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Tag [続刊レビュー] 2010.07.19
作品紹介→槇村さとる「RealClothes」
7巻レビュー→《気まぐれ続刊レビュー》槇村さとる「Real Clothes」7巻
8巻レビュー→意見を闘わせずして、前進はない《続刊レビュー》槇村さとる「Real Clothes」8巻
9巻レビュー→絹恵の成長を確かに感じられた巻《続刊レビュー》槇村さとる「Real Clothes」9巻



1102940402.jpg槇村さとる「Real Clothes」(10)


日本発信のファッションを
世界に売る!



■街中でばったり出くわしたニコの隣には、田渕の元カノ・雪乃の姿が。付き合っており、しかも結婚して母のホテルを手伝うため、仕事を辞めて二人でイタリアに向かうという。それを断固拒否する絹恵と、抵抗もせずに静かに受け入れる田渕。大きな戦力を失って、神保美姫率いるH&Hに対抗することになった絹恵たちチーム田渕。でも、停滞している場合じゃない。こんなときこそ攻めに出る…!


~田渕さん絶好調~
 美姫様に続いて、ニコまで離脱。ヒロイン絹恵にこの仕事の厳しさと楽しさ、そして志とスキルを教えてくれた人間が、どんどんと絹恵の周りを離れていきます。全てが自分のために回っているわけではない。それぞれに、それぞれの考えがあり、事情がある。そのことを、槇村先生は隠すことなく物語の中に描いてきます。そんな中、未だ絹恵にとって頼れる存在もいるわけで。その一人が、上司の田渕。ここ最近、出来る男・田渕というキャラが復活してきていた彼ですが、10巻でも魅せてくれました。とにかくカッコイイ。こんな男に憧れます。こんな上司が欲しかった。そしてこんな上司になりたいものです。


~部下のやる気の焚き付け方を知っている~
 ニコの送り出しのシーンも素晴らしかったのですが、あれは田渕がすごいというのもそうでしが、同時にニコとの絆の強さを表すものでもあったので、田渕のカッコ良さとはちょっと違うのかな、という感じ。10巻でカッコいいなぁ、素敵だなぁと最も感じることが出来たのは、後輩の使い方について。天才型の人って、あまり人を使うのが上手いってイメージがなくて、どちらかというとワンマンタイプな印象が強いんですよ。けれども田渕は、ワンマンタイプっぽい突進力と同時に、後輩を焚き付けてついてこさせる方法をしっかりと心得ているのです。
 
 例えば上に話を通さないで、勝手に展示会を行おうとしたとき。当然上に話が行っていなければ、仕事としてはマズいわけですが、そのことを心配する部下達に…


RealClothes10.jpg
失敗したって俺がクビになるだけだ!
だから俺をクビにさせないように成功させろ!



 こんなこと言われたら、頑張るしかないじゃないですか。なんてこれは、クビになっても田渕には引き手が数多あるということや、田渕の手腕への高評価が前提となっているわけですが、それを上手く活用しているという意味では、やはり上手いなぁ、と。
 
 他にもそのプランを絹恵に話したときの、「お前が言ったんじゃんかよぉ」で絹恵に参加者意識を持たせた上で、具体的な夢を語ってやる気を引き出すという流れも、さりげにカッコ良いなぁ、と。


 いつしか上司としての絹恵という色が強くなってきた物語。いつまでも下でないからこそ、物語は勢いを失うことなく、色を変えて読者を飽きさせることがありません。ついつい続刊買っちゃうんですよね。切りどころがないんだもの。



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Tag [続刊レビュー] 2010.06.27
作品紹介→*新作レビュー*鴨居まさね「君の天上は僕の床」



1102916034.jpg鴨居まさね「君の天井は僕の床」(2)


どこかくっついているほうが自然な気がする
本間さんが
そういう人になっていました



■2巻発売です。
 ウシちゃんと一緒に事務所を構える、デザイナーのトリさん。出会って仲良くなってみたは良いものの、近くに住む本間さんとの恋はなかなか進展しない…。そろそろ進展があっても良いものの、二人で出かけてもそんな雰囲気は皆無。それはそれで楽しいのだけれど…。そんなトリさんの居る雑居ビルの1階はつけ麺屋さん。そこで働くバイトの星川さんは、バイトの掛け持ちをする働き者。その裏には、バイトを辞めないあんな理由やこんな理由があって…。


