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Tag [新作レビュー] 2013.03.07
1106247049.jpg中てい「LLLL」


叶うなら私は
彼のランプになりたかった



■「ランプを持たずに暗がりに行ってはいけない。暗闇の精霊に魂を取られてしまうから」。
 そんな言い伝えがある「ランプ街」にやって来た少女・オレガノ。ランプ屋で働く兄から強く言い聞かせられたものの、好奇心から暗闇でランプを消してしまう。そこで出会ったのは、暗闇の精霊・レイヴン。その場で命は取られなかったものの、それ以来レイヴンに懐かれてしまい…!?

 中てい先生のデビュー単行本です。本作が初コミックス、初連載と、初物づくし。それではあらすじをご紹介しましょう。物語の舞台は、住民みんながランプを持って街に出歩く「ランプ街」。そんな不思議な場所にやって来たのは、たった一人の肉親である兄がランプ屋で働いているという女の子・オレガノ。「ランプを持たずに暗がりに出てはいけない」そんな兄の忠告も聞かず、恐いもの見たさに暗がりでランプを消した所、遭遇したのは暗闇の精霊。暗闇の精霊は人間の魂を抜き取ってしまうのですが、オレガノの前に現れた精霊は、不思議な力に跳ね返され、魂を抜き取るのに失敗。しかしそれが彼・レイヴンの興味を惹いたのか、以来オレガノについて回るようになってしまい…というお話。


LLLL.jpg
おっちょこちょいで慌てん坊なオレガノと、マイペースなレイヴン。オレガノはレイヴンに対して敬語というところも萌えポイント高し。


 好奇心たっぷりのランプ屋見習いと、気まぐれな暗闇の精霊との心の交流を描いたファンタジー作品です。この街で「ランプ」とは、ただの明かりを現すのではなく、命を抜き取る暗闇の精霊を防ぐ道具としての役割があります。ランプを持っている以上、暗闇の精霊は現れません。一方の暗闇の精霊は、人の魂を源とするランプを持たなくては行きてはいけません。お互いに生きるため、ランプを持つのです。
 
 普通であれば自分の魂を狙う者とは一緒にいたくありません。けれどもオレガノは人一倍好奇心旺盛で、またあまり恐怖心がないような向こう見ず(バカ)な女の子であるため、レイヴンを側に置くことに反発はあまりありません。またレイヴンも、とにかく魂が欲しいという感じではなく、ランプなしでもとりあえず大丈夫というスタンスを取るため、お互い不思議な関係に。そんな中、いつしか互いに感情が芽生え始める…という定番の展開。とにかくメインの二人が緩いというか淡々としているので、狙い狙われているという感はあまりないという。それが売りであり、どこか温かく安心感のある雰囲気を作り出している源泉となっているのでしょう。あとちょっとおバカなオレガノちゃんかわいいです。
 
 アヴァルスやゼロサムといった媒体のデビュー単行本って、割と分かり辛くてこだわりすぎた内容が多いイメージなのですが、本作はベーシックな物語展開に加えて、絵も尖りすぎずで、非常に親しみやすい内容でした。背景もしっかりしていて、設定はしっかりと地に足ついていた印象。今後の作品も楽しみですね。


【男性へのガイド】
→レイヴンがオタク女子向け作品の相手役の典型という感じの風貌ではあるのですが、鼻につく感じはなく、受け入れやすさはあるのかも。オレガノもかわいいし、物語も人を選ぶような内容ではありません。
【感想まとめ】
→安心感と温かみのある親しみやすいお話でした。まとめ方は不思議さが残るものでしたが、枠内にしっかりと収まり、キャラも可愛い。うん、満足満足。


作品DATA
■著者:中てい
■出版社:マッグガーデン
■レーベル:avarus
■掲載誌:アヴァルス
■全1巻
■価格:571円+税


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Tag [続刊レビュー] 2013.03.03
作品紹介→フェチが過ぎて可愛い子がよだれダラダラ流しちゃったり:亜樹新「フェティッシュベリー」1巻
2巻レビュー→変態大集合が一変、切ない青春物語に:亜樹新「フェティッシュベリー」2巻
3巻&4巻レビュー→なんて自業自得すぎる展開…!:亜樹新「フェティッシュベリー」4巻




1106247047.jpg亜樹新「フェティッシュベリー」(5)


触れたい
って思うのはフェチだからなのかな?



