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Tag [新作レビュー] 2014.05.12
1106368543.jpg綾瀬美羽「ビビッドチェリー」


好きなのかも


■泣いたり切なくなるのに、なんで、みんな、恋するの?
 多歌は「恋」がまだわかっていない高校2年生。バイト先で女子が苦手な年下男子・咲良と出会う。咲良の片想い中の女子の話を聞くことで、恋に興味が出てくるが…!?女子力は高くないけど、多歌なりの初恋がはじまる……。
 
 以前ご紹介した「ハル」(→レビュー)を書かれていた綾瀬羽美先生の初となるオリジナル連載作でございます。個人的にここ1年くらいのデビュー漫画家さんの中では特に注目している先生なのですが、 何といってもそのこなれっぷりが凄くてですね。抜群の安定感。本作も初オリジナル連載とは思えないほどの安定っぷりでございました。
 
 物語で描かれるのは、まだ恋を知らない女の子が男の子と出会い、恋を知るというボーイミーツガールなストーリー。ヒロインは、黒髪ツインテでおてんば感のある少女・多歌。姉や友達、たくさんの人を泣かせる「恋」というやつに、すこしばかり興味が出て来た高校2年生。シングルマザーになる姉を助けるためにバイトをはじめることにした多歌は、バイト先で年下の男の子・咲良に出会う。女子が苦手でいつも職場で弄られている彼は、実は密かに片想い中。そんな彼の話を聞いて、益々興味が出て来た多歌ですが…というお話。


ビビッドチェリ−1
 恋を知らない女の子が、一人の男の子と出会うことで恋を知り…という、実にオーソドックスな恋愛感情無自覚型のストーリー。大体そういう子って中学生だったり高校1年とかだったりするのですが、彼女の場合は高校2年とかなりの遅咲きでございます。高校2年なのにこれっていう。「こんなのありえない」という感もあるかもしれませんが、これは言わば少女漫画の定型課題であり、様式美なのですよ。


 さらにお相手となるのは、恋の酸いも甘いも知るイケメン男子…ではなく、密かに女子に想いを寄せる奥手な頼りない年下男子という変わり種。この設定からしてなかなか恋愛が発展しないこと請け合いなのですが、そこは4話完結(そこ?)、しっかりと転がります。あ、もちろん無理なく展開してますからね。


ビビッドチェリー2
ひとつひとつ恋の良さを知って行く。まずは他人の様子を見て。そしてやがて、自分自身が恋をして…。

 
 ヒロインは年上ではあるのですが、割と何も考えずに自由に動いてしまう節があり、見ていて結構危なっかしいのです。そんな彼女を上手いこと御してくれるのが、年下男子の彼。ヒロインが巻き込み動かし、最後は彼がフォローするという、ちょいど良い関係は見ていてとても安心感がありました。
 
 同時収録の読切り「ユメミナイト」は、王子様を夢見る女子が、理想とは正反対のチャラい男子と出会い恋するお話を描いた作品。こちらも好きになる→ちょっとした戸惑い・反発→一悶着からの懐柔といったお約束がキッチリと詰め込まれており、「あー、少女漫画読んでるなぁ」と改めて実感させてくれる内容となっております。
 
 どちらも特筆すべき設定や展開はないのですが、その中で押さえるべき点はおさえており、トキメキ成分はばっちり。ヒロインの多彩な表情から、心の揺れ動きがダイレクトに伝わってきます。なんていうか、箱の中にものが偏らずにきちんと収まっている状態と言いますか。読んでもらえればわかると思うのですが、なかなか伝えるのが難しいのです…。


【男性へのガイド】
→少女漫画好きは、是非読んで欲しい。
【感想まとめ】
→新作楽しみにしていたのですが、はずさないです。“少女漫画感”を堪能できました。


作品DATA
■著者:綾瀬美羽
■出版社:集英社
■レーベル:別冊マーガレットコミックス
■掲載誌:別冊マーガレット
■全1巻
■価格:400円+税


■試し読み:第1話

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Tag [続刊レビュー] 2014.05.07
1106390007.jpg目黒あむ「ハニー」(4)


奈緒
おそろい



■4巻発売しました。
 鬼瀬くんと仲良くなった二見くん。
 明るくて気さくな二見くんは、鬼瀬くんの彼女でもある奈緒にも仲良く接してくれます。最初は鬼瀬くんの話などを楽しくしていた2人ですが、徐々に二見くんは奈緒を意識するように…。そんな中、体育祭が始まります。ついに想いを抑えられなくなった二見くんが……!?


