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Tag [新作レビュー] 2011.02.24
1103024091.jpg宇野紗菜「蛇とマリアとお月様」(1)


あんたがこの世界に
喰われるだけじゃない?



■お嬢様学校に通う隠れ腐女子・桜子が、ここ最近楽しみにしているのは、電車で見かける一組の男子高校生のカップル(桜子が勝手に認定)。大好きなBL作品のキャラクターにソックリな彼らの、一挙手一投足に萌えが止まらないのだ。今日も今日とて電車内で幸せな妄想を…と思っていたら、偶然にも彼らと接触してしまい、あろうことか腐女子であることまで知られてしまう。そんな桜子に、彼らはとある提案をしてきて…

 「秘密のエトワール」(→レビュー)の宇野紗菜先生の新作です。前作2巻完結だったのを知らず、3巻まだかまだかと思っていたら、なんか新刊出てたんだ…(´・ω・`) というわけで、新作「蛇とマリアとお月さま」のご紹介です。タイトルと表紙を見ると、なんとなくファンタジーチックな物語を想起させますが、中身は現実ベースの学生おバカコメディ。有名小説家である母の愛娘として育ち、現在はお嬢様学校に通い周りからは羨望の目で見られる…そんな彼女・桜子のもっぱらの趣味は、BL。そう、大変残念な、腐った女の子だったのです。そんな彼女の最近のお気に入りは、電車で見かける二人の男の子。大好きなBLマンガの主人公にそっくりな彼らの戯れ合いに、日々妄想を重ねて楽しんでいたのでした。ところがある日、ひょんなことから彼らに自分が腐女子であることを知られてしまいます。絶体絶命!どうかこのことは黙っていてと彼らに頼むと、彼らはとある提案をしてくるのですが…というお話。


蛇とマリアとお月さま
グッジョブです…!しかし実際どうなんでしょう。BLに“萌える”という感覚を殆ど持っていない自分からすると、この感覚はうらやましくもあり。


 さっさとネタバレしてしまうと、彼らは双子で、しかも彼女の大好きなBLマンガの作者であったという。弱みを握られた桜子は、そんな彼らのメシスタントとして半拉致されてしまいます。いいように使われ、さらには腐女子の琴線に触れるような様々なイタズラを仕掛ける双子の前に、桜子はタジタジ。序盤は完全に、めくるめくドタバタコメディとして物語が展開されます。しかしそこかしこに見える、伏線の数々。何がどう転んで、二人はBL作家を志したのか。また双子と一緒に住む、オネエ系の男の正体とは。そしてどうやら、双子は桜子のことを知っているようで…と、枚挙に暇がありません。それらが徐々に明らかになるにつれ、一見おバカで楽しげなこの物語の裏には、なにやらとても後ろ暗いストーリーがあるようで、この先を期待させる要因となっています。
 
 「秘密のエトワール」が、かなりストレートにそのヒロインの抱える傷と、解決への指針を示していたのに対し、こちらの物語は謎が多く、明るい未来が見える段階に辿り着くまで時間がかかりそう。現時点では不可解な点が多いのは前述の通りですが、なまじ前半がおばか展開であったために、そのギャップを越えてまで2巻へと手を伸ばさせるような魅力があるかは、微妙なところかもしれません。キャラの魅力でどこまで引っぱれるか。しかしBLネタってこんなにフリーダムなものなんですか。宇宙人攻めってなんだ…


【男性へのガイド】
→めくるめく腐ネタ(腐女子が喜ぶネタではなく、腐をそのままネタとして使ってる)に耐えられるかがポイントか。勢い良いので読むのは苦にならんかとは思いますが。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→ちょっとまだ全体像がぼやけているので、はっきりとは。2巻では、1巻とはガラリ印象の変わったないようになるのかと思うのですが。


■作者他作品レビュー

作品DATA
■著者:宇野紗菜
■出版社:秋田書店
■レーベル:プリンセスコミックス
■掲載誌:プリンセス(連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税


