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Tag [続刊レビュー] 2011.06.01
作品紹介→*新作レビュー* 高殿円/藤丘ようこ「神曲奏界ポリフォニカ~エターナル・ホワイト~」
2巻レビュー→ヤンデレなプリムローズ嬢が素敵すぎる:高殿円/藤丘ようこ「神曲奏界ポリフォニカ エターナル・ホワイト」2巻
3巻レビュー→美味しそうに食べる女性って本当に素敵だと思うんです:藤丘ようこ/高殿円「神曲奏界ポリフォニカ エターナル・ホワイト」3巻



1106025597.jpg高殿円/藤丘ようこ「神曲奏界ポリフォニカエターナル・ホワイト」(4)


僕と一緒に向こうの世界へ帰ろう


■4巻発売です。
 ミナギ・クロードの演奏を聴き、彼が作ったという曲すべてを聴いたことがあるという、不思議な体験をしたスノウ。そんなスノウにブランカは、ミナギと関わりを持つなと言い、二人の関係はギクシャク…。そんな中、ミナギに呼び出され知らされたのは、スノウの本当の名前と、その出自。あまりに突拍子もない内容に、はじめは信じていなかったスノウだが、それは次第に現実味を帯びはじめ…
 


~なんとかわいい精霊さん!~
 4巻発売です。秋田書店のコミックスの原作付きでここまで毎回楽しみにする作品が出てくるとは、思ってもいませんでしたよ。原作全く知らないですが…というか、知らないからこそ楽しい!ということで、今回ものっけからエンジン全開でした。というのも、ちょっと前からちょいちょい登場していた、あのキャラの正体が明らかになったのですよ!
 
 ということで、コミカライズ担当の藤丘ようこ先生も「一番描きたかった」という、めっちゃ良い青年だけど地味な・ジョッシュと、そんな彼を遠巻きに見守る、謎の精霊…っぽい女の子。どう考えても好意バリバリで、精霊でなかったらストーカーとして立件されそうなぐらいに一途な様子を見せていた彼女の名前は、リシュリーと言いました。しかしその過去を知ってドびっくり。弱い存在であったために怯えているかと思いきや、元々は強大な力を持った存在だったのですね。そんな彼女が、紆余曲折を経て…
 
 
神曲奏界ポリフォニカ4-1
恋する乙女
 
 
 他にも精霊などは幾つか登場していますが、ここまで“恋心”を感じさせる存在がいたでしょうか。他の精霊と人間の「契約」の様子を見ると、なんとなく軽さを感じさせる「誘い」…悪く言えば「ナンパ」っぽい感じが強いのですが、このアシュリーとジョッシュの場合は…
 
 
神曲奏界ポリフォニカ4-2
ガチ告白にしか見えない
 
 
 もうこの瞬間とか止めどなくニヤニヤが…(笑)あーもうなんですかこの幸せな空間は…!結局うやむやになって終わってしまい、そのまま話は5巻へ…。ということは、まだまだこのやりとりを楽しめるというわけではないですか。もうそれだけを楽しみにこれからの物語を追いかけ続けられます、本当に。



~おお、こんな話なのか…!~
 さて、そんなニヤニヤな二人をよそに、本編では徐々に謎が明らかに。原作未読であるために、どのような世界観なのかもよくわからず物語を読み進めていたのですが、こんな秘密があったのですね。完全なファンタジー世界での繰り回しだと思っていたので、ちょっと意外ではあったのですが、これからどんな落としどころになっていくのか、期待しかなく、本当に続きが楽しみになりました。ミナギについてはこれまで意図が読めない、ちょっと嫌な感じのキャラクターだったのですが、背景を知ると、なんとなく今までの行動も納得がいきます。しかしスノウが神童と呼ばれていたとは。才能の片鱗を見せることはあっても、あっという間に楽器を習得…なんてことにはなっていなかったので、これもまた意外。でもピアノとかガッツリやらせればまた違うのでしょうかね?