■5巻発売、完結しました。
 水原ひよりが理想とする、数多あるフェチパーツを全て兼ね備える俺様なクラスメイト・成田。成田には今でも忘れられない女性がいることを知って傷つくひよりに、幼なじみの貴臣が長年のひよりへの恋心を告げて来たけれど…。多角関係の恋の行方は   ?それぞれの想いが交錯して混線中のフェティッシュラブコメ、感動の最終巻です。
 
 
〜完結しました〜
 5巻発売で完結しました。段々と物語の結末へ向かって進んでいっている感じはありましたが、正直もう2〜3巻は少なくとも続くだろうと思っていたので、このタイミングでの完結はかなり驚きました。打ち切りか?なんて思いもしましたが、作者さんのブログを見た限りではそうではないみたいですね。完結すべくして、完結したのだと思います。


〜怒濤の告白ラッシュ〜
 さて、4巻まで巻を重ねて来たわけですが、ここまで正式に告白をした人の数、ゼロ!!…というわけで、5巻はこれでもかという程に、怒濤の告白ラッシュとなっています。想いを告げられないままに、自分の心の奥底に押し込んで前に進むという選択肢もあるかと思うのですが、しっかりと皆に告白の場を用意してくれました。物語全体のバランスなんて関係ない。各キャラがしっかりと答えを出すためには、やっぱり告白が不可欠だったようです。
 
 まず先陣を切ったのは、4巻で既に告白の匂いを漂わせていた貴臣。なんと彼、2回も告白したんです…!こういういかにもかませ犬って感じのキャラの告白は、私にとってこの上ないご褒美なんですが、それが2回もあったということで、大満足でした。そして貴臣の告白で一番素敵だったのが…
 
 
フェティッシュベリー5−1
同い年の幼なじみなのに敬語で、精一杯


 これは萌える。何気にみんな敬語だったりするのですが、貴臣が最も“らしい”といいますか。ポイントを良くわかっていらっしゃいます。さすがです。

 この後、トワコに浅雛さんも続き、最後にひよりと成田です。それぞれの告白の顛末は、見てからのお楽しみということで…。どれも告白する側、される側、どちらを取っても良いシーンでした。


〜一番切なかった浅雛さん〜
 4巻でかなり自業自得な展開に陥った浅雛さんですが、5巻もひよりの告白を食い止めようとするなど、思わず邪魔してしまうシーンが見られました。ひよりは成田に行こうとしていたのですが、それを止めるというのが少々不思議で。単純に貴臣のことが好きで付き合いたいのであれば、ライバルが他の人に向くのはむしろ歓迎すべき事なはずです。けれども彼女は、それを食い止めようとしました。その心が明らかになるのは、その少し後…
 

フェティッシュベリー5−2
何よりも、大好きな貴臣の笑顔を守りたかった


 彼のことが好きだから、彼の気持ちが自分に向いていないということは重々承知しています。そして、彼が誰を好きでいるかということも。4巻の時点では、自分の欲望を抑えられないでいて、かつそのために周りを抑制しようとする子なのかな、なんて思っていたのですが、何よりも貴臣の笑顔を最優先していた、という。彼の告白を止めようという時点で彼想いなのかはよくわかりませんが、それでも自分そっちのけで彼の笑顔が一番というスタンス、嫌いじゃないです。けれども抑えきれない周囲の人物たちの動きに引っぱられるように、彼女自身もまた自分の想いをぶつけることになるのでした。
 
 そして想いを伝えるも、撃沈。けれどもそれは、貴臣にとっては確かに意味のあるものとなりました。
 

フェティッシュベリー5−3
自分だけのものだったその気持ちを
誰かが見つける
叶わなくても
それはそこにちゃんと存在していた

 
 5巻で一番印象的だったのはこのシーンなんですよね。叶わなかった想いも、誰かがそれを知っていれば、それはそこにちゃんと存在していたことになる。ふられた人の想いを、全肯定するようなこの言葉に、なんだかすごく勇気づけられました。自分の中にはあまりなかった感覚なので。しかし浅雛さん、この言葉に照らし合わせると、貴臣の想いを記憶しておく=肯定するだけの存在ということになりかねないわけで、ここまで頑張ってちょっと不憫だなぁ、なんて思ったり。その後、何か進展があるのですが、そこは何も描かれず、心の中で思い描くことにしましょう。


〜死んだライバルがいる時のジレンマ〜
 さて、最後にひよりと成田です。この二人の間に横たわっていたのは、前回スポットが当たった成田の過去の想い人。既に亡くなっている彼女の存在をどう乗り越えて行くかという所がポイントとなっていたわけですが、あれだけの匂わせがあったにも関わらず、5巻では割とあっさりと乗り越えてしまいまいした。
 
