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Tag [新作レビュー] 2015.02.02
1106481739.jpgふみふみこ「神主さんと僕の彼女」



いさこのゆめは…



■有田神社の一人娘・いさ子は、神社の跡継ぎ候補として再会した幼なじみの雲居遥と突然、同居をすることに。何かと世話を焼いてくる過保護な雲居に困惑するいさ子でしたが、彼女を理解してくれる雲居と過ごす内に、本当の自分と向き合い成長していくのでした…。ふみふみこが描く、初の本格少女漫画!

 「ぼくらのへんたい」や「さきくさの咲くころ」のふみふみこ先生のYOU連載作になります。ふみふみこ先生ってマイナー誌で連載してるイメージが強くて、集英社のマーガレットコミックスで目にすることになるとは、かなり意外でした。では内容をご紹介しましょう。主人公は神社の一人娘・いさ子。日々気ままに生きていた彼女でしたが、神社の跡継ぎが登場することによって日常が大きく変化することになります。跡継ぎとなったのは、幼いころに一緒に過ごした年上の男の子・雲居。跡継ぎということで、同居をすることになるのですが、年頃の娘であるいさ子は大層困惑します。一緒に過ごしたとはいえ、いさ子は全く彼の記憶がありません。実質的に初めて知り合う男の人との同居生活。居心地の悪さはぬぐえません。しかも雲居はやたらといさ子を気にかけてきて、かなり過保護気味…なんだかペースを乱され気味な彼女でしたが…というお話。


神主さんと僕の彼女
コミカルに進みつつも、時折シリアスなシーンを入れて話を引き締めます。コミカルがベースにあるからこそ、こういったシーンも映えるという。


 少女漫画という位置づけで物語も一見恋愛メインに進んでいくのですが、本当に描こうとしているものは恋愛そのものではなく、もう少し根底的な何かなのだろうというのが、読んだ直後の素直な感想です。物語は雲居と神社で巫女としてバイトする男の娘・薫くんがいさ子を奪い合うという構図を取るのですが、当のいさ子は恋愛鈍感娘であり、雲居もどこか本意の見えないキャラであるため、恋の駆け引きでドキドキするといった要素は比較的薄め。むしろそういった表立った行動の隙間に見え隠れする、自分ですら気づいていなかった本当の気持ちや互いの慈しみあいにこそ、見所があるのかな、と。

 個人的に良かったのは、女の子同士の友情のフェーズでしょうか。個人的にふみふみこ先生はこっちのほうが主戦場という印象すらあるのですが、必要以上に説明はせず、それでも空気感や間で理解・納得させてしまうのはさすがと言ったところ。分量的に少ない中で、しっかりした濃度でストーリーを織り込んできています。

 一方の恋愛は、最後ふわっと終わってしまった感があり、Amazonのレビューで低評価が並んでいるのも、そういった所が起因なのかと思われます。確かにもう少し続いてもよかったかもしれません。一方で、序盤からの積み上げを見ても、こういう形で終わらせるのが最も納得感があるような気もします。謳い文句である「本格少女漫画」というイメージとのギャップですかね。そこは実際に読んだ方が、各々判断すればよいかと。

 
【男性へのガイド】
→ふわふわ感はまさしく女性向けという感じなのですが、一人の少女の成長譚として読めばまた違った印象もあり、そういったお話がお好きな方には良いかと思います。
【感想まとめ】
→ふんわり雰囲気で持っていかれた感はありますが、しっかりカタルシスは得られた気がします。ただ一方で、仮にふみふみこ作品をオススメするとなったらほかの作品を薦めるかなぁ。


作品DATA
■著者:ふみふみこ
■出版社:集英社
■レーベル:マーガレットコミックスYOU
■掲載誌:YOU
■全1巻
■価格:460円+税


■試し読み:第1話

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Tag [新作レビュー] 2013.09.03
1106306557.jpg中原アヤ「ダメな私に恋してください」(1)


そういうの
私 弱いです 主任



■会社が倒産して以来、収入ゼロにも関わらず、年下の大学生に貢ぐ日々を送っていた柴田ミチコ(29歳)。再就職活動は惨敗で、気がつけば所持金は15円に…。そんな時、怖くて大嫌いだった元上司・黒沢に偶然再会。果たして、彼は天使か悪魔か!?そしてミチコの生活は……!?中原アヤが描く、ダメダメ女子のラブコメディ!