■購入する→Amazon

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Tag [続刊レビュー] 2011.01.29
作品紹介はこちら→水城せとな「黒薔薇アリス」
3巻レビュー→アリスの見た景色と、水城先生の描く愛されキャラの話《続刊レビュー》「黒薔薇アリス」3巻
4巻レビュー→「本当に好きになった人」が既にいる2人に、未来はあるの?:水城せとな「黒薔薇アリス」4巻
関連作品レビュー→「失恋ショコラティエ」3巻



1103000185.jpg水城せとな「黒薔薇アリス」(5)


君のためじゃないよ
僕が楽になれるから
そう言うんだ



■5巻発売しました。
 迷いと惑いのアリスが弾く、「亡き王女のためのパヴァーヌ」の旋律が、かつての想い人・生島光哉を呼ぶ。自分が梓であることを悟られないようにと、必死で取り繕うアリスだったが、予想以上に光哉はアリスにこだわり会おうとしてきて…。一方そんな二人の様子を見たディミトリ、櫂&玲二は…。急展開の第5巻、登場です!
 

~生島光哉との再会~
 ついに訪れてしまいました。生島光哉が、アリスのピアノの音色に導かれるように、彼女の元へ。想定していなかった、再会という展開を迎えます。そして明らかになる、光哉の現在。かつて“光る哉”、とその名前に重ね思いを馳せた、明るく人を引きつけるような輝きはそこにはなく、愛する相手を失った失意の中、未だ闇から出られない彼の姿がそこにはありました。


~ディミトリと同じ苦しみを味わうアリス~
 最愛の人を失い、同時に自分のせいだという罪悪感を感じている、半ばパニック状態のまま、その命を繫ぐ力を持ったものに、助けてくれと乞う。結果命は繫がれ、無事に救うことができたと安心したものの、結局それは、自分のエゴに過ぎなかった。ディミトリはアニエスカに対して、そしてアリス(梓)は生島光哉に対して、同じような思いを抱くことになります。


黒薔薇アリス5-1
 アニエスカには魂がないぶん、それでもディミトリの罪悪感は“その時”に縛られ続けるわけですが、光哉の苦しみは現在進行形で続いており、今現在変化をしているという状況。それを目の前にまざまざと突きつけられるのは、そりゃあキツいわけで。ディミトリは変化することのない、永遠とも言える罪悪感に飲まれ、逆にアリスは、現在進行形で変化をする、ディミトリとは違う苦しみを味わうことになります。どちらが苦しいかはわかりませんが、その苦しみの中で、光哉に身と心を許してしまうというのは、わからないでもない行動なわけで。
 

~愛と繁殖を描く物語~
 その中で描かれた、アリスと光哉のベッドシーン。元々この作品のテーマは、「愛と繁殖」であったわけですが、そういう意味では、この時が一番このテーマを体現しているような気がするなぁと感じました。今まではどちらかというと、繁殖に付随する、良きオスを見抜く能力であるとか、そういった側面が強く出ていたので、こと恋愛が前面に押し出されたこの二人の描写は、今までになく新鮮であったというか。



~身体的接触から見る、ディミトリの想い~
 驚いたのは、ディミトリが出ていってしまったこと。彼はそれについて様々語るわけですが、その真意というのは、結局のところ明らかになりませんでした。
 
  そんな中、「アニエスカ」という名前を出した時、ディミトリは激昂し、アリスに手をあげます。この時彼は、「アニエスカへの思いを切り、アリスとして君を愛した」と語っているのですが、アリスがこのような容姿で、このような状況に陥っている中、そのような言葉が出てきても、本当にそうなのだろうかと思える時があるのも事実。しかしディミトリは確実に、彼女をアニエスカとしてではなく、アリスとして愛しつつあります。それが窺えるのは、彼の言葉などではなく、身体的接触にありました。
 
 1巻にてアニエスカを復活させたとき、彼はマクシミリアンにアニエスカの身体を運ばせ、同時にこんな言葉を残します。


黒薔薇アリス5-2
彼女はもう二度と
僕に触れられたくはないだろうから

 