~アラフォー版ハチクロ?~
 久々の2巻発売でございますよ。実は年末記事などで結構プッシュしていた本作。しかしながら刊行ペースの問題で、今の今までプッシュできずにいたのでした。さて、相変わらずウシちゃんとトリさん、そして本間さんを中心に、商店街の面々を巻き込んでゆるゆるとした日常を繰り広げておるわけですが、もうそんな毎日がとても輝かしいのです。なんでもない、そこらへんに転がっていそうな日常なのに、なんだか絶対に手に入らないような、憧れだけが残る感覚なのですよ。しいて言うならば、「アラフォー版のハチクロ」でしょうか。歳取ってるぶん、トキメキ成分はやや下がっておりますが、なんだか居心地が良さそうで、「こんなアラフォー生活送ってみたいなぁ。こんなアラフォーになりたいなぁ。」と読むたびに思うのです。


~マイペースに自由に生きる人たち~
 この作品の素敵なところは、この歳だからって焦ることもなく、極めてマイペースに日々を過ごしているところにあるのかな、と思います。結婚願望はおろか、恋愛願望もそこまで強くない。けれども好いてくれるというのはありがたいし、今ある恋愛には前向き。自然体で、臨んでいる感じ。いわゆる酒井順子の「負け犬の遠吠え」的な感じがなく、実に楽しそうなんですよ。そういえば、作品に出てくるキャラ達は、みな揃って自営業だったり、独立していたりと、使われて動くのではなく自分の意志で動いて働いている人たちばかり。その辺もまた、マイペースさや自由さを助長しているのかもしれません。


~憧れの源泉~
 同じ年齢の人たちがどのような感想を持つのかはわかりませんが、とりあえずこのコミュニティというのは物珍しく、憧れるものがあります。というのも、私がこどもの頃に見えてくるこのくらいの年齢の人たちと言えば、みな実を固めて父・母という家族役割を担っている人たちばかりでした。それがこの作品では、そういう人たちがマイノリティとなっていて、全く見えてこなかった人たちがマジョリティとして、けれども決して結束することなく不思議な距離感で一緒に居る。そしてそんな人たちが楽しそうに毎日を送っているわけですよ。そりゃ憧れますって。こんな生き方もあるんだな、素敵だなって。軽くカルチャーショック。いや、今でこそアリな生き方なワケですが、このようにそんな人たちを集めて、“日常”を作ってしまうというところがスゴいと言いますか。


~違う世代からも話題を仕入れる~
 今回は、自分たちの笑いを含んだ悩みに加え、他の世代を巻き込んで物語を展開。結婚指輪に揺れる、自分たちの両親を見て自分のことを顧みたり、年齢以上にしっかり者の小学生を相手にして、驚いたり。結婚生活を送る両親の姿も、子供がいるという状況も、現時点では自分たちが選択してこなかった道の先にあるもの。そんな可能性を目の前にしたとき、彼や彼女はどう思うのか。時に寂しく思ったり、時に嬉しく思ったり、その反応がまた面白いのです。1巻とはまた違った面白さが、しっかりと凝縮されていますよ。


君の天井は僕の床
結婚していないけれど、熟年夫婦の話題で盛り上がる。



~恋だってしてるんです!トキメいてきてるんです!~
 日常がゆっくりと続いていくわけですが、確かな変化は見られています。というのも、最初はよくスタンスのわからなかったトリさんの、赤面シーンが後半に進むに連れて多い多い。だんだんと、トキメキモードに入ってます。


君の天井は僕の床2-2
ドーンとマイペースだったトリさんに、変化が訪れてます…。ニヤニヤ。

 
 いや、確かに1巻の時点でトキメキはあったのですよ。けれどもそれは、本間さんの独り相撲の空回りで、どちらかというと素敵にネタ的に楽しんでいたというか。それが、トリさんの場合、その心情がモノローグとして描かれ、ちゃんと恋愛してるのです。気づかぬうちに、しっかりと関係を形成・変化させてきている。そう、全部説明する必要はないのです。だって彼女たちは根無し草なんだもの。少し知らないくらいが、自由な感じがして丁度良い。犬よりも猫が好きな彼らは、本人たち自身も、猫っぽいというか。