 このライバルが亡くなっているシチュエーションというのは、結構悩ましいものなんですよね。いない相手と戦わなくてはいけないしんどさというか。ライバルが存在している場合は、恋愛戦線において明確な勝ち負けが「付き合う/付き合わない」といった結果として出るので、非常にわかりやすいのですが、相手が亡くなっている場合はその軍配を上げることができないという。勝負分けというよりは、あくまで残された側の人たちによる「納得感」での勝負になってきてしまうんですよね。例えば「僕等がいた」はそれととことん戦った作品なのですが、やっぱり長引けば長引く程重たくなるわけで。本作はどちらかというとポップな作風ですし、お互いのトラウマと悩みはしっかりとお互いに補い合う形を作ることができました。手短かな展開ではあったものの、割と納得感のある結末だったように思います。
 

〜新連載〜
 既にアヴァルスでは、亜樹新先生の新連載が始まっているようです。「ぼくのとなりに暗黒破壊神がいます。」というタイトルらしいのですが、なんだかとってもラノベっぽいというか。割とそういうノリの強い作風の亜樹新先生ですから、この作品も期待です。


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Tag [新作レビュー] [読み切り/短編] 2013.01.25
1106229117.jpg幸田真希「梅酒」


私の幸福は
梅の香りと
共にある



■読切り5編を収録。それでは表題作をご紹介。
 所在なく夜の町に佇む少女・ゆえに声をかけたのは、ごく平凡な公務員・古畑。けれど古畑と過ごす穏やかな時間は、ゆえにとってかけがえのないものとなっていった…。「私、古畑さんと、どうなりたいんだろう…」   。流れゆく日々の中、彼女が導き出した答えは…?
 
 幸田真希先生の短編集になります。幸田真希先生というと「花帰葬」のコミカライズをご担当されていたのを知っているのですが、オリジナル作品読むのはこれが初めて。各話にこれといったつながりはなく、単発で発表していた作品を一冊にまとめたものだと思われます。それでは表題作以外の収録作を、少しずつご紹介しましょう。
 
 歳上・巨乳・女王様タイプを理想の女性とする男子に、あろうことか理想とは正反対な超清純派な女の子が告白してくることからはじまる「女神の条件」。怠惰な毎日を過ごしていた青年が迷い込んだのは、目覚めるたびにクリスマスという無限ループな毎日で…という「blessing20XX」。祖父の葬儀に参列するも、何年も会っていないために悲しみも涙も湧いてこないヒロインが、後ろめたさを感じていたが…という「日だまりの欠片」。そして、父親一人、社会人の兄妹二人で平穏に暮らしていた中に、主人公の後輩が嵐をもたらす「家族には秘密がある」。

 どの作品も割と記憶に良く残る作品だったのですが、まずは「梅酒」について語りましょうか。なかなか惹き付けられる表紙・タイトルで、最初表紙を見た時「酒蔵の話かな…」なんて勝手に妄想したのですが、そんなことは全くありませんでした。どんな内容かというと、内気な女子中学生が、ひょんなことから二回りくらい年が上の地味な公務員の家に足繁く通うようになるというお話。


梅酒
ヒロインのゆえがとにかくかわいい。おっとりとした性格で、内気というかスローすぎてクラスメイトについていけていないんじゃ、と。時に大胆で、無垢。


 公務員の古畑さんは、何かするわけでもなく、酒を飲み時折話しかけるだけ。話題も高村光太郎だったりと、そのシチュエーションとは裏腹に、やりとりから受ける印象は至って真面目で誠実だったりします。タイトルの梅酒も、高村光太郎の智恵子抄から。今どきの女子のテンションについて行けず、そんな中見つけた安心出来る場所。けれどもやっぱり、こういうのはよくないのかも…そんな目の前にある安堵と、心の奥底でちらつく不安とのゆらぎが、淡いタッチで儚げに描かれます。高村光太郎が題材として登場しているからか、どこか文学的というか、懐かしさや古めかしい匂いをどこかに感じるような作品でした。

 どの作品もひと捻り入れて来るというか、まず「王道では進めないぞ」という感が読んでいてありました。「女神の条件」も、シンプルなラブコメディかと思いきや、最後のオチがちょっと斬新でしたし、唯一ファンタジー要素の入っていた「blessing20XX」も、少ししんみりとするラスト。なんていうか、完璧なハッピーエンドではないんですよね、どれも。どこか傷であるとか、後悔のような感情が残っていて、それでもトータルで見たらOKだよ、みたいな。また雰囲気が前面に出た、どちらかというと説明的でない作風でもあるので、ベタをはずれるような作品がお好きな方はドンピシャかもしれません。


