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2012.08.18
1106057205.jpg野崎ふみこ「ホスピめし みんなのごはん」(1)


食事は栄養だけじゃない
カロリーだけでもない
心が通ってはじめて食事と言えるのかもしれません



■3巻発売、完結しました。
 真山総合病院に勤務する小西麦子は、この病院の病棟管理栄養士。病棟管理栄養士の仕事はというと…入院患者さんの食事内容と栄養状態の把握、報告、外来患者さんも含めた栄養相談などなど…。食べる事は生きる事。ひとりひとりに合った食事をご用意…患者さん達を、「食」で全力サポートします。果たして彼らの「食べる」を回復させることはできるのか?
 
 病院食にスポットを当てた作品、その名も「ホスピめし」ご存知ない方も多いかと思いますが、何気に3巻まで出ている人気作です(たぶん)。レーベルはJOURコミックス(JOURすてきな主婦たちという雑誌のレーベルです)。当ブログでは同じレーベルで、図書館司書にスポットを当てた「夜明けの図書館」(→レビュー)をご紹介した事がありますが、割と地味ながら味のある事柄にスポットを当ててくる印象があります。こちらは病院の病棟管理栄養士をしているヒロインが、患者さんや身の回りの人物で体調を崩している人を、病院食によって立ち直らせていくというお話になっています。
 
 病院食マンガというと料理マンガなんてものをイメージするかもしれませんが、さすがに病院食でグルメは難しく、味だとか見ためだとか隠し味だとか、そういった色は抑えめ。主眼が置かれるのは患者の症状を改善することであって、グルメというよりは、食事療法を通した医療マンガと言った方がしっくり来るかもしれません。


ホスピめし
栄養学的な見地からの解説があったり、割とためになります。とはいえ病院食だからといって栄養学一辺倒なアプローチということもなく、食事の習慣や思い出と言ったメンタル的な部分でのケアも行います。
 

 料理マンガはなんか悩みとか問題が、料理を食べる事で全部解決する節がありますが(偏見)、この作品ではそういうことはありません。病院食はあくまでアプローチの一つであって、医療行為の中の一つという位置付け。そのため結果患者を元気づけたのは病院食ではなく、他の何か、なんて結末もしばしばあります。切り札としてではなく、きっかけとして。そういう感覚は割とリアルというか、無駄にドラマチックにせずに地に足ついたお話になっているな、と好印象です。また1話読切り形式で、また恋愛要素も特になし。ということで、万人向けの非常に読みやすい作品でございます。
 
 私は幼い頃病弱で何度か入院したことがあるのですが、当時の病院食ってあんまりおいしくなかった思い出があるんですよね。今はもっと美味しくなっているんでしょうか。とりあえず味が薄くてやわらかかった思い出ばかりです。この作品を読むと、病院食に興味が出る事はないでしょうが、とりあえず食生活に気を使ってみようかな、なんて気持ちにさせてくれます。ちなみに今日の夕食はラーメンでした(全然ダメ)
 

【男性へのガイド】
→敢えて男性にという感じでもないですが、本作は基本的に老若男女誰でも読めるような作品かと。図書館とかに置いてあってもいいんでは…というのは言い過ぎか?
【感想まとめ】
→こういう作品は教育マンガ的位置付けで、読んでて安心するというか、安心して身を任せていられる感覚があります。読みやすい良い作品だと思います。


作品DATA
■著者:野崎ふみこ
■出版社:双葉社
■レーベル:JOUR COMICS
■掲載誌:JOURすてきな主婦たち
■全3巻
■価格:619円+税


■購入する→Amazon

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Tag [新作レビュー] 2011.12.09
1106079771.jpg埜納タオ「夜明けの図書館


あなたの「知りたい」を
精一杯お手伝いします



■市立図書館で働く新米司書・ひなこ。3年もの就職浪人の末、高倍率の中このたび奇跡的に採用に至り、司書としてデビュー。だからやる気は人一倍!けれど日々利用者から投げかけられる質問・疑問は、迷宮入りしそうな難問ばかりで…。「調べもの」を通して、本と、人と、心をつなぐ。ほんのりあったか、図書館マンガの登場です!

