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Tag [続刊レビュー] 2010.11.07
作品紹介→超偏屈×美猫の無敵コンビが、ちょっと不思議な猫社会を駆け抜ける!:草川為「八潮と三雲」1巻
関連作品紹介→草川為「十二秘色のパレット」草川為「龍の花わずらい」




1102979409.jpg草川為「八潮と三雲」(2)


…なら来るか?
俺んとこ



■九つの命を持つ猫たちが住む「九生の猫」社会。命の恩人・八潮の役に立ちたい三雲は、名前の更新を怠る者を捜し出し、更新させる仕事「取り立て屋」の相棒として彼を手伝う毎日。ラブラブ光線出しまくりの三雲だったが、八潮はいつもしかめっ面でつれない態度。それでもめげずにがんばります!そんなある日、ターゲットを見張るため、八潮が三雲の家に来ることに!?仕事だけれど、最高のおもてなしで迎えたい…と張り切る三雲だったけれど、まさかの大騒動が勃発して…!?


~絶対買いです!~
 今年の白泉社新作では、間違いなくこの作品が一番面白いと思います。1巻時点のワクワク感そのままに、2巻でも期待通りの絶妙なかけ合いを見せてくれました。改めてオススメ。これを買わないのは、損ですよ、損!というわけで、「八潮と三雲」2巻の発売です。しっかしホントに三雲が可愛い。そして三雲の可愛さは、八潮が相手でないと最大限発揮されないという。2巻を読んでいて、改めて最高の組み合わせなのだと感じさせられました。
 

~ニヤニヤがとまりません~
 今回の最大の見せ場は、三雲の家が壊れたために、八潮の家にお世話になるというお話。まさかの「俺のとこ来るか」というデレが発動したわけですが、デレ方が上手い。その場でカワイイとかナデナデとかやってもいいのですが、一話に一度のデレを、敢えて家に呼ぶという展開に持って行くことで、さらに話が広がりんぐ。ワクワクな展開が止まりません。当然のことながら、三雲には願ってもない展開なのですが、無闇に動き回って八潮を困らせるということはありません。いつも通りのやりとりで、けど互いにちょっとだけ意識して…
 

八潮と三雲2-1
私にはちょっとだけならいいですよ
ちょっとですよちょっと
(大事なことなので2回


 この距離感が、心地良い。こう、ネタ半分期待半分な言い方が、三雲のキャラクターをよく表しているようで本当に可愛らしいです。そしてそれは、八潮が確実にツンツンしてくれるからでもあるわけで、このやりとり・この関係、本当に良いコンビだなぁと。なんてこんな二人の関係も、段々と変化しつつあるわけですが。。。とはいえとりあえずしばらくは、このやりとりを楽しめそうです。


~欲しがりません、今はまだ~
 ラブ光線を出しまくっている三雲ですが、決して三雲に求めることはしません。上のシーンもそうですが、あくまで「していいですよ」とか、選択肢を与えるというレベル。例えそういうことを言ったとしても、何かしてもらえなかった後に、ネタ的に「○○してくれなかったですね」みたいな話し方。決して八潮におねだりはしません。三雲はその辺が徹底されていて、三雲に尽くしはすれ、甘えることは一切ないという。そもそも三雲の目的は、もちろん八潮と恋仲になりたいという想いはありますが、基本的には八潮の役に立つこと。彼からの愛情を受け取るのはあくまでおまけ・ボーナスであり、彼に愛情を与えることこそが主目的になっています。
 

八潮と三雲2-2
時に愛情がいきすぎて、相手を困惑させることもしばしば。。。

 
 相手からの想いは二の次で、一番は相手に尽くしたいという想いが結果的に、彼女にああいった行動を取らせる形になっているのだと思いますが、なんだか健気ではないですか。敬語デフォも相まって、なんとも。なんて、彼女結構現状を楽しんでいるようなのですけど。いつしか八潮に甘えられるようになると良いですね。しかしそのためには、八潮が甘えさせてくれるだけ、ガードを下げてくれないといけないわけですが。その兆しが、2巻最後の一言だったのかもしれません。


~「サテライター」~
 本編は3話収録で、一緒に読切りの「サテライター」というお話も収録されておりました。幼なじみの二人が、思春期のさなか、相手を意識する余りにギクシャクしてしまうというところから始まる物語。こちらもまたファンタジー作品となっているのですが、自分の分身を食べるというのはなかなかスゴい展開ですね。こちらはなんとなく、SFっぽい匂いをさせるお話で、また本編とは一味違った楽しさを届けてくれます。
 
