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2013.09.11
1106288817.jpg林みかせ「うそカノ」(1)


だいすきだ
バカ



■片想いの入谷くんが「彼女のふりをしてくれる人=うそカノ」を探していると知り、すばるは思わず立候補!!「これをきっかけに、いつかほんとの彼女になりたい…」一緒の下校、初デート、毎日ドキドキばかりだけれど、入谷くんがうそカノを探していた理由を知って…?「大好き」はほんと、「彼女」はうそ。すばるの恋のゆくえは……!?

 林みかせ先生のLaLa連載作になります。ちょいと前に発刊されており、少し遅れてのご紹介でございます。本作で描かれるのは、とある高校生男女の、ウソの恋人同士の関係性からの発展を描いた恋物語。物語の主人公は、特進クラスの入谷くんに憧れる女子高生・すばる。貧血で倒れて保健室で寝ていたところ、「彼女のふりしてくれる人見つけないと…」という入谷くんの呟きを耳にして、思わずそれに立候補。以来、すばるは憧れの入谷くんのウソの彼女として、彼と付き合うようになります。うそカノを作った理由を「クラスのやつらが自分を、人を好きになれない欠陥人間のようだと言うから」と入谷くんは説明してくれましたが、やがてその本当の理由が明らかになり…という、甘さ切なさミックスのストーリー。


うそカノ1−1
序盤は割とワザといちゃつくなんてイベントも。基本向こうのペースなので、ヒロインはいつもドキドキしまくりです。


 ウソから始まる恋も、きっとある。こういうシチュエーションは少女漫画では割と王道で、個人的にはかなり好きなお話(藤原よしこ先生の「恋したがりのブルー」とか、何度も読み返すくらい好きです)。なんていったって、ヒロインの相手のことが大好きな感がストレートに伝わってくるから。それでいて、素直に伝えられない(伝えてはいけない)切なさが入り交じるという、感情の揺れ動きを存分に味わうことができるのが良いではないですか。この手の作品は、ヒロインが素直で優しい性格であればあるほど、切なさ成分が強くなって良い。そういう意味で本作のヒロイン・すばるは、非常に心優しく、また入谷くん相手に敬語を使うぐらいには律儀というか真面目さのある子で、見ていて応援してあげたくなってしまうのですよ。
 
 こういうお話で、相手役がうそカノを作る理由は十中八九、前の恋を忘れるためであったりするわけですが(もしくは虫除け)。本作の相手役・入谷くんの場合、保健室の先生をしている幼なじみのお姉さんが結婚をするにあたり、「(かつて好きだったけど)もう好きじゃないから大丈夫」というアクションを見せるために、うそカノを作ったという経緯があります。そんな状況を目の当たりにしたとき、ヒロインは深く傷つくわけですが、そんな中お互いがどのようにアプローチをして関係を構築していくかが、ひとつ見所になってきます。


うそカノ1−2
基本敬語・丁寧語ってのがポイント高し。一歩引いた位置から、けれどもどうしようもなく相手のことが好きという、この様子がたまらないですね。


 うそカノと言いつつ、当たり前のようにデートしたり手をつないでいたりと、「うそ」という前提事項が無ければ、その光景は本当に付き合っている恋人同士のそれ。まぁそもそも、「とりあえず付き合ってみる」的な、所謂本当のお付き合いと、そう大差ないものだったりするのですよね。違いと言えば、「お互いに本当は好きではない」という前提を共有しているから、キスには行けないとか、本心を明かしたらお終い、的な制約があるかないか。そういう前提を置いてしまう真面目さがお互いにあるから、一度明示的に築いた関係を変質させ辛いんですよね。だからこそ、歯がゆくて素敵。
 
 1巻には3話が収録されています。巻数付いていますが、これで完結でも良い程度にはしっかりとオチがついている状況。元々3話完結予定だったりしたのでしょうか?2巻以降は、1巻よりも甘さ成分が強まってきそうな感がありますが、はい、大好物です。花とゆめ系統ではどちらかというとマイノリティな、地に足ついた設定での学園恋愛もの。天乃忍先生とか、ああいった甘さと切なさ強めな恋愛ものがお好きな方にはうってつけの物語かと思います。


