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Tag [続刊レビュー] 2013.05.30
関連作品紹介→*新作レビュー* トジツキハジメ「俺と彼女と先生の話」
シリーズ第二弾!人ならぬ者の世界への入り口へ…:トジツキハジメ「僕と彼女と先輩の話」



1106259553.jpgトジツキハジメ「俺と彼等と彼女の話」


クレイジーだわ


■シリーズ完結です。
 いまどきの平凡なフリーター・高橋、見えざるものが見える女子高生の小町、怪異の知識に長けた兄のニールと霊感体質の妹・イライザ。四人に降りかかる、この世に残されたねじれた想いが引き起す怪事件…。そして起こるはずのない奇妙な出来事に興味を持つことは、終わらない運命の始まりだった……。


〜シリーズ完結です〜
 シリーズ3作目にして、完結致しました。続きがある的なことは書かれていたのですが、本当にこうして描かれて、そして完結を迎えるとは。1作目は先生と小町と高橋の3人を中心にした、現代のお話。2作目は先生の学生時代を描いたお話。そして今回は、再び現代に戻ってのお話となりました。3作目を始めるにあたり、新キャラが投入されます。それが、ブロンド髪のイギリス人兄妹・ニールとイライザ。
 

僕と彼等と彼女の話
兄は知識豊富な秋葉系。妹は奔放な女子高生で、小町の数少ないお友達。


 和風ホラーにブロンド外国人ってのは、いかにもミスマッチではありますが、どこか仄暗い雰囲気漂う本作において、良いアクセントになっておりました。あとイライザ、小町と見ためで良い対比になっていて、結構良かったです。性格はちょっと似てるけど。



〜意外と怖い〜
 クライマックスということで、これまでの2作を総括するような、大きな流れのある内容になっているのかと思いきや、各話それぞれが独立していて、大きな物語ははっきりとは見えてきませんでした。とはいえ相変わらず、怖いというか、不気味です。個人的にイヤだったのは2話ですかね。山奥の廃村に引き込まれて、抜け出せなくなり殺されそうになるっていうエピソード。
 
 
僕と彼等と彼女の話2
別に驚かせよう的な仕掛けはないのですが、ぬらりと背後に忍びよっているような感じが、苦手。
 

 てか面白いのは、みんなお化けに慣れているようで、やっぱり全然慣れていないし、怖いと思っていること。高橋筆頭にみんな叫びまくり。小町も叫ぶし焦るし、イライザもやっぱり怖がる。この辺が、「まだみんなこっちサイドにいるんだ」という安心感を引き起すと言いますか。小町が妖怪退治するときも、異能を持つヒーローというよりは、勇敢な少女というラインにいる感じで、親しみやすさがありました。


〜小林冥沙の件を回収する〜
 さて、これまでの流れから、ということであれば、一つの伏線が今回しっかりと回収されました。2作目、「僕と彼女と先輩の話」で行方不明となった先輩・中村が、帰ってくるまで待つと宣言した、小林冥沙。2巻の描きおろしでは、先生の家を訪ねて来る小林さんの姿が描かれておりました。その時は先生が先生が不在でそのまま引き返してしまうのですが、お盆の百奇譚にて再登場。そしてそこに、行方をくらましていた中村も姿を現します。小林さんも先生も、年月相応に歳をとった容姿をしていますが、中村だけはあの頃から変わっていません。そして、最後の話をし終わり、中村は小林さんに問いかけます。一緒に来るか、と。そして小林さんは…
 

俺と彼等と彼女の話3
ついて行く


 正直小林さんの中村に対する想いがそこまで強いとは思っていませんでした。もちろんそれは、2作目本編での印象。その後、再び先生の家を訪れた時点で、この結果は見えていましたが、ものすごく強い愛情でなければこの選択はできないでしょう。だって話の中で、中村は自らが死んでいることを明らかにしていて、ついて行って辿り着く先は容易に想像できるのですから。ある種の心中とでもいいますか、もちろん生前の中村に、そんな意思があったのかはわかりませんけれども。
  
