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Tag [続刊レビュー] 2012.07.19
1巻レビュー→“少女”だった全ての人へ贈る物語:タカハシマコ/桜庭一樹「荒野の恋」1巻
関連作品紹介→なぜこの作品をオススメしてなかったのか…:タカハシマコ/桜庭一樹「青年のための読書クラブ」2巻




1106176588.jpgタカハシマコ/桜庭一樹「荒野の恋」(2)


恋ってなぁに?


■2巻発売しました。
 すけこましで恋多き父とは逆に、奥手な少女・中学1年の荒野。初恋の相手でクラスメートの少年・神無月悠也は、皮肉にも父の再婚相手の連れ子として現れた。仲良く使用と努力する荒野だが、なぜか悠也は激しく拒絶する。しかし“家族”としての生活は、少しずつ近づけていく…。
 

〜「それは私と少女は言った」に比べて白い白い〜
 オススメタグはつけないのに、必ず続刊はレビューしてしまうタカハシマコ×桜庭一樹タッグ作品。というわけで「荒野の恋」も当たり前のように買ってしまいましたとも。2巻は水色を基調とした涼しげな配色の1冊となっていて、書店の棚でも目を引きましたねー。
 
 同日発売の、タカハシマコ先生の作品「それは私と少女は言った」(→レビュー)は既にレビューしておりますが、あちらに比べて本作は白い白い。正直この作品の初見の印象って「良い意味で悪趣味」で、どちらかというとブラック寄りだったのですが、先の「それは私と〜」との対比でとにかく白く見えてしまいます。多分ブラックに思えたのは、彼女を取り巻く環境が作り出していたものであって、ヒロイン自身は純粋なんですよね。もし1巻の時点で「それは私〜」と併せて読んでいたら、こちらはオススメにしていたかも。


〜変わらず恋するわけではなく、一人の少女として成長して恋愛をしていくお話なんだ〜
 さて、そんなヒロインの純粋さというか少女らしさが良く出たのは、何も恋愛方面だけではありませんでした。というか1巻で仄かに芽生えはじめていた恋の兆しは、2巻ではさほど出ず成りを潜め、むしろ別の部分でこそ印象的ですらありました。特にそれが顕著だったのが、友達関係、そして家族関係。特に後妻さんとの関係で見られた変化でした。
 
 荒野は後妻さんに対してはあまり良い印象を抱いておらず、態度も割と頑なでした。その傾向は2巻に入っても変わらず、この対立構造に変化が見られることはない(後妻さんはやがて家を捨てられて家を離れるんじゃないかくらい)に思っていたのですが、後妻さんの再三のアプローチによって…
 

荒野の恋2−1
態度は軟化。そして母親として関係を築くようになる。


 最初この作品は、ヒロインが変わることなく一人の男の子相手に恋愛をしていくという恋物語だと勝手に思っていました(タイトルも恋愛を想起させているし)。けれども身体の変化といい、友達関係での変化といい、そして家族関係での変化の受容といい、むしろ積極的に成長・変化を迎合し、一人の人間としての成長譚になっているのかな、と(取り巻く問題は少女的ではあるけれど)。なんだか2巻で作品に対する印象変わりまくり。どこか毒づいた感はあるけれど、それでも前向きなお話なんだなぁ、とか。
 
  
〜百合っぽさ〜
 そうそう、今回友達関係のお話でちょっとビックリな展開が…
 
 
荒野の恋2−2
百合
 
 
 もうね、タカハシマコ先生だし、桜庭一樹先生だしと、普通にしてればなんの違和感も感じないこの展開。でも良く考えてください、これ「なかよし」連載なんですって。そもそもこのお話がなかよし連載しているのがすごいのですが、もうごく普通のように百合表現が出てきてしまうあたり、さすがです。なかよしといえば既に「野ばらの森の乙女たち」(→レビュー)なんてガチ百合作品が連載されていたりと、受け入れる下地は充分にあるわけですが。きっとこれからもごくごく当たり前のようにこういう展開が出てくるのでしょう。なかよしは一体どこに向かっているのだろう。


