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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2011.08.24
1106057473.jpg西炯子「恋と軍艦」(1)



やはりあの二人はあやしい…


■藤原晶、中学1年生です。クラスメイトの遠藤香菜の憧れのヒトは、28歳年上のさわやかイケメン町長さん。なのに金髪ピアスに、くわえ煙草に無精髭の不良オヤジと友達で、どうやらしばしばお泊まりしている仲らしい。全然似ているところがないのに、おそろいの香水を付けていたり、魚の小骨をとってあげていたり…。怪しいほどに仲の良い二人を前に、遠藤さんの恋に未来はあるの!?

 西炯子先生の、なかよしでの連載作になります。最初ニュースを見た時は、「は?なに、間違いじゃないの?」と思ったくらいに意外な組み合わせ。「娚の一生」(→レビュー)だとか、「ひらひらひゅ~ん」(→レビュー)といった、面白い作品を多数発表している先生ですが、そのイメージはオトナ向けな印象。それゆえに、低年齢の極みであるなかよしで連載とは、また思い切ったことを。どのようにシフトしてくるのかと思いきや、ちょっとテンションが高くなった感があるだけで、いつもの西炯子先生でした。
 
 それでは物語の内容をご紹介致しましょう。主人公は、東京からおばあちゃんの家に預けられてきた、中学一年生の女の子・遠藤香菜。慣れない土地で、未だ友達がいない彼女は、それでもこの町をいやがらずに日々を送っています。その心の拠り所は、密かに想いを寄せる人…。その人は、28歳年上のさわやかイケメン町長さん。日々彼のところを思い浮かべながら、にやにやしているのでした。そんなある日、ひょんなことから仲良くなった(?)クラスメイトの藤原晶と一緒に訪れたのは、町外れにあるとあるお屋敷。そこに住むのは、無精髭でタバコを吸っている金髪の不良外人(イメージ)。爽やかさとは無縁で、町長さんとは正反対のイメージなのに、なぜか町長は日がなこのお屋敷に通っては、お泊まりしているようで…!?というお話。


恋と軍艦
料理とか作っちゃう仲。そんな怪しい二人を前に、ヒロインの二人は全く違った反応を見せる。でもどちらもまだまだおこちゃまで、その核心には触れられない。


 恋に恋する、純粋無垢なヒロインと、耳年増でドライな視点を持ったクラスメイトの女の子。そんな二人の凸凹コンビが立ち向かうのは、なんとも怪しい関係を匂わせる、爽やかイケメン町長さんと、不良外国人エロ漫画家。なかよしでBLネタですか、とかビックリしてみたものの、エロさで際立つ「×しな!」(→レビュー)や、ガチ百合な「野ばらの森の乙女たち」(→レビュー)、さらにはサバゲ漫画の「さばげぶっ」(→レビュー)まで作品も連載しているので、こんなのカワイイ方かもしれません。登場人物の配置からするに、単純に恋愛ものとして転がらないことは明白。かといってどういう方向に転がって行くのかも、正直なところ現時点では全く分かりません。
 
 それでも頁をめくらせてしまう不思議な魅力はあり、なんとも続きが気になるところであります。元々西炯子先生って、どこかあからさまな非日常を落とし込んで、ドタバタやるパターンが多い気がするのですが、それが低年齢向けのなかよしとなると、素直に演出として受け入れることができるので、この発表媒体はむしろ合ってるんじゃないかとすら思えました。キャッチーかと言われると決してそうではないと思うので、本誌で支持を得るかと言われるとよくわかりませんが、肌は合いそうだな、と。
 
 面白いとは思うのですが、それでも掴みきれないこのすっきりしない感じはなんだろう(笑)個人的にはヒロインの遠藤香菜ちゃんよりも、ガード堅そうに見せてその実攻め込まれると脆い、藤原晶ちゃんの方が俄然好きですかね。男二人は良き雰囲気を漂わせつつも、どちらも胡散臭すぎて、いつもの西炯子作品の男性陣だなぁ、と(笑)


【男性へのガイド】
→西炯子先生好きであれば問題ないかと思われますよー。クセも抑えめ、ややマイルドに。
【感想まとめ】
→オススメしようか迷うところではありますが、たぶん続き読まないと絶対後悔するんですよ、こういうのは。私は買います。だって気になるので、落としどころが。


