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Tag [続刊レビュー] 2012.09.19
作品紹介→フェチが過ぎて可愛い子がよだれダラダラ流しちゃったり:亜樹新「フェティッシュベリー」1巻
2巻レビュー→変態大集合が一変、切ない青春物語に:亜樹新「フェティッシュベリー」2巻




1106185895.jpg亜樹新「フェティッシュベリー」(4)


恐くて
強いふりしてるくせに



■4巻発売しています。
 手・髪・声…数多あるフェチに反応しすぎて、理性が保てない水原ひより。理想とするフェチパーツを兼ね備える、俺様なクラスメイト・成田に、フェチ心だけじゃないキモチを抱えていることに気づいてしまったひよりですが、ひよりを一途に想っている幼なじみの貴臣から、思わぬ言葉を告げられて…。一方通行な恋が錯綜中!


〜3巻レビュー忘れてた〜
 4巻発売しておりますが、散々推しておきながら3巻発売をスルーという大失態。なんという…。というわけで、4巻レビューを銘打っておりますが、3巻と4巻がごっちゃになったレビューをお送り致しますので、どうぞ宜しくお願いします。
 
 さて、3巻は主に文化祭でのあれこれが、そして4巻では3巻でこじれた関係がさらにこじれるという展開に。とりあえず最初に言っておきたいことがあるとすればこれ…フェチ成分がどんどん少なくなってきてるよー!!!!2巻の時点でなんとなく想像ついていたのですが、だんだんとちゃんとした青春恋愛ものへとシフトしてきており、シリアスなシーンが多めに。すると当然フェチな部分が削られてくるわけで。


フェティッシュベリー4−1
少なくても良い。やっぱりこういうのが見たいんだ!


 4巻も序盤は結構ライトな描写が多かったのですが、元来持っているフェティシズムの暴走ではなく、失恋めいた感覚からの、食欲とアニメへの逃避が主と、ちょっと変化球気味。いや、そうじゃなくてフェチな三次元の男の子相手にハァハァするひよりがですね…。


〜不憫な黒髪二人が相も変わらず可愛らしい〜
 いきなりフェチ成分が少ないとか宣ってしまいましたが、本編はというと、それぞれに自分の想いに気づきはじめたり、かといって素直に行動できずにやきもきしたりと、奥手な恋愛風景が繰り広げられております。その中でもひと際私の目を引くのが、黒髪二人。一途にひよりを想い続ける貴臣と、そんな彼に心の奥で想いを寄せている浅雛さん。特に浅雛さんのブーメランっぷりがすごいです。めくるめく自業自得というか。
 
 まず現在の彼女の心持ちが割と病的というか。自分の恋心を自覚しないようにと、貴臣くんには成田くんしかありえないと決めつけるという、BL隠れ蓑術。とはいえ自分の気持ちを抑えることはできないものだから、貴臣が告白しようとすると…
 

フェティッシュベリー4−2
思わず邪魔をしてしまう


 やってしまいましたなぁ。しかもBL隠れ蓑ですから、自分が悪いとは思わない(思いたくない)。結局は弟に釘を刺されて自分の非を、そして自分の想いを強制的に自覚させられることになるのですが、やってしまった事実は変わらない。そしてその後、怒濤の自業自得が…


フェティッシュベリー4−3
一緒に居て居辛いところから…
 


フェティッシュベリー4−4
貴臣に捨て置かれる


 辛い…これは辛いです!別にここでも邪魔することはできたかもしれませんが、既に弟によって釘を刺されており、また自分の欲求を素直に前に出すことができないことから、これ以上何も言えず。なかなか不憫でございます。あれ、なんか浅雛さんの話ばっかりだな。とりあえず貴臣は、4巻ラストで一番の見せ場を迎えていますから、5巻でその労いのレビューをしますよ。正直行ける気がしない。


〜何気に不憫な展開が多いですよね〜
 今回の浅雛さんとイイ、結構この作品、落とされるときって割と容赦ないですよね。ひよりの成田からの突き放しとか、過去のイジメとか。そうそう、最も不憫だったのは、他でもない十野さんでしょう。典型的な悪役ポジションでありながら、がっつり成敗されるわけではなく、待っていたのはある意味一番悲惨な「スルー」。返り討ちすらしてもらえないなんて、なんて可哀想な…。その結果かわかりませんが、4巻になっても未だに消えることなく登場してきて、脇役としてそのポジションをキープし続けております。ただあのポジションが報われるとも思えないんですよね。なんだか最後まで可哀想な形で終わるんじゃないかって気がする、そんな哀愁漂う十野さんなのでした。
 