~スノウはブレないその一点だけでも恐ろしく魅力的~
 スノウって、アイドル育成ゲーム「idol m@ster」の律子に似てますよね(唐突な話題転換)。アイマスについても詳しいわけではないので、律子がどのような性格なのかはよくはわからないのですが、一本筋の通った正しいことを言うってイメージがありまして。スノウもまた、理路整然と自分の正しいと思うことを、言葉にし、行動に起こすというイメージがあります。(あれ、どう考えても律子の話題いらなかったな…) 今回ブランカと口喧嘩をするシーンがあるのですが、その際のスノウのブランカへの言葉が、どうしたって反論のしようのないもので、すごいなぁと。「正しい」ってのは、一対一では絶対的な力をもっていて、それを武器として出されたとしたら、こちらも「正しさ」をもって対抗するしかないわけですが、そうそう正しさが二つある場面で一対一の口喧嘩になどなるわけなく。。。これスノウ目線でいるとすごく気持ち良いのですが、相手にはなりたくないなぁ、と(笑)とはいえこれだけ一本筋が通っているヒロインというのは、それだけでどこまでも魅力的なのでありますよ。これからもブレずに、自分の意志で進む子で居て欲しいです。



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Tag [新作レビュー] 2011.02.24
1103024091.jpg宇野紗菜「蛇とマリアとお月様」(1)


あんたがこの世界に
喰われるだけじゃない?



■お嬢様学校に通う隠れ腐女子・桜子が、ここ最近楽しみにしているのは、電車で見かける一組の男子高校生のカップル(桜子が勝手に認定)。大好きなBL作品のキャラクターにソックリな彼らの、一挙手一投足に萌えが止まらないのだ。今日も今日とて電車内で幸せな妄想を…と思っていたら、偶然にも彼らと接触してしまい、あろうことか腐女子であることまで知られてしまう。そんな桜子に、彼らはとある提案をしてきて…

 「秘密のエトワール」(→レビュー)の宇野紗菜先生の新作です。前作2巻完結だったのを知らず、3巻まだかまだかと思っていたら、なんか新刊出てたんだ…(´・ω・`) というわけで、新作「蛇とマリアとお月さま」のご紹介です。タイトルと表紙を見ると、なんとなくファンタジーチックな物語を想起させますが、中身は現実ベースの学生おバカコメディ。有名小説家である母の愛娘として育ち、現在はお嬢様学校に通い周りからは羨望の目で見られる…そんな彼女・桜子のもっぱらの趣味は、BL。そう、大変残念な、腐った女の子だったのです。そんな彼女の最近のお気に入りは、電車で見かける二人の男の子。大好きなBLマンガの主人公にそっくりな彼らの戯れ合いに、日々妄想を重ねて楽しんでいたのでした。ところがある日、ひょんなことから彼らに自分が腐女子であることを知られてしまいます。絶体絶命!どうかこのことは黙っていてと彼らに頼むと、彼らはとある提案をしてくるのですが…というお話。


蛇とマリアとお月さま
グッジョブです…!しかし実際どうなんでしょう。BLに“萌える”という感覚を殆ど持っていない自分からすると、この感覚はうらやましくもあり。


 さっさとネタバレしてしまうと、彼らは双子で、しかも彼女の大好きなBLマンガの作者であったという。弱みを握られた桜子は、そんな彼らのメシスタントとして半拉致されてしまいます。いいように使われ、さらには腐女子の琴線に触れるような様々なイタズラを仕掛ける双子の前に、桜子はタジタジ。序盤は完全に、めくるめくドタバタコメディとして物語が展開されます。しかしそこかしこに見える、伏線の数々。何がどう転んで、二人はBL作家を志したのか。また双子と一緒に住む、オネエ系の男の正体とは。そしてどうやら、双子は桜子のことを知っているようで…と、枚挙に暇がありません。それらが徐々に明らかになるにつれ、一見おバカで楽しげなこの物語の裏には、なにやらとても後ろ暗いストーリーがあるようで、この先を期待させる要因となっています。
 
 「秘密のエトワール」が、かなりストレートにそのヒロインの抱える傷と、解決への指針を示していたのに対し、こちらの物語は謎が多く、明るい未来が見える段階に辿り着くまで時間がかかりそう。現時点では不可解な点が多いのは前述の通りですが、なまじ前半がおばか展開であったために、そのギャップを越えてまで2巻へと手を伸ばさせるような魅力があるかは、微妙なところかもしれません。キャラの魅力でどこまで引っぱれるか。しかしBLネタってこんなにフリーダムなものなんですか。宇宙人攻めってなんだ…


【男性へのガイド】
→めくるめく腐ネタ(腐女子が喜ぶネタではなく、腐をそのままネタとして使ってる)に耐えられるかがポイントか。勢い良いので読むのは苦にならんかとは思いますが。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→ちょっとまだ全体像がぼやけているので、はっきりとは。2巻では、1巻とはガラリ印象の変わったないようになるのかと思うのですが。


■作者他作品レビュー

作品DATA
■著者:宇野紗菜
■出版社:秋田書店
■レーベル:プリンセスコミックス
■掲載誌:プリンセス(連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税


