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Tag [新作レビュー] 2009.10.30
07228965.jpg星森ゆきも「彼は冷たいフリをして」


…どうしてかな
もう何言われても
冷たい人に思えないよ   



■姉のようなキラキラ女子になって、素敵な恋がしたい…。その軍資金稼ぎにと、ファミレスでバイトを始めた高校生の花帆。そこで出会ったのは、大学生のアルバイト・新。イケメンだけど無愛想な彼に第一印象は最悪だったけど、ある時ケガをさせてしまったことをきっかけに、同じシフトに入るように。やがて冷たい態度の間に、優しい一面が顔を覗かせることを知った花帆は、だんだんと新が気になるようになって…!?

 星森ゆきも先生のデビューコミックスです。いわゆる小学館のお試し連載というやつで、3話完結。バイト先で出会った大学生に恋をする女子高生を描いた、正統派ラブロマンスとなっています。ヒロインは、ごくごく普通の女子高生・花帆。キラキラで男にもモテモテの姉に憧れ、生まれかわる軍資金にとファミレスでバイトを始めます。そこで出会うのが、超冷たい態度を取るイケメン大学生・新。必要以上に突き放すような態度をとる新に、花帆は当然苦手意識を持ちますが、あろうことか彼をケガさせてしまい、責任を取るために同じシフトに入りサポートすることに。そこで懸命に働く花帆を見て、新は少しだけですが気遣いを見せるように。ただ冷たいだけかと思っていたら、優しい一面を覗かせる彼に、ヒロインは思わずドキン…という流れ。


彼は冷たいフリをして
なんというか、プラトニックというか、爽やかというか、青春を感じさせるというか…ありがちな少女漫画ではあるものの、それゆえに少コミでは一線を画すというか。


 少コミにしてはかなり大人しい作品になっています。ヒロインはごくごく普通のスペックで、恋愛にはどちらかというと奥手な印象。それに対し相手役の新も、夢を叶えるためにあえて女性を遠ざけている真面目君で、恋愛には慎重だったりします。そんな2人が主役であるため、なかなか話は動いてくれません。そこで物語をかき回す役目になるのが、ヒロインの姉。彼女の存在に焦ったヒロインが、結果として動かざるを得ないという状況をつくり、相手もそれに引っぱられるように…という展開が基本。しかしそれゆえに、どうもヒロインの姉が不自然というか、ウルサい存在になってしまったようにも。3話完結ということを考えると、どうしても急ぎ足にしなくてはならないのですが、長期連載でこそ活きそうなキャラだっただけにちょっと残念。
 
 同時収録の作品を見ても、大人しいというかプラトニックな匂いを感じる作品が多く、個人的には好きです。ただ少コミにそぐわない可能性もあるわけで、この辺どうなのだろうか。


【男性へのガイド】
→少コミの作品の中では、比較的読みやすい部類だとは思いますが、まぁ全体で見たときどうかと言われたら微妙なわけで。
【私的お薦め度:☆☆   】
→好印象なキャラ設定も、無理に物語に波を立ててる感じがしてもどかしい。だけどそうしないと「話に収まらない+読者受けが悪い」というダブルパンチなわけで、難しいところです。個人的には追いかけたい作家さんですね。


作品DATA
■著者:星森ゆきも
■出版社:小学館
■レーベル:Sho-Comi
■掲載誌:Sho-Comi('09年第15号~第17号)
■全1巻
■価格:400円+税

■購入する→Amazonbk1

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Tag [新作レビュー] 2009.10.27
07228963.jpg心あゆみ「危険地帯男子」(1)


こわいのか
やさしいのかわからないこの人に
どうしようもなく惹かれるの



■高校生になって3か月。恋のウワサの一つや二つあってもおかしくない年頃なのに、学校→スーパー→自宅の3カ所にだけ決められたように通う彩月は、そんな事とはとことん無縁。ごくごく平凡で、堅実な毎日を過ごしていた。ところがある日、危険な男子高「黒帝」と「白羽」の緩衝地帯にウッカリ入り込んでしまい、襲われそうになる。そんな大ピンチの彩月を助けてくれたのは、一人の見知らぬ男の子。怖いのか優しいのかわからない彼に、どうしようもなく惹かれる彩月だったけど、実は彼の正体は、不良校・黒帝のリーダーで…!?