 1作目で死者をこの世につなぎ止めようとしていた先生が、こうして今回は迷っていた死者を送り出したというのは、このシリーズの中でも大きな意味を持っていたのではないかと感じたのでした。その後、なんとなく時間は流れ、最終話に。ぶっちゃけ1話目で終わっても、別に納得いった感はありました(笑)


〜物語の終わりは意外と静かに〜
 何か大きな謎や力によって、さらに物語は深みに…なんて結末になるかと思っていたのですが、終わりは意外と静かなものでした。シリーズとしては完結しましたが、これからもあの家は引き継がれ続け、物語は続いて行くのでしょう。最後、金髪の二人での締めくくりってのが、なんともシュールでミスマッチ感に溢れていたのですが、ああいったキャラが締めくくるからこそ、後腐れなく終わることができるんでしょう。これといった伏線も張ることなく、落ち着く所に落ち着きました。1冊目から何年経ったかわかりませんが、最後まで楽しく読むことができました!


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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2013.05.28
1106280601.jpgみもり「お陽様の下のルナ」


陽向と一緒なら
私は輝き続けるから



■生まれつき強大な魔力を持つ「魔法使い」と、半獣で魔法使いを正しい道へ導く「ガイド」、その中でただひとり魔力を持たない女の子・ルナは幼なじみの魔法使い・陽向のガイドになりたくて魔法学園に入学したけれど…!?ファンタジックでキュートなみもりワールドをご堪能あれ!!

 みもり先生が描く、マジカルトラブル青春ファンタジーです。描かれるのは、魔法使いがいる世界。花森町は、生まれながらにして強大な魔力を持つ「魔法使い」そして半獣で魔法使いのサポートをする「ガイド」が住んでいます。ヒロインのルナは、ガイドの子どもに生まれながら、魔力を持たないただの人間。それでも幼なじみの魔法使いである陽向のガイドになることを夢見て、魔法学校に通っているのでした。ここ最近の一番の話題は、ほうきに乗ってレースをする青空レース。ルナは、陽向を誘ってレースに出ようとするのですが、当の陽向はそれを頑なに拒否して…というお話。
 
 
お陽様の下のルナ
 魔法使いが住む世界の、魔法学校に通う普通の女の子のお話。実にファンタジックで可愛らしい内容になっています。イメージ的にはハリー・ポッターとか、低年齢向けのファンタジー作品が近いかもしれません。ほうきレースもあったような…ってそれはクィディッチか。


 ほうきレースのルールは、魔法使いとガイドが二人一組で参加すること。優勝すると一目置かれるだけでなく、「レースで優勝すると生涯良きパートナーであり続ける」なんて伝説があるものだから、普段人間だとバカにされていて、また陽向のガイドになりたいルナとしては、何としても出場して優勝したいレースなのです。陽向が気の弱い幼なじみだということで、強気にエントリーを迫るルナですが、陽向はそれを頑なに拒否。そんな所に、ルナを誘いに、闇属性で前回優勝者のロンが現れるのですが、ルナはもちろん拒否。ロンとルナ、二人のあの手この手の誘いの手が、思わぬトラブルを呼び込んでいき、物語は転がっていきます。
 
 基本的には可愛いトラブル、そして爽やかな解決法、微笑ましい一件落着と、全編に渡って健全で、かつかわいくてかわいくて。悪そうに見える闇属性の二人も、実は誤解を受けやすいだけの良い子達で、登場人物には基本的に悪者はいません。そういう意味でも、精神衛生に良く、読み終った後とっても幸せで清々しい気持ちになりました。ウイングスは時折こういう低年齢も行けるような作品が掲載されるのですが、良いですね。本作も普通に子どもに読ませてあげたい(子どもいないけど)。


