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Tag [新作レビュー] [オススメ] [読み切り/短編] 2014.07.26
1106413641.jpg草川為「今日の恋のダイヤ」


勇気をだせ
すべてはそこからだ



■誰かの勇気が私に、私の勇気が誰かにつながっている。
 片想いの会社の先輩が姉と付き合いはじめ、諦めようとしてきた楡原。2人の結婚が決まり、式に出るために気持ちを殺し空港へ向かうのだが…。空港を行き交う見知らぬ4人が影響を与え合い、前に進んでゆく連作オムニバス!
 
 「八潮と三雲」(→レビュー)の草川為先生の、大人の女子の恋物語。いやこれ、読んだときものすごく意外でびっくりしたんです。草川為先生というと、ファンタジー作品でヒロインも比較的若く元気…というイメージが強かったのですが、今作はガラッと変えて、働く女性、しかもどうにも素直になれない不器用な恋をする女性がヒロインとなっています。設定を見たとき、「メロディ連載かな?」なんて思ったのですが、どっこいレーベルはLaLa。ただし掲載誌はAneLaLaということで、つまるところCanCamとAneCanみたいな関係の増刊誌掲載でございました。増刊のキャッチフレーズはオトナガールに贈るってあるんですが、「オトナガール」ってなんなんでしょうね(冷静)
 
 物語は4話構成。どれも世では「大人」と言われる社会人が主人公。自分の想いを圧し殺し耐える者、最初から自分の恋を諦めている者、遠距離恋愛ですれ違いばかりしている者、東京に来たけれどどうにも上手くいかない者…それぞれ抱えている問題は様々で、そして大人ゆえに動きにくく、歯がゆい。働いているゆえか、「そう、そういう時あるよね!」とか「いるいる、こういう人いる」みたいな場面がしばしば。草川為作品でこういう感覚を味わえるってのがとにかく新鮮で、非常に強く印象に残りました。


今日の恋のダイヤ1-1
メインはやっぱり社内恋愛なわけですが、社内であろうと社外であろうと、大人の恋は面倒くさいのです。うん。


 それでは気に入ったお話をご紹介しましょう。一番のお気に入りは1話目に収録されていた楡原さんのエピソード。会社でもしっかり者の楡原さんは、密かに会社の先輩・瀬戸さんに恋心を抱いていました。彼を追って入った会社のフットサルチームでの活動に、姉を連れて行ったところ、瀬戸さんと姉は一瞬で恋に落ちてしまった。トントン拍子に話は進み、二人は結婚することに。自分の気持ちを必死に圧し殺しつついた楡原さんですが…というお話。
 
 同じ職場の先輩に恋するという所でそこそこ面倒なのですが、それに加えて彼には婚約者がおり、さらにその相手は自分の姉という辛いシチュエーション。けれども気丈な楡原さんは、決して自暴自棄になることなく、周りの求める“しっかり者”を演じ続けるわけですが、その姿が切ない。もういい大人なので、自分の気持ちに素直になって状況を壊すなんて行動に出れないわけですが、その心の消化の仕方が難しいのですよね。切り替えようとしたって、職場で毎日会ってしまうし、次を簡単に見つけられるほど、社会には“出会い”は溢れていない。この歯痒さになんとも共感したというか、「わかるポイント」が多くて良かったです。


今日の恋のダイヤ
泣きつく相手がいないことも、立ち直りを遅らせる一因に。


 もうひとつお気に入りは、遠距離恋愛で最近ギクシャクなカップルを描いた第3話。付き合って5年で、かといって具体的な結婚話もなく、一方で親からはなんとなくプレッシャーをかけられるという、この焦り。この焦りが…!私も気がつけば眼前に三十路の壁が迫っており、こういうエピソードがなんとなく身に沁みるようになってきました。私は男だからまだ弱い方で、同年代の独身女性からこういう話を聞くことが増えて来た分、なんとなくこういうエピソードに対するアンテナが高くなっているのかもしれません。
 

【男性へのガイド】
→視点が女子で、またエピソードも働く女子ならではという感が強いです。とはいえ身につまされるエピソードもあり、男性が全くダメかというと、そういうわけでもないかと。
【感想まとめ】
→大人感があって落ち着きつつも、草川為先生が描いているということでもの凄く新鮮味のあった本作、オススメです。