 不良が集う危険な高校「黒帝」、そして軟派なインテリが揃うこれまた危険な「白羽」。その両校には、それぞれ「黒の王」「白の王」と呼ばれ君臨するリーダーが存在する。おっして偶然にも黒の王と出会い、恋に落ちてしまったヒロイン・彩月と、それを見て彩月に興味惹かれる白の王…。という感じのお話。簡単に言えば犬猿の仲の高校のリーダーに好かれてしまい、どうしようという三角関係ものです。とにもかくにも少コミの中二病的な側面を強く押し出したようなキャラ設定にストーリー。考える恋愛の対極としての“感じる恋愛”が少コミのスタイルだと思うのですが、これはまさにそんな感じる恋愛を極限まで特化したような作りになっています。


危険地帯男子
ヒロインはとにかく自分の気持ちに正直。このへんも少コミのヒロインスタンダードという感じ。


 まず驚くべきは、心あゆみ先生のデビュー時期。デビュー作掲載が、Sho-Comi増刊号の2008年12月15日号。デビューしてまだそれほど経っていないにもかかわらず、もう巻数付きの作品ですよ。Sho-Comiはサイクルが早いとはいえ、これは異例とも言える早さでは。人気があると言うことなのか、はたまた編集サイドが猛プッシュしているのか。とりあえずレギュラー定着は早そうですね。

 不良の黒の王と、インテリの白の王。その間で揺れる、ごく普通のヒロイン…という構図を狙っていると思うのですが、現時点では圧倒的に黒の王優勢。不良でかつ黒を謳っておきながら、その内面は実にピュア、ある意味ではステレオタイプな番長設定とも言えますが、なんだかんだでこういうキャラは好感が持てます(たぶん)。それに対し、白の王はその外面とはちがい、黒いものを内面に持っているという設定。それぞれのこのギャップに萌えろ、と。ただ白の王に関しては、まだまだ描写不足。対等な関係から、本当に好きな方を選び出すほうが俄然盛り上がると思うのですが、その辺は2巻にて描かれるのでしょう。しかしながらジェットコースターのような物語展開ですね。目まぐるしく人と心が動き回ります。それが持ち味とも言えなくもないですが、少々唐突すぎる気も。個人的に、今ひとつ物語展開が飲み込めないままに流れていってしまいました。たぶんこの辺は、詰め込みすぎや設定ミスというよりも、作者さんのスキル的な問題が大きいのかも。これからです。


【男性へのガイド】
→これは厳しいのではなかろうか。男性が嫌う少コミライクな物語をまさに体現しているわけで。
【私的お薦め度:☆    】
→感じる恋愛を地で行く少コミ作品はやっぱり苦手でして。物語に引き込む新しさや上手さもまだまだという感じが。


作品DATA
■著者:心あゆみ
■出版社:小学館
■レーベル:Sho-Comiフラワーコミックス
■掲載誌:Sho-Cimi('09年第13号~連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税

■購入する→Amazonbk1

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Tag [新作レビュー] 2009.10.01
07227359.jpg杉しっぽ「冷え性男子攻略法」


お前は今日から
俺様の専用カイロだ



■一見普通に見える女子・梓は、平熱が38℃という超高体温の持ち主。夏は地獄のアツさに苦しみ、冬はカイロ代わりに友達たちが群がる。そんな彼女に目をつけたのが、同じクラスの男子・本庄佐槻。彼は梓と正反対の、教室内でもコートにマフラーという超絶冷え性。「お前は今日から俺様の専用カイロだ」その日から、彼の専用カイロとしてベタベタ過ごす毎日。そして気がつけば…!?

 体温が低かったり高かったりすると、こんなにもベタベタ触ってもらえるのか…。いや、ないだろ。触ってもらえるといえば、野球をやっていた頃は坊主頭だったので、よく触られていた記憶があります…というどうでもいい世間話。さてこの作品ですが、杉しっぽ先生のデビューコミックスになります。ちなみに杉しっぽでひとつの名前で、姓はないそうです、はい。
 
 ヒロインは、平熱38℃(夏場は41℃)と、どう考えても変温動物な女の子・梓。そんな彼女がある日から、超絶冷え性の男子・佐槻の専用カイロになってしまうというところから、話は始まります。なんの交換条件もなしかよ…というツッコミもあるかもしれませんが、佐槻も梓にとっての冷えピタになるので、ある意味では抜群の相性。最初はそんな形で関係が始まりますが、気がつけばお互いに想いあっているという状況に。キライなのにくっついてなくちゃいけない…という想像通りの流れは1話で終わり。後半は怒濤のバカップル展開となります。