お陽様の下のルナ1−2
 全4話収録されているうち、2話がルナと陽向のお話。そして残り2話では、序盤悪者っぽく描かれた闇属性の二人のお話が描かれます。特にロンのお話は微笑ましくて良かったです。おじさんのロックもそうですが、ロンの一族は基本的に寂しがりやなんですかね。心ではとても友達、仲間が欲しいと思っていても、先入観と不器用さからなかなか上手くいきません。とっても笑えるのですが、少しの切なさもあって、ついついロンびいきになってしまいました。あと猫がかわいかったです。


【男性へのガイド】
→男女というか、年齢でしょうか。かわいらしいお話がお好きであれば、問題なくいけると思います。
【感想まとめ】
→小さな子ども達がメインのお話で、とっても可愛らしくて微笑ましかった。こういうお話をたまに読むと、こう良い感じで癒されます。おすすめで。


作品DATA
■著者:みもり
■出版社:新書館
■レーベル:ウイングスコミックス
■掲載誌:ウイングス
■全1巻
■価格:590円+税


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Tag [新作レビュー] [読み切り/短編] 2013.02.27
1106250094.jpgささだあすか「ささだあすか短篇集 きらきらのなつ」


私も大好き!


■それは小学6年生の夏休み…。
 ある事情で田舎の祖母の家に越してきた、口下手で引っ込み思案な女の子・すず。一人留守番をする古めかしい家は何かがいるようで居辛くて、外に飛び出し出会ったのは、同じ学年のひなた。ひなたと友達になり、やがて新しい場所での学校生活がはじまる…。少女達の成長をやさしく描いた表題作のほか、新旧掲載作や描き下しまで収録。ファン待望の、ほっこり短編集…
 
 ささだあすか先生の短編集でございます。レーベルがWingsコミックスになっているので今回レビューするのですが、実は収録されている作品はWings掲載作は一つもなしだったりします。4タイトルが収録されているうち2タイトルはピュア百合アンソロジーの「ひらり、」に掲載。また残りの2タイトルはLaLaDXに2006年に掲載されたものになります。元々白泉社で活動されていた(今もしてる?)先生なので、LaLaDXの作品が収録されているみたいですね。また「ひらり、」に掲載されていた2タイトルについては、今回の単行本でそれぞれ1話ずつ描きおろしが収録されています。
 
 それでは収録作品を少しずつご紹介しましょう。まずは表題作にもなっている「きらきらのなつ」と、その続編の「ぽかぽかのふゆ」。あらすじは冒頭にご紹介したとおりですが、引っ込み思案な女の子が、田舎に越してきて友達と友情を育んでいくというお話。人付き合いが苦手な内気な女の子が、自分とは正反対の性格の持ち主である女の子と出会い、徐々に自分の世界を拡げていきます。まぁとにかく悪い人が出てこない爽やかで温かいお話で、低年齢向けの媒体に載っていても違和感のないような内容です。


きらきらのなつ1
ひらり、連載ということもあって、百合的なアレンジはあるものの、基本的には友情物語でございます。
 

 続いてもひらり、連載の「しのびのいろは」。こちらは平々凡々な女子高生に、なぜか同い年の忍がつくというショートコメディ。それ以上でもそれ以下でもないのでこれ以上説明しづらいのですが、こちらも毒のないコメディで、例えば「りぼん」だとか「マーガレット」なんかのコメディ・ギャグ枠で連載されていても違和感なさそうな作品です。絵柄もどちらかというと集英社の香りが…
 
 ラスト2作「自転車ブルー!!」と「星空☆ファクトリー」は共にLaLaDXに掲載されていた作品。掲載時期が2006年ということもあり、先の2作とは絵柄がちょっと異なっています。言うなればシャープな線形と言いますか。「自転車ブルー!!」は、“出来る女子”が唯一できない自転車を後輩の男子に教えてもらうというもの。物語の導入は恋愛ではあるのですが、恋愛における駆け引き的なものはなく、気持ちの整理という部分に重きが置かれたこれまた爽やかな作品。また「星空☆ファクトリー」も恋愛を軸に進められるものの、着地点は疑似家族的な温かな所で、こちらも恋愛物語として一口には括れないようなお話でした。