 なんとなく表紙に心惹かれて購入した一作。図書館業務の中でも、主に利用者からの質問対応である「レファレンス・サービス」にスポットを当てた作品です。ヒロインは、新米司書のひなこ。新米とはいってもすでに25歳。というのも図書館司書はありえないほどの高倍率であるため、簡単には就職できません。このヒロイン・ひなこも、3年の就職浪人の末、やっとの思いでここ・暁月市立図書館に採用されたのでした。働きはじめたばかりということでやる気はマンマン。けれども思っていた以上に図書館司書の仕事は大変!特に日々お客さんから投げかけられる、疑問・質問への対応が…。「数十年前のこの場所が映った写真が載っている本はある?」「影が光ったんだけど、それが載ってる本ってある?」最初から難しい質問、ちょっと首を突っ込むと途端に扱いづらくなる質問…今日も色々な人が訪れるこの図書館で、ひなこが一生懸命駆け回ります!


夜明けの図書館
図書館はいわば探検の場所。調べれば調べるほどに何か出てくる。その道先案内人となるのが、図書館司書なんです。


 図書館って良いですよね。学校の図書館のように、人気がなくて静かで、ちょっとほこりくさい感じも好きですし、逆に町の図書館のような人が沢山いる明るい雰囲気も好きです。このお話で舞台になるのはとある市にある市立図書館。自治体レベルが市ということで、それなりに大きな図書館。そのため訪れる人も老若男女幅広く、投げかけられる質問も様々です。お話は、ひなこやその他図書館司書がお客さんからレファレンスを受けることから始まり、対応していくことでお話が転がる一話完結方式。基本的にはレファレンスなんて数十秒から数分で終わるものが大半。けれどもそれでは話は進みません。飛び出すのは難問、奇問が主。時にはごく普通の質問でありながら、人の良いヒロインが不用意に飛び込んでしまうことで、状況がこじれることもあります。そしてその先に待っているのは、充実感と達成感。レファレンス対応したからこそ得られる、この仕事ならではの喜びを、あなたもちょっとだけ味わって見ませんか?
 
 ただ本を与えるだけなら、本屋でもできます。けれどもここはあくまで市立図書館。その土地に根付いたハコであり、お金儲けではない“純”なサービスで勝負。そのため描かれるネタも、その土地ならではの土地柄を表したものになっており「ああ、図書館マンガ読んでるな」と感じることができます。客層も本屋ものよりもより自然に「子供」や「ご老人」が登場していて、作品全体として持つ安心感がすごい。基本的には良い話エンドですが、ベースはコメディとなっており、市役所から出向しているやや腐った同僚が良いスパイスとなっています。恋愛展開はありませんが、その分「人と人との繋がり」という普遍的なものへウェイトが集中していて、確かな満足感と幸福感が得られるはず。図書館がお好きな方も、そうでない方も、気になったあなたはちょっと手にとって見ては?


【男性へのガイド】
→万人受けしそうな読みやすい作品。図書館業務について描かれているってのも、お仕事マンガ的に受け入れられて良いのではないのでしょうか。
【感想まとめ】
→図書館マンガ読んだ!って感じの充実感が得られる一作。慌てん坊で正義感の強いヒロインも、非常に好感が持てました。

■作者他作品レビュー
埜納タオ/槙佑子「百花日和」


作品DATA
■著者:埜納タオ
■出版社:双葉社
■レーベル:jour comics
■掲載誌:jourすてきな主婦たち
■全1巻
■価格:619円+税


■購入する→Amazon

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Tag [新作レビュー] 2011.10.24
1106090775.jpgさよならポニーテール「きみのことば」


ねぇ半径何メートルまでは信用できる?
ねぇ、人生何パーセントは自分のものなの?



