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Tag [続刊レビュー] 2012.07.07
作品紹介→鈴木ジュリエッタ「神様はじめました」
4巻レビュー→花ゆめで今一番ラブでコメしてるのはこの作品に違いない《続刊レビュー》「神様はじめました」4巻
5巻レビュー→天狗の鞍馬はいらない子じゃなかった!《続刊レビュー》鈴木ジュリエッタ「神様はじめました」5巻
6巻レビュー→神様ではなく、あくまで女の子として:鈴木ジュリエッタ「神様はじめました」6巻
7巻レビュー→求める裏にある、奈々生の悲観的な未来観測:鈴木ジュリエッタ「神様はじめました」7巻
8巻レビュー→ただただ純粋に想い続ける姿が、本当にかわいい:鈴木ジュリエッタ「神様はじめました」8巻
9巻レビュー→隠しきれない喜び方にニヤニヤ:鈴木ジュリエッタ「神様はじめました」9巻
10巻レビュー→「守ること」を守りすぎた巴衛:鈴木ジュリエッタ「神様はじめました」10巻
11巻レビュー→母の言葉と結婚:鈴木ジュリエッタ「神様はじめました」11巻




1106143057.jpg鈴木ジュリエッタ「神様はじめました」(12)


信用されたかったら
信用に足る男になれ



■12巻発売しました。
 ナマズの妖・沼皇女が想いを寄せるのは、人間の男の子・小太郎。しかし、沼皇女に求婚する妖が現れた…!その名は竜鯉錦。高慢で傍若無人な錦は、沼皇女との婚儀のために、ミカゲ社ごと奈々生を連れ去り…!?人と妖の恋、その先にあるものとは…!?
  

〜アニメ化です〜
 なんとアニメ化決定だそうです。
 
神様はじめました : テレビアニメ化決定 妖狐と女子高生の主従ラブコメ
 
 このニュースには驚きました。白泉社に人気作品ではあるものの、なんとなくアニメ化には向かないような気さえしていたので。妖怪という部分では「夏目友人帳」と同じではありますが、あちらが恋愛要素ほぼなしの万人向けの温かな作品であるのに対して、こちらはひと際恋愛傾向の高い賑やかな明るい作品と、持ちたる毛色は全く別。ただ非常に好きな作品、作者さんであるので、アニメ化によって多くの人に知ってもらえるのはとっても嬉しいです。「会長はメイド様!」や「S.A」、「桜蘭高校ホスト部」なんかもアニメ化されてそれなりに人気していたり、きっと大丈夫か!でも、どうせアニメ化するなら「カラクリオデット」の方が良かったんじゃないかとか思ったりも。あっちの方が俄然万人向けに見えませんか?あ、でもちょっと対象年齢低いのかな。
 

〜奈々生の恋に進展なし。けれども…〜
 そんなアニメ化の話題の中、本編は奈々生ではなく沼皇女と小太郎の恋が真っ盛り。奈々生と巴衛は完全にお客様状態になっております。主人公達そっちのけ、脇役メインの話が続き、本編がなかなか進まないというのは結構イライラするものですが、この沼皇女と小太郎の恋は、少なからず今後の奈々生の行動・考え方に影響を与える気がするんですよね。
 

神様はじめました12−1
 この二人の恋愛は、異種族間の恋ということで、まさに今奈々生が陥っている状況と同じです。小太郎は未だそのことを知りませんが、その真実を知った時どう行動するのか。奈々生は単純に沼皇女を応援していますが、その根底には、自分の恋が成就するための前例作りを願う意味合いが少なからずあるように思えます。沼皇女と小太郎の恋愛が見事成就したならば、それは奈々生にとってこれ以上ない後押しになりますし、成就しなかったとしてもそれはそれで傾向と対策ができる(まぁ後者は十中八九ないでしょうが)。どんな形でこの恋愛の決着がつくのか、注目です。
 
 そうそう、沼皇女が人間になっちゃうとかいうパターンとかないですかね?今沼皇女は人間の形をして人間の世界に足を突っ込んでいるのですが、奈々生も神様としてあちらの世界に片足を突っ込んでいる。どちらも女性が、男性側の世界に寄っている状況です。これでもし仮に、沼皇女が人間になったりしたら、奈々生も神様に…。いや、それはないはず。でも巴衛には人間になって欲しくないんですよね。お互いそのままで、そのままの立ち位置のまま上手くいって欲しいというか。
 

