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Tag [新作レビュー] 2013.07.31
1106299006.jpgわたなべ志穂「童貞教師のふまじめな日常」(1)


先生の童貞
あたしがちゃんともらってあげるからね



■桐島慶一郎、26歳、生物教師。ニックネームは“氷の桐島”。校内で接吻、および性行為などという風紀の乱れは全く以て許しがたく、厳罰を以て処すべきなのであ……わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!広瀬!!やめなさい!!校内で…そんな…いかがわしい…っ!!!っちょっっベルトに手をかけるのはやめなさいっっっっっ!!!!初めてなのですから!!!!!!桐島慶一郎、26歳、童貞教師。経験豊富なJKからのアプローチを拒みきれるのか!?

 なんだこの紹介文(のっけからツッコミ)。Cheese!って「僕達は知ってしまった」の裏表紙の謎ポエムとか、裏表紙が全体的にフリーダム過ぎてビビります。ちなみにエントリータイトルの「桐島、童貞捨てるってよ」は帯より拝借致しました。もう悪ふざけが過ぎますね(褒め言葉)。Cheese!らしい、節操のなさが素敵です。
 
 さて、本作ですが、童貞教師が経験豊富な女子高生からあれやこれやとアプローチを受けて、慌てたり抗ったり流されたりするというラブコメディでございます。主人公は、学校で生徒指導も担当する生物教師・桐島慶一郎。その無表情さ・厳しさから、生徒達から“氷の桐島”と呼ばれている彼ですが、実は女性経験がなく、生徒に近寄られたり触れられたりすると、途端に赤面してしまうという一面が(そのため人一倍冷たくしてバリアを張っている)。そんな一面を、ひょんなことから生徒である広瀬和奏に知られてしまい、そんな彼に興味を持った和奏は、あれこれとアプローチをしはじめるのですが…というお話。


童貞教師のふまじめな日常
 高校までは男子校、大学で恋愛に期待を抱くものの、経験のなさと理系ならではの鈍感さで尽く失敗、結果現在まで童貞。女性は苦手ではあるものの、女性には興味があるという草食系。どちらかというとチャンスを逸していた人なので、据え膳は、場合によっては食えてしまうタイプ。そのため生徒からのアプローチに対しても、怒濤のパワープレイでゴリゴリ押し込まれて、ついつい失点…というわけで、1話目で早々にカップル成立してしまいます。もちろんお互いに、お互いの魅力を認め合っての成立ですから、性欲先行ではございません(念のため)。
 

 本作はタイトル通り“童貞”であることが肝になるので、カップル成立しても、あくまでキス止まり(元々は「嘘つきジキルとハイド」というタイトルだったみたいなので、結果論かも…)。一線(エッチ)を越えないレベルで、ギリギリのラインを狙ってのエロネタを数多く投入してきます。そのためけっこうキスとかもねちっこい感じだったり。この辺はCheese!の得意とする所でしょう。同じレーベルでも肉体関係の軽々ラインを超えてしまう作品が多い中、その手前で工夫を重ねて見せるその意気や良し。
 

童貞教師のふまじめな日常1-2
暴走するヒロイン、守る童貞。ヒロイン・和奏がコミカルに場をかきまわしてくれるので、常にアップテンポで楽しい雰囲気で物語は進んでいきます。


 なんて、ここまでで、なんだかエロネタばっかりかと思われるかもしれませんが、エロネタ多めとはいえしっかりと学園ラブコメしております。主人公が非常に弄りやすいキャラであるのもそうなのですが、何よりヒロイン・和奏が魅力的。基本的には好意を前面に押し出して甘えてくるタイプなのですが、変な所我慢して一歩引いたりする場面があったりと、「良い性格」が前面に出たキャラクター。単にコミカルだけでなく、シリアスで締めるところはビシッと決めると言いますか。個人的にはこういう子はドンピシャでして(笑)
 
 上記の通り、和奏がコミカルとシリアスで緩急を使い分けることが出来るキャラのため、物語が一本調子にならず、メリハリが利いています。それに加え、生徒と教師という力関係の中に、童貞という恋愛でのウィークポイントが投入されることで、場面に応じて互いの力関係が入れ違いに。この使い分けが上手いのか、一見出落ちっぽい設定でありながら、全く飽きの来ない内容となっています。