■作者他作品レビュー
西炯子「ふわふわポリス」
西炯子「うすあじ」
「西炯子のこんなん出ましたけど、見る?」
自分が幸せになれないと決め込んでいるあなたへ:西炯子「姉の結婚」1巻


作品DATA
■著者:西炯子
■出版社:講談社
■レーベル:KCなかよし
■掲載誌:なかよし(連載中)
■既刊1巻
■価格:419円+税


■購入する→西炯子「恋と軍艦」(1)

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Tag [続刊レビュー] 2011.06.23
作品紹介→*新作レビュー* 遠山えま「わたしに××しなさい!」
2巻レビュー→三角関係突入!《続刊レビュー》遠山えま「わたしに××しなさい!」2巻
関連作品レビュー→遠山えま「ココにいるよ!」
3巻レビュー→これはただの恋愛ではない、覇権を懸けた熱き闘いなのだ:遠山えま「わたしに××しなさい!」3巻
4巻レビュー→「なかよし」で指フ○ラは、セーフなのですか…?:遠山えま「わたしに××しなさい!」4巻
5巻レビュー→指フ○ラの次は耳舐めとか「なかよし」始まりすぎている:遠山えま「わたしに××しなさい!」5巻
関連作品レビュー→神さまは髪の中から現れる…:遠山えま「かみかみかえし」1巻



1106035974.jpg遠山えま「わたしに××しなさい!」(6)


これをオレが治す


■6巻発売です。
 わたしとの絆がほしいのか…?マミに弄ばれた仕返しに、時雨を誘惑する雪菜。2人のキョリを少しずつ縮める雪菜と時雨だったが、その陰でマミの心はバランスを崩しかけていた。そこに気づいた晶は、マミに対してアクションを起こすけれど…。もつれあう四角関係がビミョーに変化する、第6巻登場です!!
 
 
~今回もエロ…かと思いきや!~
 6巻発売ですよー。4巻、5巻ととんでもない攻めを見せた遠山えま先生。今回もさらにパワーアップして、とんでもないのが来るのかと思いきや、意外や意外、ちゃんと低年齢向けらしいまとめ方をしていました。あ、でもやっぱり遠山先生ですから、ただただ安全な方向に行くなんてことしません。もちろんエロさは匂わせつつ、たとえばこんなシーンが…


わたしに××しなさい!6-1
ロッカーに入って手にキスなど


 ちょっと何やってるんですか…なんてこの後さらにですね、こう危ない感じになりますです、はい。掲載誌が掲載誌だけに、絶対に超えない一線というのがあるというのが一つの安心感にはなっているのですが、同時に掲載誌が掲載誌だけに、シチュエーションだけでもエロを匂わせるような物が出てくるだけで、多少冷や汗が出るというか。ちなみに遠山えま先生、この他にも男性向けに作品を掲載していますが、多分一番エロいのはこの作品だと思います。ほんとうにとんでもない方ですな(褒め言葉)


~時雨が男らしく頑張りました!~
 さて、今回エロさだけを追求するのではなく、打って変わってしっかりとしたまとめ方、繫ぎ方となったのは、他でもない時雨の頑張りがあったからでした。今までは、雪菜に振り回されてどちらかというとヘタレっぷりが強めに出ていた彼ですが、今までにないくらい爽やかにイケメンに振る舞っていましたよ。しかも一度だけではなく、2度までも。その2回とは、途中で挟まれた告白と、最後のひとつの宣言。告白の方は、なんか結局良くない方向に勘違いされて、軽くあしらわれることとなりましたが、2度目の方は効きました。
 

わたしに××しなさい!6-3
これをオレが治す


 治すと言ったのは、メガネをかけてでないと、恐怖で他人と対峙できないという雪菜の弱点。形式張った最初の告白よりも、彼女の特質に特化したこの宣言の方が、俄然彼女の胸に届きました。基本的に常識知らずというか、普通に想いを伝えた所で伝わらない相手なんですよね、雪菜って。他人の心にはとことん疎いというか。それでも自分の弱点などはしっかりと自覚しているので、もし相手の心とつながるのであれば、一歩彼女の方に踏み込むしかないという。先の告白と、最後の宣言。どちらも時雨は真っ直ぐに言葉を発しましたが、前者は自分の想いを伝えるだけであったのに対し、後者は雪菜の心に強制的に踏み込む形で、その中身は全然違っていたのでした。
 

