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Tag [続刊レビュー] 2010.08.31
作品紹介→もとなおこ「コルセットに翼」
5巻レビュー→このお話は、一体なんていうジャンルに属するのだろうね《続刊レビュー》「コルセットに翼」5巻
6巻レビュー→ハッキリとした将来像と、見えてこない鍵の謎:もとなおこ「コルセットに翼」6巻
関連作品紹介→もとなおこ「ドリーナ姫童話」



1102949767.jpgもとなおこ「コルセットに翼」(7)


学校の存続が最優先
私の望みは…
変わらないわ



■7巻発売です。
 ジェシカから託された、デスデモーナの破滅への計画は順調に進み、学園の改革が次々と成功していく。そんな中、クリスは自分は将来医師の道を進もうと決意する。改革のさなか、ジェシカの婚約相手でクリスの心の支えでもあったミスター・バードに再会したクリスは、母の肩身である鍵を彼に見せると、同じ鍵を持つバードは困惑…。一度動き出した変化の波は止まることなく、やがてクリスはじめ学園をも飲み込んでいくことに…
 

~大きく動き出す~
 6巻までもそれなりに動きがありましたが、ここまでたくさんの転換点が集中した巻はありませんでした。とにかく様々な人が、それぞれの意思で動き出しています。その筆頭となったのは、八百屋の息子で、クリスのボーイフレンド的存在の、リアム。祖父が亡くなったことで、ロンドンへ発つことを決意。クリスにお別れをします。そしてそれに続いたのがメイドのアニー。リアムを追って、そして同時に看護士の道を進むために、ロンドンへ発つことを決めます。一度に大切な人二人と離れることになったクリスですが、決して悲しむことはありませんでした。これはあくまで、一時の別れ。いつか一回り大きくなって、必ず再会できることを確信していました。そんな別れの中で、最もカッコ良かったのは、他でもないリアムでしょう。アニー相手に、14歳とは思えないほど大人らしく気丈に振る舞ったクリスでも、この前にはポカンでした…
 
 
コルセットに翼
お前にプロポーズできる男になるまでの時間


 お互いにまだ十代の半ば。年齢設定的には、「耳をすませば」の二人と同じくらいです。そして同じくプロポーズとも取られかねない発言をするわけですが、この決まりようといったら。。。再び会うのは10年後。彼らにとってみたら、驚くほど先のことですが、リアムはしっかりと先を見つめ、自信溢れた表情でクリスに伝えました。人生経験の差か、境遇の差か、とにかくカッコ良いの一言でしたよ。私は一生こんなこといえる人間になれそうにありません。。。


~アニーについて~
 さて、そんな中気になるのが、アニーの想い。クリスに比べ、より「恋」という感覚が出ているのは、彼女の方でした。この旅立ちに際して、彼女にも彼女のなりの優しさみたいなものを見せており、本当に情の厚い子なのだなぁ、と。クリスの将来の夢は医者になることですが、アニーの夢は看護士。好きな男の子を追って学園を離れるという勝手を働くことに後ろめたさがあるのか、もしくはクリスへの恩返しなのか、ゆくゆくはまた近くで奉仕できるような職業を選んでいます。こういったところに彼女たちの絆が感じられ、実に素敵なシーンとなっていました。


~大きな転換点となるか~
 一カ所変化すると、それが悪玉を取り除くことであったとしても、全体のバランスが崩れ、一気に変化の波が訪れてくるのですが、デスデモーナ陥落もまた同じような道を辿ることになりました。デスデモーナのみならず、学園閉鎖の危機。拠り所がなくなり、結果みんなが旅立っていくというパターンとしては、例えば「キャットストリート」(→レビュー)などがありますが、こちらはまた別の道を進みそう。その救世主となるのが、ミスター・バードなのですが、彼とクリスはどういう道を歩んでいくのか…。先の告白を見せられたものとしては、やっぱりリアムとくっついて欲しいのですが、クリスは医師の道を進みバードの脚を治す、そしてバードはクリスへ道を用意する、というギブアンドテイクの関係がキレイに作られるのはこちらなわけで、予想しづらいものがございますですよ。え、セドリック?いや、さすがに彼はないでしょう…って、彼何やってるんでしょうね。次の巻あたりに登場して欲しいところですが。


■購入する→
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Tag [新作レビュー] [オススメ] [読み切り/短編] 2010.08.25
1102949768.jpgもとなおこ「ドリーナ姫童話~クイーン・ヴィクトリア冒険譚」


それともあなたたちは
このパイよりも
子供の命の方が軽い国に
住みたいのですか!?