〜妖にモテる奈々生にあのキャラの影を見た〜
 そうそう、今回の奈々生さん、またしても妖に好かれてしまったようです。今回の犠牲者は錦。これで奈々生に好意を持つ妖は何人目でしょうか?鞍馬からはじまり、巴衛、瑞希、天狗の二郎のそうでしたっけ?モテモテっす。


神様はじめました12−2
 この一件普通だけれども、元気さと純粋さを持ち合わせていて、自分とは異なる人種たちが集う中でモテモテ…みたいな感じ、誰かに似ていると思ったら「花より男子」の牧野つくしか。神尾先生の作品のヒロインって無駄にモテるのですが、なんかそんな匂いを感じます。や、ただそれだけなんですけど、12巻にして初めてそんなことを思ったので。


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Tag [新作レビュー] 2012.03.09
1106102539.jpg椎名橙「それでも世界は美しい」(1)


渇える王に
それでも世界は美しい と



■雨を降らせる能力を持つ「雨の公国」の第四公女・ニケ。彼女は嫌々ながらも国のため、即位から僅か3年で世界を征服した「晴れの大国」の太陽王・リヴィウス一世の元に嫁ぐことになる。若いとは聞いていたけれど、目の前に現れたリヴィウスは、そんなものではなくまだ子供…。

 椎名橙先生の花とゆめでの連載作です。巻数が付く連載はこれで2作目。前回は「不思議のマリア君」(→レビュー)で現代を舞台に吸血鬼少年とのラブコメを描き出しましたが、今作は打って変わって異世界が舞台のお話です。物語の舞台は、太陽王・リヴィウスが世界征服を果たした「晴れの大国」。そんな彼の元に嫁ぐことになったのが、雨を降らせる特殊能力を代々受け継ぐ「雨の公国」の第四公女であるニケ、この物語のヒロインです。様々な噂のある太陽王の元に嫁ぐことになってしまった彼女、「どんな因業じじいだって愛してやろう」そう決意して対面してみると、そこにいたのは王にはまるでみえない子供で…というお話。
 
 太陽王・リヴィウスは、子供とは言えやはりその統治者としての才は確かで、冷酷非道かつ効率的な自治を実現しています。しかしその年らしからぬ才を発揮しているだけあって、その考え方は感情がないというか、誰も信用していないような様子。いや、それ以前にこの世界にすら絶望しているかのように映るのでした。そんな彼を目の前にして、王ではなく人として接するニケ。公女とはいえ割とアクティブでがさつさを持っている彼女は、花に、星に、雨にと、この世界の美しさを無理矢理にでも彼に教えようとします。はじめは気にする素振りも見せなかったリヴィウスですが、彼女の熱心なアプローチによって段々と歩み寄りを見せていくように。それまでは見せることのなかった、人間らしい表情を見せるようになってくるのですが、それが実に微笑ましい。


それて#12441;も世界は美しい
お互い「王」と「王女」っぽくない感じの言葉遣い。もちろんお上品な言葉も使えるけれど、それは他所行き用。普段のペースはリヴィウスが握るけれど、ここぞという時力を発揮するのはニケ。


 ショタっ子相手の恋愛もの…と年の差だけ見れば思えるのですが、ショタっ子の中でもリヴィウスは割と食えない奴なので、そういう感覚があまりないというのが個人的な印象です。ことリヴィウスが人間らしい表情を見せるようになるのは、恋愛方面というよりは、何か物事に感動した時など。恐らくここから段々と恋愛方面へと展開していくのだと思います。今も王様らしく上からで愛情表現してくるのですが、このまま行くのかなぁ。個人的には彼の赤面とか見てみたいです(変態)。
 
 また彼女の愛情がそのまま彼の人間らしさへと直結すれば良いのですが、トップに立つものである以上、その命を狙われることも多く、なかなか上手くいかない部分もあります。またニケは信頼するけど、他の人は信用しないなんて状況もあったりと、ここからニケ以外の人物へとその枠を広げていく所も見所の一つとなるでしょう。幸せな二人でなく、幸せな国家というのが前提としてある以上、切りどころを見つけるのが難しい所だとは思うのですが、とりあえず今は二人の進展を見守るところから。1巻は非常に読み心地の良い一冊となっていました。オススメで。