【男性へのガイド】
→こういうシンプルな恋愛ものが好きな男性は多いかと思います。タイトルや絵柄やあらすじが気になった方、手に取って損はないはずですよ。
【感想まとめ】
→ある意味王道を行く少女漫画で、非常に良かったです。1巻だけでの満足感も十二分。2巻以降、どのような展開になって、どのように着地するのかわかりませんが、楽しみですね。


作品DATA
■著者:林みかせ
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:LaLa
■既刊1巻
■価格:429円+税


試し読み(第1話)

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Tag [続刊レビュー] 2013.08.28
作品紹介→キュートで笑えて泣ける、学園子育てスクランブル:時計野はり「学園ベビーシッターズ」1巻
2巻レビュー→かわいい!けど猪又さん成分が足りない…!:時計野はり「学園ベビーシッターズ」2巻
3巻レビュー→時計野はり作品は、赤面なんですよ!!:時計野はり「学園ベビーシッターズ」3巻
4巻レビュー→赤面委員長に突然吹いた恋の風:時計野はり「学園ベビーシッターズ」4巻
5巻レビュー→まさかの美少女登場:時計野はり「学園ベビーシッターズ」5巻
6巻レビュー→ラブレターとマフラー:時計野はり「学園ベビーシッターズ」6巻
7巻レビュー→牛丸さんはセクハラされる運命なのか:時計野はり「学園ベビーシッターズ」7巻
関連作品紹介→時計野はり「お兄ちゃんと一緒」/時計野はり「逆転ハニー」1巻



1106306781.jpg時計野はり「学園ベビーシッターズ」(8)


怒ってくれていいから
一緒にお買い物してくれる?



■8巻発売しました。
 ある晩、「かぐや姫」の絵本を虎太郎に読んでやった竜一。月に帰る結末にしょんぼりした虎太郎は、なぜか自分の好きな物をプレゼントする貢ぎ魔に!?一方、牛丸さんに買い物へ誘われた猪又さんは、友達とのお出かけ初体験にドキドキ!


〜意外と一番進展が見えやすい〜
 8巻発売しました。本作はこれといった大きな物語のある作品ではないので、毎回更新のネタが被りがちなわけですが、今回も性懲りもなく竜子ちゃんと猪又さんと牛丸さんです、はい。もう「またかよ」って感じかもしれないんですが、好きなので。もちろん子供たちも可愛いのですが、何気にこの作品で変化が見てとれるのって、案外子供じゃなくて大人達だったりしません?保護者同士のつながりとか、特に猪又さんと牛丸さんの友情とか、すごくわかりやすく順番を踏んでるじゃないですか。…という言い訳。


〜猪又さんと牛丸さんの友情〜
 というわけで、猪又さんと牛丸さんですが、今回ついに二人でお出かけというニヤニヤが止まらないシチュエーションが訪れております。まずこの待ち合わせから素敵です。タイトルで赤面しながら髪を梳かす姿が描かれていますが、準備はばっちり、
 

学園ベビーシッターズ8-1
なんと集合時間30分前に到着してしまいます。


 この赤面具合がかわいいですよね。友達相手とはいえ、はじめてのおでかけですから、やっぱり嬉しいしテンションも上がるってものです。牛丸さんも15分前に到着と、かなり早い方なのですが、それが霞むくらいの律儀さ。なんて、牛丸さんは竜一とのデートだったら余裕で30分以上前に来るんじゃないかとか、ちょっと思ってしまったり。
 
 二人がデートに選んだのは、デパートでした。お菓子作りの道具・材料を買うためということで、こちらもファンシー。なんとも微笑ましいです。てか今どきの高校生って女の子同士でどういう所に遊びに行くんですか?私の周りの女子は社会人ということもあって、普通に昼間から飲みに行ったりするんですが。
 
 さて、こんなお出かけの一幕のあと、さらにちょっとした出来事がありました。それが、温泉へ一緒に行くというもの。意外にも牛丸さんも一緒に行くことに。なんて都合の良い展開…!(褒め言葉) もう、一緒に温泉とか、不埒なことを考えてしまうわけですよ。何気に妄想激しいタイプの牛丸さん。男女別々でも、声が聞こえただけで…
 
 
学園ベビーシッターズ
意識しまくり


 これ、かわいい女の子がやっているから微笑ましいですけど、ただの男だったら妄想猛々しい哀しき童貞で見れたもんじゃないような。てか男の子だったら確実にた(略)。一方猪又さんは友達との入浴に照れつつも、きりんちゃんを抱っこして入る面倒見の良さ。根っからのお姉さんタイプというか、この辺素敵だなぁとか思うわけです。