 この想いは徹底していて、例えば彼が梓の魂をアニエスカの体内に宿すときも、アニエスカの身体には触れず、レオにその役目を頼んでいます。そう、ディミトリは決して「アニエスカの身体に触れない」のです。そんな彼が、別れ際におくった、アリスへのキス。これ以上に、彼の想いが伝わってくる行動など、あるはずがないのです。いや、もしあったとしたら、それは最後の最後、繁殖のときでしょうか。そういう意味では、彼は既に最高のカードを切ってしまった。そんな彼の気持ちに、アリスがどう応えるのか、6巻は要注目です。なんて、6巻は双子の一悶着で、ディミトリ一切登場しないなんてこともありそうですが。どちらにせよ、目が離せません。


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Tag [続刊レビュー] 2010.11.21
作品紹介→*新作レビュー* 高殿円/藤丘ようこ「神曲奏界ポリフォニカ~エターナル・ホワイト~」
2巻レビュー→ヤンデレなプリムローズ嬢が素敵すぎる:高殿円/藤丘ようこ「神曲奏界ポリフォニカ エターナル・ホワイト」2巻



1102979395.jpg藤丘ようこ/高殿円「神曲奏界ポリフォニカエターナル・ホワイト」(3)


いったいなんだろう
この曲が
こんなにも私の指になじむなんて



■3巻発売です。
 精霊島の葛西の一見から月日は流れ、音楽院は夏休みに入った。プリムローズとの楽しい日常に浮かれるスノウは、ある日観に行った新進気鋭の音楽家・ミナギ=クロードのコンサートで、彼の奏でる音楽にふと懐かしさを覚える。いや、懐かしさというよりも、確実に記憶のどこかにある感覚。そのミナギが、この中途半端な季節に音楽院に転入してきた!彼が作った、この世界の誰も知るはずがない曲を、私はなぜ知っている!?
 

~ラノベ原作で読み続けてる作品です~
 3巻発売です。ラノベ原作のコミカライズ作品で、しっかりとここまで追いかけているのは、レビューしてる作品では「図書館戦争」(→レビュー)とこの作品ぐらいでしょうか。レビューしていないものだと、「とらドラ!」とか「狼と香辛料」とかありますけど。しかもこの作品て、この作品で作品全ての世界観をカバーしているわけではないと聞きますし、それでも読んでしまうってのが自分でも不思議なんですよね。それでも買うたび、面白いと思うし、登場人物達がみなみな個性的でかわいいと思えるので、多分様々な要素が重なって自分を続刊購入へと駆り立てているのかもしれません。ちなみに原作は基本的に読んでいないので、原作との乖離とかはまったく気にならない口です。


~美味しそうに食べる女の子って素敵すぎます!~
 様々な登場人物達が出てくるわけですが、とりわけ魅力的なのは、お嬢様のプリムローズでしょう。2巻では嫉妬にまみれるブラックな一面を覗かせてくれた彼女ですが、以降感情をしっかりと表に出すようになりました。そして3巻では、また可愛らしい欲望に忠実な一面を…。それが、食欲!
 

神曲奏界ポリフォニカ3
たくさん食べたにもかかわらず、
さらに桃まんを美味しそうにほおばる


神曲奏界ポリフォニカ3-2
流れに関係なく無意味に挟まれる、
プリムローズ嬢のほおばり。
ちょっと大沖先生っぽい。


 やたらと食べるシーンが目についたわけですが、その姿がとても可愛い!女性の好みって色々あると思うのですが、自分はこの「美味しそうに食べる」というのが一番のポイントでして、リアルでも二次元でも、それは一緒なのだな、と思い知らされた瞬間なのでした。幸せそうに美味しそうに食べる女の人を見ると、なんだか自分まで幸せな気分になるじゃないですか!これから先、まだまだワガママに欲望に忠実に動き回りそうな彼女から、目が離せません。ワガママお嬢様はたくさんいるのですが、彼女の場合は物腰柔らかなので、キツさや嫌らしさがないのですよね。


~嫉妬で回すというのが、女性っぽいというか~
 さて、物語本編の方は、スノウの過去を知ると思しき人物が登場してきました。しかも彼、良い人そうに見えて、かなりブラックな感情をスノウに対して抱いている模様。2巻でのプリムローズの負の感情に続き、またしても嫉妬や恨みといった、負の感情を動力源にした物語の展開です。この連続して嫉妬のような感情を軸に据えるというあたり、なんとなく作者さん女性なんじゃないかと思ったわけですが、高殿円先生って男性なのか女性なのか今ひとつ判然としないところがあります。多分ファンの方々は知っていらっしゃるのでしょうけれど。もしこれで男性だったら驚きです。いやぁ、こういうミナギくんみたいに歪んだ感情をぶつけちゃうキャラって、好きなんですよ。しかもいかにもうさんくさいような。彼の登場が、物語に一つ大きな転換点をもたらすのでしょうが、どんな展開になっていくのか、楽しみですね。



