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2013.11.04
作品紹介→無口なおっとり美少女×無口で硬派なメガネ男子:森下suu「日々蝶々」
3巻レビュー→叶わぬ恋と知った時の心の中でのせめぎ合い:森下suu「日々蝶々」3巻
4巻レビュー→想いが加速する文化祭:森下suu「日々蝶々」4巻



1106318483.jpg森下suu「日々蝶々」(5)


好きな人が
私を
好き



■5巻発売しました。
 自分の好きな人が自分を好き   
 両想いだとわかったすいれんと川澄。とてもうれしいはずなのに、これからどうしていいか、どうしたいのかわからない。戸惑いながら、ふたりでつくる新しい関係。少しずつ、前に進む第5巻です。
 

〜両想いになってからの5巻〜
 「表紙の左側、誰?」←割りと本気で思ったこと。失礼しました、あやちゃんでした。
 
 4巻でついにお互いの想いを口にしたすいれんと川澄。思いの外早い段階で、両想いの関係へと相成りました。さてさて初心な二人は、どんな恋路を歩むのか、楽しみ…と思ってみたら、いやいやそもそも二人共に恋路を歩むのが、まず難しい。好き=付き合うとならないのが、この二人。はい、両想いになった二人ですが、直面するのはデートでも手をつなぐことでも、ましてやキスをすることでもなく、「付き合う」ことをはじめることでした。


〜付き合うってなんだろう〜
 「付き合う」って何なんでしょうね。この歳にもなれば自ずと結婚のための前準備的な捉え方になってくるのですが、川澄やすいれんぐらいの年頃では、そんな生々しいことは考えないわけで。また猿のような性欲を持っているうら若き男子たちであれば、好き放題やりたいことやれる権利を得たぐらいな下世話な感覚を持たないこともなかったり(ひどい)。自分の気持ちの整理をつけことすら必死な二人にとって、二人好きあって付き合うことなんて想像の範疇外。ふと「付き合うってなんですかね?」と川澄が問いてみれば…
 
 
日々蝶々5−1
ぽかーん


 いや確かに、難しい問題なのです。正直自分でも、付き合うってよくわからない感覚ですもの。この二人独特の時間はその後も流れ続けます。お互い急かさない、ゆっくりした性格。もちろん川澄にも焦りはあって、答えを出せない、ピンと来ない自分を「カッコ悪い」と言うわけですが、そんな彼もすいれんにとったら「カッコイイ」のです。捉え方によっては、“真剣に考えてくれている”でもあり、けれど一歩間違えたら“優柔不断”。
 
 

日々蝶々5−2
でもその後川澄が「付き合いたいとは思っている」と、付き合う意思表示はしっかりしてくれるので、ちゃーんと優柔不断な印象は回避しているという。彼らしさが存分に押し出された、良い演出、良い台詞だったと思います。


 結局1巻丸々使ってこの問題に対しての結論を出すわけですが、シチュエーションはすいれんを取り巻く環境があるからこそ成り立つものだなぁ、と。二人だけの秘め事としてではなく、皆がいる前での告白は“度胸試し”であり“お墨付き”であり“虫除け”と様々な面を持つイベントとして機能してきます。小春先輩がいなくなることで、やや落ち着きを取り戻してきていた物語の水面に、一石を投じることにもなり、今後の展開も楽しみになりました。


〜絶滅種が再発見〜
 そうそう、前の巻で完全にその存在を消された小春先輩ですが、なんと今回復活を果たしています…!「君に届け」のくるみちゃんとかもう登場しなくなって久しいのに、良かった良かった。
 

日々蝶々5−3
もう、何もしないけどね


 これ、作中での流れの中で出てきた自然な台詞なんですが、なんだか「もう登場しません」と暗に示しているような感じがして…。いや、完全に拗らせた見方なんですけれども。ともあれ再登場は、これ以降は厳しいかなぁ…。またいつか、出てくるときがあれば、弊ブログでは取り上げますとも…!