 「ラブ☆コン」の中原アヤ先生のYOUでの連載作になります。描かれるのは、アラサーダメ女の恋愛。物語の主人公は、務めていた会社が倒産して現在無職の29歳・柴田ミチコ。再就職先を探すも、なかなか採用されません。そんな彼女の心の支えは、合コンで出会った医大生の男の子。プレゼントを贈ると、食事をおごってあげると、凄く喜んでくれるので、お金がないのについつい貢いじゃう。そして気がつけば、所持金15円。そんな中、前の職場で怖くて仕方なかった鬼営業・黒沢に再会。現在の事情を説明すると、バカにされつつも、なぜか彼がはじめるという、洋食屋に雇われて…。というお話。
 

ダメな私に恋してください
 今回描かれるのはダメ女の哀しき恋愛模様なわけですが、もうのっけから大学生に貢ぎまくってすごいイライラします(笑)合コンで出会った医大生という時点で結構地雷臭い感じがするのですが、そんな子の笑顔(というか顔)にベタ惚れして、何も考えずに貢ぎまくり。周囲の人たちが「いや、それはダメだろ…」と諭してくれるのですが、一瞬我にかえるも最終的には元通り、と筋金入りのおバカさんです。この「顔が好き」という発言の身も蓋もない感じが。。。
 

 30手前、職なし、彼氏なし…と3重苦なのですが、ヒロインが将来を見ずに「今を生きる!」と決めているからか、そのプロフィールから想像できるほどの辛さが伝わってこないという。ピンチというのも「将来が危うい」じゃなくて「今が危うい(死ぬかもしれない)」という危うさ。そんな可哀想なヒロインを拾ってくれたのが、元上司の黒沢。非常に厳しい先輩で、ミチコは毛嫌いしていたのですが、背に腹はかえられないと、彼の元で働くことに。面倒見の良い先輩で、これでいよいよちゃんとした生活を…と思いきや、再びあの大学生につかまり、今度はサラ金までして貢いでしまう…というアホっぷり。
 
 物語を表層的に見ていると、学習能力のないバカなヒロインがどんどん深みにはまっていく中で、手を差し伸べてくれる王子様が登場してなんとか救われるという、割と主人公に都合の良いお話。正直これを男性的な視点で見ていると結構イライラするのですが(笑)、こういう女性って少なからず存在しますよね(もちろん男も)。守ってくれる人が誰もいない孤独で不安な環境の中で、味方してくれそうな人が現れたら、全力でそこに取り入ろうとしますし、信奉してしまうという。こういう孤独な環境下で、ひとりでちゃんと行動出来る人と、出来ない人ってのがいて、本作は出来ない人の辛さや悲哀みたいなものが、コミカルな雰囲気で隠しつつ、ガッツリ落とし込まれているように受け取れます。孤独な(周囲が敵だらけに見える)中で、味方してくれそうな人に頼って全てを捧げて生きざるを得ないという性質が誇張された形で表現されたのが、「きみが心に棲みついた」(→レビュー)のキョドコあたりでしょうか。作中で大学生が、ヒロインのことを「犬みたい」なんて言うわけですが、そういう環境で手綱つけてあげなくちゃいけないって意味では、遠からず当たっていて、二重の意味でしんどい発言だな、と。


ダメな私に恋してください1−2
 というわけで、結構根の深い、重いテーマが見え隠れするのですが、テンポ良くコミカルなので、あんまりそれが伝わってこないという。たぶんそれは狙ってやっていることで、笑って見てあげないとしんどいからか。会話での小ネタは相変わらず面白く、ちょいちょい笑ってしまいます。「ラブ☆コン」のような前向きな恋物語というわけではありませんが、今までとは少し違った、悲哀が奥底にある中原アヤ作品を、楽しんでみてください。


