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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2012.09.03
1106166241.jpg小森羊仔「シリウスと繭」(1)


内気な性格を理由に
何もしないまま
君において
後悔はしたくないんだ



■坂が多く、星がきれいに見える町に住む繭子。高校3年性の夏、模試の結果が芳しくなかった繭子は、友人のメグの引き合わせで、クラスメイトのハルに勉強を教えてもらうことになる。それまで全く喋ったことがなかった二人は、それをきっかけに少しずつ言葉を交わすようになり、いつしかかけがえのない時間を過ごすようになっていた…。切なくピュアなラブストーリーが、今始まる。

 小森羊仔先生の初単行本でございます。おめでとうございます。初単行本でいきなり巻数付き。しかも帯での推薦文は「君に届け」(→レビュー)の椎名軽穂先生と、なかなかの力の入れっぷり。そして実際中身も面白かったのだから、紹介しないわけにはいかないでしょう。
 
 本作の舞台となるのは、とある坂の多い町。その町に住む高校3年生の女の子・繭子が、模擬試験でよくない結果を取ってしまったことをきっかけに、物語は動き始めます。悪い結果に落ち込む繭子に、友達のメグが提案してきたのは、クラスメイトのハルに勉強を教えてもらうというもの。それまで一言も会話をした事がなかった二人でしたが、ハルは快諾。それをきっかけに、二人は度々会話をするようになります。いつも無口なハルとの会話は、ゆっくりだけれど心に染み渡り、何よりも大切な時間に。けれどもハルは、メグの好きな人。そして、卒業も刻一刻と近づく。そんな中、繭子は…というお話。


シリウスと繭1−2
 卒業を控えた高校3年に訪れた恋。非常にシンプルで、オーソドックスな題材ながら、二人の出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子が、じっくりと丁寧に描かれます。独特の可愛らしい絵柄も、なんとも言えない味わいがありますよね。柔らかさのある描線というか。

 内容自体は少女マンガのそれなのですが、掲載誌がYOUということからか、所謂十代向けの雑誌の連載作とは全く異なる雰囲気を持っています。楽しめるのも、20代以上がボリューム層だと思われ、ちょっとマンガ好きの女友達とかにオススメしたい気持ちになりました。
 
 テンポの速い少女漫画であればあっという間に過ぎ去る過程もゆっくりと、1巻では高校3年の夏から卒業までを描くということで、その大半はもどかしい感情の揺れ動きの描写に。本当にこれでもかってくらい、お互い遠慮がちというか、積極的にいかないんですよ。もうそんなに時間が残されていないのはわかっているけれど、だからといってどうしたら良いかわからないし、ただただ焦りの気持ちと諦めの気持ちが混ざる…。この感覚がすごくよく伝わるというか、共感できるんです。

 シンプルさは登場人物の数にも現れていて、メインキャラクターはたったの3人。ヒロインと、友達と、相手役。その他、名前のあるキャラクターは登場してきません。舞台も彼らが住む町より広がることはなく、狭いフィールドの中で展開されます。それでも教室であるとか、坂道であるとか、図書館であるとか、印象的な場所を上手いこと使ってちゃんと舞台装置に仕立て上げてくるから侮れません。


シリウスと繭
個人的にお気に入りのカット。描き込みも極力少なく、シンプルに。けれどもそれでいて、良い雰囲気は伝わってくるから不思議。


キャラクターたちの一つ一つの台詞といい、表情といい、情景といい、それぞれが良い形で組み合わさっています。個人的に最も印象的だったのが、坂道を自転車で走る所。度々登場するそのシーンがそれぞれ違った意味合いを持って描かれており、なんとも切なかったです。
 
 さて、物語は一旦完結となってもいいのではないかというタイミングで1巻のラストを迎えます。そしてしっかり、2巻につながるタネを落とし込んでくるという。正直2巻以降はどのような物語が展開されるのか全く想像がつかないのですが、たぶんきっと、切なくピュアな物語が展開されるのでしょう。楽しみですね。


【男性へのガイド】
→淡い恋を描いた静かな雰囲気のお話。こういう物語がお好きな方、結構居るのではないでしょうか?
【感想まとめ】
→何気に今年読んだ恋愛ものの新作では、個人的に上位に来るかも。好きな雰囲気の作品です。オススメ。