〜3巻が最終巻のようです〜
 さて、本作ですが3巻が最終巻のようです。結構展開速いですが、一体どのような着地点になるのか。一癖も二癖もあるように見えますが、本筋の展開としてはかなり王道(だと思っています)。一応低年齢向け少女マンガということで、このまま真っ直ぐに行くのか。材料として「なかよしで行ける!」って思ったからには絶対に何かそういった要素があるはずで、序盤〜中盤がなかなか単純でないお話だったので、最後まとめの部分でそれが出てくるんじゃないかな、とか勝手に予想しています。何はともあれ最後まで楽しみですねー。3巻もレビューしますよ!


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Tag [続刊レビュー] 2012.06.12
作品紹介→*新作レビュー* 遠山えま「わたしに××しなさい!」
2巻レビュー→三角関係突入!《続刊レビュー》遠山えま「わたしに××しなさい!」2巻
関連作品レビュー→遠山えま「ココにいるよ!」
3巻レビュー→これはただの恋愛ではない、覇権を懸けた熱き闘いなのだ:遠山えま「わたしに××しなさい!」3巻
4巻レビュー→「なかよし」で指フ○ラは、セーフなのですか…?:遠山えま「わたしに××しなさい!」4巻
5巻レビュー→指フ○ラの次は耳舐めとか「なかよし」始まりすぎている:遠山えま「わたしに××しなさい!」5巻
6巻レビュー→繋がりたい、離れたくない:遠山えま「わたしに××しなさい!」6巻
関連作品レビュー→神さまは髪の中から現れる…:遠山えま「かみかみかえし」1巻
7巻レビュー→またしてもアウトな予感:遠山えま「わたしに××しなさい!」7巻
8巻レビュー→マミのライバルキャラは何処へ…:遠山えま「わたしに××しなさい!」8巻




1106166155.jpg遠山えま「わたしに××しなさい!」(9)


あいつはオレが守る


■初恋の人が霧島だと気づいた雪菜は、ひとり霧島の元へ向かう。一方、時雨は霧島の過去の黒い噂を耳にし、雪菜の後を追うが、霧島は雪なを車に乗せて走り去り…!?キケンな初恋の結末は…緊迫の第9巻!!


〜講談社漫画賞児童部門受賞おめでとうございます〜
 このニュースを聞いたときは驚きました。
 
講談社は5月10日に、第36回講談社漫画賞の受賞作品を発表した。賞は4部門から構成されており、児童部門は遠山えま さんの『わたしに××しなさい!』(以下略)

 なんと、講談社漫画賞の受賞です。しかも児童部門です(掲載誌考えるとここが一番妥当なのですが)。もちろん、掲載誌「なかよし」での人気は1、2を争う看板作品。しかしながら、中身がですね…。どんな感じがご存知の方は、「これいいのかなぁ」的な感情をお抱えかと思いますが、私もです。ご存じない方は過去のレビューを遡ってみてくださいね!
 

〜黒いとかってレベルじゃねーぞ〜
 さて。9巻のお話へと移りましょう。雪菜の幼稚園の先生が登場したことによって、状況は慌ただしく動き出したわけですが、ついに雪菜が大きく行動に出ます。「恋を知るため」に、先生にアプローチ。晶や時雨に事前に話をしておいて(ナチュラル悪女や…)、先生に近づくことを決めます。しかしながらこの先生、とんでもない黒い噂をお持ちでして…
 

わたしに××しなさい!9−1
あの先生…
まえに卒園生に手を出したって…

 

 アウトー!!卒業生ならぬ、卒園生!!!!このフレーズ聞いた時思わず「おいおいLOか」、と。いやだわこんな噂のある先生(笑)現実にいたら事実確認できずともとりあえず通報するレベル。ギリギリまで待ったとかならまだしも、先生は御年29歳。20歳から働きはじめたとしても、相手はせいぜい…。もうこれ真っ黒とかそういうレベルじゃないです。