■歴史に名高いヴィクトリア女王が、まだドリーナ姫と呼ばれていた頃。王室の実権を握っていたコンロイは、徐々に王室の人間を腹心たちで固め、その地位を益々盤石のものにしようとしていた。そんなコンロイを見て、危機感を募らせるドリーナ姫は、どうにか抵抗しようと試みるも、力で押さえつけられてしまう。そんな彼女の姿を見た天使たちは、彼女の手助けをしようと、とある試みをするのだが・・・ 

 「コルセットに翼」(→レビュー)のもとなおこ先生の短編集でございます。短編集といっても、長編読切り2篇と、すごく前の読切りが一つ収録されているだけで、ひとつ一つのお話はとってもボリューミーでございます。それではメインとなる、ふたつの物語をご紹介いたしましょう。表題作は、「コルセットに翼」と同じ、19世紀のイギリスが舞台。幼い頃から天使の姿を見ることが出来た、姫・ヴィクトリアは、日に日にその発言力を強めていく秘書・コンロイに危機感を覚え、なんとか状況を打破しようと考えます。そんな彼女の姿を見て、天使たちはどうにか手助けしようとするのですが、そこから事態は思わぬ方向に…というストーリー。もう一つ、「執事と奥様」は、植物研究をしている教授と結婚することになった、元タイピストの女性が主人公。結婚して、教授と共に暮らそうと、彼の屋敷に行ってびっくり、そこにはかつて恋した執事の男の子がいたのでした…というストーリー。どちらもイギリスを舞台に、ファンタジックな要素を交えつつの、大人のためのおとぎ話を展開していきます。


もとなおこ「ドリーナ姫童話」
天使のひとりは、人間の姿で彼女の前に現れる。それが全ての始まりだった。


 ドリーナ姫童話は、実在する人物たちがモデルになっており、ストーリー展開も歴史に照らし合わせられながら進んでいきます。ヒロインのドリーナは、イギリスの女王となったヴィクトリア、その配偶者となる、エドワードも登場。物語は、彼女が女王になる前に、イギリスの現状を知り、より相応しい人物になっていくという成長・変化の過程を描いていきます。面白いのは、しっかりとファンタジーの要素を物語に落とし込んでいること。天使が見えるという設定がまずあり、また天使が手助けのために人間に入り込み、彼女を助けるという状況が登場します。いきなり天使とか言われると、きっと慣れていない人であれば面食らうと思うのですが、最後の最後、すごくキレイな形でまとめてくれるので、全部帳消し。これは素敵。面白いとか、楽しいとか、その物語を形容する言葉というのはたくさんありますが、この物語に関して言えば、素敵一択。少女漫画式のファンタジーおとぎ話のお手本のような物語構成となっているのです。作品の雰囲気から何から、古くさく感じられる部分が多々あると思うのですが、それでもこれを古き良きとして捉えてくれる人もたくさんいるはず。今でこそこういったパターンの作品はあまり見なくなりましたが、出来が良ければしっかりと楽しめるのだな、と感じられた一作でした。
 
 また同時収録の「執事と奥様」も、物語の舞台の時代感と、古き良き少女漫画の雰囲気が出た面白い作品となっております。特に何も考えずとも、楽しむことができるのですが、ちょっと個人的にひっかかりのある部分があり、もしそこが狙われて作り込まれているのだとしたら、すごいなぁ、と。最後教授が天に召されるのは、ヒロインがシークレットガーデンを開けた時になるのですが、そこで咲いていたフェアリー・プランツは、仏がモチーフとなっている植物がモデル。フェアリーなのだからフェアリーなのかもしれませんが、天に召されるタイミングで仏モチーフって、何かありそうで。勘違いですか、そうですか。
 