〜告白に対して奈緒は…〜
 4巻は2部構成。序盤は二見くんのアプローチ、後半は矢代さんと三咲くんの一悶着。どちらも青春汁と恋愛汁に溢れていて、まぁニヤニヤさせてくれる内容となっておりました。
 
 まずは二見くんの話ですかね。もうこいつ絶対告白するじゃんって流れでしたが、案の定しちゃいました。しかも勝ち目薄であることは3巻時点で明白で、かませ犬にすらなれないというシチュエーションです(なのであんまり私のかませ犬アンテナには反応してこなかった)。
 
 目下の注目は、鬼瀬くんと奈緒がどう乗り切るかという所なのですが、奈緒が泣きながらのお断り。うーん、やっぱり泣いちゃったか、と。もっとパニくるかと思っていたのですが、自分の言葉でしっかりと「お断り」をするあたりが偉いです。
 
告白のあと、二見くんはこんな後悔をするわけですが…
 
 
ハニー4−1
…なんで
もっと早く奈緒ちゃんのこと好きにならなかったんだろう



 二見くんが奈緒の魅力に気づけたのは、他ならない鬼瀬くんがきっかけであって、なかなかそれは難しい話だったんじゃないかなぁ、と。また告白を断る際に奈緒が、「私が鬼瀬くんに出会って少しだけ変われたから」と言っている通り、仮に鬼瀬くんよりも前に二見くんが出会っていたとしても、その魅力を見出して好きになれたかというと、これもまた難しいんじゃないかな、と。というわけで、割と不憫な負け戦に挑むことになった二見くん、今後の去就が気になるところあります。
 
 この後はもう奈緒に対して甘々な展開で。さいごの鬼瀬くんとのイチャラブも良かったのですが、個人的には矢代さんのこれ…


ハニー4−2
ああ、飛び込みたい(小声)。


 この子は他人に対して無関心っぽいのに、その実誰よりも敏感に感情を感じとって気遣ってくれるんですよね。こんなのやられたら、ガッツリ心掴まれますって、もう。


〜脇役二人のまさかの展開〜
 さて、そんな矢代さんですがまさかの後半に超絶スポットライトが当てられる展開となります。いきなり彼氏の登場ですから、ドびっくりですよ。他人と深く関わらない…なんてポリシーを感じさせる彼女ですから、当然日々孤独に生きているのかと思っていただけに、この展開は衝撃でした。しかも、よくよく読み進めてみると、彼女の方が依存しちゃっている勢いという。いや、これはビックリ。けれども2巻では、奈緒に対してこんなアドバイスをしているんですよね


ハニー4−3
恋って理屈じゃないしね 


 これは恋してないと言えない台詞ですもんね。ようやく納得です。そしてまさに、「恋は理屈じゃない」を体現しているような恋愛をしていたってんですから。

 そしてそんな彼女の実情を前に、それまでまったく自覚していなかった自分の気持ちにいきなり気づいたかのように突っ走る三咲くん。若いです。この気持ちはわからんでもないですが、それって純粋な好きなのか、焦りによる見切り発車なのか分からん感じがまた。そしてそんな彼の言葉に対して、矢代さんは逃走するっていうドタバタっぷり。奈緒はちゃんと言葉で伝えたんですがね。このなんでもアリ感がまた面白かった。この二人のことも楽しみになった5巻、どんな恋模様を見せてくれるのでしょうか。


【関連記事】
作品紹介→ある日不良さんに、花束もって告白されました。:目黒あむ「ハニー」1巻
2巻レビュー→ピュアさゆえの破壊力:目黒あむ「ハニー」2巻
3巻レビュー→“だいすき”ばかりが募っていく:目黒あむ「ハニー」3巻

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Tag [新作レビュー] 2014.05.06
1106390008.jpg渡辺カナ「ステラとミルフイユ」(1)


誰でも誰かを好きになるの


■父への反発から決めたことが2つ。
 それは志望高校を変えたことと、家を出て独り暮らしをすること。
 周囲を拒絶することで始まった新生活は、
 寂しさと眩しさがたくさん詰まっていました。
 
 「花と落雷」(→レビュー)の渡辺カナ先生の新連載になります。ステラとミルフイユって何のこっちゃと思われるかもですが、読んでてもあんまりよくわからなかったので大丈夫(何が?)。欧風ファンタジーすら想起させますが、描かれるのは中二病気味の面倒くさい男子の日常を描いた青春ドラマでございます。
 