きらきらのなつ
ちょっと変わる絵柄。個人的には「自転車ブルー!!」が好みでした。青春ならではの爽やかさに溢れていて、読み心地が良かったです。

 
 振り返ってみると、どの物語も恋愛色が薄い上に、悪意を持った人物が登場しない優しい物語ばかり。テーマも友情、成長、家族愛…みたいなものが多く、小さいお子さんにも読ませても大丈夫そうな、安心感のある作品になっております。


【男性へのガイド】
→低年齢向け少女漫画的なお話。女子同士の友情ということでムズ痒い部分もあるかもしれませんが、拒絶反応示すような要素はなく、普通に読めるんじゃないかと思いますー。
【感想まとめ】
→どこか懐かしさを感じるような作品でした。短編集ということでまとまりはないですが、どれも共通して温かさや爽やかさがある内容で、読んでいて良い気持ちになれました。


作品DATA
■著者:ささだあすか
■出版社:新書館
■レーベル:ウィングスコミックス
■掲載誌:ひらり、LaLaDX
■全1巻
■価格:800円+税


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Tag [続刊レビュー] 2012.12.22
作品紹介→*新作レビュー*雨隠ギド「まぼろしにふれてよ」
2巻レビュー→転校生がツンツンかわいい:雨隠ギド「まぼろしにふれてよ」2巻



1106223914.jpg雨隠ギド「まぼろしにふれてよ」(3)


ふれられるのを待ってる


■3巻発売、完結しました。
 狸筆の正体は、幼いひとこをかばってくれた狸だった。どうしてモノってこんなにけなげなんだろうね…。初めて過去と向き合ったひとこは、からかさ様に託された傘に名前を付け、心のままに愛してみようと決める。ところがその直後くろが消え、真加村も姿を消してしまう。ひとりになったひとこの前に現れた、テンコウセイの驚きの正体とは…!?


〜完結です〜
 3巻で完結しました。コツコツと巻数を重ねて、ようやく完結した感覚なのですが、まだたった3巻なんですよね。ウイングスコミックスってどうしても刊行ペースが遅くて歯がゆいイメージがあるのですが、この作品も例に漏れずでございました…。好きなんですが、さすがにこれだけ間が空くと、内容を忘れていたりするんですよね。なお2巻で覚えていたことは、タヌキのお嬢さんがツンツンかわいかったってことぐらいです(ひどい)。あ、あと「テンコウセイに気をつけて」ですね!


〜テンコウセイの正体〜
 そのテンコウセイですが、「転校生」ではなく「天狐星」ということでした。そして3巻、早々にその「天狐星」の正体が明らかになりました。天狐星であったのは…
 
 
まぼろしにふれてよ3−1
先生


 …誰?いや、すみません。割とガチで忘れていたので1巻から読み直してみたら、いやいや随所で驚くほど怪しげに描かれているではないですか。ポジションは顧問の先生というものでありながら、クロの親戚と紹介していたり、野原で寝屋としているような感じもあり…。全くの無警戒だったことが恥ずかしい。しかもテンコウセイというワードは、1巻の第2話で既に登場しており、この物語が最初からこの結末を狙って描かれていたものだと、容易に想像が付きます。こうして時間をかけつつも、あるべき所に落ちた物語をこうして読むことができるというのは、やっぱり幸せなことですよね。3巻まとめて読んでみたら、きっとまた違った発見とかがありそうで、今度の年末時間のある時に、是非ともじっくり読み返して見たいと思いました。
 