 しかし結局それは誤解であることが判明(当たり前です)。彼女がそこの卒園生で、それが曲解して伝わったようでした。結局この先生は、親切心で卒園生にアドバイスしてあげようとしただけなのに盛大に誤解されて、罵声にも似た言葉を浴びせかけられた…しかもワケの分からない黒い噂までセットで…という、めちゃくちゃかわいそうな役回りだったのでした。てかちょっと扱い可哀想すぎるだろ…。


〜改めて晶と時雨の一騎打ちに…〜
 恋を知ったけれども、それは叶わぬ恋だと知った雪菜。結局状況は振り出しに戻り、再び晶と時雨の一騎打ちの状況へ。そうなると俄然有利なのが時雨。晶も時雨もどちらも雪菜を想う気持ちは変わらないと思うのですが、どうしても時雨の方が接触できてしまうタイミングが多いんですよね。今回も先生との一件の後に雪菜と急接近したのは時雨でした…
 

わたしに××しなさい!9−2
無駄にスク水


 「ぽちゃぽちゃ水泳部」では飽き足らず、こちらでも水着ですか、まったくお好きですねぇ。てかやっぱり無駄に描き方がエロい。しかも雪菜さん、水に入っている時はどうかわかりませんが、基本的にメガネは取らないようで、スク水+メガネという、実際にはなかなかないフェチ度の高い格好をしているという。これ狙ってるのか?それとも自然にこうなっちゃったのか?どうしたって穿って見てしまいます、はい。しかしながらこの格好では、密な身体接触はなく、背中に描き文字をするだけでおしまい。けれどもたぶん、ここでは終わりません。時雨の「もっとすごいことしてやる」で途切れた9巻。こういうシチュエーションで巻またぎって、今まであったでしょうか。さてさて何が起こるのやら…
 
 
〜何気にマミがきっちちふられていた〜
 こんな怒濤の本編の片隅で、ひっそりとその恋に終止符を打とうとしている子が一人いました。そう、マミです。もうね、先生の黒い噂とかに全部持ってかれそうだったのですが、何気にこのパートで一番可愛かったのは彼女かと。
 

わたしに××しなさい!9−3
 多少勢いに任せたとはいえ、改めてしっかりと想いを伝えたマミ。フラれることは、どこかでわかってはいたと思うのですが、それでも悲しく、思わず涙が。雪菜の涙に真剣になる男子二人ですが、9巻で一番泣いたのは彼女なんですって。どうしても報われないポジションになってしまいがちですが、最後は笑ってくれるとよいものです。晶には、はやくそっちを向いて欲しいものですね。



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Tag [続刊レビュー] 2012.02.27
1106121586.jpg遠山えま「わたしに××しなさい!」(8)


あれはわたしの
初恋だったんだ



■8巻発売しました。
 あれは…私の…初恋だったんだ。「逆ミッション」中の雪菜の前に現れたのは、弱点のきっかけになった保育園の先生・霧島だった。動揺する雪菜は、胸の奥のある気持ちに気づいて…!?四角関係に新キャラ参戦!?「初恋」が嵐を呼ぶ第8巻!!
 

~新キャラ登場!~
 巻も重ねて8巻、巻数が二桁に乗るのも、間違いないと見てよいのではないでしょうか。何気になかよしでも古参の域に入ってきましたが、本誌での位置付けってどんな感じなんでしょうか。打線で言うとクリーンナップ張れるくらいの人気はあるような気がしておりますが。
 
