラブソングというよりも、もうちょっと広いスケールで唄われているもので、なんだかこう、馬村がものすごく大きな心の持ち主であるように見えてきてしまいます。
 
 

私もこの曲、好きでiPodに入っているのですが、晴れた日に歩きながら聴きたくなるような気持ちの良い曲ですよね。


 さて、というわけで中盤は付き合いたてのフレッシュさと恥ずかしさ全開でお送りするわけですが、個人的にこういうお気に入りカップルのこういうシーンが一番の大好物でして。もうこういう状態だけで5巻くらい続いて欲しい(願望)。今回特に破壊力があったのは…
 
 
ひるなかの流星10−2
これ
 
 
 もう、最初に何思ったかって「馬村死んじゃう!死んじゃう!」と。口に出してましたから「死ぬ。死ぬ。」て。すずめって時折こういう不意打ちをしてくるんですが、これがいい具合に馬村の反応を引き出してくれるのですよね。改めてニヤニヤが止まらないっていう。それに叔父さんにもちゃんと気に入られてるしね、前途は明るいです。
 

〜獅子尾サン…〜
 なーんて、すべてが上手く動いていたように見えたのも束の間、この男が波乱を起こしてきます。はい、獅子尾ですよ、獅子尾。前回のレビューで「不安」と書いていたのですが、その予感がなんとなく現実味を帯びてきたと言いますか…。
 
 正直なところ、「余計なことしてんじゃねーよ」感がすごかった。いやー、確かに彼単体で考えればこの行動はすべきだったのかもしれないのですが、物語全体で見た時にどうだろう。彼が辿ろうとしている道筋は、失敗して学ぶっていう割とありがちな成長ルートで、もちろん必要な行動ではあるのですが、それを年下の生徒相手にやるってのはどうなの、と。ましてやその子は、傷を抱え、迷いつつも立ち直ろうとしている子供なんですから。相手も、タイミングも誤っているようなモヤモヤ感がすごいあるのですよね。元カノは獅子尾のことを「ガキ」だと諭すわけですが、それにしてもこれはあまりにガキすぎるというか。ガキと言えど、すずめや馬村から見たら獅子尾は「大人」であって「教師」なわけで、だったら最低限大人としての振る舞いをして欲しいのですよ。ガキだと言うのなら、こっぴどくフラれて成長すればいいのだ…なんてのは暴言すぎますかね。しかし印象悪いのは確かだと思うんだけどな。これどっちに転んでも、場を片付けるのが大変そう。
 
 とはいえ馬村&すずめの関係が固まりきっていない段階でこの牽制を入れるというのは、状況をひっくり返す上ではこの上ないタイミングで、これでまた状況はわからなくなってきました。馬村はかわいそうですが、まだまだ安心感のあるドキドキを胸いっぱい楽しむ時期は遠いようです。


【関連記事】
作品紹介→みんな自分だけの流れ星を探してる。:やまもり三香「ひるなかの流星」1巻
2巻レビュー→片想いが重なる高一の夏:やまもり三香「ひるなかの流星」2巻
3巻レビュー→馬村くんが不憫すぎる件:やまもり三香「ひるなかの流星」3巻
4巻レビュー→元カノのフォローパスが決勝点に?:やまもり三香「ひるなかの流星」4巻
5巻レビュー→ひとつの恋の成就とひとつの恋の終わり:やまもり三香「ひるなかの流星」5巻
6巻レビュー→馬村の成長記ではないのですが…:やまもり三香「ひるなかの流星」6巻
7巻レビュー→苦い思い出の“お泊まり”:やまもり三香「ひるなかの流星」7巻
8巻レビュー→大チャンスをモノに出来るか。:やまもり三香「ひるなかの流星」8巻
9巻レビュー→好きだからだろ!:やまもり三香「ひるなかの流星」9巻
関連作品紹介→「シュガーズ」

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Tag [新作レビュー] 2014.05.12
1106368543.jpg綾瀬美羽「ビビッドチェリー」