【男性へのガイド】
→Cheese!ですから、アレルギーある方はちょいとハードル高いかも。ただ同レーベル比ではクセ無く読みやすい作品だと思います。
【感想まとめ】
→個人的にはヒロインに持って行かれた感あるのですが。やるやらないでイチャイチャモヤモヤするコメディ、ということで割と楽な気持ちで読めるスタンダードな恋愛ものだと思います。こういう設定、お好きな方は是非。


作品DATA
■著者:わたなべ志穂
■出版社:小学館
■レーベル:Cheese!フラワーコミックス
■掲載誌:Cheese!
■既刊1巻
■価格:429円+税


■購入する→Amazon

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Tag [新作レビュー] 2012.12.14
1106218135.jpg高宮智「殉血LOVERS」(1)


…いいですよ
血 吸っても



■今は昔…吸血鬼たちが人間を養殖する恐るべき学園が存在した!その学園の生徒会メンバーは全員吸血鬼で、自分達の食糧となる人間を増やすために男女をくっつけるイベントばかりを開催。色気もかわいげも、そして恋する気もない彩華にとっては、本当にツライ学園で…!?高宮智が贈る、ファンタジック・ラブコメ!!

 高宮智先生の新作でございます。描くのは吸血鬼ものということで、お得意のファンタジー作品です。舞台となるのは、吸血鬼が運営する学園。この世界の吸血鬼はとあるアレルギーの蔓延によって、RH−(マイナス)の血しか飲めなくなってしまっています。食糧源の枯渇を危惧した吸血鬼たちは、RH−の人間を養殖する方向へと方針転換。ヒロイン・彩華は、そんな養殖されているRH−の血液型の持ち主で、吸血鬼が運営する学園に通っている生徒の一人です。養殖と言っても、人工授精云々といった技術はなく、自然に生殖させる方針。というわけで、普通の学校とは思えないようなラブイベントの数々が企画されています。寮の部屋ももちろん男女相部屋…。けれども彩華は恋愛には一切興味ナシで…というお話。
 

殉血LOVERS
高宮作品っぽい女の子は、ヒロインよりもむしろ脇役の生徒会役員(843歳)だったりします。彼女がもっと登場してきてくれないだろうか。いいツッコミ役になりそうなんですが。


 RH-同士の両親からは、100%の確率でRH−が生まれるんですね。ちょっと遺伝学は疎くて、勉強になりました。養殖というのも、至極納得でございます。とはいえ本作は「養殖」という言葉から受ける印象は皆無で、吸血鬼と人間が対等に共存しているようなイメージ。吸血鬼は人間に快適な居住空間を提供する代わりに、生殖と輸血をお願いし、日々の食糧を確保しているという。そして吸血鬼と人間も割と仲良しな感じございます。その筆頭となるのが、生徒会長の壱花。なぜか彩華のことが大好きな彼は、人間同士の恋愛を推奨しなければいけない立場のハズが、むしろそれの逆を行き、彩華に積極アタック。そして意思の弱い彩華もそれに流されがち…という。
 
 表紙を見ればわかるように、本作は3角関係で物語が進んで行きます。相手役の一人は、先にもご紹介しました生徒会長の壱夏。そしてもう一人が、寮で同室の葵。壱夏はどちらかというとお調子者の軽い感じのキャラ。一方の葵は勉強出来そうな感じの無気力ドS。二人とも正反対の性格で、読者の好みにしっかりとシフトさせてきております。
 
 序盤はどちらかというと壱夏との絡みが殆どで、葵はあまり登場してきません。基本的に空気に流されやすくアホっぽい壱夏と、これまた冷静な判断ができず空気に流されやすいヒロイン・彩華という組み合わせであるため、巻き込まれるトラブルも割とアホっぽいというか。自業自得じゃないか、と思わざるをえないフワフワした感じ。高宮智先生ならではの設定・ストーリー展開での破綻の懸念はないものの、場をピシっと締まった空気にしてくれるツッコミ役の葵の早期参入が期待される所です。今のところどちらに倒れるかはわからないものの、個人的にはアホ生徒会長の方が好みでしょうか。


