
いさこのゆめは…
■有田神社の一人娘・いさ子は、神社の跡継ぎ候補として再会した幼なじみの雲居遥と突然、同居をすることに。何かと世話を焼いてくる過保護な雲居に困惑するいさ子でしたが、彼女を理解してくれる雲居と過ごす内に、本当の自分と向き合い成長していくのでした…。ふみふみこが描く、初の本格少女漫画!
「ぼくらのへんたい」や「さきくさの咲くころ」のふみふみこ先生のYOU連載作になります。ふみふみこ先生ってマイナー誌で連載してるイメージが強くて、集英社のマーガレットコミックスで目にすることになるとは、かなり意外でした。では内容をご紹介しましょう。主人公は神社の一人娘・いさ子。日々気ままに生きていた彼女でしたが、神社の跡継ぎが登場することによって日常が大きく変化することになります。跡継ぎとなったのは、幼いころに一緒に過ごした年上の男の子・雲居。跡継ぎということで、同居をすることになるのですが、年頃の娘であるいさ子は大層困惑します。一緒に過ごしたとはいえ、いさ子は全く彼の記憶がありません。実質的に初めて知り合う男の人との同居生活。居心地の悪さはぬぐえません。しかも雲居はやたらといさ子を気にかけてきて、かなり過保護気味…なんだかペースを乱され気味な彼女でしたが…というお話。

コミカルに進みつつも、時折シリアスなシーンを入れて話を引き締めます。コミカルがベースにあるからこそ、こういったシーンも映えるという。
少女漫画という位置づけで物語も一見恋愛メインに進んでいくのですが、本当に描こうとしているものは恋愛そのものではなく、もう少し根底的な何かなのだろうというのが、読んだ直後の素直な感想です。物語は雲居と神社で巫女としてバイトする男の娘・薫くんがいさ子を奪い合うという構図を取るのですが、当のいさ子は恋愛鈍感娘であり、雲居もどこか本意の見えないキャラであるため、恋の駆け引きでドキドキするといった要素は比較的薄め。むしろそういった表立った行動の隙間に見え隠れする、自分ですら気づいていなかった本当の気持ちや互いの慈しみあいにこそ、見所があるのかな、と。
個人的に良かったのは、女の子同士の友情のフェーズでしょうか。個人的にふみふみこ先生はこっちのほうが主戦場という印象すらあるのですが、必要以上に説明はせず、それでも空気感や間で理解・納得させてしまうのはさすがと言ったところ。分量的に少ない中で、しっかりした濃度でストーリーを織り込んできています。
一方の恋愛は、最後ふわっと終わってしまった感があり、Amazonのレビューで低評価が並んでいるのも、そういった所が起因なのかと思われます。確かにもう少し続いてもよかったかもしれません。一方で、序盤からの積み上げを見ても、こういう形で終わらせるのが最も納得感があるような気もします。謳い文句である「本格少女漫画」というイメージとのギャップですかね。そこは実際に読んだ方が、各々判断すればよいかと。
【男性へのガイド】
→ふわふわ感はまさしく女性向けという感じなのですが、一人の少女の成長譚として読めばまた違った印象もあり、そういったお話がお好きな方には良いかと思います。
【感想まとめ】
→ふんわり雰囲気で持っていかれた感はありますが、しっかりカタルシスは得られた気がします。ただ一方で、仮にふみふみこ作品をオススメするとなったらほかの作品を薦めるかなぁ。
作品DATA
■著者:ふみふみこ
■出版社:集英社
■レーベル:マーガレットコミックスYOU
■掲載誌:YOU
■全1巻
■価格:460円+税
■試し読み:第1話
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