好きなのかも


■泣いたり切なくなるのに、なんで、みんな、恋するの?
 多歌は「恋」がまだわかっていない高校2年生。バイト先で女子が苦手な年下男子・咲良と出会う。咲良の片想い中の女子の話を聞くことで、恋に興味が出てくるが…!?女子力は高くないけど、多歌なりの初恋がはじまる……。
 
 以前ご紹介した「ハル」(→レビュー)を書かれていた綾瀬羽美先生の初となるオリジナル連載作でございます。個人的にここ1年くらいのデビュー漫画家さんの中では特に注目している先生なのですが、 何といってもそのこなれっぷりが凄くてですね。抜群の安定感。本作も初オリジナル連載とは思えないほどの安定っぷりでございました。
 
 物語で描かれるのは、まだ恋を知らない女の子が男の子と出会い、恋を知るというボーイミーツガールなストーリー。ヒロインは、黒髪ツインテでおてんば感のある少女・多歌。姉や友達、たくさんの人を泣かせる「恋」というやつに、すこしばかり興味が出て来た高校2年生。シングルマザーになる姉を助けるためにバイトをはじめることにした多歌は、バイト先で年下の男の子・咲良に出会う。女子が苦手でいつも職場で弄られている彼は、実は密かに片想い中。そんな彼の話を聞いて、益々興味が出て来た多歌ですが…というお話。


ビビッドチェリ−1
 恋を知らない女の子が、一人の男の子と出会うことで恋を知り…という、実にオーソドックスな恋愛感情無自覚型のストーリー。大体そういう子って中学生だったり高校1年とかだったりするのですが、彼女の場合は高校2年とかなりの遅咲きでございます。高校2年なのにこれっていう。「こんなのありえない」という感もあるかもしれませんが、これは言わば少女漫画の定型課題であり、様式美なのですよ。


 さらにお相手となるのは、恋の酸いも甘いも知るイケメン男子…ではなく、密かに女子に想いを寄せる奥手な頼りない年下男子という変わり種。この設定からしてなかなか恋愛が発展しないこと請け合いなのですが、そこは4話完結(そこ?)、しっかりと転がります。あ、もちろん無理なく展開してますからね。


ビビッドチェリー2
ひとつひとつ恋の良さを知って行く。まずは他人の様子を見て。そしてやがて、自分自身が恋をして…。

 
 ヒロインは年上ではあるのですが、割と何も考えずに自由に動いてしまう節があり、見ていて結構危なっかしいのです。そんな彼女を上手いこと御してくれるのが、年下男子の彼。ヒロインが巻き込み動かし、最後は彼がフォローするという、ちょいど良い関係は見ていてとても安心感がありました。
 
 同時収録の読切り「ユメミナイト」は、王子様を夢見る女子が、理想とは正反対のチャラい男子と出会い恋するお話を描いた作品。こちらも好きになる→ちょっとした戸惑い・反発→一悶着からの懐柔といったお約束がキッチリと詰め込まれており、「あー、少女漫画読んでるなぁ」と改めて実感させてくれる内容となっております。
 
 どちらも特筆すべき設定や展開はないのですが、その中で押さえるべき点はおさえており、トキメキ成分はばっちり。ヒロインの多彩な表情から、心の揺れ動きがダイレクトに伝わってきます。なんていうか、箱の中にものが偏らずにきちんと収まっている状態と言いますか。読んでもらえればわかると思うのですが、なかなか伝えるのが難しいのです…。


【男性へのガイド】
→少女漫画好きは、是非読んで欲しい。
【感想まとめ】
→新作楽しみにしていたのですが、はずさないです。“少女漫画感”を堪能できました。


作品DATA
■著者:綾瀬美羽
■出版社:集英社
■レーベル:別冊マーガレットコミックス
■掲載誌:別冊マーガレット
■全1巻
■価格:400円+税


■試し読み:第1話

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Tag [続刊レビュー] 2014.05.07
1106390007.jpg目黒あむ「ハニー」(4)


奈緒
おそろい



■4巻発売しました。
 鬼瀬くんと仲良くなった二見くん。
 明るくて気さくな二見くんは、鬼瀬くんの彼女でもある奈緒にも仲良く接してくれます。最初は鬼瀬くんの話などを楽しくしていた2人ですが、徐々に二見くんは奈緒を意識するように…。そんな中、体育祭が始まります。ついに想いを抑えられなくなった二見くんが……!?