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Tag [続刊レビュー] 2013.09.08
作品紹介→陽気な幽霊と贈るアップテンポなラブコメディ:里中実華「まりんとゆうれい」1巻



1106298539.jpg里中実華「まりんとゆうれい」(3)


こんな私だって
好きでいるのは自由でしょ?



■3巻発売、完結しました。
 超霊媒体質でれいちゃんに憑かれているまりん。堀との初デートなのに、幽霊がらみで遅刻…。寝坊とごまかしたら、後日嘘だとばれちゃった…!!まりんの片想い、れいちゃんとの友情はどうなる??感動の最終巻!!
 

〜完結しました〜
 3巻で完結しました。集英社でちょいちょいある、2巻あたりでの完結ぐらいが収まりが良いかと思っていたのですが、なんと3巻まで続きましたよ!作者さんのあとがきを読むと、もっと短く終わる予定だったようなのですが、人気が出たためにここまで伸びたようです。うん、1巻2巻と面白くて、それも納得。そして3巻、当初予定よりも長期になったからといって間延びすることもなく、キレイに完結致しました。何気に、マーガレット作品としての一つの完成系を見たような気分でした(大げさか)。


〜実直でいることで幸運が訪れる〜
 物語の大きな壁として設定されたのは、霊媒体質の告白によって、そのことを受け入れてもらうというものでした。勇気をふりしぼって、まりんは堀くんに自分の体質のことを告白するわけですが、やはり受け入れてもらえませんでした。そりゃそうです。気になる相手とはいえ、いきなり「霊感体質」とか言われても「いや、電波少女…!?」なんてドン引いてしまうもの。そしてここからの誤解を解くためのアプローチが、ちょいと変わっていて印象的でした。
 
 信じない相手に対し、どう信じてもらうか。霊媒体質であるならば、霊と会話できることを前提に証明するというアプローチを取るのがセオリーかと思うのですが、まりんは決してそういうことはしませんでした。流れに任せるままで、自ら積極的に相手の懐には飛び込んでいかなかったんですよね。
 

まりんとゆうれい3
 そんな消極的な彼女に代わって、積極的に行ってくれたのは、彼女の親友であり、幽霊のれいちゃんであり…。そういえば、そもそも堀と仲良くなれたのも、れいちゃんの暴走があったからこそなんですよね。

 
 実直真面目で、自分のためではなく、誰かのために一生懸命行動するヒロイン。財布がなくなった件についても、彼女自身のためではなく、純粋に堀くんを思っていたからこその行動。そういった行動の積み重ねによって、周囲の信頼を得て、結果その人たちが自分のために行動してくれる。絵に描いたような、「情けは人のためならず」のお話です。実直真面目でいることが、やがて自分に巡ってくる。最近は自らの手で恋愛の結果を掴みに行くようなヒロインが多いと感じられる中で、ここまで周りに支えられながら成就まで行くヒロインというのは、割と珍しいような気もします。


〜非常に綺麗な構成でした〜
 さて、物語は斯くしてエンディングを迎えるわけですが、まとめ方も少女漫画の王道というべき終わり方で、個人的に非常に満足感が高かったです。からす嫌いでまとめるあたり、もちろんそれだけでつながりを連想させるものではあるのですが、実際そうかどうかはわかりません。見ためも、からすが嫌いという思考も、もしかしたられいに会いたいというまりんの想いがそうさせたのかもしれません。なにより、名前がそうさせている感もあります。なんて、ひねくれ者の私は思ってしまうわけですが、でも素直にそう信じていた方が幸せだし、夢がありますよね。

 ダレることなく、満足感は最後まで持続。インパクトは薄く、あまり話題にならない作品ですが、非常に良い作品だったと思います。面白かった!なんとなく、未だシリアス絵が安定しない感はありますが、デフォルメは安定。お話作りも上手ですし、次の作品が今から非常に楽しみです。