〜竜子見納めか〜
 さて、女の子二人が微笑ましいやりとりを繰り広げている横で、ひとりの美少女が恐らく見納めになるであろうというイベントが発生致しました。まさかの竜子ちゃん、身バレです。てか、自らカミングアウトしたわけですが。犬井先輩かわいそう。こんなんリアルでやられたら登校拒否ですわ。それにもめげず、犬井先輩には頑張ってほしいもの…ですが、竜子ネタがなくなった時点でもう登場しなそうな気が…。ま、個人的には犬井先輩よりも、竜子ちゃんが見れないことが残念なんですけどね!!!!さすがに再登場は…ないかぁ。ちょっともう一回読み直して、ちゃんと心に留めておこう…


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Tag [続刊レビュー] 2013.07.28
作品紹介→10年越しの恋の駆け引き:天乃忍「ラストゲーム」1巻
2巻レビュー→守られてるのに気づかないこのもどかしさ:天乃忍「ラストゲーム」2巻
3巻レビュー→必要性のあることだからなんですよね?:天乃忍「ラストゲーム」3巻
作者他作品紹介→流れる季節に想い重ねて、切なく眩しい恋をした:天乃忍「夏のかけら」


1106299151.jpg天乃忍「ラストゲーム」(4)


嫌じゃないけど
なんかドキドキする



■4巻発売しております。
 柳との距離に緊張を感じ始めた九条。不自然な九条の態度に悩む柳。ぎくしゃくした2人を見ていた相馬の中で、九条の存在が!?そんな中、天文部が相馬の部屋で鍋会を開催!相馬の意外な過去も明らかに…!?


〜のっけから柳へのご褒美〜
 4巻発売でございます。相変わらず柳のことを意識しつつも自覚的になれない九条さん。4巻ですが、なかなか関係に大きな変化は見られません。それでも少しづつ進んでおりまして、それが柳にもときおり伝わるものだから、柳もによによ…。この僅かな進展でここまで喜べるのですから、もし一気に進展なんてしてみた日には、ショック死するね、ショック死。4巻は、そんな柳へのご褒美がとても多い巻でもありました。だってのっけから…
 

ラストゲーム4−1
これですよ、これ


 直前までまともに距離も保てなかった所からの反動で、思わず木を殴るという。まぁ長年想い続けた人に、これをやられちゃったらもう、堪らないですよね。普通だったら抱きしめちゃう。でも、柳は「抱きしめるぞ」と思うだけで、抱きしめない、これ大事。そして一番は、少女漫画ではもはや定番の電車での一件でしょうか。だいたい中学とか高校入学直後とかで、満員電車で男らしいところを再認識…普段男の人になんか触れないからドキドキ…みたいな初々しいシチュエーションを、いい歳した東京の大学生がやっちゃうっていう。まぁよくよく考えたら、東京はお上りさんが多いですし、そもそも田舎は満員電車になんてならないですから、意外と大学でもよくあるシチュエーションなのかもしれません。ちなみに私も大学時代一度チャンスがあったのですが、人の流れの激しさに二人の間を分断され、離ればなれになるという経験をしたことがあります。結構頑張って取り付けたデートだったのになぁ…と、ちょっと悲しい思い出を…。

 さて、こんなことがあったものですから、柳は…


ラストゲーム4−2
益々バカに


 もう場の流れとかガン無視でこんな発言ですよ。なんだか怪しい女の子の登場にも目もくれず、もう揺るぎません。基本的にそつなく対応して隙無くつけ込まれない印象の彼が、恋愛ボケを通して、何も受け付けないことでつけ込まれなくなっているという。恋愛以外の所につけ込まれると弱そうですが、それもなかなか難しそうです。もうこれ以上ボケられると、コメディからギャグになりそうなので、そろそろちゃんと柳に考えさせる展開をですね…自己完結でなく、九条さんとのやりとりから真剣に考えるような。

 そのために投入されたのが、新キャラの子(名前すら覚えてない)なのだろうと思うのですが、これがどう作用するのか、非常に見物です。セオリー通りであれば、ライバル登場で九条さんが恋心をついに自覚…という流れになるはずなのですが、そういうの通用しない子だからなぁ…。意外と簡単に彼女を取り込んでしまったり、とかままありそうで怖い。