作品DATA
■著者:草川為
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめコミックス
■掲載誌:アネララ
■全1巻
■価格:429円+税


■試し読み:第1話

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Tag [続刊レビュー] 2014.01.14
作品紹介→10年越しの恋の駆け引き:天乃忍「ラストゲーム」1巻
2巻レビュー→守られてるのに気づかないこのもどかしさ:天乃忍「ラストゲーム」2巻
3巻レビュー→必要性のあることだからなんですよね?:天乃忍「ラストゲーム」3巻
4巻レビュー→本格的にラブってきたら柳はショック死するんじゃ:天乃忍「ラストゲーム」4巻
作者他作品紹介→流れる季節に想い重ねて、切なく眩しい恋をした:天乃忍「夏のかけら」




1106359405.jpg天乃忍「ラストゲーム」(5)


恋ってのは
そーゆーもんだ



■5巻発売しました。
 「怖かったら手を握っていいぞ」…お化け屋敷やジェットコースター、九条との初めての遊園地に期待しまくる柳。だけど百香、相馬、(ついでに先輩)の思惑が絡み、一方、九条は何かと柳を構う桃香に、なぜかもやもや…。そんな九条に相馬は思わず…!?
 

〜空回りの攻防戦〜
 お久しぶりのレビューです。ちょっと連休使って旅行に行ってまして…。ちょうどこちらの物語でも、天文サークルのみんなで遊園地に行っていました。いいですね、男女混合での旅行。何か起きなければおかしい。ましてやアトラクション多数の遊園地は、待ち時間すらもお楽しみ。いやー大学時代こういうイベント皆無だったんで、羨ましい限りです。
 
 遊園地で誰よりも気合いが入っていたのは、新キャラの橘桃香ちゃん。隙あらば柳の隣にいき、ポイントを稼ごうと必死です。こうやって頑張る子、嫌いじゃありません。あとちょっと小賢しいあざとさをもっている女の子が、思い描いた通りに事が運ばず、わたわたする様子ってのが好きでして。今回の橘さんはまさにコレでした。九条さんを仮想敵として臨むわけですが、それは相手がその気だからこそ成立するわけで、その気のない九条さんの前に空回りしまくりでした。
 

ラストゲーム5−1
結局九条さんには一切敵わず、柳からは釘をさされるというか、予防線を張られてしまいます。



さらに彼女にとって不幸な出来事が発生し、意外な過去が明らかになります…


ラストゲーム5−2
 はい、私の大好物「努力して生まれ変わった可愛い子」。努力したという自負があるからこそ溢れる自信と美しさというものがあると思っていて、それを最大限利用して目的を達成することの何が悪いと言うのでしょう。なかなかヒロインポジションになれないこの手のキャラですが、「挫折後に努力して頑張る」というシンプルな生き方を体現しているので、とても魅力的に映ります。あとあんまり語られていないですが、普通に優秀な大学に通っておられますからね。美しさを磨くと同時に、学力面でも努力しているっていう。

 戦いぶりからすると到底ライバルにもなれそうにないですが、こういう設定が出てくるという所で、レギュラー化は確定的。この後どういうポジションに落ち着くのでしょうか。最有力は、相馬のお相手って所でしょうか(流れ的にも)。努力してデビューっていう辺、似ているところもありますし、この後お互いフラれるであろう(ひどい)辺も、とっても似ている。柳と九条は全くもって正反対の性格で、その噛み合なさが素敵なカップルですが、お互いのことが分かり合える資質の似たカップルってのもまた素敵。似た者同士と真逆同士、どっちも楽しめるお得な物語です、はい。


〜九条さんに見て取れる変化〜
 今回九条さんは嫉妬という感情を覚えたわけですが、恋愛的な感情に自覚的になるのには、まだまだ時間がかかりそうな感じがあります。こりゃあ長期戦ですね(既に長期戦ですが…)。とはいえしっかりと彼女の中での変化は見てとれるので、飽きるどころか楽しみは募るばかり。今回もちょいちょい柳に嬉しい出来事があったりして、そのたびに彼のリアクションを見るのが楽しいです。さて6巻ではどうなることやら。順番的には、相馬の気持ちが募ってちょっとした一悶着があったりなかったりするのでしょうか。九条さんよりは俄然焦ったりジェラったりしそうな柳ということで、さてどんな表情を見せることやら…。