【男性へのガイド】
→これヒロインに結構ムカつく男性いらっしゃるのでは(笑)ダメ女が好きという方は。(適当)
【感想まとめ】
→作品が持つ雰囲気は中原アヤ先生のそれなのですが、根底にあるものがちょいと異なる印象の作品。一段落ついて感のある1巻ラスト、2巻以降でまたちょっと違った雰囲気になるのかも。


■作者他作品レビュー
天然女子と強面男子のドギマギラブコメ:中原アヤ「純情ドロップ」


作品DATA
■著者:中原アヤ
■出版社:集英社
■レーベル:コミックスYOU
■掲載誌:YOU
■既刊1巻
■価格:419円+税


試し読み:第1話

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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2013.09.02
1106306558.jpg小森羊仔「青い鱗と砂の街」(1)


はじめて会ったはずの
その男の子は
何故か少し懐かしくて
潮のにおいがしました



■あの夏、人魚が私を助けてくれた…。
 新学期を前に、父親とふたりで海辺の小さな街に引っ越してきた時子。波の音を聞きながら、彼女の脳裏には海で人魚に助けられた、おぼろげな記憶が甦っていた…。転校生として不安な新学期を迎えた時子だが、クラスの男子たちに転校の理由を問いつめられ、母親のことを思い出し泣いてします。しかし、鳴海が“辛い記憶は、海の底に閉じこめる想像をすればいい”と励ましてくれた。そして時子は、新しい街での生活に希望を持ちはじめ…。
  
 「シリウスと繭」(→レビュー)の小森羊仔先生の新連載作でございます。今度の作品タイトルも、なんだか凝った感じがして素敵ですね。前作は高校生の男女の出会いを描いた恋物語となっていましたが、今回は小学生の女の子が主人公となります。家庭の事情で、父親と二人、母の実家で暮らすことになった時子。海と山に囲まれた静かなこの田舎街に訪れるは、4歳の頃に訪れて以来。朧げな記憶の中に、唯一ハッキリと残るのは、この海で溺れて人魚に助けられたこと。「もう一度会えないかな…」儚い願いを抱えながら、彼女はこの街で新たな生活をスタートさせます。新しいクラス、新しい友達、新しい居場所…様々な出会いと想いが交錯し、時子はひとつひとつ大人になっていきます。


青い鱗と砂の街
人魚に助けられた記憶がある時子。この街には「人魚が見れる」という噂話が存在しているため、時子はより一層人魚に会いたいと願うように。


 前作「シリウスと繭」は受験期の少年少女の初恋のあれこれがつまっており、読んでいて非常に甘酸っぱい感覚に包まれたのですが、本作は小学生ということもあり、恋愛要素はさほどでもありません。恋愛も一要素ではありますが、思春期の一人の少女の成長記ということで、その他の部分もたっぷりと描かれます。
 
 ヒロインの時子が転校してきた理由は、母親が浮気をして家を出ていってしまったため、父親が「ここなら母が戻ってくるかも」と母の故郷にいることを決めたからでした。6年生という、非常に多感な時期での転校で、時子自身の気持ちも決して穏やかではありません。普段は平然としているけれど、ちょっとしたきっかけで、涙が流れてくる。そんなアンバランスな精神状態の彼女の支えとなるのは、家族であり、新しい土地で出会った友達であり、4歳の時の人魚に助けられた思い出であり…。
 
 こういった背景があるからか、時子は他の同世代の子達よりも少し大人びています。そんな彼女と波長が会うのが、引越初日に出会った同じクラスの男の子・鳴海くん。
 

青い鱗と砂の街1
 彼もまた、この歳でとある出来事により心に傷を抱えており、どこか大人びている感が。見ている感じからすると、恐らく今後この二人が恋仲になっていきそうな予感。どこか大人びた二人の小学生が、クラスメイト達と離れたところで理解しあい、段々と想いを強めていくという感じは、どこか「秒速5センチメートル」を想起させました。ああいった雰囲気が好きな方は、本作も結構気に入るんじゃないのかなぁ、とか。
 