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2013.08.24
1106298541.jpg宮城理子「ミカド・ボーイ」(1)


は…
初接吻をしてしまった…



■昭和十二年四月。一人の少年が、この国の運命を左右するかもしれない大事件に巻き込まれようとしていた。事件は、本編の主人公・柴田英人の登校途中に起こった。美少女が何者かに襲われている場面に遭遇したのだ。正義感の強い英人少年の前に、再び現れる例の美少女。彼女を追い、英人は、とある雑居ビルに迷い込んでしまう。待ち構えていたのは「神田商会」と銘打った、いかにも怪しい会社であった。そこで英人少年は、「帝国少年諜報部」にスカウトされるのだが…。

 お久しぶりです。ぼちぼちレビューを再開していきます。さて、本日ご紹介するのは、宮城理子先生の「ミカド☆ボーイ」でございます。宮城先生と言えばドラマ化もされた「メイちゃんの執事」で有名ですが、「メイちゃん〜」は一区切りついたところで休載となっており(一応いつか再開するとは宣言されています)、本作は実質新連載となります。

 物語の舞台となるのは、昭和初期の日本。一般の家庭に育ちながら、成績優秀で運動神経も抜群であるため一般特待生として中学校に入学した柴田英人少年が、本作の主人公になります。物語の導入は、冒頭に書いてある通り(詳細に書かれすぎていてビビる)。非常に高い能力を持った少年が、何やら怪しげな組織に所属させられ、次々と降ってくる指令をこなしていくというお話。
 

ミカドボーイ
所属するのは、帝国少年諜報部。どこからか依頼される(のかそうじゃないのかもわからん)指令を受け、少年達が諜報員として動く。英人は“3号”。そしてこの少年が、“2号”。可愛い顔で、女装もお手のもの。正体不明で非常に食えないキャラクターです。こんな格好しちゃうあたり、割と自由というか、当時の時代設定は細かい所までは気にしない感じ。


 典型的な巻き込まれ型の物語。少々ぶっ飛んだ舞台設定といい、非常にマーガレットらしい作品ですね。謎の組織「帝国少年諜報部」というのは、恐らく結構重要な役割を担っている組織かと思われるのですが、1巻ではその全容は明らかにならず。ちなみになぜ少年かというと、学校組織に潜り込みやすいから。英人は中学校に通っているのですが、当時中学に通えるのはエリート中のエリートで、家柄の良い子供達がたくさん。要人の息子などもおり、割と身近な場所でミッションが発生したりするのです。そのため、学校と諜報という一見結びつかない二つが、上手いこと噛み合って物語が転がっていく。宮城先生の作品らしくテンポも非常に良いため、サクサクと楽しく読むことができます。
 
 リアリティなんてものは皆無なのですが、その分好きに舞台設定をして、キャラ設定をして、それらを好きに動かすことで、結果エンターテイメント性はマシマシ。正直全容が明かされていない上に設定もわりとゆるめに映るので、ストーリーなんてあってないようなものなのですが、それでも惹き付けられるのは、テンポの良さと散りばめられるネタの面白さによるものなのでしょうか。正直コメディという枠でもないし、ただただ純粋なエンターテイメントだとしか。この勢いがあれば、いつまでも転がせそうな気もします。

 中学生という年齢設定、またキャラ配置的に恋愛に転がりそうな感はないのですが、英人と銀(2号)とのショタBLネタ的なものがあり、ここは是非とも継続して欲しいところです。


【男性へのガイド】
→少年達が織り成すコメディなので、キャラ萌えできる女性の方がやはり。ショタ好きには割と需要があるのかも。
【感想まとめ】
→これを実績のない漫画家さんとかがやったら大けがするのだと思うのですが、紙一重で面白い作品に仕上っているというのは宮城先生の成せる業というところでしょうか。作品よりも、宮城先生の手腕に驚かされる一作でした。