 3巻は来年夏発売ということで…そんなに待たないとダメなのですか…。待ち遠しいです。


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Tag [続刊レビュー] 2010.09.06
作品紹介→*新作レビュー*仲野えみこ「帝の至宝」



1102957378.jpg仲野えみこ「帝の至宝」(2)


深い意味なんて全然ない志季のことば
それでもあたしは
飛び上がっちゃうくらいうれしい



■2巻発売しました。
 村の裏山で倒れていた青年・志季と出会った香蘭。傷の手当をきっかけに仲良くなった二人だけれど、その後志季の正体が帝であることを知ってびっくり。平民である自分にも、対等に優しく接してくれる志季に、香蘭は徐々に惹かれていくものの、相変わらず志季は香蘭を子供扱い。こう見えても18歳…中身も外見ももっと女らしく…と思った矢先、志季にお見合いの話が持ち上がって…!?
 
 
~待ちわびた2巻~
 待ちわびた2巻、いやあ面白かったです。やってることは1巻とそこまで変わりがないのかもしれませんが、発刊のスパンが空いているので、全然問題無く楽しめます。むしろある程度パターン化されてこそ生まれる安定感や、そこから一歩踏み出して描き出すドキドキ感やトキメキで、パワーアップした感すらあるような…。さて今回は5話ほど収録されているのですが、その殆どが志季との関係性に悩み、そこからなんとか脱却しようを試みる香蘭の姿が描かれました。
 

~慌てふためくヒロインがかわいい~
 王子と平民という話では、1巻のレビューの際にも挙げた「赤髪の白雪姫」(→レビュー)があるのですが、こちらの白雪は王子・ゼンとの関係性をそこまで意識することなく、日々の生活を送り、王子と接しています。このブレることのない自然体が、いわば彼女の魅力なわけですが、香蘭は逆に、帝との関係性を意識しまくってアタフタするところが、どこまでも魅力的。見ためはこんなんだけど、中身は実年齢の18歳、もしくはそれ以上に大人…なんて設定になりそうなところなのですが、気がつけば中身も18歳らしからぬ幼さを覗かせるようになっています。ただでさえ見かけと身分に差があるのだから、せめて中身は追いつきたい…そう思えば思うほど、空回りして想い通りにいかない。そして結局志季に慰められるようにやさしい言葉をかけられて、とりあえず落ち着くという。あれ、別に18歳じゃなくて良くね?なんて思えるわけですが、18だからこそ余計に気負い、空回るという効果を生むわけで、やっぱり18歳っていう年齢設定は必要なのですよ。


~薬師という生き方~ 
 今回、志季がお見合いをするにあたり、むやみに会いに行くのはよそうと香蘭は決めるのですが、その一方で、何か会いにいゆく理由を作ろうと必死になってしまいます。その中で彼女が見つけた理由は「仕事で大変そうだから、栄養ドリンクを作っていく」というものでした。このわざわざ理由を考えて会いに行くというところがまず可愛らしいのですが、この理由というのが、この場面に限らず、香蘭が志季の隣に、自ら納得できる形で居つづけることができる精神的支柱になっているのではないのかな、と感じられ、より愛おしく映ったという。


帝の至宝2-1
相手が身分の違う相手である以上、会う理由・用事を求めないと、しんどい。


 そもそも普通であれば、決して一緒にいることなどできない身分である二人。香蘭が志季に対して放った「だって志季は帝じゃん」という言葉は、その関係性を意識しないことは不可能であるという香蘭の考えを端的に表しています。そんな相手の側に居続けるには、やはり何かしらの理由が必要。例え志季が無条件に良いと言っても、こちらがそれを意識している以上、自分の中に理由がないとしんどいです。そんな彼女にとって、居つづける理由として機能しそうなのが、この薬師としての生き方でした。好きな相手は支えるべき、そして尽くすべき相手であり、帝は守るべき相手。その全てを満たし、かつ側にいることが出来る仕事の一つが、薬師なのです。だからこそ、薬の勉強をする香蘭が、一番健気に可愛らしく映って見えたり。。。
 
 
~スゴい馬の乗り方~
 さて、なんだか色々と話してしまいましたが、今回一番パンチが効いていたのが、馬に二人で乗るシーンですよ。普通であれば、馬を駆る男の人の背中に抱きつくという構図になるのですが、今回は全然違いました…
 

帝の至宝2-2
前側から抱っこ


 これってアリなんですかー!?これ絶対馬に乗りにくいと思うんですけど、そんなことはどうでも良いのです。ときめくでもない、エロいでもない、なんだかただ単に恥ずかしいこの感じ。いやぁ、素敵です。これもまた、香蘭が小さいからこそできるシチュなわけで、小さいのも悪くないよね、と香蘭もこのときは思えたのではないでしょうか。
 