〜成田の過去が明らかになりましたが〜
 そうそう、もう一つ大きなことがありましたね。それが成田の過去。浅雛さんにこれまでやたらと反応していた彼ですが、似た子を好きになって、そして亡くしていた。しかしこの背景、物語的にどのような意味合いを持ってくるのでしょう。キレイな四角関係になれば収まりはいいですが、どうもそんな感じがしてこない。単純に成田という男の子の人格形成の過程を描きたかったのか。はたまた、成田と浅雛さんの関係がこれからどんどん動いて行くのか。その辺も注目しつつ、5巻も待ってみたいですね。


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Tag [続刊レビュー] 2012.03.31
作品紹介→生徒に興味なし!超絶放任主義教師の教育新スタイル!:瀬川藤子「VIVO!」1巻


1106133139.jpg瀬川藤子「VIVO!」(2)


自分のことは自分で決めんの!


■2巻発売です。
 文字通り「人は人」「自分は自分」を生きる男・ナカムラ。なぜか高校教師を1年間務める羽目になるけれど、ナカムラは変わらずナカムラのまま。なのに周囲では勝手に問題が起こったり…。生徒には生徒の、先生には先生のジジョーがあります。
 

~人は変わらず環境は変わる~
 2巻発売しています。相変わらず緩い。そしてナカムラの変わらなさもすごい。なんてどうしてもナカムラばかりに目が行ってしまいますが、何気にこの作品に登場するキャラクターで、登場してからその性格・資質に変化があった人って誰一人としていないです。これこそがこの作品の一貫したテーマというか、揺るがない核となる部分。変わらなくても良いじゃない、もし居心地が悪かったとしても、ならば居場所を作ってあげれば良い。その象徴となるのが、ナカムラが顧問を務める「架空物具現化構想同好会」であり、その部室であるのです。
 
 そんな「変わらない」ことで共通している彼らですが、さらにもう一歩突っ込むと、多くのキャラクターが「期待からの逃げ」という経験を共有していることに気がつきます。例えば住吉さんは、“普通に学校に通うこと”ということ、蓮田くんであれば“絵を描くこと”への期待、そして今回初登場の蒔田さんは“バレーでの活躍”…。それに加え、今回エピソードとして収録されていた中で、ナカムラを教師への道へ巻き込んだ井崎先生もまた、そんな経験をしていました。
 

vivo!2-1.jpg
 元々良家のお嬢様で、“良家の子女”としての生き方を期待されていた彼女は、ナカムラとそのお爺さんに焚き付けられ、それらを全て投げ打って家出。結果勘当され、今に至ります。一番まともというか、ナカムラ達とは最も遠いところにいるように見えた井崎先生ですが、根底では彼らとつながっているんですね。そして彼女にとっての「部室」が、今のナカムラの家になります。バラバラの性格のキャラクターたちが登場している本作ですが、描かれていることは至ってシンプル。逃げたいもの、曲げられない自分、そして逃げ帰れる場所。その3つがそれぞれ違う形で描かれ、「無理に変わらなくてもいいんだよ。逃げたっていいんだよ。大丈夫。」そんなメッセージを伝えてくれています。
  

~こういう性格の悪い子は現実に存在するのか~
 さて、先にもちょこっと名前を出しましたが、彼らの元にまた一人仲間が加わりました。蒔田弥生、1年。クセの強さは他のキャラとも同じではあるのですが、どちらかというと静けさのある彼らと異なり、うるさいうるさい。彼女の登場が、良い方向へ転がると良いのですが、果たして。とりあえず住吉さんは若干の拒否反応を示していますが、導入でこういう反応あるってのは割と良い事だと思うんですよね。見て分かる形で彼女が変わる瞬間を見ることができるかもしれません。なんて住吉さんにとって直近の懸念事項は蒔田さんではなく、蓮田君目当てで部室に勝手に通うようになった…
 

vivo!2-2.jpg
田辺真由さん


 はい彼女、女主人公の学園ものによく登場する、典型的な性悪オンナでございます。分かりやすいほどのヒール。男性には色目を使って、同性にも仲良さげに近づくも基本的には自分の利益主義。もう定番と言ってよい程にこの手のキャラって登場してくるのですが、こういう子って実際多くいたりするのでしょうか?私はご存知の通り男性なので、女性のこういった面はあまり見えてこない位置におりまして。もし本当に、しかも結構な数いるとしたら怖いなって。あー、でも自分の場合ターゲットになることすらないから関係ないか(悲しい納得)。