 物語の主人公は、とある高校に独り暮らしをしながら通うことになった男子・葉山銀河。医者をしている父の厳しい教育に反発するように、父に黙って親に言われた高校とは別の高校に入学し、寮生活とウソをついて独り暮らしを始めたのでした。独り暮らし初日、新しい生活に胸躍らせている中出会ったのは、お隣さんの桃野さん。見ためヤンキーあがりな年上の女性・椿さんと、その娘(?)のさくらちゃんの2人暮らし。独り暮らしをした経緯を話したところ、以来「弄りがいのあるやつを見つけた」と言わんばかりに生活に介入してきて、銀河の人間関係は広がりを見せていくのですが…というお話。


ステラとミルフイユ
弄りがいのある性格の主人公。中二病を拗らせ気味なのですが、それが愛すべき性格とでも言いますか。


 別冊マーガレットは学園ベースでの恋愛+友情って感じで回していく印象なのですが、本作は男性主人公で恋愛要素は非常に薄めであり、またメインフィールドも学校半分、アパート半分という感じ。非常に個性的な登場人物達が揃っており、笑いも生み出すのですが、当人達は至って真面目に青春しており、つまるところ一口で「このジャンル」と言えない不思議な風合いの作品に仕上っています。
 
 ベースとなるのは、抑圧からの反発で青春をこじらせた空気読めない男子高校生と、ワケありな元ヤン女性との関係。そして彼女を起点に、アパートの各住人と顔見知りになり、またそこを起点に学校のクラスメイトにまで人間関係が派生していくという広がり方。主人公はお金持ちであり、家を出たとは言っても仕送りしてもらっている上に執事が離れつつも色々とサポートしてくれるという甘い環境におり、またそれが原因なのかどこか浮世離れした感覚&性格の持ち主。一方で周囲にいる人たちは安アパートに住んでいるなりの経済状況の人たちで、個々人に色々と事情もあったりするのです。そんな人たちと触れあうことで、まともに青春を享受できていなかった半人前の男の子が、ようやく人並みの感受性だとか人付き合いの方法を体得し、青春というものを楽しむことができるようになるという。
 
 1巻は登場人物の相関図の整理という段階であり、それぞれどういう形で矢印が伸びているかわかってきた段階。主人公は恋愛云々という段階になく、あるとしてももうちょっと先のことであろうと思います。人物間でのぶつかり合いも少ないため、1巻はちょっとしたズレみたいなものから生まれる笑いがメインかなぁという印象ですが、これから関係が醸成されることで、もう少しシリアスに切り込んだ感動が生まれてくるのでしょう。またそれぞれが個性的だからか、互いの会話がガチャガチャとした印象であるのは相変わらずで、好き嫌いの別れそうな所。なんというか野島伸司的なエッセンスも感じられなくもないのですが、それは私だけですかね。


【男性へのガイド】
→男性主人公ですが、彼に共感するのはなかなかハードル高く。とはいえベタベタな恋愛要素もないので、取っつきやすいとは思います。
【感想まとめ】
→独特の風合い、台詞まわしをどう受け取るか。1巻時点では、個人的には前作の方がお気に入りですが、今作の方がじっくりめに構えている感もあり、まだどうこう言うのは尚早という感じでしょうか。


作品DATA
■著者:渡辺カナ
■出版社:集英社
■レーベル:別冊マーガレットコミックス
■掲載誌:別冊マーガレット
■既刊1巻
■価格:400円+税


■試し読み:第1話

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Tag [続刊レビュー] 2014.02.11
作品紹介→高校1年生の春、隣の君に恋の予感。:山川あいじ「Stand Up!」1巻



1106359176.jpg山川あいじ「Stand Up!」(2)


言葉のいらない
会話もあるんだなぁ



■2巻発売しました。
 中学時代の失恋から、恋に臆病になっていた卯多子だけど、原田からの真剣な告白を見て付き合うことを決める。噂の元カノ・秋尾、ひとクセある男子・内、原田をきっかけに卯多子の学校生活に新しいドキドキが増えて行く。そして、2人は初めてのデートに行くことに…!