 またドリーナ姫童話では、コルセットに翼のネタが登場。ファンには嬉しい仕掛けが施されていました。また同時収録されている「宇宙色ティータイム」は、なんと85年の作品。私の生まれる前ですよ、前。ここまでいくと、古くささというよりも、歴史を見ているような感覚で、逆に抵抗感なくすんなりと読むことができました。目にー☆みたいな表現が、バリバリ使われていた頃。すごいです。少女漫画家さんの絵柄は変わるものですが、ホントに全然違いますね。


【男性へのガイド】
→女性のための、古き良きおとぎ話という印象。男性が読んでも良いですが、やはり女性が読んでこそというイメージを受けました。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→導入からとっつきにくいと思っていたら、最後にあまりにキレイに、しかもド直球でまとめてきたので、感動。これは素敵な作品だと思いました。


作品DATA
■著者:もとなおこ
■出版社:秋田書店
■レーベル:プリンセスコミックス
■掲載誌:プリンセス,プリンセスGOLD
■全1巻
■価格:400円+税


■購入する→Amazon

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Tag [新作レビュー] 2010.07.14
1102940544.jpg和深ゆあな「メリクロンの涙」(1)


「どうして泣くの…?」
「あなたが笑っているからよ」



■其れは神の御業か、悪魔の所業か…。とある街の一角にある、少し大きな洋風のお屋敷。そこに住むのは金髪で碧眼の謎の青年・ルイ。そこで彼が生み出すのは「メリクロン」と呼ばれる代物。簡単に言うならば、記憶さえも生き写すことが出来る、クローン。自分の<代わり>として、誰かの<代わり>として、生み出されるそれは、元の本人とまるで見分けがつかない。その作り手である、ルイは、神か悪魔か。そしてそれを側で見つめる一人の少女は、何を思うのか…

 秋田書店から、和深ゆあな先生の新作でございます。タイトルは「メリクロンの涙」ということですが、この「メリクロン」とは、記憶までもコピーできるクローンのこと。そんなメリクロンを巡る様々なお話を、一話完結形式で展開していきます。そしてその中で、「メリクロン」の生みの親である、謎の青年・ルイと、彼の屋敷に一緒に暮らす一人の少女との関係を描き出し、物語の深淵へ進んでいくという感じ。お話の舞台となるのは、「メリクロン」の生成(良い言葉が見つからない…)場所であり、謎の青年・ルイの住む屋敷。何らかのきっかけでそこを訪れる人間、ないしルイが見つけてきた人間が、メリクロンを作るか否かで迷い葛藤し、自分なりの結論を出していくというものになります。


メリクロンの涙
視点は、メリクロンの生みの親である青年・ルイと一緒に生活する少女(?)から。一緒に生活していても、メリクロンに対する見方は、ルイとは異なる。


 話の視点は、ルイの屋敷に住む少女。名前は明かされず、いつもルイからは「君」、もう一人の同居人である少年からは「姉ちゃん」などと呼ばれています。物語の中心となるのは、ルイと彼女。実は彼女、自分のメリクロンを作り、かつて居た場所から逃げ出してきたという過去を持っており、それを今も後悔しているという状況。メリクロンを作りに訪れる人に対しても、「作らない方が良い」と助言をするなど、ルイと一緒に暮らしていながら、その立ち位置は全くの正反対になります。それでも強く苦言を呈することはない、ルイ。当然その裏には何か事情があるわけで、それらは追々明かされていくという塩梅です。
 
 この手の設定は、確かに面白いのですが、一話完結で多用してしまうと、途端に無駄遣い感が出てしまうから不思議。SFやミステリーの方向で話を広げれば面白いのですが、各話単体で見るとやはりヒューマンドラマ志向が強くなり、どうにも薄味に感じてしまうことも。「イキガミ」の序盤など、「悪くはないんだけど、そっちなのか…」みたいな。というか、最初にヒロインとそのメリクロンが出会うという話を持ってきて、そっち方面に構えさせたのがもったいなかったのかな、と。順番を変えて、後半に進むにつれ確実に物語の深いところに到達しているという感覚が味わえた方が、個人的には好みだったかも。いや、それでもライトな読切りとして見るのであれば、及第点以上の高水準にあるわけですが、設定的にかなり面白そうだったので、ついつい要求がワガママなものに…


【男性へのガイド】
→男性が嫌う要素はそこまでないような。ヒロインはそれなりに可愛らしいし、青年の飄々とした感じも、ウルサくならず良い味付けに。読みやすいと思いますよ。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→思っていたのとは若干違う方向に進んだものの、それが悪いかというとそうではない。ヒューマンドラマを良しとするのであれば、一風変わった感じで、楽しめると思います。