~マミはくるみちゃんでした~
 さて、今回カッコ良さを爆発させた時雨ですが、あの悪女・マミちゃんも可愛らしさを爆発させましたよ!今までどう考えてもだだ漏れでしたが、彼女が時雨のことを好きであるということが正式に表に出ることに。それと同時に、彼女の時雨との関係についての考えも明らかになりました。
 

わたしに××しなさい!6-2
友だち…だからずっといっしょにいられたのに…
告白なんかしたら
きっとヤになって…マミからはなれちゃう



 あれだけの可愛らしさを誇っていながら、彼女の時雨との未来想像図は白紙、少なくとも明るい未来が待っているとは思ってもいないようでした。ある程度優位な位置から他の女の子を眺め、少しでも近づいてきたら蹴落とす…とでも言うような態度に見えた彼女の行動ですが、その真相は、余裕なんてどこにもない、必死で自分の居場所守る、友達の少ない病弱な女の子のそれでした。自分は告白はできなし、告白をしたとしてもイヤだと思われるという想いが支配する中、彼女ができることといったら、近づく子を邪魔すること。元々ゲーム感覚で告白されることを楽しんでいた時雨ですから、自衛というか、放置していてもそれなりに大丈夫という感覚があったのかもしれませんが、雪菜はそうはいかないみたいで、そりゃあ必死にもなります。ああこの感覚、「君に届け」(→レビュー)のくるみちゃんだ。彼女もまた、風早との将来が望めないということから、近づく子を必死に遠ざけ、そして今までとは明らかに違う女の子・爽子の登場に戦々恐々としていました。くるみちゃんは、結局自分の気持ちをしっかりと伝える道を選びましたが、マミもまた同じ道筋を辿ろうとしています。より優柔不断というか、弱ってる女の子にどこまでも弱そうな時雨のことですから、意外とこれくるみちゃんパターンを辿らない可能性もありますが、どうなるのでしょうねぇ。。。早くも7巻が楽しみでしょうがないです。



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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2011.06.11
1106036045.jpg松本ひで吉「さばげぶっ!」(1)


ゆずれないものがあるなら
自分の足で立ち
自分の手で戦え



■モモカは転校慣れした女の子。表向きはいい子だけど、内面はかなりの毒舌派!!「今度の学校では、何か刺激的なことがないかなー」なんて思っていたら、初日から学園のカリスマにして、サバイバルゲーム部の部長である美煌につきまとわれることに。わけのわからないお誘いに、引き気味のモモカだったけれど、射撃の才能があるらしいモモカに惚れ込んだ美煌のアタックは続き、結局入部してしまうことに。。。足を踏み入れたその世界は、モモカの全く知らない世界で…!?前代未聞のサバゲコメディ、開幕!!

 えーと、すごい作品が登場しましたよ。異様なほどのエロ描写で話題を集める「わたしに××しなさい!」(→レビュー)や、ど正面の百合作品である「野ばらの森の乙女たち」(→レビュー)など、今までにも増して自由度が高くなっている感のあるなかよしで、今度はサバイバルゲーム漫画の登場です。しかも面白いと来たから困ったものです。ネタありきの出オチを想像してしまいがちですが、作者さんの名前を見てください。先日月刊少年ライバル連載作で、講談社漫画賞児童部門を受賞した「本当にあった!霊媒先生」の松本ひで吉先生ですよ!もうネタですが、ネタじゃないです。本気です。というわけで、「さばげぶっ!」のご紹介です。
 
 主人公は、転校を繰り返している女子高生・モモカ。何度目かの転校でやって来た学校での、新生活初日に、事件は起こりました。電車で痴漢に遭ったところを助けてくれたのは、なぜか拳銃を構えた女子高生。そんな彼女と、なんと転校先の学校で再会、以降やたらとつきまとわれるようになるのでした。その人の名前は、鳳美煌。非常に美しい容姿をしていて、学園内のカリスマであり、そしてサバイバルゲーム部の部長…そして超の付く変人。なぜだかわからないけれど、彼女からサバイバルゲームの才能を見出されたモモカは、彼女の勧誘攻撃を受ける日々。そして熱意に押される形で、入部をすることになります。全く想像していなかった部活に、モモカはやる気なく足を踏み入れることになるのですが…というお話。