 
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Tag [新作レビュー] 2010.08.08
1102949787.jpg森生まさみ「もちもちの神様」(1)


……ああ
友達作るって
なんてムズムズして
うずうずして
照れくさいんだろう



■美少女だが天の邪鬼な流歌は、その性格から、男子にはモテモテで、しかし女子からは嫌われているという中学三年生。そんな彼女には、最近気になる男の子がいる。クラスの人気者・三日月くん。彼との恋愛成就を、近所の神社へいき“もちもちの神様”にお願いすると、突然目の前に、神の使い・もちこが現れた!「神の使いが現れたってことは、自分の願いが届いたってこと!」そう信じ、いざ三日月くんに告白すると…。そして浮き彫りになる、流歌の真の願い…もちことの不思議ライフの行方は!?

 森生まさみ先生の新作でございます。今度のヒロインはツンツンな、天の邪鬼ヒロイン。美少女だけれど天の邪鬼。男子からはモテるけれど、それが災いして女子からは総スカン。そんな中学三年生・流歌の願いは、クラスの人気者・三日月くんと両思いのなること。しかしなかなか行動に移すことができない彼女は、とりあえず近所の神社で”もちもちの神様“に、恋愛成就をお願いしに行きます。そして願った刹那、彼女の目の前に現れたのは、やたらとファンシーな生き物。もちこと名乗るその物体は、どうやら神様の使いらしい。「神様の使いが現れたってことは、願いが叶ったってこと!?」と、そこから三日月くんに少しずつアプローチしていき、いざ告白!しかし結果はNO。「一体どういうこと?」と、悲嘆に暮れ、あげくもちこに八つ当たりをした流歌でしたが、もちこと離ればなれになることで、一人の寂しさを実感。そして、自分の本当の願いを自覚することになります「友達が欲しい」。心の奥底にある、本当の願いを“もちもちの神様”にもう一度伝えると、再びそこにもちこが登場。再び願いを叶えるための、もちことの生活が始まっていきます。


もちもちの神様
もちこが見えるかどうかが、友情のバロメーター。もちこが見えれば、友達で、そうでなければ、もっと頑張りましょう。


 恋愛ものかと思いきや、物語は一転、孤独の中にいた少女が友達作りをし、自分の世界を広げて行くという内容になっていきます。初っぱなから好きな人に告白してフラれるという(しかもガチテンション)、なかなかしんどいスタートなのですが、フィールドを恋愛から友情へと移すことで、そのダメージを軽減。陰は落とさずに、明るい雰囲気で作品は進行していきます。まずはフラれた相手・三日月くんと仲良くなり、そこから同性の友達、そこから繋がる友達…と、彼女の世界がゆっくりと広がっていく感じ。現時点で恋愛要素は少なく、明るく微笑ましい物語展開となっています。
 
 人付き合いが苦手な高飛車なヒロインにとって、最大のハードルとなるのは、きっかけ作り。それがなかったために、今まで友達ができずにいたのですが、その部分は、神の使いであるもちこが担当。ヒロインは、そこからどう人間関係を構築していくかだけに集中する形になり、形式的にも無理がなくスマートな仕上がりになっています。キャパオーバーすると途端に塞ぎ込んでしまいそうなヒロインには、このくらいの苦労が丁度良し。いっぱいいっぱいになりつつも、精一杯相手のことを考え対峙し、そして世界が広がることでどんどんと新しい一面を見せていく流歌の姿が、本当にかわいらしい。これから恋愛展開もあるかと思われますが、中学生という年齢設定があるために、こちらもまた可愛らしく微笑ましいものになりそう。そこここに古めかしさがあり、万人に受け入れられながらという感じはありませんが、少女漫画歴が長めに差し掛かろうという読者の方など、を中心に、一定数の支持はありそう。神の使いという不思議な存在はいますが、内容的には親しみやすいもので、安心感をもって最後まで微笑ましく読むことができました。
 
 
【男性へのガイド】
→ヒロインかわいいです。恋愛要素はなくとも、ノリや絵柄はまさに少女漫画という感じなので、そういうの大丈夫であれば。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→もちこをどう捉えるか。読めないキャラは、かわいらしくも若干の苦手意識があったり。楽しく読めましたし、続きも楽しそうな内容でございます。


■作者他作品レビュー
森生まさみ「きゃらめるBOY」


作品DATA
■著者:森生まさみ
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:LaLaDX(平成22年1月号~)
■既刊1巻
■価格:400円+税