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Tag [新作レビュー] 2010.10.22
1102969002.jpg藤田麻貴「バロック騎士団」(1)


アンタはこれからアタシに
尽くして尽くして尽くしまくる義務があるわ



■各界のエリートを養成するという名門・斎華王学園。初等部からの持ち上がりが殆どで、中等部・高等部での編入は珍しいこの学園に、暴言女王と呼ばれる都は入学してくる。親の会社はこんな学園には似合わないような規模で、入学案内が送られてきた理由は全く不明。全寮制で、外出はおろか退学もできないというこの学園で、都はこの学園の謎に迫る。入学初日に一方的に成敗した男子・上総を従えて、都が行きつく先は…。いびつな真珠達のファンタジック学園ストーリー、開幕!!

 「楽園のトリル」(→レビュー)の藤田麻貴先生の新作のヒロインは、今までにないくらいに暴君な美女でした。突然届いた入学案内によって、導かれるように名門・斎華王学園に編入することになった、都。真っ直ぐ過ぎる性格で、自分の意思はどこまででも通す。口も早いが手を出すのも早い。そんな彼女は、編入早々にこの学園の不可解さに気がつきます。全寮制で外出はおろか退学も禁止。上には「特別寮」という特定の生徒のみが入寮できる施設とクラスがあり、そこに入ると外出できるらしい。それより何より、自分がこの学園に入学することになった経緯がわからない。そんな謎だらけの学園で、編入初日に成敗した、同じ編入組の男子・上総を従え、彼女はこの学園の謎に迫っていくことになります。そして同時に、彼女の体にも思わぬ変化が訪れ…というお話。


バロック騎士団
「駄犬!」は口癖。暴君っぷりを象徴する言い回しです。そんな彼女に、文句を言いつつもなんだかんだで付き合ってやる上総くん、あんたいい男やで。。。


 暴君ヒロインに、何かと面倒を見させられる料理上手の長身男…という組み合わせから、「とらドラ!」を彷彿とさせるのですが、こちらはあちらのように青春ラブコメを送るなんてことはなく、あくまでシリアスにランブルスクールデイズを送っていきます。特別な学園で、ヒロインが巻き込まれつつもなんやかんや…というのは「楽園のトリル」でも同じ。設定は違えど、藤田先生お得意のパターンとも言えるわけで、物語は特殊な設定を持ち込みつつもかなり安定している印象を与えてきます。結構謎が多い(というかそれが売りの一つなのですが)のに、そこが良い意味で気にならないというか。少々ファンタジックな要素を折り込みつつも、完全なファンタジー作品の領域には足を踏み入れないと思われ、親しみやすさもプラスされているのかな、という感じがします。
 
 メインは当然のことながら、学園の謎に迫るということなのですが、1巻時点でむしろ目を引いたのは、ヒロイン・都と上総のかけ合い。物語の中で唯一と言っていいほど、笑いを生み出すポイントとなっているのですが、基本は暴君・都が一方的に上総を困らせるというだけのワンパターン。けれども変化の激しい物語の移り変わりの中で、変わることなくくり返されるそのかけあいが、良きガス抜きとしての役割を果たしており、個人的にお気に入りとなりました。しかしながら、もったいないと思うのが、都の性格描写。「とらドラ!」の大河とは、基本的に外面的な対人行動は全く同じであるのですが、なまじ主人公である分、その異質っぷりを多少なりとも自分側の視点に置かねばならず、ややとっつきにくい感じに。主人公であるから思考が当然流れ込んでくるのですが、どうしてそのような結論に至るのか、変わりすぎていて理解しきれない部分が多々あるという状況になっています。これがもし、主人公でなく視点の交わりがないキャラクターであれば、単に「変な子」で済んだのかもしれないと思うと、もったいないなぁ、と。せめてどうしてこのような性格になったのか、軽くヒントでも与えておけばいいのにとか思ってしまいました。なんてゆくゆくは明らかになってきたりするのかもしれませんが。


