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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2009.03.18
surouriideizu.jpg長原万里子「スロウリィデイズ」


夏は終わったけど
わたしの恋は終わらず
これからこの場所で
ずっと続いてゆくのです



■ラブラブカップルのハナとナガル。大学4年になっても就職活動もしない二人は、とにかく二人の時間を増やしたい!と同棲をすることに。しかし就職予定もない二人に部屋を貸してくれるわけもない。そこで、ハナの姉に保証人になってもらおうとするが、あえなく却下。就職しろと説教までされてしまう。一緒に暮らすには働くしかない、そう決意してなんとか働き口を見つけた二人だったが、一緒にいられる時間が減っていき、結局辞めてしまう。そんなある日、家賃五万で雰囲気の良い物件を発見。ここだ!即座に入居を決めたふたりは、どうにかしてハナの姉を説得。その日から、アルバイトをしながらの、貧乏同棲生活が始まった!

 とにかく二人の時間優先。働くことすら二の次のバカップルが織りなす、貧乏同棲スローライフコメディです。彼は美術系の大学出身、彼女は体育大学出身と、少し浮世離れている二人(実際はどうだか知らんけど、設定なのでね)、姉の監視はあるとはいえ、やはり行うことが少しずれています。いや、ずれているのは彼の方だけで、彼女はどちらかというとマジメサイドか。ただ不幸を呼び込む体質らしく、トラブルを色々起こしてしまいます。展開としては、彼が変なことをしでかす→不幸体質の彼女が事態を深刻に→周囲の人が巻き込まれる→でも最後はなんとかなって、めでたしめでたしといった感じ。ワンパターンというワケではありませんが、最後は必ず明るく幸せな方向に持っていくのは好印象。


スロウリイデイズ
貧乏でも、明るく楽しく毎日を送るふたり

 
 仕事をせずに同棲をするっていうのは現実味に欠けるかもしれません。ただそういうのは多分この作品では求めていないので、良いのです。とっても明るく、基本アホな二人の行動は、見ていてとっても面白いですし、周囲の人間も良い人ばかりなので、暗い方向に話が進むことはまずありません。このあたたかい感じを存分に楽しみましょうという読み方が正解なのかな。


【オトコ向け度:☆☆   】
→話の本質は女性的。スローではあるのだけれど、静かというわけではなく、どちらかといえばにぎやか。明るいお話が好きな方なら。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→少し浮世離れした話ではあるのですが、こういう作品は読んでいて幸せな気分になれますよね。これといったストーリーがあるわけではありません。だけど、そこが良い。


作品DATA
■著者:長原万里子
■出版社:講談社
■レーベル:KCkiss
■掲載誌:Kiss Plus(2008年7月号~連載中)
■既刊1巻
■価格:419円+税

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Tag [オススメ] [新作レビュー] 2009.02.16
私の血はインクでできているのよ久世番子「私の血はインクでできているのよ」


あの頃の自分に贈る言葉…
よく聞け!
20年後お前が描いてる
まんがはほぼ裸で
毛は一本だ!!



■「暴れん坊本屋さん」や「番線―本にまつわるエトセトラ」など、エッセイ漫画で人気を博する久世番子さん。今回は自分の漫画家になるまでの爆笑の過程を赤裸々に綴った内容になっております。誰しもがひとつとならず持っているイタい過去「黒歴史」。本当であればそのまま闇の中に葬り去っておきたい出来事を、あえてほじくりかえしてネタにする。しかも当時描いた絵を載せるという強気の姿勢…。では番子さんの黒歴史の一部を見てみましょう。

・中学時代、かっこいい!という思いだけから、生徒手帳に光明真言(梵字)を忍ばせ、九字を切る練習をしたり、旅館を清め出したりしていた
・2次元の相手に本気で恋をしていた
・高校時代、鉄道の駅員さんの制服に憧れて、同人本を3冊も作ってしまう
・初めて作った同人本、奥付に本名&住所がバッチリ印刷してあるために捨てるに捨てられない etc.…

 これを当時の絵を交えて繰り出してくるわけですから、面白くないわけがない!
 番子さん、もぉアンタ最高だぁ!!
 
 ちなみに本編のラストでネタとして使われている作品は過去にご紹介しておりますので、こちらもどうぞ→久世番子「ふたりめの事情」


【オトコ向け度:☆☆☆☆ 】
→読みやすいです。エッセイまんがですが、スタンスは「ちびまる子ちゃん」みたいな。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】
→番子さんは期待を裏切りません。オススメです。ただ久世さんの作品を知っているからこそって感じもありそう。それでも十分面白いと思いますが。


作品DATA
■著者:久世番子 作者サイト→「大西電電
■出版社:講談社
■レーベル:ワイドKC Kiss
■掲載誌:Beth(vol.1~vol.8), KissPlus(2008年3月号~11月号,2009年1月号)
■全1巻
■定価:667円+税

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かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。