さよならポニーテール「きみのことば」
ねぇ半径何メートルまでは信用できる?
ねぇ、人生何パーセントは自分のものなの?■きみのコトを思うとなぜだかとっても胸がくるしいよ…
3人の女の子たちが繰り広げる、奇跡の物語がいまはじまる。
女性向けかはわからないのですが、ここ1年くらいずっとハマっているので、お届けします。みなさん、
「さよならポニーテール」という存在はご存知でしょうか?音楽共有サイトであるmySpaceをベースに活動する、謎多きアーティスト(?)で、先日インディーズでのCD発売に続き、メジャーデビュー。ご紹介ではアーティストと言いましたが、当人としては
「音楽を中心とした物語」を名乗り、様々な活動をしております。私はmySpaceで偶然見つけて以来、この独特の世界にハマってしまったのですが、その存在や魅力について語るのはなかなか難しく…とりあえずさよポニとは何なのか、詳しくはこの辺りの記事をご参照いただければ…
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謎だらけの「さよならポニーテール」 その真相に迫るちなみに曲はこんな感じです。
さよならポニーテール『さよなら、ありがとぉ(みぃな弾き語りver.)』 さよならポニーテール『ナタリー』MV(サビだけ) ちょっと前からざわざわと話題になっていたのですが、ここ最近はよくその名前を耳にするようになってきました。今回ご紹介するのは、メジャーアルバムの発売に合わせて一緒に発売された、マンガ作品「きみのことば」です。アルバムジャケットなどからもわかるように、イラストやマンガも活動のひとつ。しかし太田出版からこういった形で発売されるとは。帯では「坂道のアポロン」(→
レビュー)の小玉ユキ先生が言葉を贈っています。
物語の中心となるのは、表紙にいる3人の女の子。センターにいる“みいな”に、そんな彼女のクラスメイトでもある黒髪の“あゆみん”と、ショートカットの“なっちゃん”の、学校生活を中心に描かれます。舞台となるのはさよポニワールド。ここはこちらの世界とは異なり、魔法が使えたり、なんだか不思議な不思議な世界。通学は専らうさぎ通学かネコバス通学。なんだか見たことのない生き物がいたりします。それでもテストはあるし、その勉強に苦しんだり、好きな男の子がいたりっていう姿は普通の女の子そのもの。
絵柄的にちょっと懐かしい匂いを感じるかも。決して上手いわけではないですが、それこそが個性であり、旨味でもあります。最近だと例えば今日マチ子さんとかこういう系になるんでしょうか。独特の世界に独特の空気感、そして独特の間で贈る、ちゃんとした説明のない物語。とにかく全てがそこで完結していて、だからこそあちら側に踏み込んでしまったら、抜けられなくなるというか。ただ世界観は独特であっても、物語の中に落とし込まれる女の子同士のかけ合いは、日常風景そのもの。ふんわりした絵柄を守るように夢物語を描くわけではなく、むしろその裏にあるネタは割と地に足ついているというか、ごくごく普通で形のハッキリしたもの。そのギャップというか違和感が、余計に印象に残るといいますか。

テスト勉強での一幕。歌詞がそのまま登場することも。基本的に自由な二人と、心配性な一人。
女の子も無駄にキャラキャラしていないんですよね。描かれているのは我々からしたら非日常であり空想に他ならないのですが、その中で動く彼女たちからしたら、それこそが日常であり、当たり前の風景。だからこそみんながみんな自然で、必要以上にキャラキャラしていないんですよね。ファンタジックな物語を空想している人からしたら、大きく違和感を残す構成になっているとも言えるかもしれません。それは単純に物語の描かれ方の違いだと思っていて、その多くが内側からの視点。こちら側からの視点に立っている感覚を受けたのは、収録されているお話のウチでも「水中通学路」とだいぶ譲って「ねむりの国へ」あたりぐらいしか。だからこの作品…というかそもそもさよならポニーテールを楽しむには、どっぷりハマらないといけないわけで。そしてまさに、そうならざるを得ないように、そういう物語構成になっているという。好き放題やっているように見えて、そのプロモーションの仕方はすごく一貫しているな、という印象を、この作品を読んで一層強く持つようになりました。
個人的に好きなのは、ショートカットのなっちゃんです。まずもう見ためが好みですよ、はい。一番クールっぽく見える変わり者な彼女が、このふんわりした世界に一番ドライな空気を吹き込んでくれるという(笑)ブレない良い友達ポジションで、物語を引き締めてくれるんです。この自然体が好きですねー。たぶん実際にいたら男子から人気出るのは、ヒロインのみいな(天然系でかわいい)か、あゆみん(大人しくて気が弱くてかわいい)な気がするのですが、そんな彼女たちの魅力を引き出しているのはなっちゃんなんだよ!と。なっちゃん好きが高じて、彼女のデザインが施されたiPhoneケース買っちゃいました。いや、iPhoneもってないんですけどね(なんで買ったとかいう問いかけはなしの方向で…)。せっかくだから、iPhone買おうかしら…。

序盤はカラーです。不思議な要素もたくさんですが、あくまでベースは女の子たちの日常風景。それこそが、かけがえのない時間、瞬間。
さて、肝心のマンガの方なのですが、女の子たちの日常を中心に番外編を含め13編が収録されています。全てさよならポニーテールの曲名が掲げられていて、その内容も曲とリンクしているという。もちろんこのマンガだけを読んでもさよポニワールドに充分触れることはできるのですが、マンガが曲を強化するという関係性になっている以上、曲を聴いていた方がずっと楽しめると思います。曲でメッセージは言葉として伝えているので、作中の台詞も少なめですし。物語は前半は日常&友情パートになっていて、中盤~後半にかけては青春&恋愛モードへと移って行きます。物語&曲の組み合わせで個人的に好きだったのは、「甘い感傷」でしょうか。甘くない、全然甘くないんですけど、それがいい・・・!
さて、まとめ。核心は語られない、どっぷりはまり込む系の存在。ゆえに一旦ハマると深いのですが、同時に他の人にオススメしづらいというのと、数年後振り返って「あれ?なんで自分これにハマってたんだろ…」と賢者からの落ち込みモードに入る可能性もあるという。でもとりあえず、好きな間は追いかけようと思うのですよ。そして今は、一番の追いかけ時だと思うんですよね。プッシュのされかたもすごいですし、もし知らない方は少しさよポニワールドを覗いてみては…?
【男性へのガイド】→そもそも女性向けかわからんという。文法は少女マンガに見られるものではあると思います。
【感想まとめ】→ハードカバー1200円ということは、ファンは買えってことなのですよ、きっと。とはいえこのエントリーをきっかけに、さよならポニーテールを知ってくれる人が、そして好きになってくれる人がいたら嬉しいです。
■その他特集記事など
→
マンガが特別に読めたり→
ナタリーでの特集記事作品DATA■著者:さよならポニーテール
■出版社:太田出版
■レーベル:
■掲載誌:
■全1巻
■価格:1200円+税
■ちなみに発売になるCDはこちらです。
魔法のメロディ(初回生産限定盤)(2CD)