作品DATA
■著者:宮城理子
■出版社:集英社
■レーベル:マーガレットコミックス
■掲載誌:マーガレット
■既刊1巻
■価格:400円+税


■購入する→Amazon

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Tag [続刊レビュー] 2013.07.23
作品紹介→無口なおっとり美少女×無口で硬派なメガネ男子:森下suu「日々蝶々」
3巻レビュー→叶わぬ恋と知った時の心の中でのせめぎ合い:森下suu「日々蝶々」3巻



1106288579.jpg森下suu「日々蝶々」(4)


私は
蝶々になりたい



■4巻発売しました。
 すいれんと川澄。2人だけの帰り道。少しずつ話もできるように…名前をよんでくれるだけで、幸せ。でも…。近づけば、近づくほどつのる想いに、すいれんは胸がはりさけそうです。
 

〜りょーすけに恋の風が吹かん事を〜
 4巻発売しました。なんだか表紙がとても爽やかじゃないですか。元々白が基調で好きな類いの表紙なのですが、今回は配色と良い全てが好みという。りょーすけが異様に爽やかに見えます。なんだよこの清々しい表情は。なんかちょっと素敵じゃないですか…。って実は今回、表紙だけじゃなくて、本編でも結構活躍してくれているんですよね、彼。二人が一緒に帰れるように気遣ったり、周りから冷やかされないように配慮したりと、この上ないほどに川澄をサポート。もっとりょーすけは評価されていい…。ちょっとぐらい恋の風を吹かせてあげたっていいじゃないですか。あるとしたら、何気に一緒に帰ったりょーすけと清水あやちゃんでしょうか。ほら、文化祭で早々にカレーを欲してる辺とか、結構気が合いそうですし!カレー好きな人は基本いい人だから、ほら付き合っちゃいなYO!(よくわからんテンション)


〜3イベントですがその配分が…〜
 さて、そんなカレー好きな二人のお膳立てにより、少しずつ距離を縮めていく二人。しかし相変わらずゆっくり!今回は文化祭というイベントを前提に、おおまかに3つのラブイベントがあったのですが、その配分がすごかった。まず一番最初、一緒に帰るというイベントが繰り返し繰り返しあり、4巻最初から実に100ページも費やすというゆっくりさ加減。もちろん日ごとに話題や置かれているシチュエーションは異なるわけですが、どちらかというと慌ただしくイベントが回っていくマーガレットにあって、一緒に帰るだけで100ページってちょっとすごいです。
 

日々蝶々4−1
 でも振り返ってみると、ちゃんと進展しているんですよね。出発点がそもそもちゃんと喋れないという、ものすごく低い地点からのスタートなので、「敬語禁止」からの「文化祭を一緒に回ろうと誘う」というゴールまでの高低差が結構輝かしい。よく頑張った!という感じです。


〜柴石さんにリードさせてしまうのは如何なものか〜
 そんなスローテンポでの進み具合だったので、この後もゆっくり進むのだろうかな、なんて思っていたら、その後に思わぬイベントが待っていたので、ちょっとびっくりでした。これは、すいれんの想いがだんだんと留められなくなってきているがゆえのことなのかもしれません。表情にも出つつありますが、普通の人よりもずっと表情が抑えられている彼女ですから、それが漏れるくらいって、相当な想いなはずですし。
 

日々蝶々4−2
 結果的にすいれんがリード、というか誘導する形になっているのですが、それって川澄くん、男としてどうなのよ、という思いも無きにしもあらず。とはいえ相手は学校で一番の美少女で、自分が彼女と恋愛なんてなかなか考えられないことなんでしょうね。“高嶺の花”として相手を見てしまうのは仕方のないことで、それが手の届く位置に来ても、どうしたって疑心暗鬼になってしまうというのは、なんとなくわかる気がします。ましてや恋愛に奥手で、きっと鈍感である彼であれば、なおさらのこと。好きだ嫌いだの感情はまだしも、こと告白については、スクールカーストには敏感にならざるを得ません。かつての少女漫画で度々見られた、憧れの先輩から私が告白されちゃってびっくり…的なシチュエーションに重ねて見ることもできるかもしれません。
 