■購入する→Amazonbk1

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Tag [オススメ] [新作レビュー] 2010.08.06
1102949786.jpg辻田りり子「恋だの愛だの」(1)


苗床かのこ 高1 4月
図らずも人生初の
部活動デビュー



■転校続きの中学時代とは違い、椿くんと共に宝ノ谷高校へと入学したかのこ。中学のときまでの観察者ライフを捨て、違う女子校へ行った花井さんに相応しい友人になるべく、新しい自分を始めようと決意。しかし染み付いた傍観者精神はなかなか抜けないもので…入学式の日に面白そうなものを発見。それが、廃部寸前の新聞部。野次馬根性丸出しで、ちょいと出しゃばったところ、なぜだか軍師だと熱烈勧誘されて、気がつけば入部することに!?そして何故か椿くんも新聞部に…。あれあれ、確かに中学の時とは変わっているけれど、描いた方向とはちょっと違うような…そんなかのこ様の高校生活が、スタートです!

 以前ご紹介しました「笑うかのこ様」(→レビュー)の続編でございます。今度は高校生編ということで、かのこ様も若干大きくなっております。前作までのかのこ様ってやたら小さいイメージがあって、白雪姫に出てくる小人みたいなサイズ感で捉えていたのですが、今回のかのこ様はなんだかしっかりと高校生らしいフォルムをしていて、成長を感じずにはいられないのです。って、多分前作ラスト付近ではこんな感じだったのでしょうが、私は途中で振り落とされてしまった人間なので…。ということで、改めてかのこ様に挑戦したわけですが、今回は非常に読みやすかったです。前作スタート時は、傍観者根性全開・捻くれ精神爆発というシニカル成分たっぷりのかのこ様でしたが、今回はそんな自分を自覚し、新たに知った仲間一緒に過ごす楽しさを手に入れる方向にシフト。傍観者肯定ではなく、傍観者抑止というスタンスで、学校生活をスタートさせていくことになります。


愛だの恋だの
二人きりになって、やたらと一緒にいようとする椿くんでしたが、そんな彼に対しかのこ様は少々ご立腹。双方の目的が違う以上、その行動は相容れることはないのですが、果たしてどうなっていくのか…。


 今回かのこは、紆余曲折あって新聞部にはいるわけですが、もうこれ以上適した部活はないってくらいハマってますよね。初っぱなにそれが出てきたとき、思わず「そうか、それがあったかぁ!」と(笑)かのこ自身は乗り気ではないのですが、いつしかその才能を見せてくれることでしょう。そしてそれに対し、一向に進まない椿くんとの関係。人間関係、こと恋愛関係においては鈍感中の鈍感なかのこ。他の三人は、不器用なりに変化を見せている中、かのこはどう変わっていくのか。当面は三人でひっぱりっていけば余裕で持ちそうな気がするので、とりあえずかのこ様は新聞部活動にだね…。
 
 前作で振り落とされてしまった理由としては、中学生なのに黒すぎるとか、シニカル成分が強すぎるというところがあったのですが、今回はそんな成分がややマイルドになり、個人的に非常に読みやすく、終始作品を楽しむことができました。根底にあるものは同じなのでしょうが、しっかりとオブラートに包まれたような感じがするのです。傍観者精神を否定することはなくとも、それを敢えて抑え、違う方向にシフトしようと努力する。そしてそれが、目に見える形で周囲からもたらされる。そういった展開が、なんだかとても爽やかに感じられます。人によっては、ちょっと弱いんじゃないですか?なんて感じる方もいるかもしれませんが、自分にはこのくらいが丁度良いのです。またヒロインが自ら、自分を含めて周囲を見るようになったことで、さらに物語に幅が出てきております。巻数を重ねて、脇役に味が出てきたということもあるのでしょうが、ヒロインの精神的変化も、サイドストーリーに厚みを持たせる要因になっているのではないのかな、と感じます。
 
 脇役たちの活躍を見ても、あくまで「かのこ様」ありきで、そちらを読んでこそというつくりにはなっているのですが、ここから読みはじめても困ることはまったくありませんので、ご安心を。むしろかのこ様の黒さを、自分のようにちょいと苦手なポイントとして捉えるのであれば、高校生編を起点として、中学生編に遡って行くという読み方の方がむしろプラスにも思えるわけで。これはやっぱりオススメせざるをえないなぁ、と。


【男性へのガイド】
→前作と変わらず。そちらを参照くださいませ。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→高校に入学してのかのこ様は、私のような狭量な人間でも全然受け入れられて、むしろ楽しませてさえくれたという。ここから読みはじめても良しの、納得の続編でした。