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Tag [新作レビュー] 2011.12.31
1106102004.jpgみよしふるまち「ケッコーなお手前です。」(1)


ケッコーな
お手前デ…?



■留学生のユージーンは、日本文化に興味しんしん。剣道、柔道…みたいなものだと勘違いして、茶道部に体験入部することに。最初は大したことないと思っていたけれど、家元の息子・樹の点てたお茶を飲むと何かが違う。なんでお茶飲むだけで、涙が出るの?どこか懐かしくて温かい、青春茶道部ストーリーが始まります!

 「東京ラストチカ」(→レビュー)を描かれたみよしふるまち先生の新作になります。今度のテーマは茶道。しかも外国人留学生を交えた、一風変わった青春ものとなっています。物語の主人公は、留学生のユージーン。日本の文化に興味津々な彼は、特に武道に憧れ、剣道部や柔道部に体験入部し、「次はこれ!」と決めたのが茶道部。名前的に武道かと思いきや、そこで目の当たりにしたのは地味なお茶の時間。「なんの価値があるのか全然わからない」と帰ろうとするユージーンでしたが、そこに一緒に居合わせた同じクラスの樹の点てたお茶に大感動。樹は茶道の家元の息子さんだったのです。結局茶道部に入ることにしたユージーンでしたが…というお話。


ケッコーなお手前て#12441;
家元の息子さんはツンツンキャラ。素直じゃないし社交的でもないけれど、そこはユージーンの人一倍のフレンドリーさで乗り切ります。


 みよしふるまち先生というと「東京ラストチカ」でとにかく切ない悲恋を描いたので、基本的にシリアス系の作家さんなのかと思っていたのですが、こちらは一転青春コメディで、ちょっとびっくり。色々引き出しのある方のようです。とりあえず茶道に興味を持った、自由で元気な留学生・ユージーンと、真面目で人付き合いの悪い、茶道の家元の息子・樹。いかにも凸凹な組み合わせですが、これがなかなか良いコンビ。基本的に誰かと関わろうとしない樹に対して、積極的に絡んでいくユージーンは、何か動きを起こさせるにはうってつけの存在。逆に自由に動きすぎるユージーンに対して、厳しくお作法を教える樹は、良い手綱取りの役になります。樹がとにかく無愛想であるため、一見仲よさそうに見えないのですが、なかなか良いコンビなのですよ。もちろんあらぬ誤解やすれ違いからの喧嘩はありますが。
 
 物語は部活再建系統のお話に分類されるでしょうか。ユージーンが訪れるまで、部活に所属しているのはたったの一人。しかも初心者ということで、目も当てられない状況。そんなところにユージーンが無理矢理樹を引き込み、彼を指導者として据えることで、部活の再建を図ります。それでも彼らを含め、スタート時点では部員は3人。ということで部員募集をかけて、なんとか5人まで。樹以外は全員初心者、一から茶道を学んでいきます。そのため、茶道の知識のない私たちも一緒に学ぶことができるっていうことです。1話目は部員集めと茶道云々がメイン、しかし部員が揃ったことで、各々の人間関係の深まりへと話は移っていきそうです。部員構成も、男子3名と女子2名ということで、恋愛話への発展もありそう。なんて一番仲良さそうなの、ユージーンと樹の男子カップルなのですが。


【男性へのガイド】
→何か大きな出来事があるわけでもないお話なので、メインキャラ二人に多少なりとも萌えられる人でないと、という気はします(面白い云々という方向で)。ただお話自体はクセがなく読みやすいので、取っつきやすさは少なからずあるかと。
【感想まとめ】
→茶道って実はあまり知らなかったので、なかなか勉強になりました。ガチンコではないけどそれなりに真剣な、文化系部活マンガがお好きな方にはうってつけ。


