作品紹介→よしながふみ「大奥」
6巻レビュー→これ以上ない愛の形に思わず涙:よしながふみ「大奥」6巻
7巻レビュー→よしながふみが彩る“江島生島事件”:よしながふみ「大奥」7巻
9巻レビュー→物語の大きな転換点となるか:よしながふみ「大奥」9巻
よしながふみ「大奥」(10)
あまりに理不尽ではないか!!
■10巻発売しました。
悲恋の舞台であった男女逆転大奥。その大奥が、逆転世界の根源である赤面疱瘡を解明する研究所となる…。よしながふみのSF大河ロマン、待望の第十巻。
〜抜群に面白い10巻〜
区切りの10巻、発売しています。「このマンガがすごい!2014」こそTOP20から久々に漏れてしまいましたが、この10巻が抜群に面白かった。こう来るか、と。史実をベースに作ってはいるものの、基本的には創作歴史。史実と創作、そのバランス感が非常に重要になるのですが、本作はそこが絶妙すぎる。先のランキングでは同じく歴史創作ものである某作品が1位になりましたが、その手腕はこちらの方が何枚も上手であると、最新巻を読んで改めて実感させられました。メディアミックスも一通り落ち着き、また巻数も重ねて来たとあってなかなか話題になることはありませんが、相変わらず面白いですので、引き続き注目を…。
〜表紙から明るい先を期待したのですが〜
さて、10巻は表紙がこれまでと趣が異なり、登場人物たちが勢揃いで一様に笑顔。また帯には「人は、病に、勝てる。」の文字。9巻で赤面疱瘡を治す兆しが生まれたとあって、これは一気に赤面疱瘡を克服して、新たな歴史を作って行くのかと思わせるものがありました。実際に大奥では田沼意次と青沼の先導のもと、平賀源内の注力もあり、弱毒の患者を発見し人痘接種に成功。大奥勤めの若者たちは、次々と赤面疱瘡を克服することになるのでした。

やがてその噂を聞きつけ、大名家の子息にも人痘接種をするように。
あまりに順調すぎる道筋、将来は明るく思えましたが、同時に不気味さも漂わせていました。それは、どうしても存在する副作用での死亡者が、誰も出ていないこと。言わばロシアンルーレット的なそれが、何処で出るのか。出ないわけがない、そう思っていたところで、よしながふみ先生はそれを松平定信の甥にぶつけてきました。ここで出しますか。これにより一気に形成は逆転。この一件が直接の原因ではないものの、田沼意次は十代将軍・家治の死をきっかけに失脚。これにより人痘接種の種も途切れ、この試みは歴史から消え去ることになってしまいます。平賀源内の頑張りも、青沼の頑張りも全て流され消えてしまう、このあまりにも容赦のない仕打ちに呆然。ただ、時に歴史では残酷すぎる仕打ちが記録されていたりするものですが、これもそんな中の一つのようで、リアル感が溢れていたというか。また青沼という史実に存在しない人物に、そこまで大活躍はさせないぞ、とバランスを取った部分もあるのかもしれません。
〜それでも間接的に希望はつないだ〜
ただ、完全にその存在は消されたものの、一つの確かな足跡…いや、爪痕のようなものを、青沼は残しました。全て解決はさせないけれど、これだけ描いた以上、ゼロにするのもおかしな話なわけで。最後の最後、こうつなげるのか、と。ある程度予見できた展開なのかもしれませんが、直前で呆然としていただけに、この展開には身震いでした。大きな流れの転換点に差し掛かったと言える10巻ラスト。11巻ではどのような物語が展開されるのか。そして赤面疱瘡も種が途絶えたと言えど、その方法論は死んでおらず、どこかでまた巻き返しがあるんじゃないかと密かに期待しております。人間ドラマというよりは、制度面からあれこれ面白い物語が描かれそうな11巻、よしながふみ先生がどう読者を納得させて、さらに感動・興奮させてくるのか、非常に楽しみです。
6巻レビュー→これ以上ない愛の形に思わず涙:よしながふみ「大奥」6巻
7巻レビュー→よしながふみが彩る“江島生島事件”:よしながふみ「大奥」7巻
9巻レビュー→物語の大きな転換点となるか:よしながふみ「大奥」9巻