【男性へのガイド】
→吸血鬼ラブコメって、女性が好む王道ジャンルなのですが、男性ものではあまり見ない気が。またヒロインの萌えっぷりがそこまでではなく、高宮作品として見た時に、他作品よりも男性への訴求力は弱いかもしれません。
【感想まとめ】
→王道設定に熟れた物語展開ということで、安心して見ていられる作品。あとはキャラの魅力をどれだけ引き出せるかだと思うのですが、そこは2巻で期待でしょうか。


■作者他作品紹介
狼耳の凸凹コンビが、学園中を駆け回る!:高宮智「フルムーン ジョーカー」
ちゅちゅでの最後の作品を収録した、高宮智ファンには堪らない一冊:高宮智「S×M」
高宮智「ソラオト」
高宮智「わたしのおくすり」
高宮智「今宵音降る空の下」
高宮智「HEAVEN’SWILL」
女装男子は勘違い美少女の下僕志願:高宮智「かんちがい姫と嘘つき僕」


作品DATA
■著者:高宮智
■出版社:小学館
■レーベル:フラワーコミックスCheese!
■掲載誌:Cheese!
■既刊1巻
■価格:400円+税


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Tag [新作レビュー] 2012.09.20
1106176740.jpg藤原よしこ「ピンクのしっぽ」(1)


胸の鼓動は
完全にアウトだわ



■高校生の実穂は、超ド田舎・みみずく町で毎日楽しく過ごしている。そんなある日、東京からの転校生・結弦がやってきた。端正な顔立ちの彼に心ときめく実穂だったが、ヤツの本性は「虫嫌い」「動物嫌い」「女嫌い」の嫌なヤツ!せっかくみみずく町のステキなところを教えてあげようと思ったのに、結弦はそれを拒否!こんな彼との恋…あり得る!?ありえない!?

 「恋したがりのブルー」(→レビュー)、「だから恋とよばないで」(→レビュー)などを描かれた藤原よしこ先生の新作でございます。いつもいつもピュアで切ない恋愛模様を描く藤原先生ですが、今回もそのようなお話になるのでしょうか。それでは物語をご紹介しましょう。
 
 今度のお話の舞台となるのは、超のつくド田舎・みみずく町。ヒロインは、この町で生まれ育った高校生・実穂。田舎なりに穏やかに楽しく毎日暮らしていた実穂ですが、ある日東京から転校生がやってきたことで、彼女の毎日は少しずつ変わっていきます。みみずく町にはまずいないような、端正で洗練された顔立ちのその美少年の名前は、結弦。目の前の美少年に浮かれて、町のことを自慢げに紹介した実穂ですが、結弦は不機嫌。しかも余計な一言まで添えて、みみずく町のことを否定してきたのです。好きで転校してきたわけでなく、東京に未練ありあり…この町に馴染もうともしない…。そんな結弦に腹を立てる実穂ですが、狭いこの町、何かと一緒になって…というお話。


ピンクのしっぽ
田植えでもちゃんとキマる都会っ子。基本風景は田舎情緒溢れるもので、なんだか長閑で素朴。表紙とか、良い感じでしょう?軽トラの荷台とか懐かしい(管理人は長野県出身)


 田舎に都会っ子が転校してくるという、ある種の王道パターン。なんだかとっても捻くれた性格の彼に、最初は不快感を覚えるけれど、いつも一緒に居ることで、だんだんとステキな面が見えてきて…というのも王道。まさに王道中の王道と言えるストーリーなのですが、藤原先生はそういった王道展開でもしっかりと活きるキャラとお話作りをしてくるから、ご安心を。今回も元気一杯で素直なピュアヒロインでございます。そんな彼女の素直さ・単純さに相手役も心を開き、段々と素直に…なっていくはず。今はまだ東京に未練を残しており、素直になりきれていない感じですが、まぁそんな最初から変わっちゃったら面白くないですし。
 