【男性へのガイド】
→生意気なショタさえ大丈夫であればOKだと思います。1巻の時点ではとっても読みやすい内容だと思いますよ。
【感想まとめ】
→優しさが溢れる素敵な作品。タイトルも内容を良く表していて素晴らしい。


作品DATA
■著者:椎名橙
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:花とゆめ
■既刊1巻
■価格:400円+税


■購入する→Amazon

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Tag [続刊レビュー] 2012.03.04
作品紹介→鈴木ジュリエッタ「神様はじめました」
4巻レビュー→花ゆめで今一番ラブでコメしてるのはこの作品に違いない《続刊レビュー》「神様はじめました」4巻
5巻レビュー→天狗の鞍馬はいらない子じゃなかった!《続刊レビュー》鈴木ジュリエッタ「神様はじめました」5巻
6巻レビュー→神様ではなく、あくまで女の子として:鈴木ジュリエッタ「神様はじめました」6巻
7巻レビュー→求める裏にある、奈々生の悲観的な未来観測:鈴木ジュリエッタ「神様はじめました」7巻
8巻レビュー→ただただ純粋に想い続ける姿が、本当にかわいい:鈴木ジュリエッタ「神様はじめました」8巻
9巻レビュー→隠しきれない喜び方にニヤニヤ:鈴木ジュリエッタ「神様はじめました」9巻
10巻レビュー→「守ること」を守りすぎた巴衛:鈴木ジュリエッタ「神様はじめました」10巻




1106111846.jpg鈴木ジュリエッタ「神様はじめました」(11)


私は結婚なんかしないわよ
多分




■11巻発売しました。
 奈々生が結婚を申し込まれた!?「巴衛がOKなら受けようと思って…」そう恥じらいながら話す奈々生に、瑞希は卒倒寸前!一体どういう事!?更に、年末になり奈々生達は辰年神様のお社へご挨拶に向かうことに。そこで、巴衛と瑞希は奈々生の過去を見てしまって…!?


~結婚式ですって~
 11巻発売です。二桁に巻数乗せてから早々に奈々生が結婚!?なんて思ったら、沼皇女の方ですって。なんてオチに使われてますがこっちの方が衝撃ですわ。てかそんな結婚云々以前の状態だったような気がするんですが、初めての恋に舞い上がる女の子って感じがして良いですねー。自分も初めて付き合った子と結婚するもんだと思ってましたもん。なお、割とあっさり振られたのを覚えてます。


~奈々生の生い立ちが明らかに~
 さて、私の中学時代のお話はどうでもよくてですね、今回書きたかったのは他でもない、奈々生の幼少時代です。学校生活もあまり描かれない彼女ですが、その生い立ちも割と謎に包まれていて、白泉社の作品にありがちな「父親が蒸発(他界したり失踪したり)で路頭に迷った」という事くらいしか明らかになっていませんでした。このまま明らかにされることなく終わりを迎えると思っていたのですが、今回思わぬ形でじっくりと描かれることになります。どこにでもあるような、本人による回想ではなく、巴衛と瑞希の二人が、彼女の記憶を覗くという形で。そんな奈々生は…
 
 
神様はし#12441;めました11-1
鍵っ子でした


 当時は実質母親と二人暮らし。父親は絵に描いたようなダメ男で、家にもいたりいなかったりを繰り返し、訪れるのは借金取りばかりというひどい状態であったようです。そんな中、無理して働く母親もまた子供の面倒を十二分に見ることができない状態であり、奈々生はそんな状況の中、かなりしっかり者の子供として幼い頃を過ごしていたようです。今の奈々生のキャラって、どこか行き当たりばったりで能天気な感じが強いのですが、当時の奈々生は、鍵っ子であることはもちろん、知らない人についていかないアクションを見せたりと、持っていたイメージとは正反対の女の子像でした。また巴衛の「アイスクリームが欲しいのか?」という問いに対しては…
 
 
神様はし#12441;めました11-2
断る


 この辺も、直前の出来事と絡めつつ「ぜいたくしちゃいけない」という感覚が脊髄反射で出て来たもののように感じられます。この頃の子供なんて、贅沢したい盛りじゃないですか。それが親でもない人に対してこの反応。当時の彼女を取り巻く生活状況が、なんだか伝わってきますよね。また回想で、そういったお菓子屋さんなどが鮮明に思い出されているところとか、本当に涙ものですって。その反動か、今の奈々生って割とわがままキャラじゃないですか?いや、反動というより、わがままを言える相手がいる環境に、やっと身を置くことができたということか。
 