〜告白に対して奈緒は…〜
 4巻は2部構成。序盤は二見くんのアプローチ、後半は矢代さんと三咲くんの一悶着。どちらも青春汁と恋愛汁に溢れていて、まぁニヤニヤさせてくれる内容となっておりました。
 
 まずは二見くんの話ですかね。もうこいつ絶対告白するじゃんって流れでしたが、案の定しちゃいました。しかも勝ち目薄であることは3巻時点で明白で、かませ犬にすらなれないというシチュエーションです(なのであんまり私のかませ犬アンテナには反応してこなかった)。
 
 目下の注目は、鬼瀬くんと奈緒がどう乗り切るかという所なのですが、奈緒が泣きながらのお断り。うーん、やっぱり泣いちゃったか、と。もっとパニくるかと思っていたのですが、自分の言葉でしっかりと「お断り」をするあたりが偉いです。
 
告白のあと、二見くんはこんな後悔をするわけですが…
 
 
ハニー4−1
…なんで
もっと早く奈緒ちゃんのこと好きにならなかったんだろう



 二見くんが奈緒の魅力に気づけたのは、他ならない鬼瀬くんがきっかけであって、なかなかそれは難しい話だったんじゃないかなぁ、と。また告白を断る際に奈緒が、「私が鬼瀬くんに出会って少しだけ変われたから」と言っている通り、仮に鬼瀬くんよりも前に二見くんが出会っていたとしても、その魅力を見出して好きになれたかというと、これもまた難しいんじゃないかな、と。というわけで、割と不憫な負け戦に挑むことになった二見くん、今後の去就が気になるところあります。
 
 この後はもう奈緒に対して甘々な展開で。さいごの鬼瀬くんとのイチャラブも良かったのですが、個人的には矢代さんのこれ…


ハニー4−2
ああ、飛び込みたい(小声)。


 この子は他人に対して無関心っぽいのに、その実誰よりも敏感に感情を感じとって気遣ってくれるんですよね。こんなのやられたら、ガッツリ心掴まれますって、もう。


〜脇役二人のまさかの展開〜
 さて、そんな矢代さんですがまさかの後半に超絶スポットライトが当てられる展開となります。いきなり彼氏の登場ですから、ドびっくりですよ。他人と深く関わらない…なんてポリシーを感じさせる彼女ですから、当然日々孤独に生きているのかと思っていただけに、この展開は衝撃でした。しかも、よくよく読み進めてみると、彼女の方が依存しちゃっている勢いという。いや、これはビックリ。けれども2巻では、奈緒に対してこんなアドバイスをしているんですよね


ハニー4−3
恋って理屈じゃないしね 


 これは恋してないと言えない台詞ですもんね。ようやく納得です。そしてまさに、「恋は理屈じゃない」を体現しているような恋愛をしていたってんですから。

 そしてそんな彼女の実情を前に、それまでまったく自覚していなかった自分の気持ちにいきなり気づいたかのように突っ走る三咲くん。若いです。この気持ちはわからんでもないですが、それって純粋な好きなのか、焦りによる見切り発車なのか分からん感じがまた。そしてそんな彼の言葉に対して、矢代さんは逃走するっていうドタバタっぷり。奈緒はちゃんと言葉で伝えたんですがね。このなんでもアリ感がまた面白かった。この二人のことも楽しみになった5巻、どんな恋模様を見せてくれるのでしょうか。


【関連記事】
作品紹介→ある日不良さんに、花束もって告白されました。:目黒あむ「ハニー」1巻
2巻レビュー→ピュアさゆえの破壊力:目黒あむ「ハニー」2巻
3巻レビュー→“だいすき”ばかりが募っていく:目黒あむ「ハニー」3巻

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Tag [新作レビュー] 2014.05.06
1106390008.jpg渡辺カナ「ステラとミルフイユ」(1)