作品DATA
■著者:和深ゆあな
■出版社:秋田書店
■レーベル:プリンセスコミックス
■掲載誌:プリンセス
■既刊1巻
■価格:400円+税


■購入する→Amazon

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Tag [続刊レビュー] 2010.05.17
作品紹介→*新作レビュー*すもももも「センゴク男子 花の乱」
関連作品レビュー→すもももも「天の竜・地の桜」



1102905467.jpgすもももも「センゴク男子花の乱」(2)


今まで守ってもらってきたんだもの
今後は私が   



■2巻発売です。
 東京の花の家で暮らすことになった織田信長と、森乱、坊、力の三兄弟。戸惑いつつも、こちらでの生活に少しずつ慣れてきた四人は、日に日に外への興味が増してくる。そんな中、坊と力のリクエストで訪れた遊園地で、助っ人として戦隊ショーに出演することになってしまった花と三兄弟。そこでお金を稼ぐ手段を知った彼らは、せめてお世話になっているぶんは働きたいと願うようになり…!?


~少女漫画ならではな展開~
 センゴク男子がタイムスリップという作品。2巻発売ですよ。予想通り、乱を筆頭に坊、力が芸能界デビューする流れでございます。しかしセンゴク男子アイマスみたいな感じなのかと想いきや、プローデューサー業一本で行くことはありません。ヒロインは元々子役で、気持ち次第でいつでも復帰は可能という状況。過去のトラウマがあるために、現在復帰は出来ないでいますが、それを乱たちが現れたことで乗り越えていける…という展開のさせ方もありなんですね。裏方オンリーだとどうしても地味になる。夢を売る秋田書店は、やはりこういう展開の方がしっくりくる気がします。これが男性向け漫画の場合、完全な裏方になるのでしょうが。


~もうクライマックスに向かってる?~
 なんとなく方向性は見えていたものの、どうやって味付けして最後まで持っていくのかは予想がついていませんでした。そして今回、ひとつポイントとなりそうなイベントが発生します。それが乱の映画デビューなのですが、その映画というのが織田信長ものという。盲点。この手があったかと思わず唸ってしまいました。そこに花の元カレも出演。これ、芸能界ものとして捉えるのであれば、このままクライマックスになっちゃうんじゃないですか?あとがきだとまだ3巻では完結しないみたいですが、余程のことがない限り、これで終わっちゃうような気がします。形としては完璧も、坊や力がはちゃめちゃやるところや、恋愛展開ももっと見てみたいだけに、ちょっと脇道それてくれないかなぁ…。しかし裏表紙の「ときめきエボリューション!」って意味不明ながらもインパクト抜群で大笑いでした(笑)


■購入する→Amazonbk1

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Tag [新作レビュー] 2010.05.16
1102905468.jpg武藤啓「っていうか恋じゃね?」(1)


人との出会い
一度目は偶然
二度目は縁
そして三度目は



■母親と自分を残し、金目のものを全部持って逃げていった父のせいで、男が大嫌いになった姫森一乃。彼女が想いをよせるのは、幼い頃に出会った美しい女性・しの。その人に再び出会える日を、日々夢見ている。そんな彼女には、最近とある悩みが。通学先の高校が、この度女子高から共学になり、男子と一緒に学校生活を送らなくてはいけなくなってしまったのだ。不安を募らせる女子たちのことを思い、頼られ体質の一乃は気合い十分に男子に立ち向かっていくけれど、当の男子たちは対立する気は毛頭なし。クラス委員に選ばれた田中新を相手に、一乃の気合いは空回りの連続で…!?しかも新には、誰にも言えない大きな秘密があって…

 武藤啓先生の新作でございます。「Oh!myプリンス」(→レビュー)の連載が終了してから、新作が楽しみで仕方なかったのですが、今回はなんと「男の娘もの」だそうで…え、男の娘?今流行りの男の娘を、武藤先生もやってきますか。そういえば、表紙も前作とは異なりなんだか今風のスタイリッシュなデザインになっています。それではそんな「っていうか恋じゃね?」の内容の方をご紹介していきましょうか。
 