作品DATA
■著者:みよしふるまち
■出版社:マッグガーデン
■レーベル:ブレイドコミックスアヴァルス
■掲載誌:アヴァルス
■既刊1巻
■価格:571円+税


■購入する→Amazon

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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2011.11.28
1106090414.jpg瀬川藤子「VIVO!」(1)


俺に迷惑さえかけなければいいので
この一年好きに自由に生きてください
以上ですはい解散



■事故至上主義で気ままに生きる男・ナカムラ。そんな彼が、高校教師として赴任する事に。とりあえず1年間、スタンスを変えずに過ごそうと思っていたが、当然そう易々と事が運ぶわけもなく。。。様々な生徒に交わりながら、無気力、無関心なナカムラ流の学校生活が始まります。

 瀬川藤子先生の、これは初コミックスになるのでしょうか?無気力なやる気なしの不真面目教師による、超絶俺流放任主義の学校教育マンガです。主人公は、表紙に描かれているナカムラ(本名は仲村渠:なかんだかり)。主に株で生計を立てて、外界とはあまり関わらずに生きてきた彼が、友人にまんまと嵌められて、1年間高校教師をやることになってしまいます。やる気のない彼がなんで教師になれたかって、それほどまでに教師不足は深刻だったってことですよ。そんなこんなで教師になってしまったナカムラ。とにかく自分のスタンスは変えずに、なるべく厄介ごとには首を突っ込みたくない…そう思い学校にいざ乗り込むものの、そうは問屋がおろしてくれず、様々な面倒ごとが。それでも彼なりのやり方で、解決していくのですが…


ViVo!1-1.jpg
道徳とか常識とか、全く通用しません。しかもブレずにちゃんと理由を持って対峙されるから、正面突破することはまず不可能。難攻不落です。


 なんでもかんでもやることは自分のため、他人の事なんて一切考えない、そんな所謂世に言われるような「教育」とは真逆のスタンスを取っている男が、教師になったらどうなるでしょう。放置の末に学級崩壊?いえいえ、意外とそうはならないんです(あくまでこの物語ではですが)。別に放置といってもそれが周りを許すわけもなく、部活の顧問だ、登校拒否の生徒の対応だとあれこれ厄介ごとが降ってきます。面倒な事は極力回避という男でありながら、一度受け取ってしまってからぶん投げるというスキルは持っておらず、あくまで彼なりにではあるのですが、諸々の問題に対峙、解決していきます。
 
 生徒達に求めるのは、「とにかく俺に面倒をかけさせるな」ということ。授業は最低限で、部活の顧問も「部活だと面倒だから同好会で。ないならなんか作って幽霊部員を集める。」などとワケの分からない方向に走りはじめます。結果集まった3人は、登校拒否だった女子に、パシられ体質の真面目な男子に、絵画の天才として一目置かれている少年の3人。3人のうち2人は、まともに授業に出ていない特殊な生徒なのですが、普通の教室に馴染めなかった子たちが、無関心さの元逆に伸び伸びとできて、自然とあるべき関係性や居場所が形成されるというのは、なるほどなぁと納得させられるものがありました。


vivo!1-2.jpg
変なところちゃんとギブ&テイクは心得ているので、付き合えば割と居心地の良い相手。


 ベースはコメディ。しかもどちらかというと主人公・ナカムラの巻き込まれ系という。そういえば、アヴァルスで無気力・無関心さを貫く主人公と、相手としての子供というと、「flat」を思い出させます。背景も白っぽい部分が多く、主人公のそれを良く表していて、受ける印象は確かに似たものが。ただし「flat」は無関心な主人公が子供と触れることで変わらざるを得ないという状況が描かれているのに対し、こちらは無気力な先生の元、生徒が自分を見つけ変えて行くという関係で。いわばそのベクトルは真逆と言って良いかもしれません。まだ1巻だけなので、これからどのように話が転ぶのかわかりませんが、どうしたってこの主人公が変わるとは思えないんです(笑)無気力・無関心で作られる、居心地の良いコミュニティってのも、良いものだなぁとちょっと思える、良い作品だと思います。


【男性へのガイド】
→こういうコメディがお好きな男性もきっとたくさんいるはず。マンガ好きとか、こういうの好きそうですよね、男女問わず。
【感想まとめ】
→清々しい程の畜生っぷりが素敵な主人公です。気を使わないことで、相手にも気を使わせないという距離感が、なんだかとっても新鮮で面白いというか。


作品DATA
■著者:瀬川藤子
■出版社:マッグガーデン
■レーベル:ブレイドコミックスアヴァルス
■掲載誌:アヴァルス
■全1巻
■価格:571円+税


■購入する→Amazon

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Tag [新作レビュー] 2011.11.22
1106090415.jpgほしの総明「Dolci」(1)


押忍!