〜デートに着ていく服がない〜
 背は高いけど気は小さい女の子の恋を描いたこの話ですが、2巻発売しました。1巻にて原田から告白されて付き合った2人ですが、2巻では、初々しくくすぐったい2人の歩みを存分に楽しむことができます。今回は、2人のデートの一部始終をゆっくり描きます。丁寧ですねー。


StandUP!2-1.jpg
 のっけから着る服に悩む卯多子。デートの時の服、悩みますよね。私は私服高校だったのであまり抵抗感はなかったのですが、普段制服だとどうしても私服は甘くなりがちで、きっと恥ずかしさや怖さみたいなものがひしひしと沸き立っていることでしょう。恋愛に、オシャレに不慣れな人は、「どう自分を見せて好いてもらうか」ではなく「ヘタなことして嫌われたくない」という保守的な方向にベクトルが向きがちで、卯多子もそんな戸惑いの様子が見てとれました。そのため姉に助けを求めているのですが、それでいて、結果的に着る服は自分で選んじゃうという頑固さもあり(笑)自分がお姉ちゃんだったら「なんやねん」と思ってしまいそうですが、こういうとき卯多子にとって大事なのは、服を決めてもらうことではなく、「大丈夫。かわいい。」と背中を押して安心感を与えてくれることだったりするのですよね。


〜メールの音符に懐かしさ〜
 斯くしてデートに向かう卯多子。その集合に際してメールのやりとりをするわけですが、やりとりがメールっていう。そして、「楽しみ♪」という♪に喜ぶというシーンが。
 
 まずメールってのが少し懐かしい感覚で、さらに音符を使うってのもすごく久々感がありました。最近滅多にメールをしなくなり、どちらかというとやりとりはもっぱらLINE。今の高校生たちって、どういう連絡手段を使ってるんでしょうか?このスタンプが嬉しいみたいなのとかあったりするのかしら。
 ちなみに音符というと、携帯会社間で絵文字のやりとりができない時代に、苦肉の策で使っていた思い出が(高校ぐらいのとき)。あと星ね、星。今思うと何必死に打ってたんだろうとか思いますが。そんな私もデコメにはついていけず、句読点ばかりのテキスト打ちメールに落ち着きましたよっと。なので、音符を意識するってシーンは懐かしさと同時に気恥ずかしさみたいなものもあるという(笑)

 あと懐かしかったのがこれ。
 
 
StandUp!2-2.jpg
ヘアピン男子
 
 
 これも中学や高校の時いました。大体チャラい男子で、割と背の小さい子が多かった印象があります。部活は帰宅部かバスケ部かサッカー部(偏見)。少女マンガではヘアピンを男子に貸すってやりとりがしばしば登場するのですが、女子から見てヘアピン男子ってどういうイメージなんでしょか。文脈的に読み解くならば、自分の持ち物の一部を身につけてもらうことで嬉しいということなのでしょうが、そもそもこれだけの登場数を見ると、一定数の需要があるってことなんでしょうかね。
 
 さて、先の音符のメールのくだりをはじめ、ちょっとした仕草だとか言葉のやりとりが、非常に丁寧に落し込まれていました。二人とも理路整然とした言葉ではないのですが、心に浮かんだワードを素直に口にしているような台詞は、非常に好感が持てました。ただそんな言葉の応酬にも関わらず、全体を通しての印象は真逆で、「発せられるべくして発せられた台詞が着実に積み上げられているな」といったもの。上滑りしたり霧散したりするようなどうでもよい台詞が全然なくて、全て意味があるというか、質量がある感覚なんですよね。それはある意味ひどく不自然なのですが、一方で物語の進展が確実に見てとれるので、安心感ややきもき感なく心地よく読めるといいますか。


〜チューもなし〜
 さて、2巻ではかなりイチャラブ急接近だった2人ですが、てをつないでハグをしたまでで、キスも未遂。チューはもうちょとと先ですかねー。そんな中、ライバルめいた登場人物も続々。目下の心配は、元カノよりもあのあざとそうな先輩でしょうか。本編では原田がライバルの登場を危惧していましたが、当面は卯多子がやきもきしそうです。山川あいじ先生が恋の駆け引きをどのように描くのか、3巻も楽しみですね。


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Tag [続刊レビュー] 2014.02.07
作品紹介→体のデカさに態度のデカさ…空前の凸凹コンビ!:オザキアキラ「ハル×キヨ」1巻




1106359177.jpgオザキアキラ「ハル×キヨ」(2)


あの
私 峯田くんのこと好きです!