 
〜モノは使ってこそ〜
 さて、そんな計画的というか、割と一貫して描かれた物語であった本作ですが、そのメッセージは至ってシンプルなものでした。まず象徴的に描かれるのは、人間が使っている「モノ」と人間の関係性なわけですが、それについては明確に作者さん自身の考え方のようなものが描かれていました
 
 
まぼろしにふれてよ3−2
モノは使い込んで、壊すまで使い切る


 モノにとっては、使われることこそが、人間と関係する唯一の手段なのです。だから人間は、遠慮して使わずにおくのではなく、使って使って壊れるまで使ってあげるのが良い、と。
 
 ただ本作で描きたかったのは、「モノをちゃんと使いましょう」なんて教科書的なマナーメッセージではなくて、もっと人間の感情的な部分に迫るもののような気がします。モノと人間の関係で浮き彫りになるのは、「モノは使うべき」というところよりもむしろ、「使われないモノは孤独で寂しい」という部分ではないでしょうか。つまるところ、関係を持たなくちゃ意味がないし、寂しいし、悲しいし、切ない…というような。その結果生まれた孤独の象徴というのが、他でもない「天狐星」だったんじゃなかろうか、と。孤独を抱えたテンコウセイは、その孤独さをこじらせて、結果的に「世界をいじくる」という形でこの世の中と関わりを持とうとしたのでした。ただ最終的に、テンコウセイは孤独ではありませんでした。小手先の関係性ではなく、根源的に何かとつながるという意味では、彼にかけられた呪いそのものが、まさに母である狐との関係性そのものなのです。真加村との一連のエピドードもそうですよね。この「モノと人間」というわかりやすい関係から領域を拡げ、だんだんと関係性というものが輪郭をなくし概念的になっていくという拡げ方が、とにかく上手い。シンプルで、だけど心の奥深い所に触れてくるような、そんな感覚。関係を持つことを本作では「ふれる」という言葉で表しています。ちょうど作品タイトルに帰結するんですよね。完結したこのタイミングで改めて、「まぼろしにふれてよ」オススメします。


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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2012.12.09
1106213315.jpg御手洗直子「31歳BLマンガ家が婚活するとこうなる」


あー婚活かー
めんどくせえ事になったなー



■漫画家の直子(31歳・腐女子)。「将来の話がしたい」と彼氏に呼び出されるも、待っていたのはプロポーズではなく別れの言葉。突如として「31歳彼氏なし結婚予定なし」に降格した彼女は、一発発起して始めた婚活。モテるプロフィール作りとは?顔写真をフォトショップで加工?男性からの1日300通のメール?直子は理想の伴侶と出会えるのか!?愛と涙の実録婚活体験記!!

 以前よりネットで話題になっていたので、この度手に取ってみました「31歳BLマンガ家が婚活するとこうなる」のご紹介です。本作、pixivに掲載されており、閲覧回数累計200万オーバーとのこと。この数字がpixiv基準ですごいのかはよくわからないのですが、この度書籍化と相成りました。元々のタイトルは「31歳同人女が婚活するとこうなる」になります。
 
 こちら体験記ということで、もちろん物語の主人公は作者の御手洗直子先生です。三度の飯よりホモが好きという彼女が、31歳にして6年付き合った相手にフラれるという憂き目に遭い、一発発起して婚活に挑戦。元々結婚願望が強かったため、独り身になった時の焦りは尋常でなかったようで、検索でトップに表示された婚活サイトにすぐに登録します。しかし結婚したい想いはあっても、婚活にかかるのはそりゃあもうたくさんの手間手間手間。まずはプロフィール登録で挫折。アップする写真をフォトショでなんとか加工し、クリアしたと思ったら、次は自己紹介文で挫折。ホモ好きであることを隠し、あることないこと書き連ねてみます。そして今度はお相手探しで挫折…出口の見えない婚活ループから、どう抜け出せば良いのか。婚活に登場する様々な人々へのツッコミを交えつつ、面白可笑しく婚活体験を描いて行きます。