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Tag [続刊レビュー] 2010.02.21
作品紹介→槇村さとる「RealClothes」
7巻レビュー→《気まぐれ続刊レビュー》槇村さとる「Real Clothes」7巻
8巻レビュー→意見を闘わせずして、前進はない《続刊レビュー》槇村さとる「Real Clothes」8巻



1102875326.jpg槇村さとる「Real Clothes」(9)


カラを破って外に出ないと
自分で自分を殺したことと同じなんだよ



■9巻発売です。
 大量のメーカー切りに始まり、稲村の大抜擢へと至った、松越の婦人服売り場改革。しかし稲村は、「押しつけられた」という感覚を抱き続けたままで、なかなか話は進まない。そんな彼女を何とか動かそうとする絹恵は、田渕とニコにアドバイスを求める。絹恵の尽力と、稲村の覚悟が重なり、彼女は一気にリーダーへと覚醒。松越再生のキーアイテムを、「デニム」に定めた絹恵と稲村は、こだわりの強いメーカーを口説き落とそうと決めるが…!?


~ドラマ化後の1冊~
 9巻はなんだか厚いですね。ドラマ化後の刊行ということで、気合いが入っているのか。帯にはドラマのDVD-BOXの広告が。全巻揃って23,940円というのは比較的良心的なイメージですが、どうなのでしょうか。アニメとはまた違うのか。ということで、サクッとこの感をレビューしてみましょう。


~既視感はあるもの、物語的には意味のあった松越再生編~
 とか言ったものの、この巻に関してはそこまで目新しいことはなかったという印象。軸として描かれているのは、稲村さんをリーダーとして目覚めさせ、松越の婦人服部門を生き返らせるというものなのですが、舞台は違えど行っていることは小西さんのそれと同じ。焼き直しという感が強かったですね。そして桃太郎ブランドの口説き落としもまた、今までにあったことの応用です。これだけ見ると、見所なく同じことを描いただけというイメージを受けてしまいますが、ポイントはこの一連の流れを絹恵ひとりで切り抜けたということ。今までは田渕やニコ、美姫さまの助けあってのことでしたが、今回はアドバイスのみに留まっています。確実に絹恵は成長している。見所にはやや乏しい内容だったかもしれませんが、物語的には必要なイベントだったのかな、と思います。
 
 そしてそんな不完全燃焼感(読者の)をすべて吹き飛ばすかのような、ラストの怒濤の展開。仕事だけならまだしも、ニコさん、そっちで用意してきますか…。これは10巻もの凄く面白くなる予感がしますよ。この引っぱりは今までで一番。今から次が待ち遠しいです。


~ニコの一言~
 最後に一つ、ニコの言葉がやけに印象に残ったので、書き留めておきましょう。
 
不満というのは
「何もしたくない人の意見」でもあります

 
 そうなんだよなぁ。別に「何もしたくない人の意見」とは言わずとも、不満を漏らしているその時点では、少なからず何もしていないわけで。解決なり消化なり、不満を漏らしてもいいけどその次の行動をとってみるということを考えてみたいなぁと思った今日この頃でした。


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Tag [続刊レビュー] 2009.10.10
作品紹介はこちら→槇村さとる「Real Clothes」
7巻レビュー→《気まぐれ続刊レビュー》槇村さとる「RealClothes」7巻



07228655.jpg槇村さとる「Real Clothes」(8)


自分の軸を持て
自分以外の人間に寄りかかったら
それを失ったとき倒れてしまう
自分の頭で考える
自分の心で感じる
それがお前のいいところだろーが



■8巻発売してました。
 越前屋と松越の合併の最中、精神的にも経営的にも婦人服部門の支柱であった神保美姫が、越前屋を去っていった。今の自分があるのは、彼女がいたからと言っても過言ではない。そんな存在が突然いなくなってしまったショックに打ちひしがれる絹恵。そんな彼女に課せられたのは、合併相手の老舗・松越百貨店の婦人服部門再生という新たな任務!早速松越を視察する絹恵たちだったが、婦人服フロアの空洞化と、強力な老舗イズムに呆然とする…
 
 今月2日に8巻が発売してました。全然気づかなかった…。ドラマ化の影響でしょうね。ドラマに関して言えば、香里奈さんじゃスペックが高す(ry..