 なんてとってもしっかり者と見せておいて、巴衛には初対面でホイホイついていってしまうし、結局巴衛の押しに負けてアイスクリームとか、美味しいものをおごられてしまっているあたり、やっぱり最後はガード緩くて詰めが甘い(笑)この辺がいかにも奈々生っぽくてちょっと安心しました。そんな奈々生、今となっては…
 
 
神様はし#12441;めました11巻―3
「しっかりしないと」と意識しないとしっかりできない


 やっほう!これでこそ奈々生ですよ!(失礼)
 
 

~有形のもので無形の縛りを解く~
 さて、11巻での一番の見せ場は、先の奈々生の過去と絡んでの奈々生の結婚観の変化でした。彼女の家系的に非常に男運が悪いということで、母親から口が酸っぱくなる程「結婚しちゃだめ」と言われて来ただけあり、彼女の「結婚しない」という意思は未だ固くあるようでした。それは彼女自身の考えというよりも、亡き母の遺言を守り続けるような感覚に近かったのだと思います。そもそも自分自身の損得感情で生きるような子じゃないですしね、奈々生。それが、この過去回帰を終えた時点で「絶対」が「多分」へと変化。これは、夢の中で巴衛から求婚されたことももちろんあるとは思うのですが、それ以上に大きいと思えたのがこちら…
 
 
神様始めました11-4
母親の写真


 年神様によって生成された母親の写真。今まで「母親の遺言」(のような)無形のもので保たれていた母親との関係は、この写真によって有形のものへ。唯一守るしかなかった彼女へのある種の“縛り”は、これによって代替され、巴衛との約束を守ることで生まれるジレンマを解消できたように見えました。

 しかし奈々生の家系の男運の悪さ、今も継続しているのでしょうか。だとしたら巴衛はダメ男だという可能性が微粒子レベルで存在する…?そもそも彼をそういう枠に収めてよいものなのかわかりませんが、ちょっとだけ、ちょっとだけ不安な種が。このことに特に言及されないままもし結ばれたとしたら、きっと私はこのことを思い出して心から晴れやかな気持ちにはなれずに本を閉じることになるやもしれません(笑)


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Tag [新作レビュー] 2012.02.19
1106111849.jpg音久無「女王様の白兎」(1)


何か
何かとてつもないことが起こるんじゃないかって



■平穏な毎日を満喫する高1の仁科雪兎。しかしその平穏は、あっという間に崩れ去ることになる。ある日学校の校舎の屋上にUFOと共に現れたのは、コウコラ星という星の第一王女だと名乗る少女・レイシー。地球から300光年も離れた星からやってきたレイシーは、雪兎に特殊能力のエナジー源になれと突然命令してきて、しかも召使いと共に家に居座るだなんて…!ドS女王サマに下僕高校生…振り回される運命か…!!!

 「花と悪魔」(→レビュー)の音久無先生の新連載になります。前作は悪魔と人間の触れ合いを描いたお話でしたが、今度は宇宙人と人間の触れ合いを描いたお話ですよっと。主人公は少女マンガながら男の子。平穏無事な日々に感謝しつつ、ぬくぬく生きている高校生でした(過去形)。そんな彼の平穏が壊れたのは、学校の屋上にUFOが降り立ってから。そのUFOから降りてきたのは、なんとも奇怪な格好をした少女と、その下僕と思しき男二人。少女の話を聞くと、どうやら彼女は地球から遠く離れた星の第一王女であり、後継の条件として「地球人の願いを10個叶える」という使命をこなしにやってきたのだそう。そして地球人の願いを叶えるためには、どうやら雪兎の存在は必要不可欠なようで…なぜか早々に「その身体を差し出してもらおう」とか言われるのですが…


女王様の白兎
平穏を邪魔されたくない主人公(頑固)と、自分の想いは通したい(頑固でわがまま)なレイシー。そりゃあしょっちゅうぶつかる。けれどもそんなやりとりを、レイシーは楽しんでいる節もあったり…。