 キャラクターはそれぞれ立っていて物語も面白いのですが、正直説明した以上の設定・シチュエーションって一切ないんですよね。あまりに特徴的でないというか。例えば相手役に何か後ろ暗い背景や出自があるとか、きっとあるんじゃないかとか思うのですが、今のところそれもなし。一つ特徴的なことがあるとすれば、ヒロインが豚を飼っているとか、そのくらいでしょうか。ある意味清々しいとも言えるのですが、本音を言うと、もうちょっとスパイスがあればもっと美味しく頂けそうかなぁ、と。もちろん田舎という舞台背景に裏打ちされた素朴な雰囲気や、ヒロインが元々持っているピュアさが醸し出す澄んだ感じは抜群で、終始にこやかに物語を楽しむことができます。そういった雰囲気がお好きな方、やたらと都会的で尖った物語が苦手な方に、オススメです。


【男性へのガイド】
→オーソドックスな少女漫画というかんじで、敢えて男性にオススメする強みもないのですが、ピュアである分とっつきやすさはあるかと思います。
【感想まとめ】
→正直1巻ではまだ全体見えないのでオススメするか迷うところです。本領は2巻から?とはいえ、藤原先生の作品が好きなら迷わず買うべきだし、恋愛メインの少女マンガがお好きな方も買って後悔はないはずですよ。


作品DATA
■著者:藤原よしこ
■出版社:小学館
■レーベル:Cheese!フラワーコミックス
■掲載誌:Cheese!
■既刊1巻
■価格:400円+税


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Tag [続刊レビュー] 2012.03.11
作品紹介→宮坂香帆「僕達は知ってしまった」
7巻レビュー→魅力再考…したかった《続刊レビュー》宮坂香帆「僕達は知ってしまった」
8巻レビュー→兄貴に全部持ってかれた《続刊レビュー》「僕達は知ってしまった」8巻
9巻レビュー→ダレルるかと思ったら、予想外に面白かったです:宮坂香帆「僕達は知ってしまった」9巻
10巻レビュー→まさにバカップルである:宮坂香帆「僕達は知ってしまった」10巻
11巻レビュー→私のコンロに火をつけて:宮坂香帆「僕達は知ってしまった」11巻
12巻レビュー→ありえない変貌を遂げつつある少女漫画のとあるヒーロー:宮坂香帆「僕達は知ってしまった」12巻




1106102363.jpg宮坂香帆「僕達は知ってしまった」(13)



オレはおまえだから
したいんじゃんか



■13巻発売しました。
 少しずつ雪斗へのスキンシップを頑張っていたことりは、雪斗の想いに少しでも応えようと、ついに、文化祭が終わったらHという約束を交わす。一方ナツメと雪斗の兄・雅弥が最悪の出会いをして…。だんだんと迫る文化祭。。。けれどもことりの気持ちは未だに整理がつかず…!?


~初Hのタイミングを計る1巻~
 13巻発売です。いよいよ迫る文化祭。普通であればここが一番の盛り上がりイベントとなる所なのですが、この二人の場合は文化祭はひとつのタイミングでしかありません。文化祭で何をするかではなく、文化祭の後に何をするか…ひいては、文化祭のあと何時するか…。そう、初Hのタイミングを計っているのです。こういうのってお互いに雰囲気で感じつつ流れで…ってイメージなのですが、こちらは「するから!したいから!」と事前通告するというちょっとバカっぽい清々しさ。そして13巻は、そのネタのみでずっと引っぱるという、素晴らしい展開を見せてくれました。ほんとこの話平和だなー。


~わりとがっついてます~
 さて、二人が(というか雪斗が)狙いを定めたのは、学園祭のあと。「俺、この学園祭が終わったら初Hするんだ…(フラグ)」と言えるほどまでに、何か学園祭でするわけではないのですが、何か良いポイントがないと踏ん切りがつかないのもまた事実。というわけで、雪斗は文化祭のあと、どのタイミングで仕掛けるかに頭を使うことになります(勉強しろ)。そんな彼のノート(ノートに書くなよ)を見てみると…
 
 

僕達は知ってしまった13-1
文化祭の2日後まで待てない感じ


 一体どのようなスケジュールなのかはわかりませんが、文化祭直後すら視野に入っている模様。若さあふれるスケジュールですな!それと「文化祭の後Hするにはいつがベストか」という表題やめてくれ(笑)結局悩んで3日後で落ち着きそうになったのですが、なんだかんだで答えは出ず。そう、やっぱりことりの都合もありますしね。そしてもう一つ、頭になかった勘案事項が…
 