■2巻発売しました。
 峯田くんの部屋に行ったり、イジメのトラウマから救われたり。なんだかんだ仲良し(?)の2人。学園祭の空気に飲まれて、小春が峯田くんに電撃告白!?大爆笑&ちょびっと胸キュン、必見の第2巻!!
 

〜チグハグすぎる恋〜
 2巻発売しました。ヘタしたら2巻で終わったりしないだろうかと、ちょっとびくついていたのですが、ちゃんと続きます。良かったです。しかしながら、中身の方はというと、完結へ駆け足で向かっているのかと見間違うほどの急展開っぷり。メインの2人は元々極端な性格の持ち主で、基本的にフルアクセル+急ハンドルで驀進するのですが、こうもトントンと進むとは。
 
 発端は、小春の不用意な一言から。「友達としてすごく尊敬している。大切に思っている。」という気持ちを伝えようと思ったのが、勢い余って「好きです。」と、告白をする形に。しかも峯田くん、それに対して…
 

ハルキヨ2-1
これです


 さすが、この落ち着きようですよ。峯田くんってば、前に好きだった子を相手にした時は別人のようにアタフタしていたのに、これ。気がないって言っているようなもんじゃないですかー(適当)。しかしながら、峯田くん、これが意外と真剣だった。ここまでの流れは他の少女漫画でも見られる光景で、大抵一枚上手の男の子が思いのほかスマートにお付き合いに持ち込んでくれたりするものなのですが、彼の場合は…


<ハルキヨ2−2
せかす。結構ガチにせかす。(ちなみにこれ、当日です)


 え、そんな真剣に迫るほどだったの?ちょっとビックリだったのですが、前回恋のチャンスを逃して痛い目に遭っているので、次はしっかりとチャンスをつかみたいと思ったとのこと。小春に対しては、ドキドキやトキメキこそ抱きにくい(無いとは言ってない)ですが、これほど側にいて苦じゃない人は初めてだったそうで、確かにそういう愛情もあるよなぁ、と。
 
 即答で付き合うことにはならないわけですが、こうした峯田くんの行動は着実に小春のハートをキャッチしていたようで、二人の距離は文化祭を境により近いものになっていきます。しかしその過程がまた変なんですよ。なんていうか、バランスが見極められないというか。大抵どちらかが惚れて、それを惚れ返すって関係なわけですが、彼らの場合場面場面で逆転現象が起きていて、しかも本当に惚れているのか判然としないっていう。とにかく終始チグハグで、当人たちすら気持ちが追いついていない感すらあるのですが、それもまたこの2人らしいと言えましょう。それでも不格好なりに前には進んでおり、3巻あたりでやっと中身も追いついてくるのかな、という予感もあります。


〜友達のやり口がエグい〜
 さて、今回印象的だったのは小春の親友2人(喪)の行動。小春が峯田くんとイイ感じだと知るや否や…
 

ハルキヨ2-3
これ


 イジメ漫画とかではないですから。マジで冗談でもやられたくない類いのそれ。基本的に周囲の視線を気にせず生きているので、こういうことも平気でやれるという恐ろしさが彼女達にはあります。他にも様々邪魔を仕掛けてくるわけですが、そのどれもがエグい。普通親友であれば、応援の一つや二つありそうなものですが、そんな構えは微塵もしないです。小春のことをただただ裏切り者とし、攻撃するという。この薄情さには、逆に清々しさを覚えるほど。素敵です。


〜心のカーテンをひらけ…!〜
 そして今回一番ビックリだったのが、小春の顔が明らかになるというところです。それは実際に2巻を読んでもらうとして…結構かわいいという。いや、個人的な感想でなく、作中での評価ですよ?
 
 ただ本人はそれに無自覚。ひたすらに顔を隠そうとします。話題が元に戻りますが、状況に心が追いついていないように映るというのは、本当にそうなのかもしれません。ヒロインにとって、前髪は心のカーテン。本当にカーテンに籠るのもそれが肥大化したゆえの行動で、いわばどれくらい相手に心を開いているかのバロメーターです。今回顔こそ見せたものの、すぐに元に戻してしまったわけですが、それが今の彼女の心の状態なのかなぁ、と。これがもっと打ち解けて好きになったら、もっと顔出しも増えるのではないでしょうか。だから、最後無理やりにでも峯田くんが顔を出させたのは、今後に向けての良い暗示だな、と思えたのでした。3巻にも期待です。

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