あまりに理不尽ではないか!!
■10巻発売しました。
悲恋の舞台であった男女逆転大奥。その大奥が、逆転世界の根源である赤面疱瘡を解明する研究所となる…。よしながふみのSF大河ロマン、待望の第十巻。
〜抜群に面白い10巻〜
区切りの10巻、発売しています。「このマンガがすごい!2014」こそTOP20から久々に漏れてしまいましたが、この10巻が抜群に面白かった。こう来るか、と。史実をベースに作ってはいるものの、基本的には創作歴史。史実と創作、そのバランス感が非常に重要になるのですが、本作はそこが絶妙すぎる。先のランキングでは同じく歴史創作ものである某作品が1位になりましたが、その手腕はこちらの方が何枚も上手であると、最新巻を読んで改めて実感させられました。メディアミックスも一通り落ち着き、また巻数も重ねて来たとあってなかなか話題になることはありませんが、相変わらず面白いですので、引き続き注目を…。
〜表紙から明るい先を期待したのですが〜
さて、10巻は表紙がこれまでと趣が異なり、登場人物たちが勢揃いで一様に笑顔。また帯には「人は、病に、勝てる。」の文字。9巻で赤面疱瘡を治す兆しが生まれたとあって、これは一気に赤面疱瘡を克服して、新たな歴史を作って行くのかと思わせるものがありました。実際に大奥では田沼意次と青沼の先導のもと、平賀源内の注力もあり、弱毒の患者を発見し人痘接種に成功。大奥勤めの若者たちは、次々と赤面疱瘡を克服することになるのでした。

やがてその噂を聞きつけ、大名家の子息にも人痘接種をするように。
あまりに順調すぎる道筋、将来は明るく思えましたが、同時に不気味さも漂わせていました。それは、どうしても存在する副作用での死亡者が、誰も出ていないこと。言わばロシアンルーレット的なそれが、何処で出るのか。出ないわけがない、そう思っていたところで、よしながふみ先生はそれを松平定信の甥にぶつけてきました。ここで出しますか。これにより一気に形成は逆転。この一件が直接の原因ではないものの、田沼意次は十代将軍・家治の死をきっかけに失脚。これにより人痘接種の種も途切れ、この試みは歴史から消え去ることになってしまいます。平賀源内の頑張りも、青沼の頑張りも全て流され消えてしまう、このあまりにも容赦のない仕打ちに呆然。ただ、時に歴史では残酷すぎる仕打ちが記録されていたりするものですが、これもそんな中の一つのようで、リアル感が溢れていたというか。また青沼という史実に存在しない人物に、そこまで大活躍はさせないぞ、とバランスを取った部分もあるのかもしれません。
〜それでも間接的に希望はつないだ〜
ただ、完全にその存在は消されたものの、一つの確かな足跡…いや、爪痕のようなものを、青沼は残しました。全て解決はさせないけれど、これだけ描いた以上、ゼロにするのもおかしな話なわけで。最後の最後、こうつなげるのか、と。ある程度予見できた展開なのかもしれませんが、直前で呆然としていただけに、この展開には身震いでした。大きな流れの転換点に差し掛かったと言える10巻ラスト。11巻ではどのような物語が展開されるのか。そして赤面疱瘡も種が途絶えたと言えど、その方法論は死んでおらず、どこかでまた巻き返しがあるんじゃないかと密かに期待しております。人間ドラマというよりは、制度面からあれこれ面白い物語が描かれそうな11巻、よしながふみ先生がどう読者を納得させて、さらに感動・興奮させてくるのか、非常に楽しみです。
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