梅酒2
「家族には秘密がある」より。最後に収録されているこのお話だけは、割とストレートというか、ありのままに感動を受け入れられる真っ直ぐさがありました。1冊で通してみると、最後このお話でほっこりできるので、読後感は良いかと思います。


 個人的に一番印象に残ったというか、驚いたのが「日溜まりの欠片」。とある女性が祖父の葬儀に行くというだけのお話なんですが、短いとはいえこれで1話描いてしまうのか、と。シチュエーションだけでもわかるかと思うのですが、全く持ってアヴァルスっぽくないんですよね。というか、こんなストーリーは他の雑誌でもあんまりみないです。ストーリーに感銘を受けたというよりは、こういうお話を描こうと思って、実際に描ききってしまうその勇気と、これにゴーを出した出版編集さんすごいな、と。
 

【男性へのガイド】
→この一歩引いてひと捻り入れる感じは、男性っぽい感性という感じがいたしました。
【感想まとめ】
→ アヴァルスでこういう作品が読めるってのはあんまりないと思いますし、色々な意味でちょっと注目してみて良い作品なんじゃないかな、と思います。全力プッシュしきれないのは、どこか地味な印象が拭えないのと、決して万人受けするような物語展開ではないと思うからなんですが、いやでも「梅酒」のゆえはきっとみんな好きだろうしなぁ、なんて、色々とぐるぐるする作品です、はい。


作品DATA
■著者:幸田真希
■出版社:マッグガーデン
■レーベル:ブレイドコミックス アヴァルス
■掲載誌:アヴァルス
■全1巻
■価格:571円+税


■購入する→Amazon

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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2012.11.24
1106218079.jpg瀬川藤子「お嫁さんは神様です」(1)


清四郎さんは
サクヤが守ります



■仲良し夫婦の清四郎とサクヤ。毎日を平和に幸せに過ごしていますが、サクヤには一つだけ人と違うことがあって…。それは、サクヤは神様であること。気づいたら宙に浮いていたり、怒ったら雷が本当に落ちたり、強風が吹き荒れたり…けれどもそれ以外は、器量よし家事よし愛情よしの本当にステキな奥さんなんです。

 マッグガーデンのBEATSシリーズということで、所謂電子書籍媒体に掲載されていた作品になります。BEATS自体は男女特にターゲットを設けることなく運営されているようなので、厳密に女性向けレーベルとは言いがたいところはあるのですが、瀬川先生の「VIVO!」(→レビュー)がとても面白かったこと、そして本作も非常に自分好みであったことからご紹介したいな、と思いまして、こうしてレビューをお届けしております。
 
 物語で描かれるのは、とある新婚夫婦のちょっと騒がしい日常。主人公は、町の郵便局で働く真面目な青年・清四郎。真面目で穏やか。とにかく“普通”で“いい人”を絵に描いたような彼の毎日の楽しみは、結婚したばかりのお嫁さん・サクヤと一緒に過ごすこと。非常に穏やかな性格で、いつも笑顔が絶えないサクヤは、清四郎のことが大好き。仲睦まじいことこの上ないこの夫婦で、普通であれば実に平穏な日常を過ごすはずが、何かと彼らの周りは騒がしい…。というのも、サクヤには一つだけ、普通の人とは違う所があるのです。それは、彼女が神様であるということで…というお話。
 

お嫁さんは神様です1−1
 「神様と結婚」というとなかなかすごい設定のように思えますが、正確には神様そのものというよりは、人間の体を依代にして下界に下りてきているようなイメージ。そのため、サクヤは神様と同じような能力(嵐を呼んだり、宙を飛んだり…)を使い、神様としての記憶を保持していたりしますが、普通に人間の親がいて、戸籍上も人間として生活しています。そんな彼女の周りを騒がせるのは、彼女の早とちりな性格でもあり、彼女と同じように神様としてこの世に生きる人たち。特に彼女の姉や、神様界での旦那様などはトラブルメーカーで、毎度お騒がせを…。
 
 神様だなんだと言っていますが、ベースとなるのは仲睦まじい夫婦コメディです。基本的に穏やかな2人が中心におり、友達や肉親も楽天家が多いことから、物語の雰囲気は非常に朗らかで楽しげ。なんとなくイメージが近いのは、芳文社などである日常4コマみたいな感じ。ものすごく安心感があって、読んでいてとっても楽しい気持ちになります。こういう雰囲気大好きなんですよねー。
 