作品DATA
■著者:小森羊仔
■出版社:集英社
■レーベル:YOU マーガレットコミックス
■掲載誌:YOU
■既刊1巻
■価格:419円+税


■購入する→Amazon

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Tag [続刊レビュー] 2011.12.12
作品紹介→槇村さとる「RealClothes」
7巻レビュー→《気まぐれ続刊レビュー》槇村さとる「Real Clothes」7巻
8巻レビュー→意見を闘わせずして、前進はない《続刊レビュー》槇村さとる「Real Clothes」8巻
9巻レビュー→絹恵の成長を確かに感じられた巻《続刊レビュー》槇村さとる「Real Clothes」9巻
10巻レビュー→田渕さんみたいな上司が欲しい!:槇村さとる「RealClothes」10
11巻レビュー→溢れる百貨店愛:槇村さとる「Real Cloyhes」11巻




1106089976.jpg槇村さとる「RealClothes」(13)


心は決まってる


■13巻発売、完結しました。
 田渕について中国へ行くか、日本に残って昇進するか。自分に突きつけられた選択肢の意味を、改めて考える絹恵。そこで彼女が選んだ答えとは!?そして田渕と二人で歩み出す道とは…!?大人気ワーキングロマン、ついに完結!!
 

~完結です!~
 13巻でついに完結しました!怒濤の展開に感動でしたよー!そもそも槇村さとる先生の作品を手に取ることが初めてで、表紙とか見てもなんらひっかかるものとかなかったのですが、気がつけば夢中になって最後まで追いかけていました。そのテンションは終始落ちることなく、最後まで立ち止まることなくまさに“駆け抜けた”と言って良いでしょう。とにかくアツく、たくさんのやる気と元気を貰えました。


~絹恵が出した答え~
 今回はとにかく田渕さんと一緒に中国へ行くかどうかというところが焦点。絹恵の気持ちは最初から決まっており、一か月前の時点で箸の包みに書いて田渕に渡すという覚悟の決めっぷり。後は田渕がどういう答えを出すかでした。もうこの時点でしてやられました。分かれたあとに中国語の練習して、さらに「ついていくに決まってんだろ!」の言葉。完全に「中国行きかー」ですよ。正直どちらを選んでも正解で、何かしらの痛みが残る形になります。大事な選択をする時は、どれを選んだとしても必ず何かしらの痛みが伴うもの。今回もまた、そんな痛みを描いての完結になるのかと思いきや、一か月後待っていたのは…
 

realClothes13.jpg
絹恵は残る。でも結婚するから万事OK。


 うおおお、なんじゃそのいいとこ取り!しかも一か月前の絹恵の心も同じ。言うコトなしで決まりでした。この「結婚」というものを持ち出したのがさすがというか、掲載誌的にはやっぱりどうしたって切ることのできなテーマなのだろうな、と。絹恵は4巻まで、学生時代からずっと付き合っている彼がいて、一時婚約まで行きましたが破局という経緯を迎えていました。彼からプロポーズされた際にOKを出した絹恵の心持ちは、「独りになりたくない」「一人で生きる勇気がなかった」というもの。どちらかというとネガティブなベクトルの心情であるように見受けられます。それに対して今回は、付き合うという経緯を経ずに、いきなり結婚へ直行。さらにプロポーズを受ける直前、絹恵は一旦「私は日本に残ってバリバリやるので、安心して中国へ行ってください」なんて宣言までしています。言ってみればこれは、最初にプロポーズされた時になかった「ひとりで生きる勇気」が満たされた状態で、だからこそ上手くいったのかな、という気がしないでもありません。とにもかくにも、良い選択だった!