 さあ、川澄としてはここからが男の見せ所ですよ!いわゆる一般人としての男ではなく、恋人としての男の見せ所です。基本的にはすいれんの希望を叶える形で物語は進んで行くと思われるのすが(すいれんは意外と色々希望が多そうに映ります)、そこでどう振る舞えるか。5巻では、色々と試されそうであります。


〜あらすじからも名前を消される小春先輩〜
 あ、あと予想通りでしたが、小春先輩の登場0でしたね。いやー、やっぱり消えるの早かったなぁ…。でも、あらすじぐらいにはいるかと思って見てみたら…


3巻あらすじ
ライバル・小春の出現で、“川澄のことが好き”と気づいたすいれんは…


4巻あらすじ
ライバルの出現で“川澄のことが好き”と気づいたすいれんは…


 うおおお名前削られてるうううう!これはもう、編集部も束になって小春先輩を消しにかかっていますよ!(超陰謀論)3巻の表紙を華麗に飾ったキャラクターが、次の巻では跡形も無くいなくなるという、北極の氷もびっくりの消失速度です。お役御免になったら、もう完全に放り出されるのでしょうか。「半沢直樹」(最近見てハマっているドラマ)ばりに世知辛い世界ですね。復帰の芽は薄いと思いますが、どこかでちょっとだけその姿を見せてくれたら、個人的には嬉しいものです。


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2013.06.03
作品紹介→みんな自分だけの流れ星を探してる。:やまもり三香「ひるなかの流星」1巻
2巻レビュー→片想いが重なる高一の夏:やまもり三香「ひるなかの流星」2巻
3巻レビュー→馬村くんが不憫すぎる件:やまもり三香「ひるなかの流星」3巻
4巻レビュー→元カノのフォローパスが決勝点に?:やまもり三香「ひるなかの流星」4巻
5巻レビュー→ひとつの恋の成就とひとつの恋の終わり:やまもり三香「ひるなかの流星」5巻
関連作品紹介→「シュガーズ」



1106276576.jpgやまもり三香「ひるなかの流星」(6)


だから
笑え



■6巻発売しました。
 獅子尾と想いが通じ合って、ドキドキしっぱなしのすずめ。キョリをもっと縮めてみたくていろいろ頑張りますが、うまくいったり、いかなかったり。しかも、馬村が何か気づいたみたい…?季節はもう、クリスマス。すずめは獅子尾を誘おうとして…。
 

〜クリスマスイベント〜
 さぁ、6巻発売です。なんかつい最近レビューをお届けした気がしますが(5巻レビューが5/11でした)、気にせず行きましょう。前回ついに獅子尾と想いが通じ合ったすずめ。正式に「付き合う」とは言っていないものの、互いに意識しつつ、時間は過ぎて行きます。そして訪れるのは、クリスマス。パーティでも、デートでも、一気に畳み掛けるチャンスが眼前に。しかし二人は教師と生徒、普段過ごしているフィールドは一緒でも、友達は違うし仕事も違う、そして何より人前で一緒には過ごすことができない。そう簡単に神様は先に進めてはくれません。そうなるとヒロインは、どうしても寂しさを募らせるものなのですが、そんな時に活躍するのがかませ犬。そう、今回は馬村がまたしても頑張ってくれました。


〜当て馬全開の馬村くん〜
 正直想いが通じた時点で緩やかにフェードアウトしてくんじゃないかなんて危惧していたのですが、そんなことはなかったです。かなり頑張って食らいついていますよ。もうね、フォローっぷりがすさまじい。普通だったらそのまま過ぎてしまうようなものだって、華麗にクビを突っ込んで慰めてくれるわけですよ。まずはすずめが獅子尾におにぎりを作ってくるも、渡せなかった時…
 