 
僕達は知ってしまった13-2
Hする場所がない


 これは盲点。お互い実家暮らし。ことりの家は家族がいるし、雪斗の家も親がいないとはいえ、兄が家を死守しています。結果友達の家とかまで視野に入ってくるのですが、それで良いのか。大切な初めてを、友達の家で。しかも初めてなんだから血が出て汚しちゃう可能性だってあります。これもまた、計画練り直し…。高校生の初エッチまでの道のりは、長く遠いのです(マジで雪斗の体感ものすごく長そう)。


~名プロデューサーナツメ~
 しかしそんな雪斗に思わぬ追い風が。二人の友達であるナツメが、気を利かせて二人を自分の部屋に呼び出し二人っきりのシチュエーションを作るのでした。しかもことりは学園祭のコスプレで着替えていた途中で、服がはだけて半裸状態。これは十代男子としては耐えられない状況。。。あれ、ちょっと待ってください、ことりの格好がナツメプロデュースであるのはもちろんですが、雪斗の今の姿もナツメによってプロデュースされたものです。そう、あのドキメモのヒカルをイメージしたもの。その二人が抱き合って…
 
 
 
僕達は知ってしまった13-3
あー、これは完全にコスチュームプレイですねぇ



 二人の格好にくわえて、場所までプロデュースしてしまおうとするナツメさん。やっぱりあなたが一番食えないやつですわ。でもこの二人のことですから、きっと未遂で終わるんだろうなぁ。もう1巻くらいこのネタで引っぱってくれたら、馬鹿馬鹿しすぎて本当に心から尊敬します(笑)こういうネタを面白可笑しく描けるのって、Cheese!ならではだと思いますし。14巻の二人の様子も、見逃せないものになりそうです。


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Tag [続刊レビュー] 2011.12.20
作品紹介→…先生、はじめてキスしたのっていつ?:藤原よしこ「だから恋とよばないで」1巻
2巻レビュー→こんなに近くにいて、絶対に届かない:藤原よしこ「だから恋とよばないで」2巻
3巻レビュー→先生のこと 好きでいても…いいですか?:藤原よしこ「だから恋とよばないで」3巻
4巻レビュー→頭ポンポン安定です!:藤原よしこ「だから恋とよばないで」4巻
関連作品レビュー→やっぱり私は、どうしようもなくこの作品が好きなのだ《続刊レビュー》「恋したがりのブルー」6巻




1106090061.jpg藤原よしこ「だから恋とよばないで 」(5)


先生なんか
先生なんか
あたしに恋しか教えてくれなかった



■5巻発売、完結しました。
 自分との出来事がきっかけとなり、先生が学校を辞めると知り、ショックを受ける心。自己嫌悪や悲しみでぐちゃぐちゃの心を救ってくれたのは、先生ではなく不破くんだった。「つらければオレを利用しなよ」と言う不破くんの言葉に、心は先生への想いを押し込めて不破くんと付き合うことに決める…。そして、先生がいなくなる日がいよいよ近づき…
 

~やっぱ好きやねん~
 完結です。もうどんな展開だろうと、どんな結末だろうと感動してしまうので、「ああ、やっぱ自分藤原先生の作品大好きなんだな」と改めて実感したというか。5巻にて完結と、思いのほか早めの完結となりましたが、今回もベタに、とにかく切なく泣かせてくれました。


~不破くんがかわいく切ない~
 辞表を出した先生の意思は固く、食い下がってもその決意を変えることはありませんでした。お互いにどこまでも想い合っているのに、ぎくしゃくしたままに、心は不破くんと付き合うことに。一番はもちろん先生なのですが、不破くんもまたとても良い人なので、その状況を悪い風には思えないんですよね。「オレを利用しなよ」という、精一杯の不破くんの言葉が、彼の持つ誠実さであるとか真面目さ、優しさが滲み出しているようで、本当に素敵でした。不破くんって基本真面目で優しいので、その後も強引にいってみたり、悪者ぶってみたりするわけですがどこか違和感というか、無理している感が伝わってきて、すごくかわいいんですよね。最終巻ということで、少し切なさをはらんだその彼の行動にもまた、少し切なくなりました。