 8巻のテーマは、伝統の良さと弊害に、どう対峙していくか。その象徴として描かれるのが、老舗百貨店・松越。格式を重んじる松越は、その伝統を誇りとした従業員教育などは行き届いているものの、同時に長い付き合いのあるメーカーにばかり目が行き、ニーズを見れていないという弊害が起きていました。状態が悪いのは分かっている、けれど変われない。伝統があるゆえの、鈍重さ。そこに経営改革メンバーとして送り込まれる、田畑一行。伝統に固執した松越に田畑は嫌悪感を抱き、早々に「赤字を抱える30社を切る」と明言。体面は穏やかですが、そこには静かな火花が散っていました。
 
 相変わらずアツいです。このアツさの源はなんなのだろうと読む度に思っていたのですが、たぶんそれは、常に対決の構図があるからなんじゃなかろーか、と。8巻でいえば、越前屋と松越のぶつかり合いがあり、絹恵と稲村さんのぶつかり合いがあった。戦いとは、なにも物理的なものだけではないのです。意見を戦わせるだけでも、十分アツいバトルが見られる。前に進むためには、自分の意見を持ち、それを闘わせなければならない。そういった一貫したメッセージが、この作品には込められているように感じます。自分の意見を持たなかったから、絹恵は恋人との関係をこじらせてしまいました。仕事でも最初は意見を持つことも出来なかった絹恵が、今では率先して意見を闘わせる。これこそが一番の成長の証。実生活でもそうなんだよなぁ…でもキャリアが上の人にはなかなか素直に意見を言えないというのが本音。抜粋した台詞と共に、もうひとつ絹恵が放った言葉を、しっかりと胸に刻み付けておこう。

 
黙ってたらやられっぱなしなんだよ?
何を思ってたって考えてたって
無いことと同じなんだよ?
外に出してあげなきゃ
自分で自分を殺したことと同じだよ!?



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Tag [続刊レビュー] 2009.06.20
作品紹介はこちら→槇村さとる「Real Clothes」


realclothes_20090620134457.jpg槇村さとる「Real Clothes」(7)


百貨店は俺の
幸せの原点なんだ



■7巻発売になりました。
 カメレオン女・小西まみと本音をぶつけあい、プロジェクトは本当の意味で動き出す。同時に、越前屋と松越の合併話が浮上、合意に達する見込みとの情報が流れる。とにかく慌ただしい周囲の状況だが、絹恵はそれどころではなかった。彼女の一番の任務、それはなんとメタボ化した上司・田渕のダイエット作戦!!まさか上司の心とからだのケアをすることになるとは…
 
 7巻も相変わらず慌ただしいです。まずは同僚を交えての、カメレオン女・小西まみとの鍋。相手や状況によって巧みに自分を変え、適応していく。それを絹恵は「カメレオン女」と揶揄するのですが、それってスゴいことだと思うんですよ。女性だからこそできる芸当というか。でもそれだと本音が語られず、本当に良い仕事ができないという作者さんの意思が、話から見え隠れ。うーん、確かにある程度自分を表現せねばならない仕事なら言えるのかもしれませんが、実際は全部の仕事がそうだとは限らないと思うんだけどなぁ。ここは小西さんを評価してあげても良いと思うんですが、どうなんでしょ。やはりファッションの世界ではダメなの?

 そして7巻の主役はなんといっても田渕。7巻では、彼のルーツ、弱い所、カッコいい所が全部見える。やっぱり彼はカッコいいです。


real  clothes6
「仕事だからね」その姿勢がカッコいい。


 そんな田渕の、服から見る女性分類法がこちら
 ①同性に対するライバル心があって、服で自己表現したい女性
 ②同性の目線より男受けを考える女性
 ③社会的立場を優先させねばならない女性
 ④モードマニア

 
 うーん、良くはわからないですが確かに合ってる気がする。男性を分類すると、②か④が多くて、社会的地位がある人は③って感じしょうか。私はどう考えても②ですね(笑)そんなオシャレじゃないですが、一応異性の目は気にして、身だしなみにはそれなりに気をつける、と。で結局、無難な清潔感重視のシンプルな服に走るというか。男性はどこに行き着くにしても、基本は②から出発するんじゃないですかね。それが高じてマニアになったり、同性と張り合ったりする。田渕自身も、彼女にフラれた反動でダイエットに励み、そこからファッションに興味を持ったそうです。それに対して女性は、異性の目とか気にせずに、単純に「オシャレ」が好きな人が多いなぁという印象を受けますね。そうなるとどこだろ、やっぱ①なのかな?ライバル心云々なんてのは知らないですけど。


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