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Tag [続刊レビュー] 2013.12.28
作品紹介→大好きな彼の、うその彼女になってしまいました。:林みかせ「うそカノ」1巻



1106349656.jpg林みかせ「うそカノ」(2)


たまに疲れはするけど
嫌いじゃないよ



■2巻発売しました。
 入谷くんの「ほんとの彼女」になれた…!!舞い上がるすばる。…だけど、うそとほんとって、どう違うの??体育祭、海水浴、調理実習におうちデート…初めてばかりの2人には、ドキドキ事件が連発!!さらに、和久井が入谷を挑発&ライバル宣言!?
 

〜間違いなく今年最高のニヤニヤマンガ〜
 2巻発売しています。2巻、すごいです。何がって、そのニヤニヤ発生力ですよ。今年も数多のニヤニヤ漫画が登場しましたが、これはかなり上位。ヘタしたら最高位のレベルかもしれません。
 
 晴れて正式に付き合うことになった2人。当然のことながら恋人として、初々しい歩み出しをはじめるわけですが、その過程が「おいおいやりすぎだろう」と突っ込まざるを得ないほどにラヴラヴでして。なんなすばるが無邪気に好き好きオーラ出すから、それに飲み込まれている感がすごくてですね。凄すぎて、時にニヤニヤを突き抜けて無表情になりそうにすら。その最たるシーンは、この辺でしょうか…
 

うそカノ2−1
皆が見ている前でイチャつく


 なんなんだこの2人は!!しかも直前のすばるの「入谷くんと同じクラスごっこ」って台詞。もうその発言からしてバカップルのそれ!特進クラスで見せつけてイチャつくという、なかなかにレベルの高い絡みを見せてくれました。しかもこんなこと当たり前のようにしているのに、キスには躊躇いがあり、未遂という。この心と行動のアンマッチ感が、余計にニヤニヤっぷりを加速させております。


〜入谷くんの恋愛力の低さ〜
 ニヤニヤの源泉はなんといっても入谷くん。クールでドSな、例えるなら「ココロボタン」(→レビュー)の古閑くんみたいなキャラになるのかと思ったら、案外甘々。ツンデレキャラにしても、デレのシーンが多すぎる。借り物競走でのシーンも…
 

うそカノ2−2
困り顔で俯きがちに恥ずかしいことを


 ちなみにこれも、みんなの前です。このシーン、本当に美味しいのは次のページで、「違うの?」って不安げに聞く入谷くんの顔がかわいすぎてご飯3杯はいける。この作品は、すばるのかわいさではなく、入谷くんのかわいさを楽しむ類いのお話だと、この時点で確信するのでした。

 その初登場時のキャラクターから、勝手に「クールでスマートなイケメン」というイメージでいたのですが、実際はそうじゃないんだろうな、と2巻を読むことで思い直すという。まず際立って恋愛力が低い。すばるの妹や和久井の安い嘘や挑発に、これでもかと引っ掛かってしまうあたり、ヤキモチの源となる、「負けず嫌い」かつ「独占欲が強い」ってのが根底にありそうな気がしますが、その姿が余裕がなくてカッコ悪いんだ(そしてかわいい)。究極は、「恋愛心理学」なんていう本を買ってしまうところ。姿こそイケメンですが、中身はモテない男のそれですよ。あと潔癖で時間にキッチリしてて、そして他人に厳しい所とかも、現実では割とモテない(というか結婚できない)人の特徴として語られることが多いような。現時点で恋愛力の低い入谷くんが、すばるちゃんという何でも受け入れて許してくれる女神の前で徐々に彼氏としての力をつけていく成長譚…ラブラブっぷりだけでなく、そんな楽しみ方も一つできる作品なのかもしれません。