 さてそんな中、新キャラの登場です。しかも何やら、初めてのメインキャラたちと年の差のある、しかも男性です。雪菜の幼稚園の時の先生であった彼・霧島は、雪菜のトラウマを生み出した人間でもあり、また一方で彼女にとっての初恋の相手でもありました。このどちらも意外で驚きました。ここまで頑になっている雪菜のトラウマは、割と小さく些細な出来事がきっかけであったこと。そして、恋の”こ”の字も知らなそうであった雪菜が、初恋を経験していたこと。あれれ、じゃあこの関門さえ越えれば案外あっさりとミッションコンプリート、めでたしめでたし…?なんて思って見たら、今度はむしろ時雨の方が厄介そうな家庭問題を抱えていそうな気配がします。そんな時雨ですが、自分のことはさておいて、突如現れた先生の存在が気が気でないようです。そんなわけで、今までの流れとは異なり今回はややシーンとしては大人しめでした。
 

~これはある意味とってもエロい~
 そんな中唯一あった雪菜と時雨の絡み。雪菜のメガネを取り、声だけを頼りに捕まえてみせろと言う時雨に対し、雪菜は恐れつつも彼に必死についていきます。雪菜にとって、メガネは様々な意味を持つ道具になっていますが、実際に視力も良くなく普通にメガネとしての機能も生かしていたようで。。。周囲もよく見えず、時雨と勘違いして高校生を掴んでしまい、逆にナンパ絡みされるというアクシデントに見舞われるのですが、そんな彼らを追い払おうと
 
 
わたしに××しなさい8-1
キスに見せかけつつ口でメガネを戻す


 器用すぎる…とかいうツッコミは置いておいて、これはこれでまたエロいっすな、と。ここ最近は直接的な接触でもって冒険してきましたが、今回はなんというか時雨の行動に含まれる矛盾感がなんとも。シチュエーションとしては、時雨が雪菜を救ったという構図で、力関係としては時雨の方が上になっています。けれども口で物をくわえて持ち主に返すなんて、時雨が雪菜の犬的な真逆の力関係を示すわけですよ。そういうプレイなんじゃないかっていう。
 

~マミが完全にうざかわいいキャラになった~
 さて、そんな雪菜と時雨の絡みも良いのですが、ここ最近のマミがまた非常に良いキャラしてまして。初登場時は計算高くて意地の悪いライバルキャラでしたが、今となってはライバルなのか友達なのかよくわからないポジションに落ち着いた彼女。当初の小悪魔感はすっかり消え去り、普通の恋する女の子に、そして人懐っこくてちょっとうざい女友達キャラへといつしか変貌を遂げていました…
 


わたしに××しなさい!8-3
とりあえず仲間に入れてもらいたがる




わたしに××しなさい!8-2
晶の生い立ちに思わず泣き、ぬいぐるみをあげちゃう




わたしに××しなさい8-4
晶が落ち込んでいると思って雪菜のコスプレをしてきちゃう



 ちょっとお節介焼きな、とってもええ子やないですか…。作中だと4人の中で唯一浮いているように映る彼女ですが、その実一番普通の感性を持っているのが彼女なんじゃないかと思います。ただちょっと素直すぎて、すぐに感化されちゃって行動がエスカレートしちゃうってだけで(だめじゃん)。てか何気に晶とのフラグがビンビンですよー。この二人はきっと絶対合いますよね。クールな晶と、やたらと絡みたがるマミで、二人合わせて丁度良いバランス。想い叶わぬかませ犬同士というのがなんとも哀しいですが、そういう組み合わせの方がより幸せな未来を思い描けるのもまた事実。是非ともこの二人にはくっついて欲しいなぁ。だって付き合いはじめたらマミまた絶対うざ可愛いですもの、きっと。好きな人を想うだけでなく、想われているという安心感の中で甘える、そんな姿彼女の姿もまた見てみたいものです。



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Tag [新作レビュー] 2012.02.12
1106121587.jpgタカハシマコ/桜庭一樹「荒野の恋」(1)


悲しみと
プライドの澄んだ匂いがする



■中学の入学式の日、山野内荒野は電車で少年・神無月悠也に窮地を救われる。小説家で恋多き父と、父の愛人たち、新しい義母、そして義母の連れ子……。中学入学と共に目まぐるしく変化する荒野の世界。環境、心、カラダ…その全てが、否応無く少女を大人への階段へ押し上げる。いま、少女の“あなた”と、かつて少女だった“あなた”に贈る、切なさの薫る物語…。