杉しっぽ「冷え性男子攻略法」
あぁ、バカップルだよ…という周りの視線があるため、鼻につかないのかも。


 佐槻は少コミ男子スタンダードな俺様キャラでございます。加えてヒロインも若干バカと、このカップリングはいわば食傷気味。しかしこの作品、思いのほか面白い。もしかしたら今年の少コミ作品で1番笑ったかも。体温が高い&低いというワンアイデアを上手く使っている上に、超絶バカップル展開ということで、もうどうにでもなれ、という感じが妙にツボで。クライマックスは当然少コミラブコメ的な部分なのですが、他にも見所的な部分があり、上手いことこってり感を取り除いたな、という。バカップルというか、バカというか…。でもこれが1巻以上続くと飽き飽き…というかイライラするんだろうなぁ。だからこそこれで終わらせたのは良かったかも。
 
 同時収録のお話も、同級生を宇宙人と勘違いする電波少女と、それを否定しないイタズラ少年のカップリングと、発走がヘンで面白いと思いました。ラブストーリーとしてはどうなのだろうと思いつつも、ぶっ飛び路線でいったらスゲー面白いかも、と思いました。次回作はどういう話でくるんでしょうね。ちょっと気になる。
 

【男性へのガイド】
→バカ漫画としてみれば読めるかも。基本は少コミのそれですが。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→さすがにオススメにはできないものの、個人的には十分楽しめました。いや、でもオススメはできないです、はい。


作品DATA
■著者:杉しっぽ
■出版社:小学館
■レーベル:Sho-comiフラワーコミックス
■掲載誌:sho-comi(2009年第3・4号合併号~第16号)
■全1巻
■価格:400円+税

■購入する→Amazonbk1

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Tag [新作レビュー] 2009.08.30
07225736.jpg車谷晴子「0から始めるまんが教室」


いますぐデビューできる秘訣
教えます!



■麗華はまんが家になることを夢見るお嬢様。そんな彼女には専属でまんがの描き方を教えてくれる執事・瀬場がいるのです。まんがの描き方を全く知らないのに、やけに高飛車な麗華にも、臆すること無く鞭を手にスパルタ指導!!瀬場の適切でありながらも厳しい指導を受け、無事まんが家になることができるのでしょうか!?

 車谷晴子先生の連載…というよりも、コーナーですかね。まんが家を目指す勝ち気なお嬢様・麗華と、そんな彼女にスパルタ指導を行うイケメン執事・瀬場とで贈る、漫画家を目指す読者へ向けた、基礎まんが講座となっています。全52回で、ペン選びやトーンの貼り方といった道具の知識に始まり、コマ割りや背景などの描写に関する技法や、キャラ配置にストーリー展開といった話作りに関する話題を経て、最終的には持ち込みや投稿の作法へと話は移っていきます。漫画家を目指す人たちに必要な事が全て描かれているので、まったく知識がない方はこれを活用するも良し、すでに投稿などを行っている方は、項目別になっているので、自分に足りない部分をピックアップする、チェックシート的な役割もこなせるかもしれません。


0から始めるまんが教室
この二人がメイン。テンポの良い夫婦漫才を見せてくれて、こちらだけでもなかなか楽しめる。ちなみに上のパーセンテージは、トーンの濃さ。


 私は絵心がないので、コレから先漫画を描くなんてことはまずないのですが、それでもこれを読んだことで、またひとつ漫画を読む際の楽しみ方が増えたかな、と。描き手的には当たり前の事なのかもしれないですが、描く事にあまり興味のない人間からすると、些細な事でも「おお!」と思う時があるのです。下絵には水色のシャー芯を使うとか、フキダシの配置とか…。それとデスノで話題になったりしていた「指が多い」ってミスは、案外頻発するみたいですね。
 
 大切な所は教えるものの、最終的には「努力あるのみ」というスタンスであるのには、感心したというかなんというか。読者からの質問コーナーの回答は、結構厳しいものも多く、やっぱりそう甘い世界ではないのだな、という雰囲気が伝わってきました。いや、厳しいのは知っているのだけど、10代半ばの子たちにそこまで言うか、と。まぁ少女漫画の場合、そのくらいの年齢でも十分「適齢期」に入っているってのもあるかもしれないですが。
 
 車谷先生はSAIを使ってらっしゃるみたいですね(カラーイラストのみで、普段はアナログ?)。プロはみんなフォトショを使っているのかと勝手に思っていたのですが、そうとも限らないのですね。そういえばろびこ先生もSAIだってブログに書いていたし、SAIの方がむしろ主流なのでしょうか?あ、コミスタとかもあるのか…。