さばげぶっ
しばしば挟まれる、サバイバルゲーム知識に銃器の知識。あくまでコメディベースで親しみやすく、そしてヒロインが突っ込みやすく。


 サバイバルゲームはあくまで話のタネとして…かと思いきや、しっかりと専門用語を散りばめて、物語の軸として使ってきます。私はほぼほぼサバイバルゲームや銃器についての知識がないので(「なかよし」読者も絶対ないだろ)、出てくる単語や知識に「へー」と感心するばかり。どう考えてもコアすぎるネタの数々に、これ少女漫画誌でやって大丈夫なのかと心配になる一面すらあります。けれども話の大筋は、ちゃんと知らない人が読んでも楽しめる…というか、知らない人のために作られていて、非常に読みやすい物語に仕上っています。もちろんコメディということもあるのですが、例えばヒロインが入部をしたら「はい、じゃあ競技を始めましょう!」ってことにはならず、掴みの対戦はファッション対決であったりと、本当にお上手。
 
 とはいえだからと言って、専門的なサバゲ要素が薄くなるかというとそうではなく、常にギリギリの線上でネタを落とし込んできます。というか、わからないけどなんか面白いという、アメトーク的な感覚だったり。またサバゲ経験者側に容易に近づかせずに、ヒロイン側に視点を固定する効果もあったりで、おバカな物語展開をしていながら、作りはすごく読み手に優しいです。本当にすごいな、と。そしてよくよく考えると、女子が銃器を振り回すってのは、「セーラー服と機関銃」という大成功例があるわけで、意外と親しみやすい絵面なのかもしれません(いや、それはないか)。ただひとつ心配があるとしたら、まだゲームをしていないということ。意外と部室コメディで終わってしまう可能性もあるのですが、それでもネタとして使えているだけで十分すごいと思いますけど。
 
 作者さん自身、サバゲに詳しいようなのですが、その作者コメントがまたすごい。この先生はこういうキャラなのですか?松本先生の作品は初読であったので、ちょっとドびっくりしました。


部長の持つ銃についてはかなり悩みましたが
10歳用でも販売されているXM177Eにしました。
しかしこれよく見たらキャリングハンドルぶった切って
スコープつけていますね。
人の店の人の商品にとんでもないことしますよね。


 最後に「~ね」とか付けられても、2行目以降全くわからないので同意のしようがですね…。またサバゲ全然関係ないですが、
 
 
Q.嵐のメンバーでは誰が好きですか?
A.テレビ持ってないので今ネットで調べました。
  相葉という人がサバゲで活躍しそうな顔してますね。

  
 色々と突っ込みたいけど敢えて我慢だ…!というわけで、作者さんコメントもストーリーも設定もぶっ飛んだ「さばげぶっ!」出だしだけで話題になりそうですが、内容もしっかりしていて、すごく楽しく読みやすいです。今のところ恋愛に発展しそうな男子が全く登場していないですが、ぶっ飛び系のコメディであれば全然大丈夫。とにかく続きが楽しみな一作が、なかよしにまた登場しました。   


【男性へのガイド】
→これはちょっと読んで欲しいです。コメディですし、親しみやすいはず。
【感想まとめ】
→出オチじゃなかった、これはちゃんと“作り”で面白い作品でした。これはオススメしたいところ。しかしなかよしの最近のフリーダムさはすごいですな。


作品DATA
■著者:松本ひで吉
■出版社:講談社
■レーベル:KCなかよし
■掲載誌:なかよし(連載中)
■既刊1巻
■価格:419円+税


■購入する→Amazon

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Tag [新作レビュー] 2011.06.11
1106035975.jpg遠山えま「かみかみかえし」(1)


神さまは
髪の中から現れる



■髪のなかで神様を休ませて癒す神事「神々返し」   
 物心ついたときから小さな窓があるだけの部屋に幽閉されている少女・ましろは、髪の中に神様を封印している。小さなときから同じ姿、16歳には到底見えないその容姿。面会できるのは、幼なじみの男の子・はやてだけ。小さな窓と、本を通して思い描く外の世界は、ましろにとって憧れの対象。そんなある日、自らの髪に封印された神様と出会い…!?
 