■きみのコトを思うとなぜだかとっても胸がくるしいよ…
 3人の女の子たちが繰り広げる、奇跡の物語がいまはじまる。
 

 女性向けかはわからないのですが、ここ1年くらいずっとハマっているので、お届けします。みなさん、「さよならポニーテール」という存在はご存知でしょうか?音楽共有サイトであるmySpaceをベースに活動する、謎多きアーティスト(?)で、先日インディーズでのCD発売に続き、メジャーデビュー。ご紹介ではアーティストと言いましたが、当人としては「音楽を中心とした物語」を名乗り、様々な活動をしております。私はmySpaceで偶然見つけて以来、この独特の世界にハマってしまったのですが、その存在や魅力について語るのはなかなか難しく…とりあえずさよポニとは何なのか、詳しくはこの辺りの記事をご参照いただければ…
 
謎だらけの「さよならポニーテール」 その真相に迫る


ちなみに曲はこんな感じです。


さよならポニーテール『さよなら、ありがとぉ(みぃな弾き語りver.)』





さよならポニーテール『ナタリー』MV(サビだけ)
 


 ちょっと前からざわざわと話題になっていたのですが、ここ最近はよくその名前を耳にするようになってきました。今回ご紹介するのは、メジャーアルバムの発売に合わせて一緒に発売された、マンガ作品「きみのことば」です。アルバムジャケットなどからもわかるように、イラストやマンガも活動のひとつ。しかし太田出版からこういった形で発売されるとは。帯では「坂道のアポロン」(→レビュー)の小玉ユキ先生が言葉を贈っています。
 

 物語の中心となるのは、表紙にいる3人の女の子。センターにいる“みいな”に、そんな彼女のクラスメイトでもある黒髪の“あゆみん”と、ショートカットの“なっちゃん”の、学校生活を中心に描かれます。舞台となるのはさよポニワールド。ここはこちらの世界とは異なり、魔法が使えたり、なんだか不思議な不思議な世界。通学は専らうさぎ通学かネコバス通学。なんだか見たことのない生き物がいたりします。それでもテストはあるし、その勉強に苦しんだり、好きな男の子がいたりっていう姿は普通の女の子そのもの。
 
 絵柄的にちょっと懐かしい匂いを感じるかも。決して上手いわけではないですが、それこそが個性であり、旨味でもあります。最近だと例えば今日マチ子さんとかこういう系になるんでしょうか。独特の世界に独特の空気感、そして独特の間で贈る、ちゃんとした説明のない物語。とにかく全てがそこで完結していて、だからこそあちら側に踏み込んでしまったら、抜けられなくなるというか。ただ世界観は独特であっても、物語の中に落とし込まれる女の子同士のかけ合いは、日常風景そのもの。ふんわりした絵柄を守るように夢物語を描くわけではなく、むしろその裏にあるネタは割と地に足ついているというか、ごくごく普通で形のハッキリしたもの。そのギャップというか違和感が、余計に印象に残るといいますか。
 

無気力スイッチ
テスト勉強での一幕。歌詞がそのまま登場することも。基本的に自由な二人と、心配性な一人。

 
 女の子も無駄にキャラキャラしていないんですよね。描かれているのは我々からしたら非日常であり空想に他ならないのですが、その中で動く彼女たちからしたら、それこそが日常であり、当たり前の風景。だからこそみんながみんな自然で、必要以上にキャラキャラしていないんですよね。ファンタジックな物語を空想している人からしたら、大きく違和感を残す構成になっているとも言えるかもしれません。それは単純に物語の描かれ方の違いだと思っていて、その多くが内側からの視点。こちら側からの視点に立っている感覚を受けたのは、収録されているお話のウチでも「水中通学路」とだいぶ譲って「ねむりの国へ」あたりぐらいしか。だからこの作品…というかそもそもさよならポニーテールを楽しむには、どっぷりハマらないといけないわけで。そしてまさに、そうならざるを得ないように、そういう物語構成になっているという。好き放題やっているように見えて、そのプロモーションの仕方はすごく一貫しているな、という印象を、この作品を読んで一層強く持つようになりました。
 