〜似てる気が〜
 さて、そんな二人を見て、なんだかとっても心を荒ませている人が一人。はい、相馬くんです。今回はなんとなく九条さんを意識し出した様子が描かれていましたが、それと合わせて彼の学生時代の出来事が描かれていましたね。意外にも、野球部だったという。しかも補欠。私も野球やっていたので、これだけで好きポイントが上がりました。そして彼が好きだった子が…
 

ラストゲーム4−3
なんとなく見ためが九条さんに似ている気がする
 

 シチュエーションもなんだか似ていて、だからこそ余計に気になるご様子…。うーん、このままかませ犬コースに乗ってくるのでしょうか。ただあんまり彼は、かませ犬のポジションは似合わなそう。というか、つけ込む隙が無いことはいやでもわかっているハズ。これだけ目の前でいちゃこら(死語)されたら、なかなか動き辛いでしょうし、ムリに飛び込むタイプにも映りません。なんとなくもやもやした感情を抱えたまま、どうその感情を消化していくか、というところが彼の課題となるのかもしれません。何気に一番悩んでるのが、彼だったりするんですよね。どうか幸せになって欲しいものですが、そのお相手に相応しいのは誰なんでしょうか。早く全力で恋して赤面する姿がみたいものです。


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Tag [続刊レビュー] 2013.05.16
1106265551.jpg弓きいろ/有川浩「図書館戦争 LOVE&WAR」(11)



…まずは前提として
生きててもらわないと困るのよ…!



■11巻発売しました。
 ついに茨城美術県展攻防戦が開幕!!銃撃戦で仲間が次々と負傷していく中、郁は初めて人を撃ってしまう。動揺する郁に堂上が…!?戦闘終了後、さらに新たな危機が図書隊を襲う!!
 

〜映画「図書館戦争」を観てきました〜
 「図書館戦争」久々のレビューですが、その前に、まずはついこの間見に行った映画のお話でも…。堂上役がV6の岡田君、郁訳が榮倉奈々さんと、身長的にはバッチリのキャスティング、個人的に岡田君は好きなので、ちょっと期待して見に行って参りました。このキャスティングは、ダ・ヴィンチの投票でダントツの1位だったみたいですね。
 
 ストーリーを話すとネタバレになってしまうので割愛しますが、とりあえず前評判に違わぬ派手な銃撃シーンが繰り広げられておりました。途中撃ちすぎて笑いました(笑)ただ銃撃戦を延々繰り広げても間延びしてしまうので、物語後半は人数を絞っての白兵戦。ここでの岡田君無双が凄かった。次々と襲い来る敵を相手に苦戦しつつも倒し続ける見事なアクション。正直強すぎてここでもまた少し笑ってしまうという(笑)全体的に原作の世界観を壊さないように作られている印象だったのですが、ここだけは岡田君のサービスカットなのかな、と。

 さて、その他特に印象に残ったのは、何といっても玄田隊長と柴崎さんでございます。玄田役は橋本じゅんさんが演じており、サイズから「ちょっとイメージと違うかな?」なんて思っていたのですが、大事なところでカッコいい事するんですよ、これが。ポジションで言えば、「海猿」シリーズでの時任三郎でしょうか。また本作を見るちょっと前に、「二都物語」という舞台でおちゃらけた役をやっていた印象が強かったので、ここでのシリアスで頼りがいのある男らしい役柄が、余計に新鮮に映ったというのもあるかもしれません。
 
 柴崎さんを演じたのは栗山千明さん。正直そこまで興味のある女優さんじゃなかったのですが、柴崎役が思いの外ハマリ役で、もうメロメロでしたとも。元々栗山千明さんをイメージして創られたキャラということで、それも至極納得なのでした。メガネ姿とかちょっと良かったです(フェチ)

 それとキャスティングでは、悪役で鈴木一真さんが起用されていたのも個人的にはポイント高し。イビョンホンと鈴木福くんをミックスしたような印象のある、独特のカッコ良さと胡散臭さがある方ですが、「ライアーゲーム」のヨコヤ役といい、妙に悪役がハマるんですよね。今回も清々しいほどに悪役で、ニヤニヤしつつ観てしまいました。