 ヒロインは、大の男嫌いの姫森一乃。しっかり者で人一倍責任感が強い彼女は、学校でも頼もしいヒーロー的な存在として、女子たちから一目置かれています。そんな彼女の前に現れたのは、どうにもノリが軽い男の子三人組。一緒にいた友達に、男子側の一人が一目惚れしたらしく、積極的にコンタクトを取ってこようとします。そんな彼らを何とか振り払った一乃だったのですが、後日思わぬ所で再会を果たすことに。今年から共学となった一乃の通う学校で、あろうことか同じクラスになってしまったのでした。憧れの女子高の生徒たちを目の前に色めきたつ男子たちに、はじめての共学に不安を抱く女子たち。なんとか彼女たちの不安を取り払おうと、一乃は気合い十分にクラス委員選に望むのですが、紆余曲折あり、最終的に選ばれたのは、先日の3人組の一人・田中新。最初は男ということで、邪険に扱っていた一乃でしたが、彼の考えを少しずつ知ることで、協力の道を模索するようになっていきます。未だ打ち解けない男女たちを、どう打ち解けさせていくのか、二人の奮闘がスタートしました。


っていうか恋じゃね?
頼りがいのある、リーダー肌のヒロイン。その佇まいは、「会長はメイド様!」(→レビュー)の鮎沢さんにそっくり。意志と責任感の強さを表すのには、黒髪できちんと縛るというのが最も適しているのかも。

 
 あれ、どこに男の娘要素が?と思われたかもしれません。ヒロイン・一乃には想いをよせる…というよりも、淡い憧れの想いを持つ女性がおり、その人との再会を夢見ながら日々を送っています。そして再び、彼女の前に姿を現したその女性・しの。しかしその正体は、クラスで対立している新の女装した姿で…という設定が。恋した女性は、クラスで敵視していた男子で…という状況になるのですが、現在のところその繋がり部分はあまり描かれず、あくまで学園物語がお話の軸となっています。しのは時折現れる心のオアシスで、物語中のイベントには直接絡んできません。これから絡まざるを得なくなるのでしょうが、いかに上手く使いこなせるかが鍵といったところでしょうか。しかしながら、どうして一乃はその女性・しのに憧れを抱くようになったのか、そして新はなぜ女装という形で一乃に近づいたのか、そのあたりの説明がやや希薄。そこを“売り”とするのであれば、もう少し感情移入しやすいように丁寧に説明するなりすれば良かったと思えたので、ちょっともったいなかったな、と。ただ過去に会った女性としのは、どうも別人クサいんですよね。それがどうこれから物語に絡んでくるのかは楽しみ。これで終わりって事はないはずです。


っていうか恋
脇役が魅力的なのもまた、この作品の売りのひとつ。中でも一乃のことが大好きで仕方ないワガママ姫・みちるが大好きです。こういう小動物のようで奔放なキャラ、大好きなんですよ。


 前作も脇役がなかなかいい味を出していたのですが、今回も素敵な脇役たちが勢揃いしています。一乃の周りには、一乃に想いをよせるワガママかわいい女子や、引っ込みがちで笑顔がかわいい女子、素直になれないツンデレ女子。男子も、惚れたら一直線の猪突猛進型男子、興味は専ら二次元のオタク男子と、物語を彩るのには十分すぎる面々。普通に学園コメディを展開しても、十分面白い話になりそうです。現在はそこをベースに展開しているので、それなりに面白いのですが、肝心の男の娘が本筋に絡まない&ヒロインが極端に動きすぎているということで、ややチグハグな印象も。これからいかに融合・中和し展開できるのか、要注目です。


【男性へのガイド】
→恋愛要素は薄めで、飽きた独特の耽美さは比較的抑えられています。学園コメディ的な部分を切り出すと、読みやすい部類に入るのでは。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→面白くなりそうな要素はそこかしこにあるものの、なんとなくまだチグハグな印象。私は好きなので買い続けます。また続刊レビューにてフォローできたら良いですね。


作品DATA
■著者:武藤啓
■出版社:秋田書店
■レーベル:プリンセスコミックス
■掲載誌:プリンセス
■既刊1巻
■価格:400円+税


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東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
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レビュー
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レビュー
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かみのすまうところ。
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レビュー
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