 タカハシマコ先生のなかよしでの連載作になります。タカハシマコ先生となかよしというとなんとなくイメージが合うように思えるのですが、さらにこれが桜庭一樹先生の原作付きというのだから驚き。このタッグはフレックスコミックスフレアでの「青年のための読書クラブ」(→レビュー)と同じで、実際こちらも評判が良く、それを受けての再タッグということでしょうか。しかしガチ百合作品が連載されていたり、西炯子先生が連載していたりと、ここ最近のなかよしは一気にベクトルが…。
 
 物語は一人の少女の成長譚(だと思います)。舞台は鎌倉、中学の入学式に向かう途中、電車のドアに服を挟まれた主人公・山野内荒野は、そのピンチを一人の少年に助けられます。メガネをかけた見るからにクールな、どこか憂いを帯びたような佇まいの彼。同じ駅で降りたものの、早足の彼の姿はすぐに見えなくなってしまいます。その後学校へ行ってみると驚き、なんとそこにはさっきの彼が。。。初対面のはずなのに、何故か自分を知っているような彼・神無月悠也は、なんと父の再婚相手の連れ子で…。そのことを知ったのは、荒野が悠也を少しずつ意識しはじめた頃でした…というお話。


荒野の恋
中学生になったばかり。これから成長を迎える、女の子と男の子の恋。


 第二次性徴を迎え、子供と大人の狭間で自分の変化と強く意識する年頃。その様子を、可愛らしく、けれども時に痛々しく切り取った本作。なかよし連載ということですが、恐らく本当のターゲット層はもっと上の年齢層だと思います。「青年のための読書クラブ」もどこか隠微さを漂わせるシーンはあったものの、それにも増してこちらは。なんというか、都度都度のアイコンとしてそういったワードやモチーフを、意図的に、半ばあからさまに落とし込んで来ているんですよね。「胸が大きくなる」とか「ナプキン」とか「ブラジャー」とか「性欲を伴った好意」だとか「彼の穿いていたパンツ」だとか。。。自分の意志に反して、ただただ大人へと変化していく身体・環境・心に、最初は戸惑いを見せつつも、やがて受け入れ自ら変化していくヒロインの様子から、目が離せません。


荒野の恋1-2
変わる自分を受け入れきれない。けれども否応無く変わってゆく自分。その葛藤を余すこと無く描き出す。


 桜庭一樹さんの原作ということで、台詞回しや登場するフレーズがいちいちオシャレ。気どっているというか、どこか中二病っぽい感じも含めて、桜庭一樹作品だなぁ、と感じさせてくれます。登場人物が皆々どこか普通とは異なる感じなのも、またその一つ。最も浮世離れしているのは、恋愛小説家をしているヒロインの父。近場の女性を皆々虜にしてしまうくらい恋多き人で、多くの人を泣かせてきた(結果ヒロインに厄災がかかることも…)にも関わらず、突然娘に相談もなしに結婚すると言ってきたりするっていう。他にも謎多き家政婦さんや、相手役になるであろう悠也もちょっと変わった感じ。そこにあるのはとにかく非日常で非現実なのですが、それがヒロインの成長というある種生々しい部分を際立たせてもいます。悪趣味というと言葉が悪いですが、少なくとも読み手を気持ち良くさせようって魂胆はこれっぽっちもないです。そしてそれが良い。
 
 そういった桜庭一樹テイストを残しつつ、併せて持つ毒々しさのようなものが、上手くタカハシマコ先生のふんわりとした絵柄で包まれて、独特の雰囲気を形成。相も変わらずわかりにくさを伴う物語なのですが、それでも読ませてしまう魅力があります。いや、ほんと分かりづらいんですって。ドロドロしたものが読み進める毎に溜まっていく感覚。なんだかさっきから褒めているのかどうかよくわからない感じになっていますが、やっぱりこのタッグは素敵です。原作を知らないのでこの先どう転がるのかはわかりませんが、続きを読まずにいられるかってんですよ。