〜先輩に恵まれしっかり成長しています〜
 さて、だいぶ長々と映画の感想を書いてしまいましたが、そろそろ本編に戻りましょう。本編は、茨城での戦闘を迎えようとしている頃。まずは茨城県立図書館に出動した郁が、今までと違う一面を見せたのがとても印象的でした。これまではどちらかというと、班の一番下っ端で、周囲にサポートされる形で自分らしさを発揮しているイメージが強かった郁ですが、ここではタスクフォースの一員ということで、一目置かれた存在となります。これまでとは違い、上に立っての立ち居振る舞いが自然と求められるように。こういう時って戸惑ったり、内面が変な風に出てなかなか理想の先輩でいれなかったりするものですが、郁はすんなりと「憧れの先輩」見事に立ち回ってみせるんですよね。
 

図書館戦争10−1
後輩に対しては優しく



図書館戦争10−2
そして仲間を守るため、敵には厳しく



 これまでの郁であれば、感情が先走って後先考えず暴走気味になってしまっていたと思うのですが、今回は実に大人らしい対応。特に敵を脅す時のやり口は、これ以上ない賢いやり方でした。この振る舞いについて郁は「隊長、堂上教官、小牧教官に柴崎のやり方を真似た」と言い放つわけですが、これを見て改めて「先輩、仲間に恵まれているなぁ…」と。また単に近くで見ているだけでなく、いざ守られた経験があるからこそ、身に染みてそのすごさがわかっているんじゃないのかな、と。隊長も堂上も柴崎も、みんな郁を守るために、それらのスキルを発揮します。そして守られたことで、自らもそのやり方を学び、いざ自分が守る番になったら、しっかりそれを発揮することができる。なんて素晴らしい環境でしょう。彼女は社会人3年目ということですが、この歳でここまでできれば大したものだと思います。なんかみんなちゃんと仕事してて、すごいですよね。
 
 またこの一件に関しては、直前に親とやりあったというのもあるかもしれません。この職業に反対する母に対して、あそこまで強く出れたのも隊長や堂上に「守られている」という安心感みたいなものがあったからこそなのかな、と思います。また後の、業務部への脅しに関しても、父親から認められたことで、一人立ち出来たというか、後輩を「守る」意識が出来たんじゃないかな、という印象がありました。10巻後半はまさに郁無双とも言うべき展開でしたが、これは実はこうなって然るべきだったのではないかと、振り返って思うのでした。


〜柴崎さんと手塚の恋の行方は?〜
 11巻で一番カッコ良かったのは何といっても玄田隊長でした。そしてその後の折口さんとのやりとりも、もうね、ステキすぎて何も言えねぇって感じですよ。とにかく愛の形がオンリーワンすぎて。もう絶対に揺るがないじゃないですか、この二人。そんでもって折口さん、若干ツンデレっていう可愛らしさ。
 
 そしてそんな二人を横目に、着々と良い感じになりつつあるのが、手塚と柴崎さんなわけで。結局この二人の話題かいって感じですが、この二人もまた非常に私好みで、かつお似合い。本気具合はわからないものの、何気にメインキャラ二人にフラレているってのも、ツボをくすぐる共通点ですよね。10巻では、柴崎を想ってわざわざ芸能人のサインを貰いにいくという微笑ましいエピソードが描かれていましたが、今回は本編と相まって、一転シリアスに。茨城での電話でのやりとりについて、手塚と少し言い争いになった際に、
 
 
図書館戦争11−1
今まで見せなかった、柴崎さんの涙が


 これは若干不意打ち気味で、驚きました。いや、たぶん一番驚いてるの、手塚なんでしょうけども。10巻で言っていた郁の「柴崎の弱い部分」が出た感じでしょうか。女の武器というと聞こえが悪いかもしれませんが、これは破壊力大でございます。これ以上ないってぐらいの使いどころですよね。さすが、この後の切り替えは早かったものの、手塚には少なからずショックを与えたようで、これがこの後二人の関係に良いように作用してくると良いですね。こんなの、柴崎さんがちょんと手塚の腕をひっぱればくっつきそうなものの、多分彼女の性格だから、余程のことが無い限り動かないんじゃないかなって気もします。(もうくっつく前提ですが)これからどういう風に二人の仲が進展していくのか、引き続き楽しみです。
 

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Tag [新作レビュー] 2013.05.15
1106276807.jpgふじつか雪「三日月とオレンジ」(1)


世界なんて違わないよ
私はヨータのことが好き



■美月は友達のいない内気な高校一年生。ある日、机に描いた独り言に返事が来て!?相手は同じ高校の定時制の生徒で、同じ机を使っている陽太。出会うはずのなかった二人がつながり、美月は少しずつ自分の世界を広げていく…。退屈な日常が、キラキラと輝き出す、奇跡のピュアロマンス開幕!!