ひるなかの流星6−3
颯爽と表れ、自分が食べる


 もちろん彼女の作ったおにぎりを食べたかったってのもあったでしょうが、なにより放っておけなかったからこその行動。わざわざ探してくれていますから、素敵です。不格好なおにぎりに文句を言うのはご愛嬌。ここで甘くしないからこそ、甘ったるすぎず何度だって繰り返せる(個人的所感)。

 そしてなんと言っても一番の見せ場はクリスマスでした。今回もしっかりとすずめの悲しみの感情をアンテナで感じとって、自らが誘う形でクリスマスツリーを見に行くのでした。これももちろん一緒にクリスマスを過ごしたいってのもあt(以下略)。さらに彼女の悲しみの源泉(クリスマスを一緒に過ごせなかったこと以上に、誕生日を言えなかったこと)を引き出し…
 

ひるなかの流星6−2
自分のマフラーをプレゼント


 このシーンもそうですが、何よりその後の言葉と表情が素敵でした。赤面しながら「泣きそうな顔すんなよ。笑え。」と。本当に感動もひとしお。一瞬「ああ、これが馬村のハイライトになるのかも…」なんて想いがよぎったりもしましたが、それぐらい良かった(かませ犬として)。またかませ犬ポイント(何のポイントだろう)が高いのは、その後にすぐに背中を向けて立ち去った所とか。
 

ひるなかの流星6
さらに後日、余計なお世話で獅子尾に誕生日のヒントを与えて、さらに焚き付けてしまうという、無駄に親切な行動を取った所も、かませ犬ポイント高いですねー。

 
 誰よりもすずめのことを見ていて、誰よりもすずめのために行動しているのに、それでも想いは報われない。作者さんのコメントで「これは馬村くんの成長記ではありません…!!」なんて書かれていますが、もう成長記でいいじゃないですか。ダメなんですか?ダメですか…。


〜まだ可能性があると信じたい理由〜
 相も変わらず馬村に夢中、しかもかませ犬として夢中なわけですが、それでもまだどこかで、馬村ルートを信じている自分がいます。もう可能性なんて5%もないくらいなんですが、それでもまだ0じゃない理由をちょっと探ってみたいと思います。
 
①キスをしていない
 さて、恋人っぽい感じが満載であったすずめと獅子尾ですが、今回はまだ手をつないだだけ。キスは結局未遂で終わりました。少女漫画でファーストキスは結構重要で、想った相手とキスが出来たれば、まずその人と最後まで行きます(別フレではキスはおろか初体験の相手と結局ダメだったなんて例もありますが)。今回のキス未遂は、十中八九次へのお楽しみだとは思うのですが、6巻終了時点では、馬村にとっては首の皮一枚なんとかつながった状況。これでキスきちゃったら、もう完全に終了宣告ではありますが。


②都合良さげな女の子が登場していない
 さらにもう一つ、かませ犬には大抵都合良さげな脇役の女の子があてがわれるものなのですが、今のところその候補は登場していません。これまでであれば、ゆゆか様がその最右翼だったのですが、どうも土牛先輩との恋愛が発展していきそうな気配が濃厚に。今回、貧乏エピソードが飛び出し、なんとなく良い人というか、ちゃんとしてる人みたいな雰囲気が出来上がっています。そうすると、もう馬村の相手いないよねっていう。表れていない段階では、もうひたすらにすずめに想いを寄せるしかないわけで。ここでそれっぽい女の子が登場したら、またしても終了s(以下略)
 
 いや、もう9割9分獅子尾なんですけど、このままだと本当に馬村不憫という。その不憫さがゆえに愛らしいのですが、いつかどこかで、ちょっとだけ幸せになってくれれば、と。ただただそう願うばかりです、はい。


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かくかくしかじか
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王国の子
びっけ「王国の子」(1)
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小森羊仔「シリウスと繭」(1)
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トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
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レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
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レビュー
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