【男性へのガイド】
→タカハシマコ先生絵ですし、桜庭一樹先生ですし、男女以前の向き不向きがあるような気がしますです、はい。
【感想まとめ】
→このタッグはやっぱり良いです。割とクセが強いので、なかなかオススメってしづらいんですが(笑)



■作者他作品レビュー
タカハシマコ「乙女座・スピカ・真珠星-タカハシマコ短編集-」
タカハシマコ「泣いちゃいそうよ。」


作品DATA
■著者:タカハシマコ/桜庭一樹
■出版社:講談社
■レーベル:KCなかよしDX
■掲載誌:なかよし
■既刊1巻
■価格:562円+税


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Tag [続刊レビュー] 2011.10.23
作品紹介→*新作レビュー* 遠山えま「わたしに××しなさい!」
2巻レビュー→三角関係突入!《続刊レビュー》遠山えま「わたしに××しなさい!」2巻
関連作品レビュー→遠山えま「ココにいるよ!」
3巻レビュー→これはただの恋愛ではない、覇権を懸けた熱き闘いなのだ:遠山えま「わたしに××しなさい!」3巻
4巻レビュー→「なかよし」で指フ○ラは、セーフなのですか…?:遠山えま「わたしに××しなさい!」4巻
5巻レビュー→指フ○ラの次は耳舐めとか「なかよし」始まりすぎている:遠山えま「わたしに××しなさい!」5巻
6巻レビュー→繋がりたい、離れたくない:遠山えま「わたしに××しなさい!」6巻
関連作品レビュー→神さまは髪の中から現れる…:遠山えま「かみかみかえし」1巻




1106079489.jpg遠山えま「わたしに××しなさい!」(7)



なんか…
めちゃくちゃかわいーから



■7巻発売です。
 ついにマミが時雨に本気告白!!予想外のマミの告白にとまどいを隠せない時雨。そんな時雨の態度にじれた雪菜はマミにまさかのライバル宣言!?一層とまどう時雨は、雪菜に対して思いもよらない行動に!?晶は晶で、マミの恋を陰で応援!四つどもえの四角関係は、一気に大波乱に!
 

~お待たせしました~
 先日レビューしました「GFDGD-DOGS」(→レビュー)と同時発売になります。なぜだかウチのブログの「×しな」のレビューはコメント欄が非常に賑わってまして、レビューのリクエストなどもちょいちょい頂いていたりするので、やっとお届けできましたという感じです。特別なにもしていないので、なぜ「×しな」ばかりこんなに?という感じではあるのですが、リクエスト頂けるのは非常にありがたいことですので、気にせずいつもとおりにレビューしていきたいと思います。


~告白したマミさんがスタンダードヒロインだと思うんです~
 前回ついに告白をしたマミさん(さん付けやめよう)、7巻最初からその続きと、いきなり見せ場からやって参ります。初登場からずっとこの子のことをプッシュしていたわけですが、7巻は本当に素直に可愛かったです。告白も、彼女が持っている不安さや、想いを伝える恥ずかしさが前面に出た…
 


わたしに××しなさい7-1
このもじもじ感


 手を寄せている感じとか、相手の顔を直視できない様子とか、純然たる少女マンガのヒロインの告白じゃないですか!結局時雨から答えはもらえず終いとなり、その後しどろもどろに気まずい雰囲気となるわけですが、だからといって暗い気持ちになるわけではなく、あくまで前向きに。雪菜から、時雨のことがどれくらい好きなのか尋ねられた際には、ためらうことなく「世界で一番好き」と答え、ライバルと目する雪菜に対しても、爽やかに…
 