〜かませ犬としては弱いかな〜
 さて、大体ちゃんと付き合うとライバルが登場するものですが、本作では和久井くんがそのお役目を担うことになりました。今のところ、「すばるを昔から知ってる」「女心がわかってる」「ノリが良い」というあたりで入谷くんよりも優位ではありますが、いかんせんその器用さ故か、ド正面から突っ込めず、周囲からちょっかいをかける程度に留まっているため、かませ犬としてはやや弱い印象。そうしている間にもどんどんと2人は仲を深めているわけで、一気にギアを入れ替えないと、かませ犬にすらなれませんよっと。なんて、2巻ラストでは「おっ」と思わせるアプローチを。和久井くんにとっては試金石の3巻、これにより入谷くんのヤキモチも加速しそうで、さてさて楽しみになってきましたよ。

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Tag [続刊レビュー] 2013.11.29
作品紹介→超偏屈×美猫の無敵コンビが、ちょっと不思議な猫社会を駆け抜ける!:草川為「八潮と三雲」1巻
2巻レビュー→ニヤニヤが止まりません何とかしてください:草川為「八潮と三雲」2巻
3巻レビュー→“肝心な時に頼る”という愛し方:草川為「八潮と三雲」3巻
4巻レビュー→わかりやすいから放っておけない:草川為「八潮と三雲」4巻
関連作品紹介→草川為「十二秘色のパレット」草川為「龍の花わずらい」




1106318715.jpg草川為「八潮と三雲」(6)


うやむやだろうとこれで十分
今日のところはな
三雲



■6巻発売しました。
 八潮の誘いで、取り立て屋コンビでお出かけすることに♥デートのつもりで誘った八潮。ロマンス映画を観るためのカモフラージュだと思い込んでいる三雲。いい雰囲気になりつつも、微妙に噛み合ない2人の関係は徐々に拗れて…!?
 

〜なんていうニヤニヤ漫画〜
 「八潮と三雲」のレビュー、すっごく久しぶりですね。5巻のレビューができていないので、実に1年以上ぶりですか。というわけで6巻です。ついに同居生活を解消した二人。その結果生まれたのは、三雲の寂しさではなく、むしろ八潮の寂しさでした。一緒に過ごすのが当たり前になっていた二人。離れた時にその存在の大きさに気づくのは、得てして喋るよりも喋られる側だったりします。なんだかとっても寂しい八潮さん、三雲からの愛情はもちろんご存知…というわけで、トライするのはこちらからの歩み寄り。6巻は、そんな八潮の、不器用な歩み寄りの試みが描かれておりました。


〜八潮のアプローチの数々にニヤニヤ不可避〜
 いつもは三雲の空回りっぷりにニヤニヤする本作ですが、今回ばかりは慣れないアプローチに四苦八苦する八潮を見てニヤニヤするという楽しみ方がメインとなりました。もうね、こんな八潮、見たことなかった…
 
 

八潮と三雲6−1
デートを邪魔されてご立腹な八潮さん




八潮と三雲6−2
思い切ってご飯に誘う八潮さん




八潮と三雲6-3
家に招かれて「新築祝い」という名目で花を持っていく八潮さん



 「誰だお前」。いやはや、こんなにも頑張る八潮さん、今までいましたっけ。割と使う手が王道というか、言葉でズドンと言えば片付くものを、ちゃんと段階を踏むようにして進めようとしているのが微笑ましいですよね。しかもそれが尽く邪魔されたり空まわったりして上手くいかないってのが…。
 
 こんな八潮に三雲はさぞ大喜び…かと思いきや、この不自然さを怪訝に感じ、むしろ警戒してしまうという。あと三雲は、これまでの八潮の行動から「こういう意図なんだな」と勝手に読み解いてしまうようになり、結果お互いが歩み寄ってすれ違うというやきもきする状況に。違うんです!三雲は好きにしていいんです!そんな三雲を、八潮が文句良いつつ八潮が受けとめてあげればいいんです!というわけで、終始ギクシャクしていた6巻ですが、これもまた良好な関係を築くための前段階。噛み合ったとき、きっとニヤニヤが止まらない光景が待っているはずです。


〜7巻で完結のようです〜
 さて、本作はどうも7巻で完結するようです。うーん、もっとこの二人のやりとりを見ていたかった…!9巻くらまで続くかな、とか思っていただけに(九生の猫だけに)残念な気持ちもあります。
 