■幼い頃に自分を助けてくれた暴走族の伝説の元総長に憧れるのは、ちょっと不真面目な高校生・天海零。ある日その伝説の元総長が、町のケーキ屋さんで働いていると聞いた零は、一目散にそのケーキ屋に駆け込み、弟子入りを志願。人手不足に喘ぐケーキ屋さんは、即OKを出してくれて、見習いとしてアルバイトをすることになったけれど…!?

 ほしの総明先生の初オリジナル単行本でございます。暴走族の元総長に憧れる少年と、強面パティシエの働くケーキ屋さんを舞台に繰り広げるスイーツコメディ。主人公は、高校にも真面目に通わないやや不良な少年・零。幼い頃に自分のことを助けてくれた暴走族の総長に憧れを抱いて、いつか舎弟にして欲しいと願う日々を送っていました。そんなある日、町のケーキ屋さんでその伝説の元総長が働いているという噂を聞きつけ、早速弟子入り志願。ちょうどアルバイト募集をしていたので、即採用され、翌日から働くことになります。そのケーキ屋で働いているのは、元総長と噂される強面の店長と、優しい笑顔ふりまく優男系の先輩パティシエ。二人の指導のもと、漢になるためのケーキ屋修行が始まった…ってあれ、なんだか変な方向に…というお話。


dolci.jpg
主人公は割と乗せやすい性格。落ちるとだめですが、おだてて上手く上げてあげればすごくよく働いてくれます。ケーキへの情熱も、元々あるパワフルさを上手く変換・誘導して…



 不良少年がパティシエに…という設定は、よしながふみ先生の「西洋骨董洋菓子店」を思い出しますが、こちらもシチュエーション的には似ているかもしれません。ただこちらの少年はケーキ大好きってわけではなく、あくまで総長大好きというところがスタート地点。そのためまずは、その情熱をケーキに向けるためのエピソードが中心になってきます。

 メインを構成するのは三人。一人が突っ走りタイプの主人公・零。そんな彼を優しく厳しく指導するのが、二人のパティシエです。一人が元総長と噂される、口数少ない強面のオーナーパティシエ・日下さん。そしてもう一人が、逆に口数多い優男の佐藤くん。全くタイプの異なる二人が切り盛りするお店に、台風野郎の主人公が乗り込んで来てあれやこれやとトラブルを…。そんな主人公を、見捨てず気にかけて受けとめてくれるのが、この二人。結果的に作りとしては、モラトリアム期間で迷走する主人公の成長譚という形になっています。
 
 さらにそこに売り子のアルバイトとして、主人公の幼なじみの女の子が登場。元柔道部という彼女は、主人公もなかなか頭が上がらない程度には力関係が上。もう絵に描いたような色気とは無縁の元気系のヒロインなのですが、その活発さは見ていてとっても元気になれます。女の子は彼女一人だけですが、割と魅力的な子なので充分充分。その他の女の子成分は、数々出てくるケーキで補充してください。


【男性へのガイド】
→キャラが云々とかではなく、大きな起伏のない物語を受け入れられるかどうか、という気がします。
【感想まとめ】
→ケーキ屋舞台のドタバタコメディ。小さな田舎町の小さな場所を舞台に繰り広げられるため、大きな物語はありませんが、その小ささゆえの安心感があるわけで。そういうお話がお好きな方は。


■作者他作品レビュー
QuinRose/ほしの聡明「ハートの国のアリス」


作品DATA
■著者:ほしの聡明
■出版社:マッグガーデン
■レーベル:ブレイドコミックス アヴァルス
■掲載誌:アヴァルス
■既刊1巻
■価格:571円+税


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かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。