お嫁さんは神様です
 プッシュポイントを1つに絞るとしたら、とにもかくにもサクヤの可愛らしさに尽きると思います。旦那さんのことが本当に好きで、好きで、好きで。普段は穏やかながら、彼のことになると途端に慌てたり怒ったり。基本笑顔で、時折違った表情を覗かせるその様子がどこまでも愛らしいのです。ちょっとお人好しすぎてドジることもあるのですが、それもまたいいよね!と。また彼女の姉(戸籍上はつながっていませんが、神様としては姉妹)も、ネガティブ可愛くてこれまた素敵なのです。良い感じで脱力した神様新婚コメディ、面白いのでご興味のある方は是非ともご賞味あれ。
 

【男性へのガイド】
→元々女性向けという設定のない作品ですので、男性でも。
【感想まとめ】
→雰囲気がすごく良かったです。仲睦まじい夫婦の様子をみてによによしたい方は是非とも。


作品DATA
■著者:瀬川藤子
■出版社:マッグガーデン
■レーベル:MGC BEATSシリーズ
■掲載誌:コミックBEATS
■既刊1巻
■価格:571円+税


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Tag [続刊レビュー] 2012.10.07
作品紹介→生徒に興味なし!超絶放任主義教師の教育新スタイル!:瀬川藤子「VIVO!」1巻
2巻レビュー→逃げてもいい、変わらなくたっていい:瀬川藤子「VIVO!」2巻




1106196019.jpg瀬川藤子「VIVO!」(3)


ナカムラ先生
かなり
恩師かもしれない



■3巻発売、完結しました。
 あくまで事故至上主義を貫く男・ナカムラ。不本意ながらも、毎日、高校教師として過ごしているわけですが、巻き込まれ体質は相変わらずで…。自殺志願の女生徒に追いかけ回されたと思えば、部活のメンバーは家に大挙して押し寄せ…。そしてついに迎える卒業式で、ナカムラは…?
 

〜完結しました〜
 3巻で完結しました。最後の最後までナカムラをはじめ、みんな変わらずでした。それがなんとも心地よい。1巻〜3巻の完結巻まで、こうも主人公が変わらないってのもなかなかスゴいと思います。だって学園モノなのに。もちろん熱血ではなくて、かといってアウトローを気どっているわけでもなくて、そのスタイルはごくごく自然な“自己至上主義”。今回も、初っぱなから「自殺するぞ」とアクションを取ることで人目を引きたがる女の子に目を付けられても…
 

VIVO!3-2.jpg
むしろこちらから突き落とそうとする


 ぐらいのことしちゃいますからね。だいぶ極端な例だとはおもいますが、こういった対応も時には必要なのかもしれません。この後に野島先生のフォローがなければ大問題になってた可能性は否めないですが…。フォローしてあげる人がいるからこそ、こんな人がいても大丈夫というか、活きるのかも。部活の中での佐野くん然り、「良いバランスで成り立っているんだな」と思ったのでした。
 

〜それでも愛はある?ナカムラと報われない住吉さん〜
 この“自己至上主義”ってのは“無関心”とはちょっと違っているんですよね。本当に面倒くさくて関わりを持ちたくないのであれば、徹底してネグレクトを突き通すはず。けれども彼は、それはしない。「面倒を持ち込むな」と突き放しはするけれど、決して根本からその手を離すことはありません。今回、住吉さんの迷子騒ぎの際も、住吉発見後…
 

VIVO! 3-2
連れてこさせてまで説教&鉄拳制裁


 これも一種の「愛」…?いや、違うか。
 
 しかし住吉さんも報われないですよね。バレンタインのチョコを作ろうという所までは良かったんです。けれどもその後の詰めが甘かった。結局全部自分で呼び込んだ不幸なわけですが、なんだかとっても報われない感が、可愛らしいと言うか可哀想というか…。


〜なんか最後すごい名教師っぽかったから悔しい〜
 最終回も相変わらずナカムラでしたが、生徒たちに対する的確な評価がとにかく当を得ていて、しかも去り方とかめっちゃカッコ良かったので、それだけで名教師感が。必要以上に踏み込まず、良い距離感で生徒を俯瞰して見ることができるので、あのアドバイスも至極納得ではあるのですが、なんだか悔しいです(笑)
 
 読むたびにこういう生き方というか性格に憧れてしまいますが、自分は絶対無理ですねぇ。というかそもそもこんな生き方が出来ない人ばかりだからこそ、このキャラクターとこの作品がこれだけ受け入れられているのでしょう。最後まで痛快な本作、まだ未チェックの方は是非ともこの機会にお手に取ってみては如何でしょうか?
 

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レビュー
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レビュー
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