 しかし本作、死が割と近くにある職業を描いているにも関わらず、あんまりシリアスなシーンがないですよね。感動パートとして一色さんあたり死ぬんじゃないかとか思っていたのですが(ひどい)、無事に最後を迎えられそうです。このちょっとした緩さがあるからこそ、八潮と三雲のラブコメに集中することができる。長引くとどうしても脇役のエピソードを描いたりで本線が薄まったりしがちなのですが、そういったことも殆ど見られず、現在6巻ながら、しっかりとした濃さで段階を切れることなく追うことができています。7巻もこのままの流れで、綺麗にそしてニヤニヤたっぷりにまとめてくれることでしょう。7巻は来年の夏、発売予定です。

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Tag [新作レビュー] 2013.11.11
1106340079.jpg田中メカ「おとめとメテオ」(1)


私と「恋愛」をしよう!


■通称「不運の女王」、不幸体質の女子高生・夏野葉子(ハコ)。彼女の前に、全裸の男子が降ってきた。イオと名乗るその男子は、地球よりはるか遠くにある惑星「ユピタ」からやってきた王子で、全宇宙で最も波長の合うハコと子づくりをするために地球にやってきたと言うが…!?

 「キスよりも早く」の田中メカ先生の新作でございます。今回のお相手は宇宙人。超不幸体質で、近づく人にも時折悪影響を与えてしまうような女子高生・ハコ。きっと恋愛なんてできないと諦めつつあった所、宇宙のとある惑星の王子が降ってきて求婚(というか体を求めてきた)というものすごいストーリー。地球のことなどわからないその男の子・イオは、闇雲に子づくりを求めるのですが、「子づくりをするためにはまず愛が必要」と諭され、以後地球に留まりながらハコに様々なアプローチをするようになるのでした。様々な求愛を受けるハコは、最初は迷惑に想いながらも、段々とイオに心を開くようになり…というストーリー。


おとめとメテオ1
異星人ですから、いわゆる世間知らずで言葉足らず。間違ってないんですけど、色々と問題があるという。


 開始数ページでいきなりシチュエーション説明をして設定を固めてしまうあたりは、さすが花とゆめという感じでしょう。最近はあまり見なくなった気もする、宇宙からやってきた男の子との恋愛模様です。宇宙から来た人は全裸であることが多い気がしますが、本作でもご他聞に漏れず、全裸でのファーストコンタクトとなります。そこから始まり、変な宇宙人に振り回される…というのはセオリー通りではあるのですが、一方でヒロインも超不幸体質という特異な能力の持ち主であり、“巻き込まれ系”の巻き込みの渦を作り出すのはヒロイン自身であったりするのが、本作のちょっと変わった所と言えるでしょう。その中で、イオがヒーロー的に動いてくれるという構図。
 
 
 そんなスーパーマンのイオが、ハコの不幸体質をものともせずにピンチを切り抜け、彼女のことを全肯定してくれることで、幸せを感じることができる。ラブロマンスとして見るならば、割と一本調子で幸せなお話となっています。


 相手役のイオですが、触れた生物や物体の能力を取り入れるという能力を持っており、相手の心が読めない(空気が読めない)という一点を除けば、無敵とも言うべき能力を発揮します。言ってみれば全特殊能力持ちのテラフォーマーとか、スペックホルダーとか、そんな感じ。なので物語は何でもアリの様相を呈しており、教師と生徒という制約事項が多々あった中で織り成す前作とは真逆を行くような印象の作品となっています。


【男性へのガイド】
→これは男の人はどう受け取るのでしょうか。ちょっと想像つかないですが、ちょっと古風な少女マンガの良い所を感じることのできる作品で、そう言ったものがお好きであれば。
【感想まとめ】
→何でもアリの状況をどう受けとめるか。登場人物とその行動原理が固定化されているので飽きは来ないのですが、想像以上に散らかっている感はあるのです。


作品DATA
■著者:田中メカ
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:LaLa
■既刊1巻
■価格:429円+税


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かくかくしかじか
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王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
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トーチソング・エコロジー
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BEARBEAR
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レビュー
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かみのすまうところ。
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レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。