 個人的に好きなのは、ショートカットのなっちゃんです。まずもう見ためが好みですよ、はい。一番クールっぽく見える変わり者な彼女が、このふんわりした世界に一番ドライな空気を吹き込んでくれるという(笑)ブレない良い友達ポジションで、物語を引き締めてくれるんです。この自然体が好きですねー。たぶん実際にいたら男子から人気出るのは、ヒロインのみいな(天然系でかわいい)か、あゆみん(大人しくて気が弱くてかわいい)な気がするのですが、そんな彼女たちの魅力を引き出しているのはなっちゃんなんだよ!と。なっちゃん好きが高じて、彼女のデザインが施されたiPhoneケース買っちゃいました。いや、iPhoneもってないんですけどね(なんで買ったとかいう問いかけはなしの方向で…)。せっかくだから、iPhone買おうかしら…。



きみのことは#12441;1
序盤はカラーです。不思議な要素もたくさんですが、あくまでベースは女の子たちの日常風景。それこそが、かけがえのない時間、瞬間。


 さて、肝心のマンガの方なのですが、女の子たちの日常を中心に番外編を含め13編が収録されています。全てさよならポニーテールの曲名が掲げられていて、その内容も曲とリンクしているという。もちろんこのマンガだけを読んでもさよポニワールドに充分触れることはできるのですが、マンガが曲を強化するという関係性になっている以上、曲を聴いていた方がずっと楽しめると思います。曲でメッセージは言葉として伝えているので、作中の台詞も少なめですし。物語は前半は日常&友情パートになっていて、中盤~後半にかけては青春&恋愛モードへと移って行きます。物語&曲の組み合わせで個人的に好きだったのは、「甘い感傷」でしょうか。甘くない、全然甘くないんですけど、それがいい・・・!


 さて、まとめ。核心は語られない、どっぷりはまり込む系の存在。ゆえに一旦ハマると深いのですが、同時に他の人にオススメしづらいというのと、数年後振り返って「あれ?なんで自分これにハマってたんだろ…」と賢者からの落ち込みモードに入る可能性もあるという。でもとりあえず、好きな間は追いかけようと思うのですよ。そして今は、一番の追いかけ時だと思うんですよね。プッシュのされかたもすごいですし、もし知らない方は少しさよポニワールドを覗いてみては…?
 


【男性へのガイド】
→そもそも女性向けかわからんという。文法は少女マンガに見られるものではあると思います。
【感想まとめ】
→ハードカバー1200円ということは、ファンは買えってことなのですよ、きっと。とはいえこのエントリーをきっかけに、さよならポニーテールを知ってくれる人が、そして好きになってくれる人がいたら嬉しいです。


■その他特集記事など
マンガが特別に読めたり

ナタリーでの特集記事


作品DATA
■著者:さよならポニーテール
■出版社:太田出版
■レーベル:
■掲載誌:
■全1巻
■価格:1200円+税


■ちなみに発売になるCDはこちらです。

魔法のメロテ#12441;ィ魔法のメロディ(初回生産限定盤)(2CD)



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Tag [オススメ] [BL] 2011.08.15
1106048512.jpgこめり「いとしのこいしの」


美しい思い出(予定)の人が
目の前にいる事の方がハプニングです



■高校生の修はネットで知り合った年上の野田さんとお付き合い中。趣味も合うし、真面目で優しくてスゴく愛されてるって分かってる。けれど、時々不安になるんだってば…!なんで家に行っちゃいけないの?なんで仕事の話をしてくれないの?なんでデートは6時解散なの!?もしかして…もしかして…!募る不安から、疑心暗鬼になる修は、真相を確かめるために…。恋する男子の疑心暗鬼を面白おかしく描く表題作に、独特の切り口で綴る新鋭こめりのファーストコミック登場!