【男性へのガイド】
→ヒロインのノリに、男の子の献身っぷり。「とらドラ!」をどことなく彷彿とさせますが、あくまで少女漫画仕様。設定から受け取る印象ほど読みやすくはないかと。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→ヒロインのあの性格は、なかなかとっつきづらい。それが話を動かす原動力になるのですが、もう少しフォローしてあげてもよさそうな。物語自体はよく動いて楽しいです。


■作者他作品レビュー


作品DATA
■著者:藤田麻貴
■出版社:秋田書店
■レーベル:プリンセスコミックス
■掲載誌:プリンセス(連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税


■購入する→Amazon

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Tag [続刊レビュー] 2010.09.26
作品紹介はこちら→水城せとな「黒薔薇アリス」
3巻レビュー→アリスの見た景色と、水城先生の描く愛されキャラの話《続刊レビュー》「黒薔薇アリス」3巻



1102957771.jpg水城せとな「黒薔薇アリス」(4)


恋をして
本当に好きになった人を選べばいいと思うよ
きっと後悔しないよ



■4巻発売しました。
 レオの寿命は尽き、繁殖を巡る状況も、変化の時期を迎えていた。そんな中、アリスは大正時代の古い日記帳を発見する。そこに綴られていたのは、お屋敷の娘・彰子という少女による、ディミトリ達が日本に来てからの日々。彼らがどうしてここに住んでいるのか、そしてディミトリへの、彰子の想い…。それを読んだアリスは、ディミトリを今までとは異なる感覚で見つめるように。そんな中、レオの種を宿した鳴沢瞳子が、ディミトリ達の前に現れ…
 
 
~4巻発売です~
 4巻発売いたしました。4巻の殆どは、アリスが発掘した、彰子の日記に関する話がメインで描かれます。いつごろディミトリ達が日本に来たのか、どうしてお屋敷に住んでいるのか、そして日記を描く彰子とは何者なのか、そして明かされる、彼女の想いとは。日記ということで、終始彰子視点で、そして時折アリスの想いを挟みつつ、物語は進行していきました。物語を進めていく以上、この日記にくだりは外せないのだとは思いますが、どこかゆったりとした印象で、一休みという感覚が強かったです。この日記を読んだことで、アリスのディミトリに対する思いは一層複雑に。2人を隔てるものは、より大きくなっていきました。そんな中、レオの種を宿した鳴沢瞳子さんが登場。彼女の登場が、アリスの心を大きく動かしていきます。
 
 
~瞳子さんが残したもの~
 瞳子さんは、様々な方面で、アリスの心に変化を与えました。まずは、養分をもらうという過程からの、嫉妬心。それは、彰子の日記から感じた気持ちを、より具体的にしたような感情。しかし彼女の本当の働きは、その後でした。一緒にアリスたちと生活するようになると、良き相談相手に。そんな中、彼女がアリスに放つ一言が、物語の流れを大きく変えていきます。
 
 
恋をして
本当に好きになった人を選べばいいと思うよ
きっと後悔しないよ


 「本当に好きになった人」…それを探していくと、すでにアリス、いや梓には本当に好きになった相手がすでにいました。それが、教え子の光哉。そして、その言葉に導かれるかのように、ラストでは光哉が登場。これは物語が面白くなってきましたよ。
 
 ちなみに「本当に好きになった相手」という意味では、ディミトリもまた、アニエスカ以外にその相手はありえません。自分はすでにヴァンパイアとなり、またアリスも外見はアニエスカではあるものの、決してアニエスカではない。マクシミリアンも、レオも、再三にわたってディミトリに「繁殖をしてください」と告げているのは、心のどこかで繁殖をしないままその生涯を終わらせてしまうのではないかという危機感があったからなのかも。マクシミリアンも、レオも、本当に好きになった相手とではなく、繁殖という目的のために、相手を選びました。アリスもディミトリも、同じように彼らと同じ道を歩くことができるのか、それとも違う道を選ぶのか、目が離せんですね。


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レビュー
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レビュー
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レビュー
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