 「わたしに××しなさい!」(→レビュー)の遠山えま先生の連載作です。「×しな」の6巻と同時発売、こちらは1巻になります。遠山えま先生の作品では珍しい、ファンタジー作品となっています。物語の主人公は、3歳のときから16歳の現在まで、小さな格子窓が一つあるだけの部屋に幽閉されている少女・ましろ。この世界では、髪の中で神様を休ませる、「神々返し」という儀式が行われているのですが、ましろは髪の中に神様を封印している「神々返し」の当事者。その弊害か、見ためは小さな子供のときのまま。そんな彼女が外の世界を知ることができるのは、部屋にある数少ない本と、食事を運び髪を梳かしてくれる幼なじみの男の子・はやてだけ。そんなある日、髪に封印されていた神様が、ましろの髪から飛び出してきて…というお話。


かみかみかえし
世間知らずというレベルではない。生きて行けないレベル。だからこそ、目に映る外の世界は希望のかたまり。そしてそんな彼女をサポートする、幼なじみの男の子。面倒見の良い幼なじみってのは、遠山えま先生の作品では鉄板のキャラ配置ですよね。


 遠山えま先生というと、日常ベースの萌え風味な作品というイメージがあったので、こういったお話はちょっと意外。髪から封印されていた神様が飛び出してきたことをきっかけに、幽閉されている環境から脱出。追っ手から逃れつつ、初めて見る世界を知っていくという物語になります。幽閉されていたのは、「神々返し」の儀式とは全くの別物。分家の出身であるヒロインが、本家の娘が儀式をしている中に飛び込んでしまい、彼女の髪に神様が宿ってしまったというのが、事の始まりであり、幽閉はいわばイジメ。そんな所から、髪から飛び出してきた神様、そして幼なじみの男の子(彼もちょっとした能力の持ち主)と一緒に逃げ出すのですが、当然本家の人間は追っ手を送り込むわけで、物語はファンタジーらしく、バトル要素も多く含んだものになっています。やっぱりなかよしのファンタジーは、バトルがあってこそですね!(←未だに「セーラームーン」「魔法戦士レイアース」のイメージを持っている)

 普段は表紙のような、少女っていうか幼女のような容姿をしているヒロイン。世間知らずどころか、ずっと幽閉されていたということから、家での生活知識すらないような子で、16歳ではあるものの、意外と見ためとのギャップはないです。そんな彼女が、とある瞬間のみ年齢通りの容姿になるときがあるのですが、そちらがやたらとセクシーというか、コスチュームがちょっとこう「え?」って感じで、むしろこっちが違和感バリバリだったり。当然のことながら、恋愛以前の感情すら知らないような子で、イケメンな相手候補は複数いるものの、そういった展開になるのはまだまだ先になりそうです。展開は慌ただしいものの、読者層を考えると、これくらい忙しない話の方が好まれるのかな、という気がします。ちょっと気になるのは、これからどこを落としどころとするのか、今のところ全く見えていないというところぐらいでしょうか。それ以外は概ね遠山先生っぽさ溢れる作品で、安定の楽しさ。キャラ配置は鉄板です。作者さんのファンタジー方面での引き出しを楽しめるということでも、遠山えま先生のファンはチェックしておいて損はないのではないでしょうか。


【男性へのガイド】
→遠山えま先生ですしね、もうね。とはいえこれはより少女漫画向けに味付けされてある印象で、他作品に比べると、男性向けの感は薄れるかもしれません。
【感想まとめ】
→意外とバトルが充実の、ファンタジー作品。こういうのも描けるのかと、ちょっと驚きながら読むことができました。


■作者他作品レビュー
遠山えま「ココにいるよ!」

作品DATA
■著者:遠山えま
■出版社:講談社
■レーベル:KC なかよし
■掲載誌:なかよし(連載中)
■既刊1巻
■価格:419円+税


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Tag [続刊レビュー] 2011.04.25
作品紹介→なかよしでも百合、しかも王道学園もの!:白沢まりも「野ばらの森の乙女たち」1巻