~ピュアさが成り立たせる切なさ~
 藤原よしこ先生の作品の登場人物はみな優しく良い人なのですが、特にヒロインは純粋さと素直さが際立っていて、非常に心惹かれる子たちが多いです。この心もまた同じく、どこまでもバカ正直で、素直で純粋で。特にこのモノローグなどは印象的で…
 
 
た#12441;から恋とよは#12441;ないて#12441;5-1
先生最初からやりなおしたい
そうしたら迷惑かけないように気をつけるから
先生を好きになったりしないように気をつけるから
だけどそんなこときっと無理
何回やりなおしたってあたし
恋におちてしまう


 一歩間違えたら爆死しかねないフレーズなのに、先生に対しての生徒という“幼さ”と、頑にこの恋心を信じることができる“純粋さ”が、切ないモノローグへと昇華させている感じ。全然違和感なく、素直に読んで切なかったです。ベッタベタのクサすぎる台詞ではあるのですが、彼女がとびきり純粋であるために、普通に成り立っちゃうところがすごいな、と。この他にも、たくさんのこういった台詞が登場するのですが、どれも消化不良にならずにスッと入っていくんですよね。この感覚がすごい好きなんですよ。ある種ファンタジーの世界にどっぷり浸かっているような。


~兄の存在と、兄の言葉~
 別れ間際の中盤は、とにかく切なさの連続。このまま切ない山を乗り切って、感動のパートへと走って行くかと思いきや、直前に先生が事故で意識不明の重体になるという大ヤマが待っていました。最初こうなったとき「えええええええええ!?要る?この盛り上げ要る!?」なんて思ったのですが、その後の展開を見て納得。あの一件は、兄の呪縛からの解放という大事な過程を経るために描かれたんですね。
 
 元々教師になったのも、恋愛にどこか臆病になったのも、亡き兄の存在がきっかけ。意志を継ぐように教師となった先生は、今もなお兄の墓に足を運びあれこれと兄に向かって語りかけていました。今回も教師をやめた折、兄のお墓へと赴いて自分の弱さを訥々と語っていました…
 

た#12441;から恋とよは#12441;ないて#12441;5-2
オレってちっとも成長してないんだな
ガキの頃から
(中略)
なんか言ってよ
バカとか言ってよ 兄キ


 語っても語っても、何か言葉が返ってくるわけでもなく。兄を追いかけてはみたけれど、教師はもうやめてしまった。じゃあ次は?心が弱っているため、孤独感が一層募り、この先どこに行ったら良いのかという空虚感もあり。そんな中、二度と会えないと思っていた兄と、意識不明の中の夢の中で再会。そこで改めて先生は、自分の大切なものに気づき戻ろうとするのですが、そんな彼に対して兄は…
 
 
た#12441;から恋とよは#12441;ないて#12441;5-3
道を指し示してくれた


 自ら決断した上で、道を指し示してくれる兄。これが例えば、そのまま勝手に先生が戻っていったとしてら、どこか「兄との決別」的な感があったりするのかもしれませんが、これだと両方取ってなお良し。それに何より、「言ってよ」とリクエストしていた「バカ」がちゃんと描かれてるのが、本当に抜け目ないというか、とにかく素晴らしい。兄の言葉で何が一番良かったかって、個人的にはダントツでこの「ばーか」ですよ。これが一番先生の欲しかった言葉だと勝手に思っているので、最後に言ってくれた…と自分まで救われた気持ちになりました。


~次回作にも期待です~
 ともあれ素敵に終わった本作。最後はどうなることかと思いましたが、物語としてはしっかりとまとまったと思っています。ベタなピュアで切ない恋を堪能できる藤原よしこ作品の良さが、今回もよく出ていたなぁ、と。次の連載作は既に決まっているようで、こちらも今から楽しみです。何度藤原よしこ先生の作品に出会っても、きっと夢中になる、、、なんて、ちょっと心の台詞を使ってみたり。


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かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。