 「人魚」というファンタジックな要素が落とし込まれていますが、恐らくファンタジー作品とはならないと予想。現実の、小さな世界で物語は回っていくと思われます。前作もそうでしたが、今回もまた全体的な雰囲気が良いんですよね。海辺の静かで神秘的な感じとか、かといって決してキレイな感情・思い出ばかりでないところとか、特別な場所で、特別な時間が流れている感じがするというか。

 物語の主要登場人物に共通しているのは、過去の想いに囚われ、それを追い求めているということ。ヒロインの時子は、4歳の時に出会った人魚のことが。父親は、自分の元を離れていった妻(時子の母親のことを)。そして、鳴海くんは、兄のことを。それぞれが追い求めるものが、やがて物語が進むと共につながりを持ってくるはず。どのようにつながり、物語が動いていくのか、非常に楽しみです。
 

【男性へのガイド】
→極端に恋愛に偏ってもいないですし、雰囲気も良く、こういう作品が好きな方は結構いるんじゃないかと思います。
【感想まとめ】
→前作とはまた違った風合いの作品ながら、静かに引き込む魅力は健在。2巻での展開も非常に気になるところで、本作ももちろんオススメでございます。


作品DATA
■著者:小森羊仔
■出版社:集英社
■レーベル:オフィスYOUコミックス
■掲載誌:YOU
■既刊1巻
■価格:419円+税


試し読み(第1話)

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2013.02.09
作品紹介→星空に浮かぶ、淡く切ない恋物語。:小森羊仔「シリウスと繭」1巻




1106237897.jpg小森羊仔「シリウスと繭」(2)


進みが遅く感じるのは
上り坂だからか
気持ちだけが
先走っているからなのか



■2巻発売、完結しました。
 高校を卒業し、東京の大学に進んだハル。上京当日、繭子は列車の発車間際に、彼に気持ちを伝えた。“手紙を書くから”とハルは告げ、ふたりは別れた…。離ればなれになっても恋い焦がれるこの想い、あなたに届くでしょうか…。ピュアラブストーリーのゆくえは?
 

〜完結しました〜
 2巻で完結致しました。なんとなく2〜3巻で完結するような気配はしていたので、この短さでのエンディングも至極納得。相変わらずシンプルにオーソドックスに恋愛模様を描き、しっかり完結しました。個人的にはものすごくツボであったのと、このマンガがすごい!にもランクインしていたりと、2巻は結構話題になるかと思ったのですが、思いの外静かに売られているようですね。近所の書店では平積みではなく、棚差しで陳列されていました。うーん、もったいない。もうこの先なかなか紹介する機会もないでしょうから、このタイミングでしっかりとレビューしておきたいものです。


〜2軸で進む新生活〜
 2巻は二人が高校を卒業し、ハルは東京の大学、繭子は地元の専門学校に進学してからが描かれます。繭子は専門学校で、男の子と女の子、それぞれ一人ずつと仲良くなります。一方のハルは、これといった仲の良い友達は描かれず、ある夜繭子のライバルであるメグと再会。登場人物はたったこれだけと、2巻になっても相変わらずシンプル。そして当然のように、それぞれ恋愛の矢印が伸びあっているわけですよ。
 
 
シリウスと繭2−1
今回初登場の二人、櫻井君と保坂さん。なんて、櫻井くんは前回ちょこっと登場しているわけですが…。櫻井君は繭子のことが好きで、そして保坂さんはそんな櫻井君のことが好き。


 自分も思い返せばこの頃が一番楽しかったというか、色々と恋愛をするチャンスが転がっていたんだな、としみじみ思います。高校時代の友達との関係は未だ保たれ、むしろ卒業きっかけに益々連絡取ってしまったり、また一方では大学の新しい友達とどんどん仲良くなっていくという。恋愛漫画ではこの辺の移り変わりは割と人間関係が広がり複雑になりがちなのか、どちらかに重きを置いて描かれるわけですが、本作はしっかりと両方を描いてくれました。たぶんハル側の交友関係が広がりを見せなかった分、上手く納まったのかな、と。