1106005264.jpg白沢まりも「野ばらの森の乙女たち」(2)


みんな
野ばらの下のひめごとなの



■2巻発売です。
 初美とさくらは、この春、あこがれの音羽女学院へ入学。野ばらにかこまれたこの学校の生徒たちは、「野ばらの森の乙女」と呼ばれている。学院で初美は、王子様かと思うほど素敵な先輩は、全校生徒のあこがれ、「音羽の華」の一員の三条泉だった。そんなとき初美とさくらは、裏にはで泉と繭子のキスシーンを目撃し、初美は泉のことが気になるように…。咲き誇る野ばらとともに、乙女たちの恋は可憐にひそやかに交錯し…
 

~お待たせしました~
 2巻発売はだいぶ前だったのですが、レビュー書いていないの忘れていました。ということで、「野ばらの森の乙女たち」2巻のご紹介でございます。同時期に低年齢向け百合(もうどういうジャンルかわからない)として話題になった「ブルーフレンド」(→レビュー)は既に完結していますが、こちらはまだ続いているのかな?とはいえ初美のフェーズは一旦2巻で完結。秘密の花園で初めて触れる恋に、一つの答えが出ました。


~古き良き少女漫画然、ドラマ然とした構成です~
 1巻の流れからして、憧れの王子様とが本線かなぁ、なんて思っていたのですが、意外や意外。野ばらの森で咲いたのは、さくらの花でございました。百合百合していると、関係性が複雑すぎてよくわからないことになるのですが、男役と女役でざっくり分けてみると、案外スッキリ。泉様は先輩の王子様で、さくらは幼なじみの男の子としてみれば、あとは少女漫画的な選択肢を辿るだけで、幾つかの答えは見えてくることになります。雰囲気的には、こう80年代~90年代の少女漫画っぽい印象で、自ら選んだオンリーワンより、選ばれた私がオンリーワン的な、王子様見初められ系の運びとなると勝手に思っていただけに、こういう結末は意外ではあったのですが、全員が幸せに…という結末を考えると、これしかなかったのかもしれません。
 
 
野ばらの森の乙女たち2-1
 そして全員幸せになっている中でも、比較的割を食う、一番のイケメンっていうところとか、なんかありがち。そうそう、最後に空港ってのもベタで、90年代トレンディドラマっぽいですよね。この作りが現代の小中学生たちにウケるかはわかりませんが、そういった物語に触れていた我々ないし、もう少し上の年代の人たちからすると、百合という題材ではあっても、文法的に比較的馴染みやすい作品であるのかもしれません。


~初音×さくらは既定路線だった?~
 ちなみに初音とさくらという結末は、最初から決まっていたのではないかと思わせるカットが。それが、1巻冒頭のこれ…
 
 
野ばらの森の乙女たち2-2
 花びらで隠れていますが、髪型から考えて、向こう側にいるのはさくらで、こちら側にいるのは初音じゃないでしょうか。意外とこういうところに大きなヒントが隠されているのですが、なかなか見落としがちなのですよ(というかそもそも表紙がそうなのですが。。。)。
 
 個人的にはさくらが一番お気に入りのキャラクターであったので、こうして最後に報われたのは非常に嬉しかったです。何度となく諦めようと思い初音を突き放しても、それでも諦めきれず、また何度となく寄っていくというそのアンバランスな揺り戻しが、危なげで切なげで、なかなかくるものがありました。一番我慢強かったというか、健気でしたよね。皆々それぞれが、自分の気持ちにウソをつきつつの生活であったわけですが、一番近くにいて、その想いを打ち明けることすらできなかった彼女の序盤の苦しみは、なかなか大きいものだったのではないでしょうか。


~男を絶対に出さない徹底っぷり~
 この作品って、絶対に男性を出さないんですよね。影形だけでなく、名前ですらも登場しないという徹底っぷり。フィアンセもあくまでフィアンセであり、具体的な情報は一切登場していません。百合ものではこれが基本パターンなのかもしれませんが、男性登場せずに回すってのはなかなか勇気がいるような。その分泉先輩の男らしさが際立つわけですが、一旦完結してしまった中、3巻以降それだけの役回りをこなせる人物が登場するのか、注目でございますよ。 


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かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
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王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




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トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
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