■作者他作品レビュー
車谷晴子「ぜんぶちょーだい」


【男性へのガイド】
→漫画家を目指している方、漫画家の仕事に興味がある方には良いのかも。それとストーリーはあまりないけれど、イイ感じの夫婦漫才が出来上がっているので、そういう話は好きな方にもオススメです。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→車谷先生のキャラは基本好きです。高飛車お嬢様キャラがなんとも。あと漫画家は目指さんけど、どういう風に仕事してるのか知りたいって人には丁度良いかもしれないですね。おおまかな知識を、500円でおつりくるぐらいで知れるわけですから(通常のフラワーコミックスより60円ほどお高いですけど)。


作品DATA
■著者:車谷晴子
■出版社:小学館
■レーベル:Sho-Comiフラワーコミックススペシャル
■掲載誌:Sho-Comi('07年第12号~’09年第18号)
■全1巻
■価格:457円+税

■購入する→Amazonbk1

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Tag [新作レビュー] 2009.08.27
07225726.jpg白石ユキ「となりの恋がたき」(1)



俺を選んで



■茜には、女友達がひとりもいない。その原因は、幼なじみにある。一夜とヒロ、物心ついた頃からずっと一緒に過ごしてきた二人は、気がつけば誰もが振り返るようなイケメンに。そんな二人は茜にべったりなものだから、それをやっかんで女子たちが目の敵にしてくるのだった。それでも三人でいれば幸せだった。ところがその幸せも、突然崩れさってしまった。一夜からの、突然の告白。それにつられるように、ヒロまでも…。三人の想いが絡まる、トライアングルラブ開幕!!

 白石ユキ先生初の巻数付きコミックスです。表紙を見たとき、緑を基調とした落ち着いた雰囲気に、「ベツコミかな?」なんて一瞬思ったのですが、少コミ連載なのですね、意外でした。さて、どんなお話かと言いますと、ヒロインを、幼なじみのイケメン二人が奪い合うという、ただそれだけ。基本的に少女マンガは説明しやすい設定が多いのですが、その言葉以上にシンプルです。ただ余計な設定をしていない分、メインキャラ三人を自由にのびのびと行動させることが出来てます。ずっと前から茜のことを想っていた二人の間では、関係を壊さないために「茜には告白しない」という約束が結ばれていました。ところが我慢が効かなくなった一夜(黒髪の方)が思わず茜に告白。そこからなし崩し的にヒロも想いを打ち明け、気がつけば茜争奪戦の様相を呈してきます。そんな二人を目の当たりにし、とまどう茜。彼女の願いは、ずっと三人でいることなのですが、二人はそれを許してくれません。


となりの恋がたき
ホームルームだか全校集会だかでの一幕。まさかの展開に度肝を抜かれました。いいぞ、もっとやれ。このあと二人はヒロインにキツくお灸を据えられます。


 なんとなく既視感のある設定(多分、春田なな「スターダスト★ウインク」)だったのですが、幼なじみふたりがここまで暴走する話もそうはあるまい。もうこうなったらトコトン突っ走ってもらいたいですね。ただその際、ちょっと気になる点が。それが、幼なじみ二人のキャラクター。当初は、一夜→つい突っ走ってしまうところのある静かに熱い真面目男、ヒロ→女性の扱いに長け遊び人を装っているが、人一倍幼なじみを気遣い、三人のバランスを上手いこととれるオトナ…みたいな位置づけだったと思うのですが、告白以降はなぜか二人とも「茜に向かってダッシュだ!」という感じの直情型暴走キャラに。足並みを揃える必要はない…というか、キャラに差があったほうがストーリー的な広がりを持たせることが出来ると思うのですが。そうなった時点で1巻は終了。恐らくこれから修正してくるとは思いますが、一抹の不安がつきまとうのも事実。キャラの個性を生かした応酬と、イイ感じでアクセントになっている沙央の活躍に期待しつつという感じでしょうか。


【男性へのガイド】
→向かないと思いますよ。
【私的お薦め度:☆☆   】
→これといった目新しさはなかったので。絵がスゴくキレイなので、ついついヒロインにイレ込みそうになりましたけど…よし、私も参戦するか。


作品DATA
■著者:白石ユキ
■出版社:小学館
■レーベル:Sho-Comiフラワーコミックス
■掲載誌:Sho-Comi('09年第8号~連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税

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