〜切なさ多めで〜
 1巻も割とそうだったのかもしれませんが、2巻も切なさ成分が強め。10代の恋愛という瑞々しさはあるものの、そこからの展開はどちらかというと想い通りに進まないもどかしさや辛さみたいなものが大半で、喜びよりも悩みの方が多いです。その辺もリアルというか、絶妙なバランス感なんですよね。それでもって、心情を表す言葉がごくごくシンプルで、かつツボを押さえているというか。アドレス交換のシーンでも
 

わたしの携帯に
はじめて登録された男の子の名前は
ハルの名前ではありませんでした


 ちょっと立ち止まってみて、考えるこんなこと。男の子の知り合い少ないってツッコミはさておき、こんな形でポイントポイントで一拍置くようなスローな進み方が、私には合っていました。
 

シリウスと繭2−2
 そんな物語で一番の見所は、なんと言っても告白シーン。幸せが募るから告白するのではなく、むしろもどかしさや焦りが募った結果、告白するような、そんなシチュエーションが多かった気がします。それぞれみんな、抑えきれない想いを抱えていて、ついに留めようがなくなり、溢れてしまう。思わず言ってしまうシーンも、「言うぞ!」と決意して言ったシーンも、どれも非常に印象的でした。


〜保坂さんが素敵でした〜
 今回それぞれに様々な恋愛模様を見せてくれたわけですが、個人的に一番素敵だったのは、保坂さんでしょうか。脇役女子にありがちな勘の良さに加えて、出過ぎない控えめさと、ここぞで踏み出せる勇気と、ちょっとの強かさを持っているのです。櫻井君を好きだと自覚し、また彼が繭子のことを好きだと見抜くと、


シリウスと繭2−3
牽制

 
 「好きだ」と明かすこと自体は牽制ではないのですが、この後に、過去に好きなことを打ち明けて好きな人を取られたという過去を暴露し、それとなくクギをさすような格好に。被害者的過去を明かして、下手から先手を打ってライバルになりそうな相手を制する、この逞しさが素敵。あと、自分の気持ちは明かさずに、櫻井君に恋の協力を請われたらそれを受けるという。これって自分を苦しめているようでいて、一方で好きな人に一番近い位置に居られるわけですから、むしろ櫻井君が振られて次に…ってなった時に一番有利なポジションなんですよね。
 

シリウスと繭2−4
 そしてそのアクションのかけ方も素晴らしい。告白までは何もせず、その後行くべきタイミングで行く。彼女はきっと、この先恋愛に関しては殆ど失敗せずに自分の想い通りに進めるんだろうなぁ。泣きぼくろのあるキャラは、やっぱりしたたかでないと。


〜やっぱり最後は坂道で〜
 物語はもちろんみなさんが想像するような結末を迎えるわけですが、そこまでの過程を存分に楽しんでくださいませませ。雰囲気的に、誰がどう好きになるというのがわかりやすく、また決して逆転劇は起こらないのだろう、と簡単に読み取れるような物語であるのですが、だからこそ心情描写(情景描写)のみで魅せるしかないわけで。
 
 本作で都度、大事な場所として描かれていたあの坂道も、最後きっちり描かれましたとも。ほんとうにキレイなまとめ。どの人物にも救いが見えるような。最初から最後まで、実にキレイに納まった物語でした。シリウスが連星、なんてネタも交えつつ、誰かに薦めてみたくなる素敵な恋愛漫画です。読んだことのない人は、是非この機会に一度手に取ってみてください。


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Tag [続刊レビュー] 2012.10.04
作品紹介→*新作レビュー*鴨居まさね「君の天上は僕の床」
2巻レビュー→こんなアラフォー世代になりたいです:鴨居まさね「君の天井は僕の床」2巻



1106185489.jpg鴨居まさね「君の天井は僕の床」(3)


もう
好きになってもいいんだね



■3巻発売しました。
 デザイナーのトリさんとウシちゃん。ふたりが一緒に事務所を構える雑居ビルには、個性的な面々がたくさん。そんなご近所さんのひとり、つけ麺屋さんで働く星川さんの恋がなんと進展!?
 