誰でも誰かを好きになるの


■父への反発から決めたことが2つ。
 それは志望高校を変えたことと、家を出て独り暮らしをすること。
 周囲を拒絶することで始まった新生活は、
 寂しさと眩しさがたくさん詰まっていました。
 
 「花と落雷」(→レビュー)の渡辺カナ先生の新連載になります。ステラとミルフイユって何のこっちゃと思われるかもですが、読んでてもあんまりよくわからなかったので大丈夫(何が?)。欧風ファンタジーすら想起させますが、描かれるのは中二病気味の面倒くさい男子の日常を描いた青春ドラマでございます。
 
 物語の主人公は、とある高校に独り暮らしをしながら通うことになった男子・葉山銀河。医者をしている父の厳しい教育に反発するように、父に黙って親に言われた高校とは別の高校に入学し、寮生活とウソをついて独り暮らしを始めたのでした。独り暮らし初日、新しい生活に胸躍らせている中出会ったのは、お隣さんの桃野さん。見ためヤンキーあがりな年上の女性・椿さんと、その娘(?)のさくらちゃんの2人暮らし。独り暮らしをした経緯を話したところ、以来「弄りがいのあるやつを見つけた」と言わんばかりに生活に介入してきて、銀河の人間関係は広がりを見せていくのですが…というお話。


ステラとミルフイユ
弄りがいのある性格の主人公。中二病を拗らせ気味なのですが、それが愛すべき性格とでも言いますか。


 別冊マーガレットは学園ベースでの恋愛+友情って感じで回していく印象なのですが、本作は男性主人公で恋愛要素は非常に薄めであり、またメインフィールドも学校半分、アパート半分という感じ。非常に個性的な登場人物達が揃っており、笑いも生み出すのですが、当人達は至って真面目に青春しており、つまるところ一口で「このジャンル」と言えない不思議な風合いの作品に仕上っています。
 
 ベースとなるのは、抑圧からの反発で青春をこじらせた空気読めない男子高校生と、ワケありな元ヤン女性との関係。そして彼女を起点に、アパートの各住人と顔見知りになり、またそこを起点に学校のクラスメイトにまで人間関係が派生していくという広がり方。主人公はお金持ちであり、家を出たとは言っても仕送りしてもらっている上に執事が離れつつも色々とサポートしてくれるという甘い環境におり、またそれが原因なのかどこか浮世離れした感覚&性格の持ち主。一方で周囲にいる人たちは安アパートに住んでいるなりの経済状況の人たちで、個々人に色々と事情もあったりするのです。そんな人たちと触れあうことで、まともに青春を享受できていなかった半人前の男の子が、ようやく人並みの感受性だとか人付き合いの方法を体得し、青春というものを楽しむことができるようになるという。
 
 1巻は登場人物の相関図の整理という段階であり、それぞれどういう形で矢印が伸びているかわかってきた段階。主人公は恋愛云々という段階になく、あるとしてももうちょっと先のことであろうと思います。人物間でのぶつかり合いも少ないため、1巻はちょっとしたズレみたいなものから生まれる笑いがメインかなぁという印象ですが、これから関係が醸成されることで、もう少しシリアスに切り込んだ感動が生まれてくるのでしょう。またそれぞれが個性的だからか、互いの会話がガチャガチャとした印象であるのは相変わらずで、好き嫌いの別れそうな所。なんというか野島伸司的なエッセンスも感じられなくもないのですが、それは私だけですかね。


【男性へのガイド】
→男性主人公ですが、彼に共感するのはなかなかハードル高く。とはいえベタベタな恋愛要素もないので、取っつきやすいとは思います。
【感想まとめ】
→独特の風合い、台詞まわしをどう受け取るか。1巻時点では、個人的には前作の方がお気に入りですが、今作の方がじっくりめに構えている感もあり、まだどうこう言うのは尚早という感じでしょうか。


作品DATA
■著者:渡辺カナ
■出版社:集英社
■レーベル:別冊マーガレットコミックス
■掲載誌:別冊マーガレット
■既刊1巻
■価格:400円+税


■試し読み:第1話

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レビュー
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レビュー
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レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。