 久々のBLレビューです。もっとBL作品ご紹介したいのですが、少女マンガの新刊だけでも現在レビューできてない作品が多くて、なかなか手が回らないというのが現状…。なんとか改善したい!ということで、こめり先生のデビュー単行本のご紹介です。安心の東京漫画社マーブルで、この表紙。「あ、ほのぼの系だな」と簡単に見当ついたのですが、やはり内容もそのままで、非常に読みやすかったです。
 
 読切り中心に、5シリーズ6編を収録。どれも学生たちが主人公で、希望に満ちあふれているのだけど、力のない自分、マイノリティとしての存在ということも自覚していて、どこかみんな後ろ向きで、ささやかな幸せを噛み締めるというような男の子という印象がありました。表題作は既に恋人がいるシチュエーションですが、その他は基本的には付き合う以前。とにかく初々しく微笑ましい、遠慮しがちで時に大胆な恋の駆け引きを楽しむことができます。「泣きたくなるほど晴れた日に」は、社会人の主人公ですが、そこに高校生の男子(しかもカップルではない)が介入してきて、やっぱり瑞々しさというか、ピュアさを際立たせるには学生というのは欠かせないのかな、と思ったり。すごく奇妙な構成なのですが、それが不思議と心地いいのですよ。その風景は完全に「日常もの」で、ガツガツしておらずエロ表現もほぼなし。全体的にマイルドでとっても読みやすいです。


いとしのこいしの
「四六時中一緒に居たい相手なんてな
 一生に一人出会えたら充分なの」
 おもわずスゴく納得できてしまった言葉。この作品の言葉は、何気なくとも力があるというか。


 どのお話もすごく面白かったのですが、個人的にお気に入りだったのは、2話目「メリー・メロー・メモリーズ」。主人公は、高校卒業を目前に控えた男の子で、サッカー部のとある男子に憧れています。けれども大して話したこともないし、こんな片田舎で男が好きなんて絶対に言えない。彼のことは高校時代の綺麗な思い出として取っておいて、大学に入ったら恋人を作ろう!と息巻くのでした。けれどもひょんなことから彼と知り合いになり、思わぬチャンスが巡ってきて。。。というお話。もうこの初っぱなから「望み薄だから」と早々に諦めている感じがなんだかとってもリアルというか、可愛いなぁ、と(笑)けれども青春時代の妄想というのは、悪い方でも良い方でも、想像通りにはいかないわけで、思わぬところから仲良くなるきっかけを掴むわけですが、このチャンスをしっかりと掴んじゃうあたり、主人公の彼はなんだかんだでやり手だなぁ、と。
 
 もうひとつは「これも何かのご縁でしょ。」。学生バイトの青年と、若社長という組み合わせなのですが、意志薄弱な現代っ子と、ちょっと酸いも甘いも知った黒髪メガネ社長という組み合わせがなんだかとてもツボってしまいまして、この二人が絡んでるだけでなんだか眼福でありました(ってこれがBL萌えの第一歩か!?)。別に何があるってわけではないのですが、雰囲気が良いのです。雰囲気が。
 
 書き下ろしでそれぞれのお話のその後が描かれているの良かったです。大きな出来事が起きるような非日常的な作品とは対極にいるような作品でしたが、それこそが魅力で、しっかりと見るに耐える作品に仕上っていると思います。良き癒しとなってくれました。


【男性へのガイド】
→BLとはいえ、そういうカップルを描いた日常ものだと変換すれば、案外容易に受け入れられるんじゃないかと思ってみたり。女の子は一切登場しないです。
【感想まとめ】
→この雰囲気は大好物です。黒髪×金髪という組み合わせが基本になるので、最初はちょっとキャラの見分けつかねーな、という感じでしたが、最後はちゃんと見分けつくほどにキャラ付けされてるという。これって多分それだけしっかり読めたからだろうな、と思うのです。


作品DATA
■著者:こめり
■出版社:東京漫画社
■レーベル:マーブル
■掲載誌:Cab
■全1巻
■価格:629円+税


■購入する→Amazon

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Tag [新作レビュー] 2011.07.17
1106047563.jpg巳蔦汐生「きぼうの灯かり」