〜ひっさびさの3巻です〜
 2巻が発売されてから何か月ぶりですかね?感覚では2年以上経っているのですが、まぁとにかく待ちましたとも。そして読んでみたらやっぱり面白い。何か劇的なことが起こるわけではなく、ただただとある場所に出入りする人たちの日常を切り取っていくだけなのですが、それが妙に色付いて、キラキラと輝いて見えるから不思議。キャラクターの描き出しが上手いのか、描くネタが面白いのか。そうそう、今回ひとつ気づいたのは、割と専門的な仕事についての解説が多いな、ということ。例えば今回であれば、獣医学だとか、味覚に関する知識だったり、虹彩学なんてものまで登場したり。
 

君の天井は僕の床3−1
 校閲とか、印鑑屋さんとか、普段であればまず覗かないであろう世界まで覗けるので、ついつい興味を持って読み込んでしまうんですよね。そしてそれが上手い具合に日常会話に溶け込んでいるんだ。登場人物たちの世間話というか、知識欲みたいなものにシンクロしちゃうのか、「ふんふん」てな感じで聞いちゃう感覚。


〜何気に進展している恋模様〜
 さて、最初の方で「何も起こってない」とか言っちゃいましたが、いや実は起こってはいるんですよ。ただ絵的にすごく穏やかってだけで。特に3巻は、今まで伏線めいた形で育まれていた恋愛達が、ついに花開いた形となっており、物語的にも割と重要な巻だったんじゃないかな、と思います。
 
 まずはなんといっても星川さん。前半はほぼ彼女の話が展開されることになりました。その体型とサバサバした性格から、どうにも雰囲気がシリアスにならないのですが、それでも彼女成りに置かれている状況とこれからをあれこれ考えることはあったみたいです。というか30目前の女性が23歳の大学生と遠距離恋愛…ってそりゃあなかなか踏み込めないですよね。普通の恋愛漫画だったら、近い場所にいたとしたってその年齢差がハードルとして立ちはだかりそうなもの。特に自分はアルバイトだし、相手はまだ学生だし、おまけに健康状態でイエローカードまで…。そんな課題だらけの二人でしたが、やっぱりお互い好きで、そして最後に背中を押したのは
 
 
君の天井は僕の床3−2
家賃の安さ


 そして自分が、別に今の場所に留まり続ける理由がないことに気がつきます。めでたしめでたし。元々とある雑居ビルをベースに話が展開されている本作ですが、出ていく理由もまた物件関連というのが面白いですよね。しかしこれで星川さんの登場回数減ってしまうのでしょうか。良いツッコミ役だったので、少し寂しい気もします。


〜大人の恋愛ってこんな感じなのかな?〜
 さて、そんな星川さんを横目に、トリさんと本間さんも男女としてもうワンステップ先へ進んでいました。最終的にここまで行くってのはわかりますが、こうなんていうか、ものすごくアッサリというか(笑)もちろん並々ならぬ決意とかってものはあるかと思うのですが、それでもトントン拍子な感じがですね。その淡々さ加減が、いかにもこの物語らしいです。子供めいたトキメキや恥じらいは見せつつも、肝心なところは大人な感じが、妙にリアル感が。トリさんとか本当にいそうですしねー。しかし決めてとなる話題が「お墓」ってのが。子供とかどう考えているのだろう。そういう意味では、楽しくも結婚するにはなかなか難しい年代なのだなぁ、と改めて思わされました。自分もいつかそんなことを考えたりする日がくるのでしょうか。でも、全然問題ないというか、むしろ楽しみに思わせてくれる魅力がこの物語にはあるんですよね。というわけで、まだチェックしていない方は是非ともこの機会に!


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かくかくしかじか
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小森羊仔「シリウスと繭」(1)
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いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
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レビュー
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レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。