■作者他作品レビュー
辻田りり子「不思議な温度で」


作品DATA
■著者:辻田りり子
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:LaLaDX(平成21年11月号~)
■既刊1巻
■価格:400円+税


■購入する→Amazon

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Tag [新作レビュー] 2010.06.07
1102916276.jpg高木しげよし「フィルムガール」(1)


君のように
輝けたら
もう一度
あの場所で



■中村鳴は、地味で大人しい女子高生。その存在感の薄さから、近くにいても気づかれないこともしばしば。そんな彼女がある日カフェで、人気モデルの司朗に呼び止められる。「見つけた、メイ」。そういって話しかけてきた司朗は、実はキッズモデルだった頃の鳴の熱狂的なファンだという。モデルとして一緒に写真を撮ろうと言ってくる司朗に、戸惑う鳴だったが、そのことがきっかけとなり、再び表の世界を目指すことに…!?

 高木しげよし先生の新作です。元キッズモデルの地味な女の子が、彼女に憧れモデルになり、今やおしも押されぬ人気ナンバーワンモデルとなった男の子に出会い、再びそちらの世界に足を踏み入れるというお話。ヒロインは、とにかく存在感なしの、女子高生・中村鳴。過去にキッズモデルをしていたものの、とある出来事によって自分の華の無さを痛感。以来自分の存在を消すように、できるだけ地味に生きてきました。そんな彼女がある日、カフェで人気モデルの司朗に声をかけられます。何事かと話を聞くと、どうやら彼はキッズモデル時代の鳴の大ファンで、彼女に憧れモデルになったというのでした。「一緒にモデルとして、写真を撮ってほしい」。そう懇願され、渋々撮影現場へ。しかしそこでモデルの仕事の楽しさを再認識。司朗の登場に触発され、再びモデルの世界を目指すようになります。


フィルムガール
お互いに、この場所でしか輝けないことを自覚している。暗い場所からの再生と、生きづらさ。重なる部分は多いが、決して共感によってその関係が成り立っているわけではなく、どちらかとうと尊敬・信頼という比重が大きい。


 コメディーまじりの、凸凹モデルライフ。芸能界ものは、相手役が押しも押されぬ人気者で、かなりデキルorカッコイイというのが鉄板なのですが、こちらの相手役・司朗はちょっと変わった存在。元々はキッズアイドルオタクのひきこもりで、完全なオタク気質。そんな彼が、ヒロインである鳴の存在に衝撃を受け、モデルの世界を目指すように。努力・研究を重ね、今のポジションをつかんだという経緯があります。ゆえにメンタルは完全にオタク。渋谷怖い、表参道怖い、キッズアイドル大好き。少々極端な気がしますが、その見ためとは裏腹に、かなり痛くてヘタレな存在となっています。プロでありながら、鳴の登場以降は彼女次第でかなり仕事の出来にバラツキが出るようになるなど、モデルとしても未熟な感じが。それもまたかわいらしさなワケですが、モデルの世界を描くものとしては、どうなのだろうという気も。なんて最後はしっかり仕事をこなしてしまうんですけどね。
 
 元ひきこもりの、現トップモデルと、元人気キッズモデルの、現地味女子高生。お互いが、お互いの変わるきっかけを提供し合う、ある意味相互依存の関係が提示され、それがずっと物語では続いていきます。どちらかが弱れば、どちらかが引っぱり、どちらかがヘタレば、どちらかが叱咤する。作品中ではそこまで感じさせないものの、二人だけの完璧で閉じた関係がそこにはあり、ひとたび感情移入してしまえば、これほどまでに素敵な作品はないのかもしれません。現時点では、お互いの精神的支柱というところに留まっており、これからはそこからいかに恋愛に持っていくのかがポイントとなりそう。とはいえ作風としてはじけた感じがなく、いい意味で落ち着いている中で、劇的な関係性が描かれることはあまりなさそうですね。気づかぬうちに、徐々に恋愛関係が築かれていって、いつの間にかラストに…という展開になるのでは。 


【男性へのガイド】
→司朗も鳴も不完全さがわかりやすく、比較的愛しやすいキャラとなっています。モデルという世界を描いているということを除けば、そこまで厳しいということはなさそう。この二人の関係にどれだけ入り込めるかがポイント。そうなると、提言などできようものか。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→サラサラと、最後まで楽しく読むことができました。ちょいと人を選びそうというか、多くの人にどハマりしそうという感じは受けないので、このくらい。


作品DATA
■著者:高木しげよし
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめコミックス
■掲載誌:LaLaDX(平成21年9月号~)
■既刊1巻
■価格:400円+税


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