~怒濤の風呂敷たたみで大団円ですよ、もう~
 そこからは怒濤の風呂敷たたみが繰り広げられます。伏線は全て回収し、ラストには主要な登場人物達が皆々登場。このあからさまな感じが本当に素敵。やっぱり最後は幸せにならなくちゃ。個人的には吉永さんの妊娠→マツタケと結婚というコンボがすごく好きでした(笑)絶対マツタケが尻に敷かれる夫婦関係を築くと思うのですが、それを想像するだけで微笑ましい。とってつけたようなその後が描かれたキャラもいましたが、それも含めて愛おしかったです。


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Tag [続刊レビュー] 2010.12.23
作品紹介→槇村さとる「RealClothes」
7巻レビュー→《気まぐれ続刊レビュー》槇村さとる「Real Clothes」7巻
8巻レビュー→意見を闘わせずして、前進はない《続刊レビュー》槇村さとる「Real Clothes」8巻
9巻レビュー→絹恵の成長を確かに感じられた巻《続刊レビュー》槇村さとる「Real Clothes」9巻
10巻レビュー→田渕さんみたいな上司が欲しい!:槇村さとる「RealClothes」10


1102992501.jpg槇村さとる「Real Clothes」(11)


その娘が
越前屋の地図を持ってた



■11巻発売です。
 田渕がダウン!しばしの入院生活を強いられることとなった。体調は順調に回復に向かうも、仕事を離れている焦りもあり、精神状態はなかなか上向いてこない…。そんな中出会った、二人の子ども。そのうちの一人が、越前屋の未来を作る、大きなヒントをを持っていた…!一方絹恵は、ボス不在の中で、「田渕が好き」だとはっきりと自覚。ボスの帰りを待つが…!?
 

~11巻発売です~
 田渕ダウンでどうなることやらと思っていたのですが、物語にこんな影響を与えるとは。ベタな展開といえば、倒れた勢いで想いが加速してくっついちゃうみたいなパターンなのですが、さすがにそんなことはありませんでした。それでもボスの不在は、絹恵に田渕の大切さを感じさせるには十分すぎる状況。
 
「私 ボスのこと 好きすぎ」

 この一言、いいですよね。ストレートに、シンプルに、力一杯。しかし面白いのが、あくまで「ボス」という呼び名であること。絹恵にとっての田渕は、頭からつま先まで、全部が全部仕事を通しての姿で捕らえられています。だからこそ、このストレートな言葉にどの程度の恋愛感覚が詰まっているのか、気になる所。田渕との結婚を想定してみてどうか、みたいな会話があって、そこで子どもが生まれたらもうかなりいい歳…みたいな結論になっていたと思うのですが、田渕と絹恵の関係だと、子ども以前に定年になった田渕とか、働くなった絹恵とかまずありえんような感じが。恋愛色が強くなってきてはいますが、この二人の関係、どう着地させるつもりなのかさっぱりわからんですよ。だからこそ、気になるのですが。
 

~百貨店の姿~
 今回もっとも印象に残ったシーンは、田渕が入院中に、仕事のヒントを得るシーン。そのヒントは、入院中の女の子が大事に持っていた、好きなものの切り抜きをはりつけたノートでした。


リアルクローズ
食べ物、小物、服…そこにはありとあらゆる彼女の欲しいものが並べられていたのでした。その様子を見て、田渕は「これが百貨店だ…」と呟くのです。この作品の面白いところは、ファッションを扱っていながらも、舞台となっているのはあくまで「百貨店」というフィールド。だからこそ、田渕が仕事のヒントを「百貨店」というワードから得るというのは、すごいな、と。百貨店に夢を見た田渕という男と、布団売り場出身という服以外の百貨店の様子も知る女、こんなにも百貨店愛に溢れた二人が揃えば、良い仕事ができないなんてこと、絶対あるはずないわけで。そして百貨店というフィールドを出ていった美姫様。うん、やっぱりラスボスは美姫さまなのかな、とちょっと思ったのでした。自分もこれくらい、場所を愛せる社会人になりたいものですね。


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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2010.10.26
1102969583.jpgきら「僕らはみんな死んでいる♪」(1)


ユーたち
みんな
生き返りたいかー!?



■ふと目覚めたら、そこは知らない場所。周囲には知らない人々。不可解なことばかりで、混乱するのは、女子高生・凛をはじめとした、男女8人。一体誰が、何のために彼ら彼女らを集めたのか。戸惑う8人の前に現れたのは、人語を喋り“神”と名乗る謎の生物。その口から語られたのは、己の死と、生き残りならぬ、「生き返り」を賭けたラブゲームの開催だった。生き返りたければ、この8人の中でラブゲームに勝ち抜け…そう告げられた8人は…!?