僕を導く灯台は
彼女だった



■灯台にまつわる物語を多数収録。
 救難信号を出した船の救助に行ったきり戻ってこない両親。「いつも通り過ごしていれば、いつも通り帰ってくる」そう信じて、今日も愛猫のクロと灯台を守り続けるローラ。しかし一週間が経っても連絡はなく、日々積もるのは不安ばかり。そんな彼女に告げられたのは。。。灯台に、出会いも、別れも、人生のなにもかもがある…日本唯一の灯台漫画、登場です。

 ZEROコミックスをご紹介するのは、「ドントクライガール」(→レビュー)以来の、通算2冊目になります。表紙の明るさと、帯の言葉に興味惹かれ、即購入。日本唯一の、灯台漫画とのことです。作者さん自身が灯台大好きということで、全編に渡って灯台フィーチャー。灯台にまつわる8編の物語のほか、作者さんによる灯台解説漫画が結構な分量収録されており、これ一冊で灯台のあれこれを学ぶことができます。個人的にすごく惹かれたのが、海外に複数あるという、灯台に泊まれるという宿。岸壁に立つ灯台が宿泊施設になっており、なかなか幻想的な雰囲気です。
 
 さて、物語の方はというと、国内外を舞台に、灯台が題材として描かれた作品が8編ほど。灯台で働く人の話もあれば、漁村に生まれたために灯台とは切っても切れない生活をしている人の話や、生活に根付いた一つの「モノ」としての灯台が描かれたりと、使われ方は様々。私なんかは海なし県の出身であるので、灯台というのはどちらかというと身近ではなく、非常に物珍しい存在なのですが、海岸沿いに住む人たちからすれば、その存在というのは生活に根付いたもので、一言で「灯台」と言っても、様々な表情があるのだなぁ、とこの作品を読んで思わされました。


きぼうの灯かり
灯台と美少女。東北の漁村を舞台に描かれる「霧に沈む灯」が、個人的には青春汁たっぷりで非常にお気に入りでした。


 個人的なお気に入りの話は、漁村に育った少年と、他所からやって来た灯台長の娘を描いた「霧に沈む灯」。昭和の東北を舞台に描かれるのですが、田舎ならではの空気感と、その中に色づく少年少女の瑞々しい想いというのが、変に色づけされることなく描き出されているようで、非常に印象に残りました。東北美人は黒髪ロングとか思ってみたり、主人公の少年の一生懸命さと、ヒロインの少女の美しさが、いい具合にマッチしていました。こちらの作品は、2話完結のお話となっていて、その二つを跨いで、最後キレイに完結するのも個人的にポイント高かったです。
 
 どの読切りも、それぞれ違った形で幸せの形を提示してくれるのですが、その元になっているのは、家族や友達との繋がりといったもので、何も恋愛のみに縛られることはありません。灯台がつなぐのは、船だけではなく人間の心の道標にもなるんだよ、というのが全ての物語の根底にあり、それらが違った形で描かれているのです。恋愛ストーリーがお好きな方にはちょっともの足りないかもしれませんが、様々な人間関係を描いた温かなお話がお好きという方にはうってつけ。お値段の割にページ数少なく見えるのですが、カキコミは結構あり、読んでからのボリューム感はそれなりです。


【男性へのガイド】
→灯台漫画というか、ヒューマンドラマという感じ。灯台というところ以外、統一感はないですが、そういうのが気にならないというのであれば。
【感想まとめ】
→灯台漫画というのはびっくり。とはいえ灯台は物語の主題というよりは、人々の生活や生き様というところに自然に溶け込んでいるので、それほど目立つ感じはありません。それゆえに、統一感を感じなくさせているのかもしれませんが、全体通して温かく幸せなお話で、個人的には満足の一冊でございました。


作品DATA
■著者:巳蔦汐生
■出版社:リブレ出版
■レーベル:ZEROコミックス
■掲載誌:クロフネZERO
■全1巻
■価格:600円+税


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かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。