 「桃山キョーダイ」(→レビュー)などを描かれている、ふじつか雪先生の新作でございます。すっかりLaLaで定着した感のあるふじつか先生、今回もばっちり巻数付きです。今回の物語は、ちょっと引っ込み事案な女の子の恋物語。ヒロインの美月は、内気な性格でなかなか人に話しかける事が出来ない高校1年生。そこそこ美人で勉強もできるけれど、それが敷居を高くさせているのか、周りもなかなか美月に話しかけてくれません。そんな退屈な日々の中、机に独り言を書いてみると、次の日そこには返事が…!!返事をしてくれた相手は、同じ学校の定時制に通う少年・陽太。一見ガラは悪そうだけど、美月をすんなり受け入れてくれた定時制の生徒達。以降、机のやりとりを経て、一緒に過ごすようになったのですが…!?というお話。


三日月とオレンジ1
内気かつピュア。なので、一度心を許せばこんなに無邪気に小悪魔に。そしてそんな彼女を優しく見守ってくれる、陽太。


 ふじつか雪先生の恋愛ものは、いつも目の前に立ちはだかるハードルが明確で良いですよね。「金魚奏」であれば聴覚障害であり、「悪魔とデュエット」であれば王子と悪魔であったり、「桃山キョーダイ」であれば兄妹という関係性。そして今回は、全日制と定時制という所属の壁があります。仲良くなったは良いけれど、定時制の生徒に対しては偏見が多いのも事実。夜遅くまで学校にいるのを、親は良くは思わないし、全日制の生徒も変な目で見かねません。また相手役となる陽太は、オレンジ色の髪をしているために余計にそういう目で見られがち。そんな誤解や偏見に、内気なヒロインが立ち向かい乗り越えつつ、自分の居場所を見出して行くのが、本作の見所。
 
 相手役の陽太は今でこそオレンジ髪で好き放題やっている風ですが、元々は地区随一の進学校にも余裕で合格できるレベルの秀才。しかし雁字搦めの環境の中、親の言いなりになるのに嫌気が差し、こうして定時制の高校に通い直しているのでした。


三日月とオレンジ
 彼の趣味は天文学なのですが、これがヒロインと陽太を結びつけるキーファクターとなってきます。単に交遊目的で定時制のクラスに通うのは、少々聞こえが悪いのですが、天文部に入部すれば、夜の学校にも堂々と入れます。愛しの彼と過ごすため、内気なヒロインは懸命に天文部設立(正確には復活)に奔走するのでした。このピュアに相手のことを想い、一生懸命頑張るヒロインの姿がとっても可愛らしい。そしてそんな彼女を大きな心で受けとめてくれる陽太もまた、しっかりと作中で魅力を放っています。二人の関係は、その名前が現すように、まさに月と太陽とでも言いましょうか。良いバランスで成り立っているな、と1巻にして既に感じさせてくれます。

 物語中の当面の課題は、天文部の設立と、美月に恋する全日制の生徒。2人の関係が中心に据えられつつ、友達やライバルを交えて5人前後の人間関係で回すというのは、「桃山キョーダイ」なんかでも一緒でしょうか。さすがにこなれた造りとなっており、序盤から物語にどっぷりとのめり込んで読むことができます。この手のシチュエーションがお好きな方は、まず買って損はない一作と言えるのではないでしょうか。


【男性へのガイド】
→恋愛色が比較的強い作品。花とゆめは男性にも読みやすいレーベルではありますが、本作は相手役が異色であることや、ヒロインのイメージから、若干男性が読むにはハードル高い感があるかもです。
【感想まとめ】
→オーソドックスな設定・展開ではあるものの、しっかりと作者さんの味が出た物語となっていました。序盤から安定感抜群で、じっくりと読み込むことができました。


作品DATA
■著者:ふじつか雪
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:LaLa
■既刊1巻
■価格:400円+税


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かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
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2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




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レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




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池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。