 きら先生の新連載です。「パティスリーMON」とかはまだ完結していないので、同時並行での連載ということになるんですかね。今度の新作は、生き返りを賭けた、8人の男女のラブゲーム。物語の主人公となるのは、クールな女子高生の凛。ふと目覚めたら、そこは知らない場所、知らない面々、そしてなんとも不可思議な空間。そこに居る面々も、どうやら今の状況をわかっていないようで、集まった8人は戸惑うばかり。そんな彼らの前に現れたのは、妙に高いテンションで煽ってくる、人語を操る謎の生物。そいつは自分のことを「神」だと名乗り、8人に君たちはすでに亡くなっているということを告げます。あまりに突拍子もない内容に、最初は全く信じない8人でしたが、凛を皮切りに、皆自分たちの死の瞬間を思い出していきます。そしてやっと信じはじめたその時、神はこんなことを8人に告げます。「生き返りたかったら、8人でラブゲームをして、勝ち抜け」。要は、この異空間で共同生活をしながら、最初に結ばれた二人が生き返れるということ。目的も、意味もわからないこのゲームに、突然投げ込まれた8人の運命は、果たして…というお話。


僕らはみんな死んでいる
この手のゲームには欠かせない、(あえて)空気の読まない、参加者とテンションの異なる不気味な主催者。神ということで、都度その姿は変化する。テンション一定だから、どれでもちょいと不気味なのですが。


 なんとも奇妙な設定の物語。単純にこの設定だけで、勝ちなのですが、上手い人が描くとなると、さらに期待できそうで俄然ワクワク感は高まります。単純にラブゲームを繰り広げるだけではなく、それぞれのキャラに様々な要素を持たせることで、物語はより複雑に姿を変えていきます。まずヒロインの凛は、自殺を経てこのゲームに参加することになりました。生き返りを賭けたこのゲームにおいて、生き返りたいという意思を持たない彼女は、ある意味異質な存在。また勝ち上がりの条件が、「二人くっつくこと」であり、それは生き返った後も関係が続くことになります。しかし参加者の中には、恋人や配偶者を持つ者も多く、生き返った後どうなるか(正確には、生き返ったあとどうなるか考えて苦悩するその様子)が楽しみとして出てきます。その他変わり種としては、言葉の通じない外国人や、大人気の芸能人などがおり、また素性の明かされないキャラなどもおり、これからの展開は様々予想されます。それを全て転がしきることができるのか、そこは作者の腕にかかってくるわけですが、きら先生なら大丈夫でしょう。
 
 男女が共同生活をするとか、一緒に行動するとかいうのは、人気バラエティ番組の「あいのり」や、その他ドラマやマンガでも様々ありましたが、イメージとして近いのは、昔やっていた賞金を賭けてサバイバルをするというバラエティ番組「サバイバー」とか。一応賞金は欲しいんだけど、外国人ほどあからさまに狙うわけでなく、参加。みたいなテンションが、なんとも。とりあえず1巻は、現在の状況と、舞台作り、そして各キャラの情報出しという程度で、本格的に物語が転がってくるのは2巻以降かと思います。たぶんもう転がりだしているのだろうけど、設定が設定だけに、まだあまり実感がないというか。多分2~3巻もしたら慣れるのでしょう。とりあえず、期待しつつ2巻を待ちたいと思います。


【男性へのガイド】
→きら先生の作品は、男性も好きな方多い印象が。ラブゲームとか言ってますが、一応人間関係の延長線上としてのラブゲームであるので、地に足ついている印象(天国だから地に足とか言わんかもですが)。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→1巻では盛り上がりに欠けるも、たぶんこれから面白くなりそうなので。設定的にも一筋縄では行かなそうで、楽しみです。


■作者他作品レビュー
美しい手の持ち主は、癒すことのできない心の傷の持ち主だった:きら「心臓より高く」


作品DATA
■著者:きら
■出版社:集英社
■レーベル:クイーンズコミックスYOU
■掲載誌:YOU(連載中)
■既刊1巻
■価格:419円+税


■購入する→Amazon

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Tag [新作レビュー] 2010.09.30
1102964465.jpgアキヤマ香「アスコーマーチ!」(1)