■購入する→Amazon

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Tag [続刊レビュー] 2011.01.29
作品紹介はこちら→水城せとな「黒薔薇アリス」
3巻レビュー→アリスの見た景色と、水城先生の描く愛されキャラの話《続刊レビュー》「黒薔薇アリス」3巻
4巻レビュー→「本当に好きになった人」が既にいる2人に、未来はあるの?:水城せとな「黒薔薇アリス」4巻
関連作品レビュー→「失恋ショコラティエ」3巻



1103000185.jpg水城せとな「黒薔薇アリス」(5)


君のためじゃないよ
僕が楽になれるから
そう言うんだ



■5巻発売しました。
 迷いと惑いのアリスが弾く、「亡き王女のためのパヴァーヌ」の旋律が、かつての想い人・生島光哉を呼ぶ。自分が梓であることを悟られないようにと、必死で取り繕うアリスだったが、予想以上に光哉はアリスにこだわり会おうとしてきて…。一方そんな二人の様子を見たディミトリ、櫂&玲二は…。急展開の第5巻、登場です!
 

~生島光哉との再会~
 ついに訪れてしまいました。生島光哉が、アリスのピアノの音色に導かれるように、彼女の元へ。想定していなかった、再会という展開を迎えます。そして明らかになる、光哉の現在。かつて“光る哉”、とその名前に重ね思いを馳せた、明るく人を引きつけるような輝きはそこにはなく、愛する相手を失った失意の中、未だ闇から出られない彼の姿がそこにはありました。


~ディミトリと同じ苦しみを味わうアリス~
 最愛の人を失い、同時に自分のせいだという罪悪感を感じている、半ばパニック状態のまま、その命を繫ぐ力を持ったものに、助けてくれと乞う。結果命は繫がれ、無事に救うことができたと安心したものの、結局それは、自分のエゴに過ぎなかった。ディミトリはアニエスカに対して、そしてアリス(梓)は生島光哉に対して、同じような思いを抱くことになります。


黒薔薇アリス5-1
 アニエスカには魂がないぶん、それでもディミトリの罪悪感は“その時”に縛られ続けるわけですが、光哉の苦しみは現在進行形で続いており、今現在変化をしているという状況。それを目の前にまざまざと突きつけられるのは、そりゃあキツいわけで。ディミトリは変化することのない、永遠とも言える罪悪感に飲まれ、逆にアリスは、現在進行形で変化をする、ディミトリとは違う苦しみを味わうことになります。どちらが苦しいかはわかりませんが、その苦しみの中で、光哉に身と心を許してしまうというのは、わからないでもない行動なわけで。
 

~愛と繁殖を描く物語~
 その中で描かれた、アリスと光哉のベッドシーン。元々この作品のテーマは、「愛と繁殖」であったわけですが、そういう意味では、この時が一番このテーマを体現しているような気がするなぁと感じました。今まではどちらかというと、繁殖に付随する、良きオスを見抜く能力であるとか、そういった側面が強く出ていたので、こと恋愛が前面に押し出されたこの二人の描写は、今までになく新鮮であったというか。



~身体的接触から見る、ディミトリの想い~
 驚いたのは、ディミトリが出ていってしまったこと。彼はそれについて様々語るわけですが、その真意というのは、結局のところ明らかになりませんでした。
 
  そんな中、「アニエスカ」という名前を出した時、ディミトリは激昂し、アリスに手をあげます。この時彼は、「アニエスカへの思いを切り、アリスとして君を愛した」と語っているのですが、アリスがこのような容姿で、このような状況に陥っている中、そのような言葉が出てきても、本当にそうなのだろうかと思える時があるのも事実。しかしディミトリは確実に、彼女をアニエスカとしてではなく、アリスとして愛しつつあります。それが窺えるのは、彼の言葉などではなく、身体的接触にありました。
 
 1巻にてアニエスカを復活させたとき、彼はマクシミリアンにアニエスカの身体を運ばせ、同時にこんな言葉を残します。


黒薔薇アリス5-2
彼女はもう二度と
僕に触れられたくはないだろうから

 

 この想いは徹底していて、例えば彼が梓の魂をアニエスカの体内に宿すときも、アニエスカの身体には触れず、レオにその役目を頼んでいます。そう、ディミトリは決して「アニエスカの身体に触れない」のです。そんな彼が、別れ際におくった、アリスへのキス。これ以上に、彼の想いが伝わってくる行動など、あるはずがないのです。いや、もしあったとしたら、それは最後の最後、繁殖のときでしょうか。そういう意味では、彼は既に最高のカードを切ってしまった。そんな彼の気持ちに、アリスがどう応えるのか、6巻は要注目です。なんて、6巻は双子の一悶着で、ディミトリ一切登場しないなんてこともありそうですが。どちらにせよ、目が離せません。