 ちょっと設定が色々とあるお話になっています。地球から300光年離れた星の王女が、王位継承のための試験(のようなもの)として、地球人の願いを10個叶えるというミッションを課せられ、地球に降り立ったというのが事の始まり。そしてその願いを叶えるためには、彼女が持つ特殊能力を使用する必要があり、そしてその能力を発動するためのエネルギー源として、特定の地球人の存在が必要となるのです。そしてその条件を満たすのが、主人公の雪兎。一行はシェアハウスに住む雪兎についていき、そのまま居座ってしまいます。ここまででお話の下準備は完了。ここからいよいよ、願いを叶えるための活動を始めて行くことになります。
 
 こちらエネルギーの供給の方法がなかなか特殊で、唇に触れないとダメ。要するにキスです、はい。そのため1巻ということで恋愛要素ほぼナシで送るにも関わらず、キスシーンは頻発します(笑)コウコラ星にも一応キスの概念というのはあるようなのですが、ヒロインのレイシーはあまり気にしている様子はありません。欧米的というよりは、ミッションの方が俄然大事というスタンスだからかもしれません。王女ということもあって、のっけからかなり高飛車。またあまり人と関わらなかったということもあり、世間知らずでまた思ったことをズバズバと言ってしまう欠点もあります。言葉遣いと良い、どこか可愛げがあるわがままっぷりは、「かんなぎ」のナギを彷彿とさせます。最初はぶつかり合っているけれど、やがてかけがえのない存在になっていくのだろうなぁ、と勝手に「かんなぎ」と重ねて未来を想像してしまっています(自分気持ち悪い………)


女王様の白兎1-2
王女と言ってもまだまだ中身は子供。高圧的な態度を取るのは、その地位ゆえ。それ以外では、実に可愛らしく甘える姿が出てきたりします。


 願いを“10個”、また“第一王女”というワードからも窺えるように、割と長期での連載を見据えた土台作りになっているように思えます。1巻時点で結構動きがあるので飽きさせることはないのですが、それだけ取り出してみるとやや単調な感も。しかしお互いが少しずつ、恋愛的な感情を芽生えさせて行くため、しっかりと味わいに変化を出してきます。上手い。

 前作もそうだったように、恐らく今回も王室に絡めつつ物語の枠を広げていくのかな、と思います。また一見大人びたヒーローに、わがままで子供っぽいヒロインというのは、なんだかんだで前作とも同様。今回も良い物語になりそうな予感がいっぱいです。


【男性へのガイド】
→ナギっぽいヒロインとかいうとまた誤解を生むような気も…。
【感想まとめ】
→1巻での感動や温かさは前作ほどではないものの、これからの展開で味わい深さをまさせるような感じが結構します。前作からのファンの方は是非とも…ってもう買っているか。


作品DATA
■著者:音久無
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめコミックス
■掲載誌:花とゆめ
■既刊1巻
■価格:400円+税


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Tag [新作レビュー] 2011.12.29
1106102550.jpgモリエサトシ「池袋13(IKBサーティーン) 」


だから明日からも
がんばることをやめないんだ。



■池袋の北口繁華街にポツリと建つ劇場・ノースゲートシアターでの公演を拠点に活動しているアイドルグループ「IKB13」。メンバーは、生写真の売上げや握手会の列等、人気のみでランク付けされ、それがメディア露出・公演の参加曲数や曲中の立ち位置等を決定する。残酷で決定的な透明性。これは、見えない何かに翻弄される、若き少女達の物語である…
 
 モリエサトシ先生の新作です。いやまさかこんなお話描く方だとは思っていなかったのでびっくりですよ。あらすじをお読みにならずとも、そもそもタイトルでどんなお話か想像がつくかと思います。はい、AKB48がモチーフです。舞台となるのは池袋北口の繁華街にあるとあるステージ。この場所でアイドル活動をしている「IKB13」のメンバーが、この物語の主人公たちになります。AKB48と同じく、彼女達は完全人気主義のもと立ち位置や参加曲・パートが決定されるというシビアな世界で勝負しており、13人がキッチリと順位付けされています。歌もダンスもヘタなNo.1に、手加減を知らないNo.2、上に上がれず歯がゆい想いを抱える努力家のNo.8に、男勝りなNo.3…それぞれがそれぞれ、想いを抱えてステージに立つ。彼女達の闘いの記録がここに…