わたしに××しなさい7-2
ぜったい負けないよっ


 うおっ眩しっ!このピュアさ、明るさ、前向きさ…すごくヒロインっぽいです。そして左隅にテレビのワイプの如く追いやられる雪菜。このあと「まずい」と思うわけですが、どう考えてもヒロインの座が奪われてしまうと思ったことでしょう(思ってない)。そんな雪菜は正攻法とは真逆、唐突にライバル宣言して、自分の気持ちに気づかないままに恋愛戦線に躍り出ることになります。こんなヒロインでいいのか…?とすら思ってしまうような強引なやり口に、物語は益々盛り上がるわけですが、この行動はもうヒロインでもライバルでもなく一発キャラですよね。そんな子をメインヒロインに据えて物語を壊すことなく進められてるってのは、ある意味すごく希有なことなのかもしれません。これがもし、マミ視点の物語でも、充分成り立つというか、むしろそれこそがスタンダードの感。そして雪菜の邪魔物っぷりすごいことになってるはずです。体の弱いヒロインの心の支えになってくれた幼なじみ。そんな彼にずっと想いを寄せていて、我慢していたけど自分の気持ちにウソはつけない。高校生になってついに…と思ったら、横から出て来たよくわかんない子にかっさらわれてくっていう…マミさんは不憫な子。


~またしてもアウトの予感~
 さて、そんな異色のヒロインである雪菜。とりあえず二人はエロいことやってりゃいいんじゃないの?(投げやり) なんて、そんな言葉を投げかけずとも、とんでもないことになっておりますよ、またしても。ブレーキかけるつもりはないようです。今までも、「指フェラ」「耳舐め」等々様々なアウトシーン出て来ていたわけですが、今回もすごいっす。もちろん高校生だから、こんなことやっても、まぁいいかなとは思うんですけども、掲載されているのはあくまで「なかよし」ですから、やはりそれを考えるとですね(【追記】高校生だと思ってたら中学生でした…)。ってどのシーンのこと言ってるかっていうと…
 

わたしに××しなさい7-3
目隠しプレイからの指舐め再び



 もうね、この擬音(笑)そういうプレイじゃないんだから、そんな音しないだろっていう。そしてこの直後、雪菜の「感じる」発言。もちろんそれは、「彼の感触を感じる」という意味合いで発せられたものではあるのですが、そこだけ大ゴマぶち抜きで切り取って描くあたり(このコマは単行本で読んでのお楽しみ)、絶対に狙ってますよね、遠山先生。あくまでアイスを持って、その溶けたアイスを舐めとるという、理由あっての行動にはなっているのですが、そういうギリギリのラインを狙う屁理屈じみた冒険が、着エロ等のエロコンテンツの制作サイドのそれっぽくて…(笑)そしてもちろん忘れないのが、男性へのサービス…
 
 
わたしに××しなさい
プールに落ちて透ける下着


 これも狙ってるなぁ…。というか、今まで出てなかったのが不思議なくらいではあります、はい。そして透けた下着の柄が、意外にも花柄っていう。雪菜ってそういうのにあんまりこだわりがなさそうなイメージがあったので、花柄でちょっと驚きました。意外にもかわいらしい柄なんですねー。しかしこういった男性の方にこそ需要がありそうなハプニング、最近女性向けでもよく目にするのですが、嬉しいものなんでしょうか?これだったら時雨の着替えを目の当たりに…とかの方が、嬉しいんじゃない?とか単純に考えてしまうのですが、そうじゃないのかもしれませんね。って今回この二人の関係の進展について何も語ってないですが、そういった関係になるには未だ一押しふた押し足りないという感。そしてまさかの身バレフラグが、大きな波乱を呼びそうです。てかマミさんはライバルケータイ小説家じゃないんでしょうか。。。その説をずっと書いて来たわけですが、ここに来てもうその設定すら消えそうという…次出てこなかったらきっと出てこない気が。


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東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
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王国の子
びっけ「王国の子」(1)
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稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
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2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




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池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




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有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。