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Tag [続刊レビュー] 2010.11.21
作品紹介→*新作レビュー* 高殿円/藤丘ようこ「神曲奏界ポリフォニカ~エターナル・ホワイト~」
2巻レビュー→ヤンデレなプリムローズ嬢が素敵すぎる:高殿円/藤丘ようこ「神曲奏界ポリフォニカ エターナル・ホワイト」2巻



1102979395.jpg藤丘ようこ/高殿円「神曲奏界ポリフォニカエターナル・ホワイト」(3)


いったいなんだろう
この曲が
こんなにも私の指になじむなんて



■3巻発売です。
 精霊島の葛西の一見から月日は流れ、音楽院は夏休みに入った。プリムローズとの楽しい日常に浮かれるスノウは、ある日観に行った新進気鋭の音楽家・ミナギ=クロードのコンサートで、彼の奏でる音楽にふと懐かしさを覚える。いや、懐かしさというよりも、確実に記憶のどこかにある感覚。そのミナギが、この中途半端な季節に音楽院に転入してきた!彼が作った、この世界の誰も知るはずがない曲を、私はなぜ知っている!?
 

~ラノベ原作で読み続けてる作品です~
 3巻発売です。ラノベ原作のコミカライズ作品で、しっかりとここまで追いかけているのは、レビューしてる作品では「図書館戦争」(→レビュー)とこの作品ぐらいでしょうか。レビューしていないものだと、「とらドラ!」とか「狼と香辛料」とかありますけど。しかもこの作品て、この作品で作品全ての世界観をカバーしているわけではないと聞きますし、それでも読んでしまうってのが自分でも不思議なんですよね。それでも買うたび、面白いと思うし、登場人物達がみなみな個性的でかわいいと思えるので、多分様々な要素が重なって自分を続刊購入へと駆り立てているのかもしれません。ちなみに原作は基本的に読んでいないので、原作との乖離とかはまったく気にならない口です。


~美味しそうに食べる女の子って素敵すぎます!~
 様々な登場人物達が出てくるわけですが、とりわけ魅力的なのは、お嬢様のプリムローズでしょう。2巻では嫉妬にまみれるブラックな一面を覗かせてくれた彼女ですが、以降感情をしっかりと表に出すようになりました。そして3巻では、また可愛らしい欲望に忠実な一面を…。それが、食欲!
 

神曲奏界ポリフォニカ3
たくさん食べたにもかかわらず、
さらに桃まんを美味しそうにほおばる


神曲奏界ポリフォニカ3-2
流れに関係なく無意味に挟まれる、
プリムローズ嬢のほおばり。
ちょっと大沖先生っぽい。


 やたらと食べるシーンが目についたわけですが、その姿がとても可愛い!女性の好みって色々あると思うのですが、自分はこの「美味しそうに食べる」というのが一番のポイントでして、リアルでも二次元でも、それは一緒なのだな、と思い知らされた瞬間なのでした。幸せそうに美味しそうに食べる女の人を見ると、なんだか自分まで幸せな気分になるじゃないですか!これから先、まだまだワガママに欲望に忠実に動き回りそうな彼女から、目が離せません。ワガママお嬢様はたくさんいるのですが、彼女の場合は物腰柔らかなので、キツさや嫌らしさがないのですよね。


~嫉妬で回すというのが、女性っぽいというか~
 さて、物語本編の方は、スノウの過去を知ると思しき人物が登場してきました。しかも彼、良い人そうに見えて、かなりブラックな感情をスノウに対して抱いている模様。2巻でのプリムローズの負の感情に続き、またしても嫉妬や恨みといった、負の感情を動力源にした物語の展開です。この連続して嫉妬のような感情を軸に据えるというあたり、なんとなく作者さん女性なんじゃないかと思ったわけですが、高殿円先生って男性なのか女性なのか今ひとつ判然としないところがあります。多分ファンの方々は知っていらっしゃるのでしょうけれど。もしこれで男性だったら驚きです。いやぁ、こういうミナギくんみたいに歪んだ感情をぶつけちゃうキャラって、好きなんですよ。しかもいかにもうさんくさいような。彼の登場が、物語に一つ大きな転換点をもたらすのでしょうが、どんな展開になっていくのか、楽しみですね。



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Tag [新作レビュー] 2010.11.21
1102979399.jpg征矢友花「オズと最後の魔女」


オズは私だけのオズだ!
今までもこれからも
メタボロになるのは
私のためだけだ!