IKB13-1.jpg
No.1はモリエサトシさん鉄板の黒髪ロングの女の子。歌やダンスの実力がないにも関わらず人気であるため、メンバーとの確執もあり。自信のなさと、自分を守る精一杯さで、割といつもささくれだった感じです。


  週刊少年マガジンにて「AKB49~恋愛禁止条例~」という作品が連載中で、しかも割と評判が良いということで、同じ系統の作品が登場することはないかと思っていたのですが、まさか少女マンガで出てくるとは。出版社も読者層も異なり、またAKBファンを取り込もうというような魂胆は全く感じられないので、編集サイドもGOサインを出したのかもしれません。ということでコンセプトから異なっている作品ではあるのですが、如何せん動かす土台は同じということで、どこか作品として被っている感は拭えず。思っている以上に体育会系のノリであったり、女装したメンバーがいたりとか、設定やノリで被ったのはちょっと痛かったやもしれません。とはいえモリエサトシ先生ならではの、ちょっとダークな部分が上手く落とし込まれ、この作品ならではと言える魅力がでていたのもまた事実。個人的には、百合を見せたリーダーのノゾミが良かったなぁ、と(ノゾミについては後述)。
 
  13人であるのは、1巻完結にも耐えうるだけの人数に絞るためかと思われますが、実際に描かれるメンバーはさらに少なく、最終的には4~5人にスポットが当てられるだけになります。メインとなるのはNo.1でセンターのアイ。モリエサトシ先生安定の黒髪ロングヒロインであり、もうそれだけでご飯食べれますってな感じです。ダンスも歌も、メンバーの中ではヘタな方。実力主義であれば決して前には出られないような子で、自身も自信を失って、やる気のない素振りも多いと、割とアンチも多かったりします。こんな子に負けるなんて…という空気がメンバーの中にも少なからずあり、初っぱなから空気感は割と殺伐。馴れ合いではなくぶつかり合い、時に蹴落とすことすらある激しい争いの中で、メンバー達はお互いを磨き合っていきます。
  
 そんな中にも、同士と言えるような仲間もおり、熱さの中に見せる静かな絆が本作の一つの見所となってきます。先のアイで言えば、No.3の晶。男勝りの晶は、勝りというか男の子だったりするのですが、これは少女マンガではお約束の夢。またNo.2の加減を知らない全力少女・サチを支えるのは、No.4でリーダーのノゾミ。もう個人的に彼女の感情が好きでして。しっかり者のリーダーとしてメンバーを引っぱり、実際メンバーからの信頼も厚い彼女ですが、リーダーとしての自己評価は低め。その起因となっているのは、サチへの恋心。立場上決してその感情を外に出すことはないのですが、
 
 
IKB13-2.jpg
 心ではアイを「何一つサチに勝らない」として「1位にふさわしいのはサチだ」と思い、そのため自分はリーダーに相応しくないと思ってしまうそのじれったい感じ!黒いよ!でもこれこそが愛だよ!もうこの二人の関係がすごい作り物のように美しくて、思わず夢中になってしまいました。
 
 少女マンガということで、男女恋愛がありそうなものですが、そういった部分は殆どなし。むしろ男女恋愛というよりも先のサチとノゾミの百合っぷるがあるくらいで、そもそも恋愛要素が薄いです。というかなんか他にも百合っぽいところあって、これってもう百合漫画なんじゃね?とすら思ったり。


【男性へのガイド】
→キャラ造形も割と好きな方いるんじゃないかと思うのです。あとお話的にも読みやすい内容かと思います、はい。
【感想まとめ】
→この作品を語る以上「AKB49」を意識しないわけにはいかないのですが、実は当方あまりあの作品に思い入れがなく、熱く語ってらっしゃる方々に読んでもらって感想聞きたいってのがあったり。


■作者他作品レビュー
モリエサトシ「ラブ シック」
モリエサトシ「白磁」
猫たちと、一人の男の子の紡ぐ愛おしき物語:モリエサトシ「猫の街の子」
不純だけれど、貴方がすきです:モリエサトシ「不埒なシスター」


作品DATA
■著者:モリエサトシ
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICSスペシャル
■掲載誌:ザ花とゆめ
■全1巻
■価格:524円+税


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東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
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王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
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シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
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いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
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レビュー
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レビュー
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