
いつか追った夢はつかめなくても
今君は
確かにまばゆく輝いている
■古都・金沢から少し離れた温泉街。高1・結衣のクラスに現れたのは、昭和生まれの25歳の“同級生”井塚だった……!ふたりが作った“ルール”とは――!?他、世界に色を与える人たちが住む島のお話、傑作ファンタジーよみきり「イロトリドリの世界」も併録。
高木しげよし先生の別冊花とゆめ連載作です。「いつかの青春」というタイトルですが、青春と書いて“はる”と読みます。高校に入学したら、クラスに25歳の新入生がいたというお話です。主人公は少しマイペースで、何かと事を押し付けられがちな女子・結衣。高校に入学してみたら、クラスにはなんと25歳の新入生・井塚が。担任の中学時代の先輩ということもあり、初日からかなりの浮きっぷりを見せる彼は、無口でなかなか群れようとしないことから、あっという間にクラスメイト達との溝を深めていきます。「井塚のことを頼んだ」と先生から言われた結衣は、見かねて声をかけるのですが、話を聞くと、思っていたよりも優しくしっかりした人で……というストーリー。

結衣のこの一言で、井塚との青春づくりが始まる。
いきなり25歳で高校というと不良組でやり直しとかを想像するのですが、井塚の場合はちょっと違っていて、実家の醤油屋を急きょ継ぐために高校に行かなかったという背景があります。弟が高校を卒業し、醤油屋に入るということで、未練が残っていた高校に入ることを決めたのでした。周囲と群れないというのは別に彼自身が壁を作っているのではなく、年相応に動きたくなかったり、遠慮をしていたりと、実にフラット。そういった誤解が解ければ、その余裕や姿勢は大人の魅力に早変わりするわけで、ヒロインの結衣もいつしか彼に惹かれるようになっていきます。
物語の軸は、結衣が井塚に青春を楽しんでもらえるよう奔走するというものになるのですが、彼女が頑張れば頑張るほどに、彼の魅力に気づく女子が増え、複雑な気持ちが生まれだんだんと大きくなっていくわけですな。1巻完結ですので、劇的な展開というのはないのですが、短い中にもそれ相応に青春の楽しさや辛さみたいなものが落とし込まれており、満足度は高めです。井塚の青春を後押しするという体ではあるのですが、どちらかというとそれを通してヒロインの結衣が青春していくという感じが強いですかね。
また同時収録されている「イロトリドリの世界」がなかなか良かったので、こちらについても触れておきたいと思います。世界の片隅にたたずむイロトリドリの島が舞台のこのお話。島民は何かしらの色を持ち、世界に色彩を与える仕事を請け負っています。そんな島には、すべてを飲み込んでしまう漆黒を持つ“黒”という男の子がいるのですが、そんな彼に“ピンク”の女の子が興味を持ち近づいていくという物語。典型的な禁断の恋物語なのですが、世界観とオシャレな雰囲気の絵柄・作風も相まってなかなかにロマンチック。

いつかの青春がまさに青春を押し出した、少し汗臭いというか、青春の匂い立つ話であったので、そことの対比も良かったのかもしれません。短いながらも綺麗にまとめ上げており、読後感が非常に良かったです。こちらはファンタジックでロマンチックなストーリー。
【男性へのガイド】
→少女マンガ感は強いのですが、比較的地に足ついた物語展開ですので、男性も抵抗なく読めるのではないかと思います。
【感想まとめ】
→振り返れば収録されていたどちらの作品もしっかり着地でその読後感やよし。オシャレ感漂う良い雰囲気の作品でした。
作品DATA
■著者:高木しげよし
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめコミックス
■掲載誌:別冊花とゆめ
■全1巻
■価格:429円+税
■試し読み:第1話
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