■旅を続ける凸凹コンビ。見ためはただの小さな女の子だけど、実は魔力を持ち魔法を使う、自称「最後の魔女」・ドロシーと、その従者でヘタレなオズ。オズの秘密は、一度死んだ身でありながら、ドロシーの魔法により蘇った使い魔だった。行く先々で、トラブルに巻き込まれる二人。けれどもドロシーの魔法と、オズの不死身の再生力で、今日も今日とて敵を伐つ!ツンデレお嬢様×ヘタレ下僕、乙女なら一度は夢見る魂を越えた禁断の主従関係!!

 ツンデレ魔女と、ヘタレ従者のツンデレファンタジー作品。ヒロインは、どうみても幼女にしか見えない、ツンデレお嬢様・ドロシー。昔から魔法を研究しており、実際に魔法を操ることができる、自称「最後の魔女」。そんな彼女に従えられながら一緒に旅をしているのが、ヘタレ従者の若い男・オズ。単なる女好きでヘタレな男に見える彼ですが、実はとある能力の持ち主。それは、何度殺されてもドロシーの呪文によって生き返るという、不死身の魔法。彼は一度死んでおり、そこをドロシーの魔法によって救われ、使い魔として契約させられているという状況なのでした。そんな二人が、街々を旅しながら遭遇する、様々な人、そして様々な事件。そんな数々の事件を、凸凹コンビが切り抜けていく様子を、テンポよく描いていきます。


オズと最後の魔女
普段は傍若無人に指図ばかりしているが、子どもは子ども。一度冷たくされると途端に不安になる。けれども主人であるという立場と、プライドの高さが、素直にさせてくれない。そんなところもかわいらしいところ。


 秋田書店には、80年代~90年代のアニメを彷彿とさせるような作品が散見されるのですが(例えば筆頭は「KEY JACK」(→レビュー)「炎人」(→レビュー)あたり)、この作品もまたそんな印象を与えてくれる作品。一話完結型で、旅する二人が行く先々で人と出会い、トラブルに巻き込まれるというパターン。そしてそんな中二人は仲違いしつつも、最後は力を合わせて敵を倒し、一件落着という。ただそれだけで終わりではなく、しっかりと旅立ちの際の寂しさを余韻として残すのは、複数巻刊行している作者さんだからこそのプラスアルファというところでしょうか。二人が恋愛関係に発展するかと言われるとそうではなく、あくまで基準は魔法使いと使い魔。ヒロインの心はまだ子どものようで、そこを起点として優しく温かい人間同士の特別な関係性が築かれていきます。
 
 紹介文にもある通り、ヒロインのドロシーはかなりわがままで傍若無人なお嬢様。そんな彼女に付き合ってあげるのは、オズの優しさでもあり、義理堅さでもあります。従者はオズではありますが、実質この関係を壊さず持っているのは、オズの気遣いがあるから。それでもオズが彼女に付き従おうと思うのは、ドロシー自身の人付き合いの苦手さと、一人の女の子としての頼りなさゆえに、守ってやりたいと思うからなのでしょうが。一応ラストに近づくに連れて、ふたりの馴れ初めが明らかになっていくのですが、序盤はそういった説明は一切なし。それはそれで、短期連載で締めるには都合が良く、ラストでもしっかり回収しているので、一つの作品として見ても結構纏まった良作になっている気がします。ただ元々の傾向なのでしょうが、絵柄が今ひとつ安定せず、キャラの描写が崩れること数回。気にならない人であれば問題ないですが、気になる人だとちょっと目につきすぎるかもしれません。懸念材料はそれぐらいで、全年齢向けに、非常に読みやすい作品となっていると思います。


【男性へのガイド】
→だれにでも親しみやすい作品になっていると思います。萌え的な方向で捉えられると、ちょっと違うかもしれませんが。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→突如崩れる絵柄以外は、至って安心して見ていられる作品。一話ごとの盛り上げも、全体通しての構成も、しっかりと練られていて、終始楽しんで読むことができました。


作品DATA
■著者:征矢友花
■出版社:秋田書店
■レーベル:プリンセスコミックス
■掲載誌:プリンセスGOLD
■全1巻
■価格:400円+税


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かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
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王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
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トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
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BEARBEAR
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レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
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