勉強できる人間だけが
一流なんて
私は認めない



■目指していた女子高に落ちてしまった直が入学したのは、県立明日香工業高校・通称「アスコー」。鉄とオイルの匂いに塗れ、生徒の大部分は男。昨年の女子の入学生は0で、今年の入学生は直を含め4人。クラスにたった一人の女として過ごす毎日は、囚われの宇宙人のような感覚。元々行きたくもなかった学校だし、女友達はいないし、もうイヤ!けれど、情熱あふれるバカな男子たちに触発されて、徐々に学校が楽しくなって来た直は…!?

 マーガレットコミックスですが、掲載誌はYOU。工業高校に通う女子高生の、工業高校ライフを描いた作品でございます。ヒロインは、スポーツチャンバラの道場のある家に育った娘・直。当初の進学予定は、お嬢様女子高だったのですが、試験当日に高熱を出し、結局不合格。唯一残っていた、明日香工業高校、通称「アスコー」の補欠試験に合格し、今に至ります。新入生のうち、女子は直含めて4人。クラスには、直だけ。あまりの男女差に、直は自分から話しかけることも出来ず、また男子も牽制しあって、一定距離を保ち彼女を観察するという状況。まるで囚われの宇宙人のようと、居心地の悪さに早くも辞めたくなる直でしたが、紆余曲折を経て、徐々にクラスに馴染んでいきます。また、目的を失いやる気がなかったことも、周りの男子たちの情熱にほだされて、楽しもうと前向きに。晴れて、前向きに工業高校の一員として、工業高校ライフをスタートさせていくようになります。


アスコーマーチ
制服よりも、作業着のシーンの方が多いくらい。作業着の女の子って、なかなかかわいくないですか?そして作業着の男子は、カッコイイ!


 工業高校の毎日というのは、経験していないとなかなか想像がつかないもの。そんな謎に包まれた世界を、否定的な立ち位置にいる新入生の女の子というスタートラインから、一緒に覗いていくことになります。工業高校と一口に行っても、専攻するコースや生徒達の意気込みも様々。ものづくりが好きな子もいれば、家が工場を経営している子も、他にも直のように、志望校に落ちて入学したものもいれば、ひねくれでここを志望してきた子も。全員が全員、望んできたわけではなく、クラスメイト達が足並みを揃えて何かに取り組むということは、はじめから上手くいくわけではありません。しかし、バカ正直で素直なのが、生徒達の特徴。その特徴を、女の子の直も持ち合わせており、仲違い、すれ違いがあっても、真っ正面からぶつかり合い、その後にはより強い絆、新しい繋がりが出来上がっています。色気はなくとも、熱く楽しい。そんなちょっと変わった学園生活を、垣間見る事が出来ます。
 
 マーガレットの割に、恋愛展開少ないなぁと思ったら、掲載誌はYOU。印象としては、KISS連載作に近く、工業高校の生活というのが、メインテーマなのでしょう。最初はクラスと打ち解けることが多く描かれ、恋愛方面はほとんどなし。一応相手役筆頭はいるのですが、男子ばかりのクラスということを考えると、そう簡単には事が運ばなそうであります。制服よりも、作業服のシーンが多いというのは、なかなかなくて新鮮ですね。町工場芸人とか、「とろける鉄工所」なんて作品にスポットが当たる今だからこそ、こういう作品が生まれたのかも。ひとつ、工業高校というものに興味がある方は、一度読んでみてはいかがでしょうか。


【男性へのガイド】
→色気のなさは、プラスかマイナスか。もっと下品でも良いかと思うのですが、そこは少女漫画だからか。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→2巻へ持って行くには、ストーリー的なひきがないのは若干苦しいかも。ネタありきで、そこに興味が持てないと、続きは楽しめないのかな、という気がします。


作品DATA
■著者:アキヤマ香
■出版社:集英社
■レーベル:Youマーガレットコミックス
■掲載誌:YOU(連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税


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かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。