31歳マンガ家が婚活するとこうなる
BLを趣味・生業にしていると、プロフィールすらえらいことに。これをひた隠して、婚活に臨みます。


 私も結婚とか将来とかを考えなくてはならない年頃になってきました。会社で仲の良かった同年代の同期や先輩達も、段々と結婚への焦りを訴えるようになってきました。我々世代だとまだ出会いは合コンなどが中心になりそうですが、31歳でガチで結婚を考えるともなると、そんな悠長なことも言ってられず、自ずと婚活のフィールドはネットでの出会いになるようです。そういえば私の上司も34歳でネットで出会って結婚したなぁ…。しかしサクッと出会えないのが辛い所。結婚したいのであれば、まずはちゃんとプロフィールを登録し、相手を選んでいかなくてはならないのですね。作者さんも、即座に婚活サイトに登録し、活動をしたようです。
 
 体験談ものって結構そこかしこにあるジャンルではあるのですが、個人的に読んでいて好きなのは、徹底した自虐よりも、徹底したツッコミ至上主義といいますか。ツッコミ上手であればあるほど個人的には面白いと感じます。その点、この作者さんは自分に対しても、他人に対してもツッコミが上手い。目の付けどころがそもそも面白いのかもしれないですが、好奇心旺盛に相手を観察し、即座に突っ込んで行きます。特に年収2000万クラスの面々へのツッコミは、多少の悪意にまみれていて面白かったです。一方外国人からの翻訳機変換日本語へのツッコミは愛で溢れていました。てか婚活サイトって普通に海外の方がいらっしゃるというのに驚きですよ。本人が渦中にいるにも関わらず、どこか一歩引いた目線から楽しんでいる感じが作品から伝わってくるため、変に気落ちすることもなく笑いながら読むことができますよ。
 
 BL漫画家の婚活とありますが、そこまでBL作家としてのエピソードが出てくるわけではなく、位置付けとしては「オタク女子ないし腐女子が婚活する」という感じでしょうか。要するにどこか隠したいというか、後ろめたい趣味(この場合職業ですが)を持っていて、かつ出不精という二重苦。それらを乗り越えて結婚相手に巡り会えるかというのは、何も女性に限った話ではなく、結婚願望のある男性のも通ずるものがあるかと思います。とはいえやっぱりBLは婚活障壁においては最右翼の趣味であるような気もしますな。


31歳BLマンガ家が婚活するとこうなる
年収1000万クラス、2000万クラスのイケメンも結構いるみたいです。ただそれだけのスペックを持ちながら、婚活サイトにいるということは、そりゃあ難があるからなわけで。そして基本的には女性の売り手市場っぽいです。1000万クラスからも当たり前のように声をかけられるという。


 本作は体験ものではありますが、“1年以内”に“結婚相手を見つける”という明確な時間と質両面での目標があるため、達成されるにせよ未達であるにせよ、ちゃんと答えが出る形になっています。そのためお話としてもちゃんと完結していて、1冊で読んだ時の満足感というか、達成感はそれなり。個人的には最後の最後で出てきたオマケエピソードというかイラストが良いオチになっていたな、と。というわけで、婚活に興味のある方もない方も、面白いので是非読んでもらいたい一作でございます。肩肘張らず、脱力して楽しく読むことができると思いますよ!


【男性へのガイド】
→BL漫画家というところがハードル高くなってるかもしれませんが、結局ひた隠したい趣味があるというだけのお話ですので、その辺はオタク男性だってわかるでしょう?と。
【感想まとめ】
→面白かったです。もしこの先婚活することがあったら、これくらいの楽しむ気持ちを持って臨んでみたいものです。


作品DATA
■著者:御手洗直子
■出版社:祥伝社
■レーベル:ウイングスコミックス
■掲載誌:pixiv
■全1巻
■価格:850円+税


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かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。
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